歩幅が狭いと認知症の発症リスクが高まる!?
コロナ禍の影響でリモートワークが増えた方も多いのではないでしょうか。一日中家の中で仕事をして、食事はデリバリーで自宅まで届けてもらうと、気がつけば一歩も家の外に出ていないという日もありますよね。しかし、実は歩くときの歩幅が狭くなってしまうと認知症の発症リスクが高まってしまうという研究結果が、今注目されていることをご存知ですか? この研究について鈴木先生に伺います。
監修医師:
鈴木 倫保 医師
歩幅の狭さと認知症の発症リスクの関係は?
歩幅の狭さと認知症の発症リスクの関係について、詳しく教えてください。
鈴木先生
東京都健康長寿医療センター研究所の谷口優氏の研究チームによる研究結果では、約4年間の追跡調査の結果、歩幅の狭い人は広い人に比べ、3倍も認知機能が低下していたことが分かっています。また、歩幅が狭い状態のまま年齢を重ねると認知症発症のリスクが2倍以上になることが明らかになっているなど、歩幅と認知症の関連性が指摘されています。さらに、歩く速度は歩幅と歩調(テンポ)で決まりますが、認知機能と関連するのは歩幅で歩調は関連がないという結果も出ています。
なぜ歩幅が狭くなるの? 歩幅を広くするコツは?
歩幅が狭くなることで増加する認知症のリスク……少しでもリスクを減らすためにも歩幅を広くするにはどうしたらいいのでしょうか?
鈴木先生
歩幅の調整は、脳の中で多くの部位が関係しています。そのため、歩幅が狭くなっている場合は、脳のどこかで異変が起こっている可能性が考えられます。
広げた歩幅の目安は男女とも65センチと言われています。横断歩道の白線の幅が約45センチ、足のサイズを約24センチと想定すると、一方の足の爪先を白線の手前に合わせ、もう一方の足で白線を踏まないように越えられれば、クリアできる幅になります。
歩幅を広くすると認知機能を取り戻すこともできる?
歩幅を広くすると認知機能を取り戻すこともできるのでしょうか?
鈴木先生
認知症の多くを占めるアルツハイマー型認知症は約20年かけて進行し、軽度認知障害(MCI)の状態を経て発症します。MCIと診断された人のうち認知症を発症した人は約2割で、約5割は発症せず、約3割は回復したとの報告もあります。MCIの状態であれば、意識して歩幅を広げることで認知機能を取り戻せる可能性があります。
まとめ
東京都健康長寿医療センター研究所の谷口優氏のチームによる研究では、約4年間の追跡調査の結果、歩幅の狭い人は、広い人に比べ、3倍も認知機能が低下することが分かっています。しかし、歩く歩調(テンポ)と認知症との関連はなかったとしています。また、軽度認知障害(MCI)は、運動習慣の改善で回復する可能性もあるので、歩幅を大きく元気よく歩くことを意識してみてはいかがでしょうか。