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「乳がん」が消える治療法が判明か ペムブロリズマブ併用療法の有効性を研究で確認

 公開日:2025/04/03

ポルトガルのシャンパリモー臨床センターの研究員らは、高リスクの早期エストロゲン受容体陽性(ER+)かつ、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性乳がんに対するペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法の効果について検証しました。研究結果は、学術誌「Nature Medicine」に掲載されています。この内容について谷野医師に伺いました。

谷野 裕一

監修谷野 裕一

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和歌山県立医科大学卒業。その後、神戸大学乳腺内分泌外科特命教授を経て、現在は公立那賀病院、市立岸和田市民病院勤務。専門は乳腺外科。日本乳癌学会乳腺専門医・指導医。

研究グループが発表した内容とは?

シャンパリモー臨床センターの研究員らが発表した内容を教えてください。

谷野 裕一 医師谷野先生

今回紹介する内容はポルトガルのシャンパリモー臨床センターなど、世界各国の主要な研究機関や大学病院に所属する研究員によるものです。高リスクの早期ER+/HER2-乳がんに対するペムブロリズマブと化学療法の効果を検証するランダム化第3相試験「KEYNOTE-756」の結果が、研究員らによって報告されました。

この試験では、術前補助療法としてペムブロリズマブと化学療法を併用し、その後の術後補助療法としてペムブロリズマブと内分泌療法を組み合わせた場合の有効性と安全性を評価しました。試験には、1278人の患者が参加しました。ペムブロリズマブ化学療法群では24.3%、プラセボ化学療法群では15.6%の患者が病理学的完全奏効(pCR)を達成し、統計的に有意な改善が確認されました。トリプルネガティブ乳がんを対象とした「KEYNOTE-522」と異なるところは、化学療法レジメンにカルボプラチンが入っていないところだけでした。特に、腫瘍のPD-L1発現が高い患者や、エストロゲン受容体陽性率が10%未満の患者では、pCR率の向上が顕著でした。ただし、これらのサブグループ解析のサンプルサイズが限られているため、今後の検証が必要とされています。また、無イベント生存率(EFS)の評価はまだ完了しておらず、さらなる追跡調査が進行中です。

この研究結果は、高リスクの早期ER+/HER2-乳がんに対しても従来の化学療法にペムブロリズマブを追加することでpCR率が改善する可能性を示唆しています。しかし、EFSの結果が未確定であることや、副作用のリスクがやや高いことが課題として残るでしょう。

研究テーマになった乳がんとは?

今回の研究テーマに関連する乳がんについて教えてください。

谷野 裕一 医師谷野先生

乳がんは乳腺の組織にできるがんで、乳管から発生することが多い傾向にあります。進行すると、周囲の組織を壊しながら広がり、血液やリンパ液を通じて、ほかの臓器へ転移することもあります。転移しやすいのは、乳房周囲のリンパ節、骨、肝臓、肺、脳などです。乳がんは女性に多い病気ですが、男性にも発生することがあり、治療の流れは基本的に女性と同じです。

乳がんの主な症状として、乳房のしこりが挙げられます。そのほかにも、乳房のくぼみ、左右の乳房の形の違い、まれには乳頭や乳輪のただれ、乳頭からの分泌物などがみられることもあります。しこりは乳がん以外の原因でできることもありますが、少しでも気になる変化があれば、早めに専門医を受診することが大切です。

乳がんの予防には、定期的な検診を受けることが重要です。特に日頃から乳房の変化に気を配る「ブレスト・アウェアネス」が推奨されています。早期発見・早期治療がとても大切なので、ぜひ健康管理を意識して定期的な検診を受けましょう。

乳がん治療に関する研究内容への受け止めは?

ポルトガルのシャンパリモー臨床センターの研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

谷野 裕一 医師谷野先生

本試験は、高リスク早期ER陽性HER2陰性乳がんのペムブロリズマブと化学療法の併用効果を検証した重要な研究です。特に、ER低発現(ER≦10%)HER2陰性乳がんに対する治療戦略では、日本においても欧州同様の考え方を取り入れ、治療に臨むべきであると考えます。

編集部まとめ

乳がんは早期発見が重要です。定期的な検診や自己触診をおこなうブレスト・アウェアネスを意識することで、自分自身の健康を守ることにつながります。日頃から自分の体の変化に気を配り、気になる症状があればすぐに専門医に相談しましょう。

※提供元「日本がん対策図鑑」【ER陽性乳がん:周術期治療(pCR)】「キイトルーダ+化学療法→手術→キイトルーダ+内分泌療法」vs「化学療法→手術→内分泌療法」
https://gantaisaku.net/keynote756/

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