【国内初!】新型コロナ全検体で中和抗体を確認
厚生労働省は7月14日、新型コロナ陽性の8検体を調べたところ、ウイルス感染を防ぐ免疫機能を持つ「中和抗体」が、全ての検体で確認されたことを発表しました。ここでは、中和抗体の役割や調査の内容について、中島先生に詳しくお伺いしました。
監修医師:
中島 由美 医師
目次 -INDEX-
今回の調査の詳細は?
今回の調査の詳細について詳しく教えください。
中島先生
厚生労働省は6月、海外2社の検査試薬の両方で陽性になった人を抗体保有者と定義し、抗体保有者の比率を調査しました。抗体保有者の調査結果は次のとおりです。
・東京1971人中1人(0.10%)
・大阪2970人中5人(0.17%)
・宮城3009人中1人(0.03%)
このうち、抗体保有者の8検体を対象に中和検体を調べました。その結果、ウイルスによる細胞の破壊を防ぐ働きがある「中和抗体」が全ての検体で確認されました。日本国内で中和抗体が確認されたのは初めてです。
ただし、このうちの1社の検査試薬のみで陽性となった検体を調べたところ、十分な中和抗体が検出されませんでした。
また、中和抗体は半永久的に体内で作用し続けるとは限りません。厚生労働省は、中和抗体の作用が体内で持続する期間について引き続き調査する方針です。
海外2社の検査試薬の信頼性は?
今回の調査で使用された海外2社の検査試薬の信頼性について教えください。
中島先生
今回の調査で使用された検査試薬は、米国FDAからEUA(緊急使用許可)が出ているアボット社とロシュ社の製品です。緊急使用許可は、緊急時における未承認薬の使用許可や承認薬の適応拡大を認める制度です。
連邦食品医薬品化粧品法の第564条に基づき、以下4つの条件を満たした場合に発行できます。
・生命を脅かす疾患
・一定の有効性が認められる
・使用のメリットが潜在的なリスクを上回ると判断できる
・他に適当な代替品がない
上記の条件を満たしているため、一定の信頼性があると考えられます。
まとめ
今回の調査によって、新型コロナの抗体検査で陽性になった場合、ウイルスによる細胞の破壊を防ぐ中和抗体が作られることがわかりました。ただし、中和抗体が体内で持続する期間については調査中のため、新型コロナに一度かかれば再びかからないとは言い切れません。また、中和抗体の量や活性が十分ではない場合も、再び新型コロナにかかる可能性があります。そのため、新型コロナに限らず、感染症を防ぐために手洗いうがいやマスクの着用などを今後も心がけることが大切といえるでしょう。