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要介護認定調査とは?調査を受ける際のポイントを解説

 公開日:2025/12/21
要介護認定調査とは?調査を受ける際のポイントを解説

介護施設への入居や介護サービスの利用を検討している方は、要介護認定調査という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
要介護認定調査は、介護保険を利用するために重要な手続きで、適切な対応が行えるかどうかによって、利用可能な介護サービスの範囲に差が生じる可能性もあります。
この記事は、要介護認定とは何かという基礎知識から、認定調査の流れや受けるうえでのポイントなどについて解説します。

小田村 悠希

監修社会福祉士
小田村 悠希(社会福祉士)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

要介護認定の基礎知識

要介護認定の基礎知識

要介護認定とはどのような制度ですか?

要介護認定は、被介護者が生活を送るために、具体的にどの程度の介護が必要になるのかを判定するもので、介護保険サービスを利用するために必要な手続きです。
要介護認定には、介護が不要という判断の「非該当(自立)」と、基本的には一人で生活可能であるが、家事のすべてを一人で行うことが困難であるため、部分的な支援が必要という判断の「要支援」、そして自力での生活が難しいという判断の「要介護」という段階があります。さらに、要支援は1~2の2段階、要介護は1~5の5段階に分類され、数字が大きくなるほど積極的な支援や介護が必要であるという判断です。

要介護認定を受けると、どのようなメリットがありますか?

要介護認定は、公的な介護施設に入居するために設定されている条件の一つです。要介護度に応じて利用可能な施設が異なり、例えば特別養護老人ホームは要介護3以上の方でないと、原則として入居することができません。
また、要介護認定を受けることで、訪問介護やデイケアサービス、介護用品のレンタルといった各種介護保険サービスを、介護保険による補助を受けながら利用できます。
介護保険を利用しても一部は自己負担の必要がありますが、全額を自費で負担する場合と比べ、1割から3割ほどの負担ですむため、日常生活での負担が大幅に抑えられます。
補助を受けることができる金額は、要介護度が高くなるにしたがって増加します。

要介護度の区分の目安を教えてください

要介護度区分の目安は下記の通りです。

  • 要支援1:ほぼ自力で生活を送れるが、家事の一部などにサポートが必要
  • 要支援2:ほぼ自力で生活を送れるが、運動機能の低下が見られ、入浴のサポートなどが必要
  • 要介護1:歩行やズボンの上げ下げなどの日常的な行動に困難さが見られ、部分的な介助が必要
  • 要介護2:立ったり歩いたりという動作が自力で行えないケースが多くなり、介助が必要な範囲が広い
  • 要介護3:食事や排泄、入浴といった全般で介助が必要な状態
  • 要介護4:自力で日常生活を送ることが困難で、介護が必要な時間が長い状態
  • 要介護5:寝たきり状態など、介護なしで生活ができないため、介護者がつきっきりで介護を行う必要がある状態

上記のほかに、認知症の程度などによっても要介護の判定が行われます。

要介護認定調査の内容と流れ

要介護認定調査の内容と流れ

要介護認定調査とはどのような調査ですか?

要介護認定調査は、要介護認定を行うために行われる調査です。
自宅や入居している施設などで行われ、市区町村などから派遣された調査員により、聞き取りなどによる調査が行われます。
なお、要介護度は要介護認定調査の調査票のみで判断されるのではなく、これに加えて主治医の意見書が用いられます。調査票の内容からコンピューターによる要介護度の判定が行われ、その後に医療、福祉、介護の専門家が集まって行われる介護認定審査会で、コンピューターによる判定と主治医意見書から最終的な要介護度が決定されます。

要介護認定調査では具体的に何を確認しますか?

要介護認定調査は、基本調査と概況調査という2つの調査によって行われます。
基本調査は全国一律の項目で行われるもので、以下の6つの項目で調査を実施します。

  • 身体機能・起居動作の調査:寝たり立ったりといった基本的な生活動作が行えるかの確認
  • 生活機能の調査:食事や排便、着替えなどが行えるかなど
  • 認知機能の調査:自分の名前や生年月日が答えられるかや、短期記憶が可能かどうかなど
  • 精神・行動障害の調査:感情の起伏が激しい、忘れ物が多いといったトラブルがあるかなど
  • 社会生活への適応に関する調査:金銭管理や集団への適応などについて
  • 特別な医療の状況:透析や点滴など、過去14日間に受けた特別な医療の有無

概況調査は、家族状況や自宅の状況、利用している介護サービスの状況など、具体的な介護の状況を調べるものです。
調査は介護を受ける本人に加え、そのご家族などの介護者に対して行われます。

当日の流れと所要時間を教えてください

要介護認定調査は、事前に調査を行う訪問日時についての連絡があり、その時間に認定調査員が自宅や介護施設などに訪問して行われます。
調査は介護を行う家族などが立ち合いのもとで行われ、30分から1時間程度の時間でスムーズに実施されます。

要介護認定調査は誰が行いますか?

要介護認定調査は、原則的に市区町村の職員が実施します。
ただし、市区町村によっては職員だけですべてを対応することが困難であるため、市区町村から委託を受けたスタッフなどが調査を担当する場合もあります。
委託を受けて要介護認定調査を行う場合は、指定市町村事務受託法人に属する介護支援専門員か、医療や保健などに関する専門的な資格(医師、看護師、社会福祉士など)を保有し、介護実務に5年以上、または認定調査に1年以上従事した経験があり、認定調査員の研修を終了している者である必要があります。

要介護認定調査を受けるうえでのポイント

要介護認定調査を受けるうえでのポイント

要介護認定調査を受ける前に用意するべきものはありますか?

要介護認定調査は、1時間程度の短い時間で行われる調査です。短い時間のなかでこれまでのことを思い出しながら伝えようとすると、どうしても時間が不足してしまい、伝えたいことが伝えられなかったという状態になりやすいため、伝えたいことはあらかじめメモなどに残して準備しておくとよいでしょう。
特に、介護するうえでトラブルがあった場面など、重要なエピソードを伝えられるようにすると、調査員により特記事項として調査票に記入され、判断要素として役立ちます。

事実と異なる申告をするとどうなりますか?

認定調査において事実と異なる虚偽の申告を行った場合、適切な認定を受けることができないなどのトラブルにつながる可能性があります。また、要介護度を高くしようと嘘を伝えていることなどが発覚した場合は、認定を受けられなかったり、再調査が必要となって要介護認定が決定されるまでの期間が長引くことも考えられます。
仮に虚偽の回答がばれず、要介護度が不相応に高い結果となった場合、過剰な支援により自力での活動が減少し、能力の衰えが進みやすくなるといったデメリットもありますので、認定調査には正しく回答するようにしましょう。

要介護認定調査の結果に納得できない場合の対応を教えてください

認定調査の結果、想定していた要介護度ではないなど、結果に納得できない場合には、介護認定のやり直しを請求することができます
なお、介護認定のやり直しには審査請求と区分変更の2種類がありますが、再審査という点ではどちらも同じであり、審査請求には長い時間が必要になる可能性が高いことから、多くの場合は区分変更での申請が行われます。
区分変更は被介護者の心身状態などに変化が合った際に、適切な区分に変更するように請求するもので、認定調査や要介護度の決定までの流れは通常の流れと同じです。
注意点として、認定調査をやり直ししたからといって望む結果になるとは限らず、場合によっては希望と真逆の結果になる可能性もあります。
結果に納得できないというトラブルにつながらないよう、事前にしっかりと準備を行い、できる限り正しく介護の状況を伝えられるようにしましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

介護保険サービスを利用する際には、要介護度を判定するための認定調査が行われます。
認定調査は基本的に全国一律の内容なので、事前に回答するための準備を整え、しっかりと介護の状況や困っていることなどについて認定調査員に伝えられるようにしておきましょう。

この記事の監修社会福祉士