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在宅介護での誤嚥性肺炎に注意!初期症状や予防法などを解説します

 更新日:2025/12/10
在宅介護での誤嚥性肺炎に注意!初期症状や予防法などを解説します

誤嚥性肺炎は高齢の方に多いとされる病気のひとつですが、早めに知識を持つことで予防できるケースも少なくありません。どのような症状が出るのか、誰がかかりやすいのか、診断や予防の仕組みを知ることは、ご本人だけでなく介護する家族にとっても大きな支えとなります。

本記事では、誤嚥性肺炎について以下の点を中心にご紹介します。

  • 誤嚥性肺炎の症状や初期に見られる変化
  • 誤嚥性肺炎を発症しやすい方や原因の背景
  • 誤嚥性肺炎の診断方法や日常でできる予防の工夫

在宅介護に関わるご家族や支援者の方々が、誤嚥性肺炎の理解を深める一助となれば幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

誤嚥性肺炎とは

誤嚥性肺炎とは

誤嚥性肺炎にはどのような症状や特徴がありますか?

誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物、唾液などが誤って気管に入り、肺に細菌が侵入することで発症します。誤嚥性肺炎の場合に見られる症状にはいくつかの特徴があり、注意が必要です。
主な症状には以下のようなものがあります。

  • 食事中や食後に咳き込む
  • 痰が絡んで喉がすっきりしない
  • 発熱が続く
  • 呼吸がしづらい

特に、膿のように濁った痰や38度を超える高熱がある場合は重症化の可能性があります。

また、高齢の方では典型的な症状が出にくく、なんとなく元気がない、食欲が低下している、体重が減少しているなどの変化がきっかけで気付かれるケースも少なくありません。症状がはっきり出ない分、家族や介護者が小さな体調の変化を観察することが大切です。
普段の様子と比べて行動が鈍くなったり、会話が減ったりする場合も注意しましょう。

誤嚥性肺炎の初期症状があれば教えてください

誤嚥性肺炎の初期症状は風邪に似ており、軽い変化として現れるため気付かれにくいことがあります。早期発見のためには、以下のようなサインに注意しましょう。

  • 食事中にむせる
  • 咳が長引く
  • 微熱が続く
  • 喉に違和感がある
  • 食欲が低下している

高齢の方は典型的な高熱や強い咳が出にくく、元気がない、食事の量が減ってきたといった些細な変化から見つかるケースも少なくありません。特に在宅介護では、ただの風邪と思い込まず、違和感が続く場合は早めに病院の受診をおすすめします。

どのような人が誤嚥性肺炎になりやすいですか?

誤嚥性肺炎は、嚥下機能や咳き込む力が低下している方に起こりやすい病気です。高齢の方は、筋力や唾液の分泌量が減ることで食べ物が喉に残りやすく、誤って気道に入っても咳で排出できないため、発症リスクが高まります。

また、脳卒中など脳血管障害の後遺症や、パーキンソン病などの神経疾患を抱える方も注意が必要です。
寝たきりで身体を動かす機会が少ない場合や、薬の副作用や免疫力の低下によってもリスクは上がります。

さらに、85歳を超えると発症率が高まるとされており、加齢に伴い誰にでも起こりうる点に留意が必要です。
要介護度が上がるほど誤嚥のリスクは増える傾向にあり、介護施設では定期的な脳嚥下機能評価や口腔ケアを取り入れているケースもあります。

誤嚥性肺炎の原因と診断

誤嚥性肺炎の原因と診断

誤嚥性肺炎になる原因を教えてください

誤嚥性肺炎は、複数の要因が重なって起こります。代表的な原因のひとつは嚥下障害です。
加齢や脳卒中、認知症などにより飲み込みの機能が弱まると、食べ物や唾液が誤って気管に入り、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。

また、高齢になると咳反射も衰え、異物をうまく排出できず肺に残ってしまうことも、誤嚥性肺炎の原因のひとつです。

さらに、体力や免疫力の低下によって感染症への抵抗力が落ちることもリスク要因です。
加えて、口腔内の清掃不足や唾液の減少で細菌が繁殖しやすくなると、誤嚥した際に肺に細菌が入り込み炎症を起こしやすくなります。

こうした原因は互いに関連しており、例えば免疫力の低下が口腔環境の悪化を招き、結果的に誤嚥のリスクをさらに高めるといった悪循環につながる点が特徴です。

誤嚥性肺炎はどのように診断されますか?

誤嚥性肺炎の診断は、問診や身体診察など複数の検査を組み合わせて行われます。
まず食事中のむせや咳、発熱などの症状を丁寧に聞き取り、聴診で肺の音を確認します。そのうえで胸部X線撮影が行われ、肺に炎症があれば白い影として映し出されます。
採血では白血球やCRPの値を測定し、炎症の有無や程度を把握します。

さらに痰を調べる喀痰(かくたん)検査によって原因菌を特定し、効果的な抗菌薬の選択に役立てることができます。
必要に応じて胸部CTで詳細に炎症部位を確認し、嚥下(えんげ)造影や内視鏡による嚥下機能検査で誤嚥の有無や程度を診断します。

在宅介護における誤嚥性肺炎の予防

在宅介護における誤嚥性肺炎の予防

在宅介護中の誤嚥性肺炎予防のために食事や飲み物で気をつけることはありますか?

在宅介護で誤嚥性肺炎を防ぐためには、食事や飲み物に工夫を取り入れることが大切です。水やお茶のようなさらさらとした液体や、味噌汁のように固形物が混ざった料理はむせやすいため、とろみをつけたり形を変えたりして飲み込みやすくします。
海苔は佃煮に、葉物野菜は巻いて食べるなど調理の工夫もおすすめです。

また、食事の姿勢も重要で、顎を引き、両足を床にしっかりつけて椅子に深く腰かけることが望ましいです。姿勢保持が難しい場合は、クッションを背中や膝の下に入れることで安定しやすくなり、誤嚥防止に役立ちます。

さらに、一口の量を少なくし、ゆっくりと食べることも誤嚥予防につながります。介助する際は、飲み込んだことを確認してから次を勧めるなど、落ち着いた食事環境を整えることが求められます。
食後すぐに横にならず、30分程度は座ったまま過ごすことも誤嚥防止を期待できます。こうした日常の小さな工夫が、誤嚥性肺炎を防ぐ大きな支えになります。

誤嚥性肺炎を防ぐためにできるトレーニングを教えてください

誤嚥性肺炎を防ぐためには、日常的にお口やのど周りの筋力を鍛えることが大切です。加齢とともに舌や唇、頬の筋肉が弱まると、飲み込みがスムーズにできず誤嚥のリスクが高まります。

そのため、お口を大きく開けたりすぼめたり、頬を膨らませたりする口腔体操を習慣にすると、予防効果が期待できます。また、舌を前に突き出したり引っ込めたりする運動も嚥下機能の維持に役立ちます。
さらに、首をゆっくり動かして筋肉を伸ばすストレッチや、食事中に顎を少し引く姿勢を意識することも予防につながります。

お口やのど周りのトレーニングは短時間でも継続することが重要で、毎日の生活習慣に取り入れると効果が高まります。
訪問リハビリや歯科医師による嚥下指導を活用することで、より個別の状態に合わせた方法を実践できる点も在宅介護では有効です。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまで誤嚥性肺炎の症状や診断方法、予防のためにできる工夫までを見てきました。要点を整理すると以下のとおりです。

  • 誤嚥性肺炎は食べ物や唾液が気管に入り、細菌が肺で繁殖することで起こる。誤嚥性肺炎の初期症状は風邪に似ており、軽い変化として現れるため気付かれにくいことがある。食事中にむせたり、咳が長引いたりするなど、違和感が続く場合は、早めに病院へ受診する必要がある
  • 誤嚥性肺炎は、嚥下機能や咳き込む力が低下している方に起こりやすい病気。誤嚥性肺炎は、複数の要因が重なって起こり、代表的な原因のひとつには嚥下障害がある
  • 誤嚥性肺炎の診断は、問診や身体診察など複数の検査を組み合わせて行われる。誤嚥性肺炎を予防するためには、食べ物にとろみをつけたり形を変えたりして飲み込みやすくすることが重要。また、食事中はクッションを背中や膝の下に置き、安定した姿勢を保つことも大切

誤嚥性肺炎は重症化すると命に関わることもありますが、日常の小さな工夫でリスクを減らせます。ご本人や家族の健康を守るためにも、少しの異変を見逃さず、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師