吐き気止め薬「ドンペリドン」、胎児の奇形発生率への悪影響なしと大規模調査で判明
国立成育医療研究センターは、妊婦への使用が禁忌の「ドンペリドン」が胎児に悪影響を及ぼすリスクがないことを示す調査結果を発表しました。今回は、ドンペリドンの胎児へのリスク調査結果の詳細を渡海先生に詳しくお伺いします。
監修医師:
渡海 由貴子 医師
目次 -INDEX-
そもそもドンペリドンとは?
そもそもドンペリドンとは、どのような薬なのでしょうか。
渡海先生
ドンペリドンとは、胃・十二指腸の運動を改善し、化学受容器引金帯と呼ばれる部分に作用することで吐き気を抑える薬です。慢性胃炎や胃下垂に伴う吐き気、嘔吐、食欲不振などに用いられます。ドンペリドンは動物実験において奇形が発生するリスクがあることがわかっていたため、添付文書では妊婦への使用が「禁忌」とされています。
しかし、妊娠による悪阻(つわり)だと気づかずにドンペリドンを服用し、胎児に奇形が起きる可能性に不安を抱えることで、妊娠を継続すべきかどうか悩む妊婦が少なくありません。
今回の発表の詳細は?
ドンペリドンが胎児に悪影響を及ぼさないことが判明した研究について、調査方法や調査結果を詳しく教えください。
渡海先生
ドンペリドンの胎児への悪影響を調査したのは、国立成育医療研究センターです。妊娠中の薬剤曝露症例のデータベース1万3599例のうち、妊娠初期にドンペリドンを服用した519例と、妊娠・胎児への影響がないことがわかっている薬を服用した1673例を比較しました。
解析の結果、胎児の奇形の発生率はドンペリドンが2.9%、リスクがない薬が1.7%と、明らかな差は見られませんでした。そのため、ドンペリドンが胎児の奇形発生の大きな要因になり得ないことが判明したのです。
ドンペリドンは疫学研究が少ないため、安全性への疑念を払いきれない部分がありました。しかし、大規模データベースを解析した今回の研究により、ドンペリドンの妊婦への使用に問題がないことがわかったのです。この結果は日本だけではなく、アジア諸国や欧州などにとっても有益な発表と言えます。
また、ドンペリドンを誤って服用してたことにより悩んでいる妊婦も、安心して妊娠生活を送ることができるでしょう。
まとめ
妊娠検査薬や医師の診察で妊娠が発覚する前に禁忌の薬を飲み、後から妊娠がわかって悩んでしまうケースが少なくありません。今回の調査により、妊娠中にドンペリドンを服用しても、胎児の奇形発生率に大きな影響を及ぼさないことがわかりました。これにより、悪阻を緩和させたい時は安心してドンペリドンを服用することができるようになったのです。ただし、服用する時は医師の指示に従って用法・容量を守ることを心がけましょう。