ビタミンD不足の男性、動脈硬化のリスクが高まる恐れ
大阪公立大学らの研究グループは、ビタミンDが不足している男性は動脈硬化のリスクが高まる可能性があることを明らかにしました。このニュースについて中路先生にお話を伺います。
監修医師:
中路 幸之助(医師)
研究グループが明らかにした内容とは?
今回、大阪公立大学らの研究グループが明らかにした内容について教えてください。
中路先生
今回、大阪公立大学らの研究グループが実施したのは、体内のビタミンDと動脈硬化のリスクの関係についての調査です。グループは2018~2019年にかけて、20歳から72歳の男女1177人を対象に調査を実施しました。調査については、体内のビタミンD量の指標となる物質である「25-ヒドロキシビタミンD」の血中濃度を測定し、高血圧や高血糖、脂質異常など動脈硬化のリスク要因の有無との関係を調べる方法がとられました。調査の結果、男性の場合、25―ヒドロキシビタミンDの血中濃度が低いほど、動脈硬化のリスクが高まることがわかりました。一方、女性では同様の傾向は見られませんでした。
ビタミンDとは?
今回の研究対象になったビタミンDについて教えてください。
中路先生
ビタミンDは、食べ物からカルシウムを吸収することを助ける働きを持ち、強い骨を維持するために必要な栄養素です。ビタミンDが不足すると、小児では「くる病」、成人では「骨軟化症」と呼ばれる骨が脆くなる病気を発症する恐れがあります。ビタミンDは、全身の細胞内に存在していて、筋肉を動かしたり、神経伝達や免疫系を作用させたりするために不可欠です。サケやマグロ、サバといった魚や、牛のレバー、チーズ、卵黄、キノコ類などにビタミンDが含まれています。また、皮膚が直射日光に当たることでも、体内にビタミンDが生成されます。
研究内容への受け止めは?
今回の大阪公立大学らの研究グループによる研究内容についての受け止めを教えてください。
中路先生
ビタミンDは骨を丈夫にするのに必要なビタミンであることに加え、生活習慣病やがんの予防効果、赤ちゃんの発育などにおいても重要であることが報告されています。また、免疫機能向上にも役立つことなどから、コロナ禍において注目を浴びている栄養素です。
今回、大阪公立大学の研究グループが学会報告した内容は「ビタミンDの摂取が動脈硬化の予防(リスクの低下)に効果があるのでは?」とのクリニカル・クエスチョンに対しておこなわれた大変興味ある有用な研究報告と考えられます。研究結果では、性差(男女差)がみられ、男性において体内のビタミンDの量の指標となる「25―ヒドロキシビタミンD」の血中濃度が低いほど、動脈硬化のリスクが高まるももの、女性はこのような傾向は見られないとの結果となりました。その理由として、女性ホルモンの影響が考えられるとしています。逆に男性の方が女性より動脈硬化をきたしやすいとされており、男性のビタミンD摂取は動脈硬化の予防に有用な可能性があると考えられます。
このように、ビタミンDの摂取は動脈硬化のリスクを減少させますが、摂取するときは1日の量および上限値を守ることが肝要です。サプリメントなどの食品以外からビタミンDを摂取している人は、摂りすぎには注意が必要です。
まとめ
大阪公立大学らの研究グループが、ビタミンDが不足している男性は動脈硬化のリスクが高まる可能性があると明らかにしたことが今回のニュースでわかりました。ビタミンDはコロナ禍の影響で不足している状態になっているとの調査結果もあることから、動脈硬化のリスクとの関連が指摘された今回の研究は注目を集めそうです。