「慢性リンパ性白血病」の生存期間が延長 アカラブルチニブ治療が有効性示す

アメリカのウィラメットバレーがん研究所の研究員らは、慢性リンパ性白血病の治療に関する「ELEVATE-TN試験」の長期追跡結果について報告しました。試験では、アカラブルチニブ(商品名:カルケンス)を含む治療群が従来の化学療法群と比べて無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)を有意に延長し、かつ安全性も良好であることが確認されました。この内容について中路医師に伺いました。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
研究グループが発表した内容とは?
ウィラメットバレーがん研究所の研究員らが発表した内容を教えてください。
中路先生
アメリカのウィラメットバレーがん研究所の研究員らは、慢性リンパ性白血病(CLL)に対する一次治療としてのアカラブルチニブを中心とした治療の有効性と安全性について、ELEVATE-TN試験の中央値74.5カ月という長期追跡結果を報告しました。試験では、535人の未治療の慢性リンパ性白血病患者を対象に「アカラブルチニブとオビヌツズマブ(商品名:ガザイバ)の併用療法」「アカラブルチニブ単独療法」「従来の化学免疫療法であるクロラムブシルとオビヌツズマブの併用療法」の3群に無作為に割りつけて比較がおこなわれました。
試験の結果、アカラブルチニブを含む治療群はクロラムブシル・オビヌツズマブ併用群と比較して、無増悪生存期間および全生存期間のいずれも有意に延長していることが明らかになりました。特に、アカラブルチニブとオビヌツズマブの併用は、アカラブルチニブ単独療法と比較しても無増悪生存期間の改善が確認されました。また、4年以上にわたる追跡期間中に発現した有害事象の多くはグレード1〜2の軽度なものであり、安全性についても良好な結果が得られました。
以上のことから、アカラブルチニブを含む治療は、初回治療において高リスク患者を含む幅広い患者に対して有効であり、安全性にも優れていることが示されました。
研究テーマになった慢性リンパ性白血病とは?
今回の研究テーマに関連する慢性リンパ性白血病について教えてください。
中路先生
慢性リンパ性白血病は、白血球の一種であるBリンパ球ががん化し、ゆっくりと進行する血液のがんです。自覚症状は、初期にはないことが多く、健康診断などで偶然見つかることもあります。進行すると、貧血やリンパ節の腫れ、倦怠感、発熱、体重減少などの症状が表れます。
慢性リンパ性白血病の診断には、血液検査や骨髄検査、染色体検査などが用いられ、治療は進行の程度や症状の有無に応じて判断されます。無症状であれば経過観察が基本ですが、進行や症状がみられる場合は、抗がん剤や分子標的薬による治療がおこなわれます。定期的な検査や医師との相談を大切にして、安心して日常生活を送れるよう心がけましょう。
慢性リンパ性白血病に関する研究内容への受け止めは?
ウィラメットバレーがん研究所の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
中路先生
今回のような大規模ランダム化比較試験であるELEVATE-TN試験の結果は、慢性リンパ性白血病の標準治療を変える可能性があります。実臨床において、従来の化学療法から分子標的治療へのシフトの加速や、高齢者やハイリスク患者にも適用しやすい治療の選択枝が広がるなど、大きな影響を与えるものと考えます。
編集部まとめ
今回の研究では、新薬アカラブルチニブを含む治療が、従来よりも長く病状を抑えられ、安全性にも優れていることが示されました。病気と前向きに向き合うためにも、日頃から定期的な検査や医師との相談を心がけましょう。
※提供元「日本がん対策図鑑」【慢性リンパ性白血病:一次治療(6年PFS)】「カルケンス+ガザイバ」vs「クロラムブシル+ガザイバ」
https://gantaisaku.net/elevate-tn_6pfs/


