介護における口腔ケアの重要性|手順やコツ、注意点も併せて解説

高齢の方の介護において、食事や入浴と同じくらい重要なのが口腔ケアです。口腔ケアは単に歯を磨くだけではなく、誤嚥性肺炎の予防や全身の健康を保つためにも不可欠なケアのひとつです。
本記事では介護における口腔ケアについて以下の点を中心にご紹介します。
- 介護における口腔ケアの重要性
- 介護における口腔ケアのポイント
- 介護における口腔ケアの注意点
介護における口腔ケアについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
介護における口腔ケアの重要性

口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防につながりますか?
したがって、誤嚥性肺炎のリスクを低減するためにも、口腔ケアによって口腔内の細菌数を減らすことが重要です。
口腔ケアは口腔内のトラブル予防につながりますか?
また、歯周病菌は血流に乗って全身に広がり、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高めるとされています。そのため介護現場においても口腔ケアは必要不可欠です。
口腔ケアを日常的に行うことで、歯垢や細菌の蓄積を防ぎ、むし歯や歯周病の予防へとつながります。さらには口腔内の健康を守るだけでなく、全身の健康を維持するためにも大切です。
口腔ケアは口臭予防につながりますか?
さらにむし歯が進行すると、腐敗した組織からも臭いが発生します。また、ドライマウス(口腔内の乾燥)が進行すると唾液の分泌量が減り、細菌の繁殖を助長するため口臭が発生しやすくなります。
以上のような要因から、日々の口腔ケアによって舌や歯の清潔を保つことは細菌の増殖を抑え、口臭の予防につながります。
口腔ケアは認知機能の低下や低栄養の予防につながりますか?
口腔内の健康が悪化すると、食事が十分に摂れなくなり、栄養状態の低下を招いてしまうことがあります。
なかでも高齢の方の場合、噛む力が弱くなり、固い食べ物を避けてやわらかいものばかりを摂取する傾向があります。この状態が長期的に続くと栄養バランスが崩れ、生活習慣病のリスクが高まる可能性があります。
また、噛む動作が減るとお口の周りの筋力も低下し、これが認知機能の低下につながることがあります。
こうしたリスクを考慮し、口腔ケアによって歯や歯茎の健康を保ち、食事のバランスを維持することで、低栄養や認知症のリスクを減らすことが大切です。
健康的な食事をサポートすることは、体力や免疫力の維持にもつながり、全体的な健康を守る助けになります。
介護における口腔ケアの手順とコツ

口腔ケアの手順を教えてください
1. 準備と観察
口腔ケアを行う前に声かけを行い、意識や体調を確認しましょう。クッションや枕で姿勢を整え、口腔内の異常(口内炎、出血など)がないか観察します。
2. うがい
水または洗口液でお口をゆすぎます。義歯がある場合は外して行い、うがいが難しい場合は湿らせたガーゼで清拭します。
3. 歯・歯間・歯茎の清掃
自力で磨ける場合は、できない部分だけ介助します。介助が必要な場合は、唇や頬を広げ、歯ブラシやタフトブラシで一周丁寧に磨きましょう。寝たきりの場合は、ジェルと不織布で汚れを拭き取ります。
4. 舌と粘膜の清掃
舌苔や粘膜の汚れをスポンジブラシで優しく除去します。口腔内全体の血行を助け、マッサージ効果も期待できます。
5. 頬のストレッチ
スポンジブラシで頬の内側を上下に3~4回程度押し広げ、筋肉をほぐします。
6. 義歯の手入れ
義歯は専用ブラシで汚れを落とし、必要に応じて洗浄剤につけ置きします。就寝時は水に浸して保管しましょう。
7. 仕上げのうがいや保湿
最後にうがいで残存物を除去し、乾燥対策として口腔ジェルで保湿します。
これらの手順を毎日継続することで、口腔内の健康維持だけでなく、誤嚥性肺炎や口腔トラブルの予防にもつながります。
口腔ケア中の誤嚥を予防するコツはありますか?
ベッド上で行う場合は、少なくとも30度以上身体を起こし、枕を調整して顎を引きやすくするとより安定感が増します。
さらに、歯磨き粉や洗口液はできる限り少量にとどめ、うがいができない場合は湿らせたガーゼや口腔用ティッシュで清拭するようにしましょう。
また、お口の体操や唾液腺マッサージもおすすめです。お口の体操は開ける・閉じる、舌を前後に動かす、頬を膨らませる・すぼめる動作を行い、唾液腺マッサージは耳下腺や顎下腺、頬をさすり筋肉をほぐします。
以上のようなポイントを押さえて、より安全に配慮した口腔ケアを行いましょう。
入れ歯を装着している場合の口腔ケアのコツを教えてください
部分入れ歯の場合は、義歯を外して専用ブラシと洗浄剤で汚れを落としましょう。金属のクラスプ部分や、残存歯と接する部分は特に念入りに清掃することが大切です。総入れ歯の場合も、口腔粘膜に接する面を丁寧に磨き、磨き残しがないように注意しましょう。
就寝時は、入れ歯の変形を防ぐために、水に浸したケースで保管することがおすすめです。
また、義歯を装着した状態で歯茎や歯に痛みや違和感がある場合は、歯科医師に相談して調整してもらうことが重要です。
定期的な歯科チェックと正しい義歯管理を続けることで、口腔内を清潔に保ち、快適に入れ歯を使用することにつながります。
介護における口腔ケアの注意点

寝たきりの場合の口腔ケアでの注意点は何ですか?
また、誤嚥性肺炎のリスクを考慮し、口腔内の汚れや細菌をしっかり洗い流すことも重要です。先に述べたように、体位の確保もポイントで、上半身を起こすかベッドを30度程度ギャッジアップした姿勢で行いましょう。
口腔内の乾燥を防ぐためには、口腔ケア用ジェルやマッサージ、唾液分泌を促す訓練も役立ちます。介護者は過剰に手を出さず、本人の残存能力を活かした環境でケアを行いましょう。
認知症の家族に口腔ケアを行うときの注意点を教えてください
口腔ケアの拒否が強い場合は、痛みや不快感が原因で拒否している可能性もあるため、口腔内の状態を観察し、異常があれば早めに歯科医師に相談しましょう。
また、ケアを行う際の歯ブラシは小さくやわらかいものを使用し、お口のなかを傷つけないように優しく磨きます。集中力が続かないこともあるため、ケアの時間はできる限り短く、手順は簡潔にすることが望ましいです。
半身麻痺の方に口腔ケアを行うときの注意点を教えてください
姿勢の安定も重要で、枕やクッションを活用して傾かないよう工夫し、誤嚥を防ぐため顔を横に向けるなどの配慮を行います。車椅子ではフットレストを外して床に足をつけ、歯ブラシを持ちやすくするため柄を太くする、手にベルトで固定するなど補助具も活用しましょう。
うがいが難しい場合は、お口を閉じて指で唇を支えながら行うと、うがい中に口元からこぼれにくくなります。また、汚れは丁寧に拭き取るようにしましょう。
編集部まとめ

ここまで介護における口腔ケアについてお伝えしてきました。介護における口腔ケアの要点をまとめると以下のとおりです。
- 高齢の方は嚥下機能低下や口腔内細菌の影響により誤嚥性肺炎や全身疾患のリスクがあるため、口腔ケアを日常的に行うことで肺炎や歯周病の予防、口臭の抑制、栄養状態や認知機能の維持など、全身の健康を守る効果が期待できる
- 口腔ケアは歯磨きだけでなく、舌や粘膜、義歯まで含めた包括的な清掃が重要であり、姿勢の調整や唾液腺マッサージ、お口の体操なども組み合わせることがポイントである
- 寝たきりの方や認知症、半身麻痺の方は、姿勢の保持や口腔内観察、力加減の調整が不可欠であり、必要に応じて歯科医師に相談することが大切である
以上のような口腔ケアのポイントやコツを押さえて、介護におけるお口の衛生管理や健康を保つことにつなげましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



