介護で陰部洗浄を行うときのポイントや方法をわかりやすく解説します

介護における陰部洗浄は、清潔を守り、感染や皮膚トラブルを防ぐために欠かせないケアです。しかし、デリケートな部位であるため、正しい方法や羞恥心への配慮が必要です。
本記事では介護の陰部洗浄について以下の点を中心にご紹介します。
- 介護における陰部洗浄とは?
- 陰部洗浄の方法について
- 介護現場で陰部洗浄を行うときのポイント
介護の陰部洗浄について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
林 良典(医師)
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
目次 -INDEX-
介護における陰部洗浄について

陰部洗浄とは何ですか?
具体的には、尿や便による汚れを取り除き、皮膚のかぶれや臭い、感染のリスクを減らすことを目的とします。また、皮膚の状態(発赤、ただれなど)を観察する機会としても重要です。
陰部洗浄は、日常生活の一部として1日1回を目安に行うことが望ましいですが、汚れがひどい時などはそれ以上の頻度で対応する場合もあります。
陰部洗浄の目的を教えてください
主な目的は、まず、皮膚の清潔保持です。おむつでの排泄は、排泄物や汗、蒸れによって細菌が繁殖しやすくなるため、そうした汚染を取り除くことで、炎症やかぶれ、尿路感染症などのリスクを下げます。なかでも、膀胱留置カテーテルを挿入している方の場合は、尿路感染を防ぐためにも重要なケアです。
次に、 体調変化の早期発見です。陰部洗浄を行う際に、陰部や殿部の普段見えにくい部分を観察することで、発赤やただれ、腫れ、発疹、分泌物の異常などをいち早く発見し、症状の改善に努めたり、悪化しないように対応したりします。
さらに、清潔に保つことによってにおいの軽減や快適さ、尊厳の維持にもつながるため、生活の質(QOL)を守る目的もあります。
陰部洗浄の方法

陰部洗浄に必要なものを教えてください
- 使い捨て手袋
- 防水シーツ
- 陰洗用ボトル(38〜40度のぬるま湯を入れたもの)
- 洗浄剤(弱酸性の石鹸や泡タイプのもの)
- 清拭用タオルやペーパー
- 乾いたタオル
- 替えのおむつ
- 処理用のバケツ
上記のほか、必要に応じて、マスクやビニールエプロンなどを使用することもあります。
陰部洗浄を行う環境で注意することは何ですか?
まず大切なのは、羞恥心を守ることです。特に、陰部はデリケートな部分のため、カーテンやパーテーションで周囲から見えないようにする、必要のない部分はタオルで覆うといった工夫が欠かせません。
また、洗浄時にはお湯を使うため、快適な室温を保ち、身体が冷えないよう注意することも必要です。
さらに、道具を手の届く範囲に揃えておくことで、手早くスムーズにケアができます。このように、清潔さだけでなく安心して受けられる環境づくりを意識することが大切です。
陰部洗浄の方法を教えてください
①まずは、陰部洗浄を行う環境を整えます。物品の準備や羞恥心への配慮が大切です。
②ベッドを濡らさないように、おしりの下に防水シーツを敷き、おむつを外します。トイレットペーパーなどで排泄物などの大まかな汚れを優しく拭き取ります。女性の場合は、感染症予防のために前から後ろへ向けて拭くのがポイントです。
③次に、ぬるま湯で陰部を濡らし、石鹸を泡立てて優しく撫で洗いをします。洗浄の際に強く擦ってしまうと、スキントラブルにつながることがあるため注意しましょう。また、陰唇の間やしわになっている箇所も丁寧に洗います。
④最後に泡や石けん成分を残さないようにお湯でしっかりすすぎ、清拭用タオルや清潔なペーパーで押さえるように水気を拭き取ります。必要に応じて保湿を行います。
陰部洗浄中に皮膚の赤みやただれ、異臭などの異常がないか観察し、異変に気付いたら医療従事者へ相談することも大切です。
介護現場で陰部洗浄を行うときに知っておきたいこと

陰部洗浄はどのくらいの頻度で行うべきですか?
ただし、状況によっては頻度を増やす必要があります。例えば、失禁の回数が多い方、下痢が続いている方、排泄物で強く汚れてしまったときなどは、都度洗浄や追加のケアを行うことが望ましいです。
一方で、石鹸を使った洗浄を頻繁に行いすぎると、皮膚のバリア機能が傷つき、過度な刺激になることがあります。石けん使用は1日1回程度とし、それ以外はぬるま湯で優しく拭き取るなどで対応するのが望ましいです。
陰部洗浄におけるスキンケアについて教えてください
まず、洗浄の段階では、38〜40度のぬるま湯と、皮膚に優しい弱酸性の泡タイプやクリームタイプの洗浄剤を使用します。泡で優しく包み込むように洗うと摩擦が減り、皮膚への負担が抑えられます。
次に、洗浄後は水分をしっかり拭き取ったうえで、保湿剤を使います。保湿剤のタイプは軟膏やクリーム、ローションなどがあり、べたつきや伸びのよさ、使用感を考えて選ぶことが大切です。
さらに、皮膚の保護の観点から、皮膚被膜剤や撥水性の保護クリームなどを使って、排泄物や湿気、摩擦などの刺激から皮膚を守ることも重要です。
排便が何回も続く場合の対処法を教えてください
さらに、食事内容を見直して、消化がよく刺激の少ないものを選びましょう。おかゆやうどんなどを中心にして、脂っこいものや香辛料、冷たい食べ物などは控え、腸を休ませることが肝心です。
おむつ交換や清拭も頻繁に行い、肛門周りの皮膚を清潔に保つことでただれや臭い、感染を防ぎます。そして、必要に応じて医師に相談しましょう。
陰部洗浄では、どのように羞恥心に配慮すればよいですか?
また、繰り返しになりますが、環境への配慮も大切です。カーテンやパーテーションを使って周囲の視線を遮る、必要以上に露出しないようタオルや布で隠すなど、プライバシーを守る工夫をしましょう。
さらに、声のトーンや速さにも注意です。落ち着いて話し、大きな声を避け、相手の表情や反応を見ながら進めましょう。
編集部まとめ

ここまで介護の陰部洗浄についてお伝えしてきました。介護の陰部洗浄の要点をまとめると以下のとおりです。
- 介護における陰部洗浄とは、入浴が難しい方やおむつを使って生活している方の陰部を清潔に保つためのケアのこと
- 陰部洗浄は、必要物品を事前に準備し、手順に沿って陰部を洗浄し、おむつの交換を行い、皮膚トラブルにも留意しながら進められる
- 介護現場で陰部洗浄を行うときのポイントは、ケアを行う頻度は1日1回が目安、正しいスキンケアを取り入れる、羞恥心にも配慮する、排便が何回も続く場合は状態に応じて対応するなどが大切
陰部洗浄は、清潔を保ち健康を維持するために重要なケアです。羞恥心を与えないように手早く丁寧に行うことが大切です。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




