女性の多量飲酒で乳がんリスク増大=16万人の大規模調査を分析
2019年度における日本国内の乳がんの死亡数は1万4838人で、人口10万人に対する死亡率は23.4%です。乳がんの死亡数と死亡率は増加傾向にあるため、警戒すべきがんの1つと言えます。最近の研究で、女性の多量飲酒が乳がんリスクを1.7倍に高めることがわかりました。今回は、多量飲酒による乳がんのリスク増加について、中島先生に詳しくお伺いします。
監修医師:
中島 由美 医師
目次 -INDEX-
今回の調査の概要と結果は?
今回の調査の対象者や結果について詳しく教えください。
中島先生
「愛知県がんセンター」と「国立がん研究センター」の研究グループは、全国の30~60代の健康な女性約16万人を対象に行われた8つの大規模調査(追跡期間平均14年)のデータを分析しました。その分析結果から、期間中に乳がんに罹患した約2200人のうち、飲酒率が79%、喫煙率が61%ということがわかりました。
同研究グループは、飲酒と乳がんの関係性をさらに詳しく調べるために、「飲酒の頻度」と「飲酒量(エタノール量)」をそれぞれ4つのグループに分類し、比較検討しています。
【飲酒の頻度】
・飲まない
・機会があれば(週1日以下)
・時々(週1日以上4日以下)
・ほとんど毎日(週5日以上)
【飲酒量(エタノール量)】
・0g
・0.1~11.5g
・11.5~23g
・23g以上
この研究で判明したことは、飲酒量が23g以上の閉経前の女性は、0gのグループと比べて乳がんになるリスクが1.74倍になることです。また、飲酒の頻度が週5日以上の人は、飲酒しない人と比べて乳がんになるリスクが1.37倍高くなりました。
飲酒は控えた方がよいのでしょうか?
今回の研究では、多量飲酒が乳がんリスクと関係していることがわかりましたが、やはり飲酒は控えた方がよいのでしょうか。
中島先生
厚生労働省は、世界保健機関(WHO)の調査などを引用し、乳がんだけではなく、食道がんや肝臓がん・大腸がんなどと飲酒の関連を指摘しています。このような情報から同研究グループは、乳がんリスクを抑えるためには若いうちから多量飲酒を控えることが重要としています。
まとめ
多量飲酒とがんの関連はかねてより噂されていましたが、今回の研究で乳がんリスクを増大させることが判明しました。飲酒量を抑えたからといって乳がんを防げるとは限りません。しかし、乳がんは年々増加傾向にあるため、飲酒量を控えて少しでもリスクの軽減を意識してみるのはいかがでしょうか。そして何よりも大切なことは、飲酒をしていない方含め、定期的に乳がん健診を受けるなど早期発見・早期治療の意識を持つことです。