コロナワクチン3回目接種、高齢者への発症予防効果は約8割
長崎大学らの研究グループは、新型コロナウイルスワクチンを3回接種した65歳以上の約8割で発症予防効果があったとの推定結果をまとめました。このニュースについて甲斐沼先生にお話を伺います。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
研究グループによる報告内容とは?
長崎大学らの研究グループによる報告内容について教えてください。
甲斐沼先生
今回おこなわれた分析は、長崎大学の森本浩之輔教授などの研究グループによるものです。分析の対象になったのは、オミクロン株が流行していた2022年1~3月に10都県の13医療機関で、新型コロナウイルスの疑いで検査を受けた16歳以上の男女5169人です。研究グループは集められたデータから、ワクチンによる発症予防効果を分析した結果を厚生労働省の専門家会合で示しました。報告によると、65歳以上の高齢者では、未接種と比べた発症予防効果は、3回目接種を受けてから2週間以降では80.5%だったとのことです。なお、65歳以上の高齢者で2回接種した場合の発症予防効果は23.3%に留まりました。16~64歳では、2回の接種を受けてから90日以内で35.6%、91~180日までで34.5%、181日以降で34.8%でしたが、3回目接種を受けると68.7%に上昇したとのことでした。
65歳以上への3回目接種の現状は?
65歳以上への3回目接種の現状について教えてください。
甲斐沼先生
まず、3回目接種について改めて説明しますと、対象は2回接種を完了した12歳以上となっています。ファイザー製・モデルナ製のワクチンは2回目接種日の5カ月後に、ノババックス製のワクチンは2回目接種日の6カ月後から接種可能になります。対象者全体のうち、3回目接種率はおよそ60%となっています。また、高齢者の3回目接種の接種率は約90%となっています。
報告内容の受け止めは?
長崎大学らの研究グループによる報告内容をどのように考えればいいのか、受け止めを教えてください。
甲斐沼先生
諸外国とは感染状況や人種民族事情など社会背景が異なる我が国において、国内での新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の有効性を評価することは重要な観点となります。日本でも接種が進められてきた新型コロナウイルス感染症に対するワクチンは、従来のデルタ株などに対して発症予防効果を有する一方で、その持続効果は時間経過に伴って少しずつ低下していくことが知られています。以前にイスラエルで実施されたファイザー製のワクチン接種後に関する研究によれば、3回目のワクチン接種をした場合における入院予防効果は93%であり、60歳以上で3回目接種を受けたケースでは、3回目接種を受けなかった場合と比較して、感染発生率が約11分の1であったとの報告もされています。
今回の長崎大学のチームによる研究では3回目のワクチン接種により、2回目接種以降に時間経過とともに低下する発症予防作用を高める一定の効果があることが報告されました。今般の我が国においても、感染流行の主流となっているオミクロン株に対しても、とくに高齢者では3回目のワクチン接種により一定の発症予防効果が確認されたことを示唆しています。
今回得られた結果は、今後のワクチン接種の是非や感染症対策を議論するうえで重要なものであり、大変有意義であると判断されます。今後も、新たな知見が集積されることを期待しています。
まとめ
長崎大学らの研究グループが新型コロナウイルスワクチンを3回接種した65歳以上の約8割で発症予防効果があったとの推定結果をまとめたことが今回のニュースで明らかになりました。今後もワクチンの効果についての分析は注目を集めそうです。