頑張りすぎない介護とは?無理なく続けるための考え方や負担を減らす方法を解説

家族の介護が始まると、「自分が頑張らないと」とつい気負ってしまうものです。しかし、介護を一人で抱え込みすぎると、介護者自身の心身が限界を迎え、共倒れになってしまうことがあります。大切なのは、無理なく長く続けられる介護のかたちを見つけることです。この記事では、頑張りすぎない介護の考え方や、負担を減らすための具体的な方法を解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
頑張りすぎない介護とは

頑張りすぎない介護とは、介護者の生活を守りながら、なるべく無理なく、長く続けられるような介護のことです。
介護が始まったばかりの頃は、気力や体力が十分残っているのでつい無理をしてしまいがちです。完璧にこなそう思うと介護者の生活が成り立たなくなり、共倒れの原因になってしまいます。介護者も介護を受ける方もなるべく笑顔で過ごせるように、頑張りすぎない介護について考えてみましょう。
“頑張りすぎない介護”の考え方
“頑張りすぎない介護”とは、何もしないことではなく、できるだけ負担が少なく、長続きするような介護です。
家族介護者が介護によって感じている負担度合いの調査結果によると、精神的、身体的、経済的な負担を感じている介護者は4~6割強で、日常的な疲労を感じている介護者は4割程度、という調査結果があります。共倒れを避けるため、なるべく早期に介護者の負担を積極的に減らす仕組みを取り入れることが大切です。
介護は短期間で終わるものではなく、数年、場合によっては十年以上続く場合もあります。はじめから全力で取り組みすぎると、途中で燃え尽きてしまいます。長い目で見て、無理のないペースを保つような介護を実現する方法を考えましょう。
参照:『市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル』(厚生労働省)
介護を一人で抱え込まないことの大切さ
介護を一人で抱え込まずに関わる方を増やすことは、介護者と介護を受ける方のどちらにとっても大切です。
自分が頑張らなければ、と介護を一人で抱え込んでしまうと、介護者自身の心身や経済的な負担が大きくなりがちです。介護を受ける方の見守りや介助の必要があるため、仕事を辞める、家に引きこもりの状態になってしまう、自分の時間が持てない、などの状態は、介護者自身にとって大きな負担です。
また、介護に関わる方が増えることは、万が一のときのリスク分散にもなります。自分以外に介護する方が誰もいなくなる、といった状態を避けるための対策も大切です。日頃から状況を共有して複数の方が介護の実態を把握するほか、積極的に介護サービスなどの支援を活用しましょう。
介護を頑張りすぎてしまう理由

介護を一人で抱え込み頑張りすぎてしまうのは、昔からの価値観や罪悪感によるものだと考えられます。具体的に理由を考えてみましょう。
自分たちでやるべきだと考えてしまう
近年は意識が変化している傾向があるものの、これまでは、「歳を取った親の介護は子どもの責任だ」といった一般論や、「家族の介護は自分たちでやるべきだ」といった価値観が強い傾向にありました。また、介護を受ける方との関係の悪化の心配や介助を行わない罪悪感、世間の目なども自宅介護を促す要因です。複数の心理的要因によって、外部に頼らず自分たちで介護した方がよいと考えてしまいます。
しかし、介護保険制度は社会全体で介護を支えるために設けられたものです。専門サービスの活用は、決して家族の責任を放棄するものではありません。制度の積極的な利用は、むしろ本人のためになる、ととらえ直しましょう。
周囲に頼ることに罪悪感を感じる
家族以外に介護を頼ることに罪悪感を覚えるため、介護保険サービスや福祉制度の利用をためらうことがあります。
家族を愛しているから自分で全部やりたい、という介護者の気持ちが強すぎるのが主な原因として考えられます。または、家族の介護を他人に任せることで、世間から親不孝者だと攻められるのを怖がる気持ちが生まれることも理由の1つでしょう。
介護者や介護を受ける方、世間の持つ考え方や価値観が、周囲を頼った介護を踏みとどまらせてしまう傾向にあります。
理想の介護を目指してしまう
すべての介護を完璧に行って皆が笑顔で過ごす、などの理想の介護を目指すと、介護者の負担が増大します。自分が思い描く理想の介護と実際に行う介護に生じるギャップは、介護者のストレスの原因です。介護を負担なく行える自分、という理想像と矛盾して、なかなか外部サービスの利用に踏み切れないこともあるでしょう。
本当の理想の介護とは、すべてを自分たちで解決することではありません。介護者と介護を受ける方、どちらの生活や人生の質も大事にした長続きする介護が理想の介護です。
介護サービスの利用に慣れていない
手続きの複雑さや経済的な負担の不安があると、介護サービスの利用をためらってしまいます。サービスの利用に必要な要介護認定の申請法やケアプラン作成の流れがわからない、などの情報不足により、サービスが受けられることを知らなかったり、面倒だから、とあきらめてしまったりする原因です。
どうしたらいいかわからない場合、お住まいの地域包括支援センターへの相談から始めましょう。要介護認定の申請方法やサービスの種類など、専門のスタッフが一から丁寧に説明してくれます。
頑張りすぎない介護を実現するためのポイント

頑張りすぎない介護を実現するためには、介護者の負担を軽減する工夫が大切です。公的なサービスを利用する、複数人で担当を決める、など無理なく実現する方法を考えましょう。
介護サービスを上手に利用する
介護サービスは積極的に利用しましょう。要介護認定を受けると、公的な介護保険サービスが利用できます。介護のプロの力を借りて、介護を受ける方に適切な介護を行うための仕組みです。自宅に来てもらう訪問介護、介護施設に通う通所介護などのサービスがあるので、担当のケアマネジャーと相談して適した方法を選びましょう。
家族で役割を分担する
特定の誰かが介護を抱え込むのではなく、家族全体で分担しましょう。役割分担の際はできることを基準に考えると無理なく続けやすい体制がとれます。遠方に住む家族なら金銭的なサポートや電話での見守り、近くにいる家族なら直接の介助、のように距離や生活状況に応じた関わり方を検討しましょう。また、定期的に介護の課題や今後の方針を話し合っておくのも大切です。
休息や自分の時間を確保する
介護者の生活の維持は、よい介護を行うにあたって欠かせません。家族と交代して時間を確保するほか、レスパイトケアと呼ばれる介護サービスも利用できます。介護者の休息や息抜きのためのサービスで、一時的に介護から離れて休めるような支援です。介護者の生活や心身の健康も大切に考えましょう。
介護の負担を減らすために利用できるサービス
介護の負担を減らすため、レスパイトケアのほかにもさまざまなサービスがあります。以下に、代表的なものを挙げます。
- 通所介護(デイサービス)
- 短期入所生活介護(レスパイト)
- 訪問介護
- 訪問リハビリテーション
- 訪問入浴介護
適したサービスは場合によって異なるため、実際に利用するサービスはケアマネ―ジャーと相談しながら決定します。
介護サービスの利用は、介護を受ける方の生活の幅を広げることにもつながります。介護施設では同世代の方と交流でき、専門的なリハビリの機会にもなる、などの介護サービス利用者本人のメリットにも目を向けてみましょう。
介護を頑張りすぎているときのサイン

介護を頑張りすぎると、介護うつの状態になる可能性が高くなってしまいます。もし以下のような状態になっているなら、知らないうちに疲れている可能性があります。心あたりがないかチェックして、早めに対処しましょう。
イライラすること、怒ることが増えている
普段は気にしないような些細なことに対しても感情が動かされ、コントロールしにくくなることがあります。穏やかに対応できるはずの場面でつい声を荒げてしまったり、被介護者に気持ちをぶつけやすくなったりしていないでしょうか。イライラや怒りの感情は、介護を受ける方への態度にも影響しやすく、関係性の悪化につながることもあります。感情のコントロールが難しくなってきたと感じたら、無理しすぎていないか振り返ってみてください。
眠れない
うつ状態の症状の1つとして、不眠や過眠などの睡眠障害が挙げられます。疲れているはずなのに眠れない、夜中に何度も目が覚めてしまう、早朝に起きてしまう、などの自覚があれば注意しましょう。睡眠不足が続くと、判断力や集中力が低下し、介護のミスや事故のリスクも発生します。
食欲が低下している
食欲の異常もうつ状態の症状です。好きなものなのに食べたくない、何を食べてもおいしくない、食べることが面倒になった、など食欲の変化はないでしょうか。栄養不足になると体力が落ち、体調不良につながることがあります。簡単に食べられるものや好きなものを用意して、意識的に食事の時間を確保するようにしましょう。
わけもなく涙が出る
思いあたる理由もないのに涙が出てくるような、感情が抑えられなくなる状態は、うつ状態の心の症状が考えられます。ほかに無気力感や憂鬱な気分を感じるなどの精神的な変化は、心が不調を訴えているサインです。
倦怠感や体調不良を感じる日が多い
うつ状態では、身体にも症状が現れます。激しい運動や長時間労働をしているわけではないのに身体がすぐに疲れてしまい、いつもだるさを感じることはないでしょうか。ただ疲れているのではなく、うつ状態の可能性があります。
介護でつらいと感じたときの対処法

介護でつらさを感じたときは、置かれた状況や気持ちを誰かに共有してみてください。専門家への相談や同じ立場の仲間との交流を活用しながら、自分自身の生活も大切にした介護を目指しましょう。
一人で抱え込まず相談する
介護でつらさを感じたら、家族や行政などに相談しましょう。できるだけ介護を分担し、心身にかかる負担を減らすようにします。行政では、地域包括支援センターを相談窓口として活用しましょう。社会福祉士やケアマネジャーなどの専門家に介護に関わることを相談でき、相談内容に応じて適切な支援が受けられます。介護を受ける方が通院中の場合、医療機関の医療相談室や患者支援センターにも相談可能です。
もし、介護で心身が疲れてしまったり、つらさを感じたりしたときは、医療機関の受診も視野に入れてみてください。助けてくれる方は周りに複数存在しています。遠慮せずに頼りましょう。
同じ立場の人と情報交換する
同じ介護経験を持つ方との交流も、心の支えになるでしょう。これはピアサポートと呼ばれる取り組みです。同じ立場の方と情報交換できる、同じ経験をした方にしか理解できない悩みや苦しさを共感してもらえる、などのメリットがあります。自分だけではなく仲間がいる、と感じて気持ちが和らぐでしょう。
ケアマネジャーや地域包括支援センターのスタッフから、開催されるピアサポートの情報を得られます。興味を持ったら、ぜひ訪ねてみてください。介護者同士のつながりは、具体的な介護のコツや地域のサービス情報を得られる場にもなるでしょう。悩みを話すだけでなく、ほかの介護者の経験から学べることも多くあります。
介護と自分の生活のバランスを考える
長く介護を続けるためには、介護者自身の生活を犠牲にしすぎないことが大切です。介護離職される方もいますが、社会とのつながりや安定した収入の確保は、経済的な心配やメンタルヘルスにもいい影響があります。
自分自身の生活を守ることは、結果的に介護される方にとってもいい影響を与えます。自分の生活と介護が両立できるように、利用できるサービスや制度は積極的に利用しましょう。
まとめ

頑張りすぎない介護は、介護する方とされる方どちらにとってもよい結果をもたらします。従来の価値観や世間の目が気になってしまうかもしれませんが、共倒れを避けるためにも積極的に動きましょう。結果的に双方が笑顔の時間が増え、負担が少なく長期的な介護につながります。
参考文献
- 『仕事と介護 両立のポイント 詳細版』(厚生労働省)
- 『市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル』(厚生労働省)
- 『日本における介護の脱家族化志向の規定要因 :NFRJ18データを用いた分析』(大阪公立大学紀要20)
- 『認知症高齢者の施設入所を決断するまでの家族介護者の心理的変化』(科学研究費補助金研究成果報告書)
- 『家族介護者の介護力構造因子における関連要因と介護負担感への影響』(Journal of Japan Society of Nursing Research)
- 『要介護高齢者を介護する家族の負担感とその関連要因:福岡県京築地区における介護保険制度発足前後の比較』(Journal of the National Institute of Public Health)
『要介護者とその家族のデイサービス利用に対する抵抗感の研究』(老年学雑誌)- 『短期入所生活介護におけるレスパイトケアのあり方及び在宅生活の継続に資するサービス提供の在り方に関する調査研究事業報告書』(日本介護支援専門員協会)
- 『介護保険の解説 -サービス編 -』(厚生労働省)
- 『こころもメンテしよう うつ病 うつ病の特徴』(厚生労働省)
- 『健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ 記事・用語辞典メニュー 体の不調はうつ病でも現れます。かかりつけ医へ相談してみましょう』(厚生労働省)
- 『在宅要介護老人の介護者の世間体とサービス利用および介護負担感に関する研究』(日本老年看護学会誌)



