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介護用歩行器の種類や選び方、利用するメリットと注意点を解説!

 公開日:2026/04/16
介護用歩行器の種類や選び方、利用するメリットと注意点を解説!

高齢の方やご家族のなかには、歩行への不安や転倒のリスクについて悩んでいる方が少なくありません。加齢や病気の影響で足腰の筋力が低下すると、自力での歩行が不安定になり、転倒による骨折などの大きなけがにつながることがあります。住み慣れた自宅で安全に暮らし続けるためには、その方の状態に合った歩行補助具を早めに検討することが大切です。歩行を支える用具にはいくつかの種類がありますが、なかでも歩行器は、身体をしっかり支えながら移動を助ける福祉用具です。

本記事では、介護用歩行器の役割や種類、選び方、利用による利点、使用時の注意点に加えて、制度や補助の仕組みを解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科

介護用歩行器とは

介護用歩行器とは

介護用歩行器は、自力での歩行に不安がある方が、より安全に移動できるように作られた福祉用具です。杖では支えが足りないけれど、車椅子を使うほどではない場面でも役立ちます。ここでは、介護用歩行器の役割と、ほかの移動補助具との違いを解説します。

介護用歩行器の役割

介護用歩行器の大きな役割は、歩行が不安定な方の移動を支え、転倒を防ぎながら歩く機会を保つことです。左右のフレームで身体を囲むような形になっているため、手や腕で身体を支えつつ、安定した姿勢で前に進みやすくなります。下肢にかかる負担を減らせるため、筋力が落ちている方や関節の痛みがある方でも歩きやすくなることがあります。また、歩行器は移動を助けるだけではありません。自分の足で歩く機会を保つことで、下肢筋力や立ち上がる力の低下をゆるやかにし、日常生活動作の維持にも役立ちます。

杖や車椅子、シルバーカーと歩行器の違い

歩行を助ける用具には、杖や車椅子、シルバーカーなどがありますが、それぞれ目的や対象となる方の状態が異なります。杖は、ある程度のバランス能力や歩行能力が保たれている方に向いています。一方、歩行器は複数の支持点で身体を支えるため、杖より高い安定性が得られます。

車椅子は、歩行そのものが大きく難しくなった方が座って移動するための福祉用具です。これに対して歩行器は、自分の足で歩く力がある程度残っている方が、その力を活かしながら移動するために用います。

シルバーカーは荷物運びや休憩を目的に使うことが多く、体重をしっかり預けて歩く構造ではありません。歩行器は、転倒を防ぎながら歩行を支える点で、ほかの用具とは役割が異なります。

介護用歩行器が必要になるタイミング

介護用歩行器が必要になるタイミング

介護用歩行器が必要になるタイミングとしては、何もつかまらずに歩くことに不安が出てきたときです。例えば、加齢による筋力低下で歩幅が小さくなった、少しの段差でつまずきやすくなった、立ち上がった直後にふらつくといった変化は、歩行機能が低下してきたサインです。ご本人は歩けるつもりでも、ご家族が見ていて危うさを感じる場合には、早めに歩行補助具を検討したほうがよいことがあります。

また、脳卒中の後遺症で片麻痺がある方、骨折や手術の後に歩行訓練を始める方、膝や股関節の病気で痛みがある方も、歩行器が役立ちます。杖を使っていた方も、杖だけでは支えが足りず姿勢が不安定になってきた場合には、より安定性の高い歩行器への切り替えが考えられます。

介護用歩行器の主な種類

介護用歩行器の主な種類

介護用歩行器にはいくつかの種類があり、使う方の筋力やバランス、認知機能、使用場所によって向いている機種が異なります。見た目が似ていても、操作のしかたや必要な身体機能には違いがあります。

固定型歩行器

固定型歩行器は、4本の脚とフレームが固定された形の歩行器です。利用する方は歩行器全体を持ち上げて前へ置き、その中に身体を移すようにして歩きます。脚先にはゴムがついているため、床に接したときの安定性が高く、しっかり体重を支えやすい点が特徴です。両足に十分な体重をかけにくい方や、ゆっくり一歩ずつ歩きたい方に向いています。一方で、歩行器を持ち上げるための上半身の力と、その際に姿勢を保つ力が必要です。

交互型歩行器

交互型歩行器は、左右のフレームを別々に前に出せる構造になっています。歩行器全体を持ち上げる必要がなく、左右を交互に動かしながら前に進めるため、固定型より操作しやすいと感じる方もいます。常に歩行器の一部が床についている形になりやすく、移動中の安定性を保ちやすい点も利点です。上半身の筋力がやや弱い方でも使いやすいことがありますが、左右の腕を交互に動かすための理解力や関節の動きは必要です。

キャスター付き歩行器

キャスター付き歩行器は、脚部に車輪がついたタイプで、歩行車と呼ばれることもあります。持ち上げる必要がなく、前へ押しながら進めるため、よりなめらかな移動がしやすい点が特徴です。屋外でも使いやすい製品があり、ブレーキや座面、荷物入れがついたものもあります。その一方で、車輪があるぶん前に進みやすく、使う方の歩く速さより速く動くと転倒につながることがあります。ブレーキを適切に使えるか、歩く速さを自分で調整できるかが重要です。

歩行器を利用するメリット

歩行器を利用するメリット

歩行器の導入は、移動しやすくするだけでなく、生活全体によい影響をもたらします。転倒を減らすことや活動量を保つこと、ご家族の介助負担を減らすことなどが主なメリットです。

転倒リスクの軽減

歩行器の大きなメリットは、歩行時の安定性が高まり、転倒しにくくなることです。高齢の方にとって転倒は、骨折や頭部打撲の原因になるだけでなく、その後の入院や寝たきりのきっかけにもなります。歩行器は床に接する部分が広く、身体を囲むように支えるため、ふらつきがある方でも姿勢を保ちやすいです。また、手や腕でも体重を支えられるため、足腰にかかる負担が分散されます。膝や股関節の痛みがある方や片足に十分な体重をかけにくい方にとっても、歩きやすさにつながります。

活動量の維持と筋力の低下予防

歩行に自信がなくなると、トイレや食事の場面でも移動を避けるようになり、椅子やベッドで過ごす時間が長くなりやすいです。活動量の低下は、下肢筋力の低下や体力低下につながります。歩行器を使って安全に移動できるようになると、生活のなかで歩く回数を維持することにつながります。

介護側の負担軽減

歩行器の導入は、ご家族や介護者の負担軽減にもつながります。歩行が不安定な方を支えながら移動介助を行うと、介助する側にも力が必要で、腰や肩への負担がかかります。常に転倒しないか見守り続ける精神的な負担も小さくありません。

歩行器を使うことで、ご本人が自分で歩ける範囲が広がれば、介助者は全面的に身体を支えなくてもよくなる場合があります。見守り中心で対応できる場面が増えると、介護の負担感は大きく変わります。

介護用歩行器の選び方

介護用歩行器の選び方

歩行器は、身体機能に合わない機種を使うと、かえってふらつきや転倒の原因になることがあります。安全に使い続けるためには、使う方の状態や使う場所、安全機能、専門家の関わりという視点が大切です。

利用する方の状態に合わせる

まず確認したいことは、利用する方の身体機能です。歩行器は両手で支えることが基本となるため、手や腕をある程度使えることが必要です。立った状態を保てるか、歩行器を前に出す操作ができるか、ブレーキを握れるかなども機種選びに関わります。片麻痺の有無や痛みの部位、歩く速さ、認知機能も判断材料です。また、高さが合っていない歩行器は、前かがみの姿勢や肩への負担を招きます。実際に立って握った状態で、高さが合っているかを確認することが欠かせません。

利用場所で選ぶ

屋内中心で使うのか、屋外でも使うのかによって、向いている歩行器は変わります。屋内では、廊下やトイレ前の幅、家具の配置、方向転換のしやすさが大切です。一方、屋外では、路面の凸凹や傾斜、段差への対応が必要になるため、車輪の大きさや安定性が重要です。実際の生活環境に合っているかをみるには、自宅で試すとよいでしょう。玄関や廊下、寝室、トイレなどよく使う場所を想定して確認することが大切です。

安全性の高さを考慮する

安全機能の確認も欠かせません。キャスター付きの歩行器は、ブレーキが握りやすいか、止めたいときにしっかり止まるかを確認します。固定型や交互型は、脚先のゴムが滑りにくいか、フレームのぐらつきがないかを確認します。また、使う方の認知機能によっては、操作が複雑なものは向きません。使う方が日常のなかで無理なく扱えることが、安全性につながります。

専門家に相談する

歩行器選びは、医師や理学療法士、作業療法士、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員などに相談することが大切です。歩行能力や住環境を踏まえたうえで機種を選ぶと、生活に合った導入につながりやすくなります。福祉用具専門相談員は、機種の提案だけでなく、高さ調整や安全な使い方の確認も行います。導入後の見直しまで含めて関わってもらうことで、より使いやすい状態を保ちやすくなります。

介護用歩行器を使用する際の注意点

介護用歩行器を使用する際の注意点

歩行器は移動を支える福祉用具ですが、使い方によっては転倒につながることがあります。安全に使うためには、急がず、歩行器を身体の近くで操作することが大切です。

特に、歩行器を前に出しすぎる、急に方向を変える、段差や敷居を無理に越えるといった動作は、バランスを崩す原因になります。歩くときは小さめの歩幅でゆっくり進み、方向を変えるときもあわてずに行うことが重要です。また、屋外では坂道やぬれた地面、凸凹した道に気を付け、室内では電気コードや滑りやすい床、家具まわりの狭い場所にも注意が必要です。

さらに、荷物を多くかけたまま使う、片手で操作する、履き慣れない靴で歩くといった使い方も不安定さにつながります。体調がすぐれない日やふらつきが強い日は無理をせず、必要に応じてご家族や介護者に見守りを頼みながら使うようにしましょう。

介護用歩行器を利用する際に受けられる補助

介護用歩行器を利用する際に受けられる補助

歩行器の導入の際は、介護保険を活用できる場合があります。費用面の負担が気になるご家庭でも、制度を使うことで取り入れやすくなることがあります。ここでは、レンタルと購入に分けて仕組みを解説します。

レンタルする際の補助

介護保険は、歩行器は原則として福祉用具貸与の対象です。要支援1から要介護5まで、介護認定を受けていれば利用対象です。自己負担は原則1割で、所得に応じて2割または3割と変動します。状態の変化に合わせて機種を見直しやすい点は、レンタルの利点です。レンタルは、福祉用具専門相談員によるモニタリングや点検を受けられることがあり、メンテナンスの面でも使いやすい仕組みです。

購入する際の補助

近年は、一部の歩行器について貸与と販売の選択制が導入されています。固定式または交互式で、脚部がすべて杖先ゴムなどの形になっているものは、条件を満たせば特定福祉用具販売の対象になる場合があります。この場合も、自己負担は原則1割から3割です。

長期間にわたり同じ歩行器を使う見込みがある方は、購入のほうが費用面で合うこともあります。ただし、状態が変わると使いにくくなる可能性もあるため、購入かレンタルかは、医師やリハビリテーションに関わる職種、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員と相談しながら決めましょう。

まとめ

まとめ

介護用歩行器は、歩行に不安がある方の移動を支え、転倒を防ぎやすくする福祉用具です。自分の足で歩く機会を持ち続けやすくなるため、活動量の維持や身体機能の低下をゆるやかにすることにもつながります。ご本人が移動しやすくなることで、日常生活の安心感が高まり、ご家族の介助負担を軽くしやすい点も利点です。

一方で、歩行器は種類によって使い方や向いている方が異なります。身体機能や生活環境に合わないものは、使いにくさや転倒の原因につながることもあります。そのため、医師やリハビリテーションに関わる職種、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員に相談しながら、その方の状態や生活環境に合ったものを選ぶことが大切です。

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