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HPVワクチン「積極的勧奨」再開が決定

 更新日:2023/03/27

厚生労働省の専門部会は11月12日、子宮頸がんなどの主な原因となる「HPV(ヒトパピローマウイルス)」を予防するワクチンについて、2013年から中止している接種の「積極的勧奨」を再開すると決めました。このニュースについて前田医師に伺いました。

前田 裕斗 医師

監修医師
前田 裕斗 医師

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

HPVワクチンとは?

今回、厚生労働省で議論の対象になったHPVワクチンについて教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

HPVワクチンは、子宮頸がんなどの原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を予防するためのものです。

子宮頸がんは、日本では20~40代を中心に患者数が増えており、厚生労働省によると毎年およそ1万1000人の女性が子宮頸がんになり、約2800人が亡くなっている病気です。そのほとんどは、HPVの持続的な感染で発症します。

HPVは主に性交渉によって感染することから、予防のためには性交渉を経験する前にワクチンを接種することが最も有効とされています。HPVには200種類以上のタイプがあり、その中でも子宮頸がんを最も起こしやすいタイプがHPV16型と18型です。現在、小学6年生から高校1年生までの女性が定期接種の対象となっています。

定期接種できるワクチンは2種類あり、「サーバリックス」はHPV16型と18型、「ガーダシル」はその2種に加えて、尖圭コンジローマという別の性病を起こす6型と11型の感染を防ぐことができます。

どちらのワクチンも6カ月間に3回接種することによって、HPV16型と18型の感染を90%以上予防できることが報告されています。

今回決定した内容は?

今回、厚生労働省が決定した内容について教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

HPVワクチンを巡って、日本では2013年4月に定期接種化されましたが、接種後に体の痛みなどを訴える声が相次ぎ、同年6月に接種の積極的勧奨は中止されたという経緯があります。しかし、それが今年10月の専門部会で、ワクチンと接種後の多様な症状の関連性は明らかでなく、安全性や有効性を示すデータが国内や海外で集まっているなどとして、11月12日に8年ぶりの「積極的勧奨」を再開すると決定されました。

厚生労働省によると、接種歴がない人にも同様の症状が一定数出ることが明らかになっていて、これまでに接種後に出た様々な症状について複数の調査研究がおこなわれているものの、ワクチン接種との因果関係があるという証明はされていないとしています。

11月12日の専門部会では、こうした症状に苦しむ人への支援体制なども審議され、大学病院など協力医療機関向けの研修の充実や、地域医療や学校を巻き込んだ相談体制の強化を進めることで一致しています。

積極的勧奨の差し控えにより、接種機会を逃した人への救済措置は?

積極的勧奨の差し控えにより、接種機会を逃した人がいると思います。機会を逃しても、公費で接種を受けられるといった救済策はあるのでしょうか?

前田 裕斗 医師前田先生

厚生労働省の専門家による分科会が11月15日に開かれ、高校生や大学生相当の女性も2022年4月から時限的に追加で公費での接種対象にする方向で一致したそうです。

15日の段階では来年度に17~25歳になる9学年とする案と、17~22歳になる6学年とする案が主に議論されたようですが、結論は出ていないため継続して検討されることになります。

そもそも、17歳以上の人が接種して効果があるのかと疑問に思う人も少なくありません。しかし、2020年に発表されたスウェーデンの研究では、17歳になる前にワクチン接種を受けた女性では88%、17~30 歳で受けた女性では53%、浸潤(進行)子宮頸がんが減少したと報告されています。

また、感染の主な原因である性交渉をしたとしても自然に治ることがあります。加えて、一再感染に対する予防効果があることや一度に全ての高リスクHPVに感染することは稀であるため、まだ感染していないタイプの感染を予防できる効果があると考えられています。

まとめ

2013年から中止しているHPVワクチンの接種の「積極的勧奨」が、8年ぶりに再開されることになりました。勧奨中止の間、公費による定期接種は維持されたものの、接種を促す個別通知などがなかったため接種率は低迷しました。接種する機会を逃した人への救済措置も含めて、今後の方向性に注目が集まります。

この記事の監修医師