【再生医療】腸の再生時に機能する新たな幹細胞発見
九州大学生体防御医学研究所は、傷ついた腸の組織が再生する際に機能する新たな幹細胞を発見したと発表しました。このニュースについて工藤医師に伺いました。
監修医師:
工藤 孝文(医師)
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
九州大学が発表した研究内容とは?
九州大学が発表した研究内容について教えてください。
工藤先生
今回の研究内容は、九州大学生体防御医学研究所の中山敬一教授らのグループが、科学雑誌のネイチャー・コミュニケーションズで発表したものになります。研究グループは、細胞周期を抑制することで増殖のブレーキとして機能する遺伝子の1つであるp57遺伝子について調べたところ、p57が発現した細胞組織がダメージを受けると幹細胞となって腸管の再生に重要な役割を果たすことがわかったということです。
また、1個の細胞の中に発現しているすべての遺伝子のRNA量を調べる手法である1細胞RNAシーケンス法で再生途中の腸管上皮を解析したところ、p57発現細胞は「胎児返り」と「胃上皮様変化」という2つの現象を経て幹細胞の状態へと逆戻りしていることが明らかとなりました。
腸管上皮の再生メカニズムの一部が明らかになった意義は?
腸管上皮の再生メカニズムの一部が明らかになったことはどのような意義があるのでしょうか?
工藤先生
腸管上皮は再生力が強く、再生医療のために長年研究されていました。今回の発表で、そのメカニズムが解明されたことにより、また一歩再生医療の研究が進んだことになります。
研究結果は、今後どのような応用が期待できるか?
今回、九州大学が発表した研究結果について、今後どのような応用が期待できると考えていますか?
工藤先生
このデータから、難治性の腸疾患の病態の解明や、大腸がんなどのがんへの治療に役立つことが期待されます。また、腸管上皮細胞の機能をほかの部位でも再現できれば、ほかの臓器の再生医療にも活用できるかもしれません。
まとめ
九州大学生体防御医学研究所が傷ついた腸の組織が再生する際に機能する新たな幹細胞を発見したことが、今回のニュースで明らかになりました。今後さらに研究を進めるということで、更なる成果にも期待が集まります。