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身体介護とは?サービス内容や生活援助との違い、利用できる対象者を解説!

 公開日:2026/04/10
身体介護とは?サービス内容や生活援助との違い、利用できる対象者を解説!

在宅で療養される患者さんやご家族にとって、介護は身近で課題になりやすいです。住み慣れた自宅で生活を続けたいと考える方は少なくありませんが、加齢や病気によって日常生活の基本的な動作が難しくなると、ご家族の介護負担は想像以上に大きくなります。すべてをご家族だけで担おうとして無理を重ねた結果、介護疲れから体調を崩してしまうこともあります。そこで役立つのが、介護保険制度を活用した専門職による支援です。なかでも、専門のスタッフが自宅を訪問し、利用者さんの身体に直接触れて介助を行う身体介護は、在宅介護を支える大切な柱の一つです。

本記事では、身体介護について、具体的なサービス内容や生活援助との違い、利用条件などを解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科

身体介護とはどのような介護サービス?

身体介護とはどのような介護サービス?

介護保険で利用できる訪問介護サービスは、大きく身体介護、生活援助、通院等乗降介助の3つに分けられます。そのなかで身体介護は、利用者さんの身体に直接触れて行う介助を中心としたサービスです。ここでは、身体介護の基本的な考え方や、どのような場面で必要となるのか、さらに誰が担うのかをみていきます。

身体介護の定義

身体介護とは、利用者さんの自宅に専門スタッフが訪問し、身体に直接接して行う介助サービスです。入浴や排泄、食事など、日々の生活に欠かせない動作を支えます。また、単なる身の回りのお世話にとどまらず、利用者さんの日常生活動作を保ち、生活の質の維持や自立支援、重度化の予防をめざす役割もあります。利用者さんと一緒に動作を行いながら安全を見守る援助や、心身の障害や病気に応じたケアも、身体介護に含まれます。

身体介護が必要になる主な状況

身体介護が必要になる主な状況は、加齢に伴う筋力低下や病気の後遺症、認知症の進行などによって、一人で日常生活の基本動作を安全に行いにくくなったときです。例えば、足腰が弱ってベッドから起き上がり車椅子へ移ることが難しい場合や、入浴時に転倒するおそれが高い場合、飲み込みの機能が低下して食事介助が必要な場合などが挙げられます。さらに、ご家族が日中不在で、トイレへの移動や服薬に不安がある場合にも、身体介護を取り入れることで自宅での生活を続けやすくなります。

身体介護の担い手

身体介護を担うのは、訪問介護員と呼ばれる専門スタッフです。利用者さんの身体に直接触れる介助を行うため、従事するには介護福祉士や実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者など一定の資格要件が求められます。これらのスタッフは、高齢の方の心身の特性や病気に関する知識、身体的負担の少ない介助技術を学んだ介護の専門家です。ご家族が自己流で介助を行うと、介助する側が腰を痛めたり、利用者さんが不安定になったりすることがあります。その点、専門スタッフは適切な方法で支えるため、安全性を高めながら苦痛の少ない介助につなげやすいです。

身体介護で受けられる具体的なサービス内容

身体介護で受けられる具体的なサービス内容

身体介護は、日常生活のさまざまな場面で専門的な支援を受けられます。どのような介助があるのかを知っておくと、自宅での生活のどの部分を任せられるのかがみえやすくなります。ここでは、代表的な身体介護の内容を解説します。

食事介助

食事介助は、食べやすい姿勢を整えたり、食べ物を細かくしたりやわらかくしたりして食べやすくする支援を行います。誤嚥の危険を減らすためには、姿勢や一口量、食べる速さへの配慮が大切です。また、飲み込みが難しい方に対して、あらかじめ形態を工夫した食事を準備するなど、状態に合わせた対応も身体介護に含まれることがあります。

排泄介助

排泄介助には、トイレまでの移動の付き添いや衣服の上げ下げ、排泄後の後始末、おむつ交換などが含まれます。ポータブルトイレへの移乗や失禁をした際の対応、陰部の清潔を保つケアも大切な支援です。排泄は生活のなかでも羞恥心に関わりやすい場面であり、利用者さんの尊厳に配慮しながら行うことが欠かせません。皮膚トラブルや感染を防ぐうえでも、適切で衛生的な介助が必要です。

入浴・清潔保持の介助

入浴介助は、浴室への移動や衣服の着脱、洗身や洗髪、浴槽への出入りの支援などを行います。体調などの理由で入浴が難しい日には、温かいタオルで身体を拭く清拭や、手浴、足浴などで清潔を保ちます。また、洗面や歯みがき、爪切り、ひげそり、整髪といった整容面の支援も身体介護の範囲です。清潔を保つことは、感染予防だけでなく、気分よく過ごすことにもつながります。

移動・移乗の介助

ベッドから車椅子へ移るときの介助や、室内や廊下を移動する際の付き添い歩行も身体介護の一つです。転倒を防ぐうえで大切な支援であり、利用者さんの残っている力を活かしながら行うことが求められます。さらに、通院や外出の準備、交通機関への乗り降りの支援、受診時の手続きの補助などが位置づけられる場合もあります。移動を支えることは、生活範囲を保つことにもつながります。

着替えや体位変換の介助

着替えや体位変換の介助は、麻痺や関節の動かしにくさがある方に対して、無理のない方法で衣服の着脱を支えます。また、ベッドで過ごす時間が長い方には、床ずれを防ぐために姿勢を変える支援も行います。例えば、仰向けから横向きへ向きを変える介助は、同じ部分に負担がかかり続けるのを防ぎます。さらに、起床時や就寝時の動作の介助、あらかじめ用意された薬を飲む際の見守りなどが含まれることもあります。

身体介護と生活援助との違い

身体介護と生活援助との違い

訪問介護サービスを利用する際には、身体介護と生活援助の区分を理解しておくことが大切です。両者は内容だけでなく、利用条件や介護保険上の扱いにも違いがあります。

生活援助とは

生活援助とは、利用者さんが一人暮らしである場合や、同居しているご家族が病気や障害などの理由で家事を担いにくい場合に提供されるサービスです。身体介護が利用者さんの身体に直接触れて行うケアであるのに対し、生活援助は日常生活を支える家事面の支援という位置づけです。具体的には、居室やトイレの掃除、衣類の洗濯、一般的な食材を用いた調理、配膳や下膳、日用品の買い物、薬の受け取りなどが含まれます。ただし、生活援助はあくまで利用者さん本人の生活に直接必要な支援に限られます。同居家族の部屋の掃除やご家族分の調理、大掃除、ペットの世話などは介護保険の対象外です。

身体介護と生活援助の違い

身体介護と生活援助を分ける大きなポイントは、利用者さんの身体に直接触れる介助があるかどうか、また専門的な知識や配慮が必要かどうかです。例えば調理でみると、一般的な食事を作ることは生活援助にあたりますが、飲み込みにくさがある方に合わせて食事の形態を調整する場合は、専門的な配慮が必要なため身体介護に含まれることがあります。また、掃除や洗濯は通常は生活援助ですが、自立支援の一環として訪問介護員が安全を見守りながら本人と一緒に行う場合は、身体介護として扱われることがあります。さらに、身体介護は同居家族の有無にかかわらず利用しやすい一方で、生活援助は原則として家事を担える方がいない場合に限られる点も違いです。

身体介護を活用するメリットと注意点

身体介護を活用するメリットと注意点

介護保険サービスを自宅に取り入れることに、ほかの方が家に入ることへの抵抗を感じる場合もあります。しかし、身体介護を上手に活用することで、利用者さん本人にもご家族にもよい点があります。一方で、公的な制度である以上、知っておきたいルールや限界もあります。

身体介護を利用するメリット

身体介護の利点は、介護の知識と技術をもつスタッフによるケアを受けられることです。ご家族が無理な姿勢で入浴介助や移乗介助を行うと、転倒や腰痛などにつながることがあります。専門スタッフが関わることで、こうした事故の危険を減らし、利用者さんも苦痛の少ない形で介助を受けやすくなります。また、ご家族の身体的、精神的な負担が軽くなり、休息や仕事の時間を確保しやすくなることも大きな利点です。

身体介護利用時の注意点

身体介護を利用する際に知っておきたい注意点は、訪問介護員は医療職ではないため、医療行為は原則として行えないという点です。例えば、インスリン注射や摘便、床ずれに対する医療的処置などは実施できません。一方で、体温測定や血圧測定、あらかじめ準備された薬を飲む際の介助など、医療行為に当たらない範囲の支援は可能です。日常的に医療的ケアが必要な場合には、訪問看護などの医療系サービスを組み合わせることが大切です。

身体介護を利用できる対象者と利用条件

身体介護を利用できる対象者と利用条件

身体介護をはじめとする介護保険サービスは、年齢だけで自動的に使えるものではありません。実際に利用するには、市区町村から介護が必要な状態であると認定を受ける必要があります。

利用対象となる要介護度

介護保険サービスを利用できる方は、原則として65歳以上で、日常生活に介護が必要と認められた方です。また、40歳から64歳までの方でも、がん末期や関節リウマチなど、加齢に伴う特定疾病が原因で介護が必要になった場合は対象です。市区町村への申請後、審査を経て要支援1・2、または要介護1から5までの区分が決まります。このうち、訪問介護員による身体介護を利用するのは、原則として要介護1から5に認定された方です。

訪問介護サービスの利用条件と申請手続き

訪問介護サービスを利用するには、まず市区町村の窓口や地域包括支援センターで要介護認定を申請します。申請後は、調査員による訪問調査と主治医意見書をもとに審査が行われ、要介護度が決まります。認定結果が出た後は、ケアマネジャーと相談しながらケアプランを作成し、必要なサービス内容や利用回数を調整します。その後、訪問介護事業所と契約を結ぶことで、身体介護を利用できるようになります。

身体介護の利用時間と費用の目安

身体介護の利用時間と費用の目安

介護保険サービスを利用する際、費用や利用時間は気になる点です。身体介護は、提供時間に応じて介護報酬上の区分が決まっています。

身体介護の提供時間の区分

身体介護の料金は、訪問介護員が実際に滞在した時間をそのまま反映するのではなく、ケアプランに位置づけられた標準的な提供時間に基づいて決まります。国の基準としては、20分未満、20分以上30分未満、30分以上1時間未満、1時間以上1時間30分未満といった区分があります。それ以降は30分増えるごとに加算される仕組みです。おむつ交換や服薬介助のように短時間で済む支援は短い区分で、全身の入浴介助などは長めの区分で組まれることが一般的です。

自己負担金額の目安

介護保険サービスを利用した場合、自己負担は原則1割です。ただし、65歳以上で一定以上の所得がある方は、所得に応じて2割または3割負担となります。1割負担の方の場合、身体介護の自己負担額の目安は、30分以上1時間未満で約400円、20分以上30分未満で約250円です。実際には、地域区分や事業所の体制、早朝・夜間・深夜の利用、各種加算の有無によって変わるため、正確な金額は契約前に確認しましょう。

参照:『訪問介護』(厚生労働省)

利用回数の決まり方

身体介護の利用回数や頻度は、要介護度ごとに定められた区分支給限度基準額の範囲内で決まります。要介護度が高いほど、1ヶ月あたりに使える保険給付の上限額も高く設定されています。ケアマネジャーは、その枠のなかで訪問介護だけでなく、デイサービスや福祉用具貸与など、ほかのサービスとのバランスをみながらケアプランを作成します。限度額を超えて利用した分は全額自己負担となるため、必要な支援を無理なく続けるには、優先順位を整理しながら相談しましょう。

まとめ

まとめ

今回は、在宅介護を支える大切なサービスである身体介護についてとりあげました。住み慣れた自宅での療養生活は、利用者さん本人にとって気持ちの落ち着きにつながる一方で、ご家族には食事や排泄、入浴など日々の介助の負担が重くなりやすいです。介護をご家族だけで抱え込まないことが大切です。思いが強いほど、すべてを自分たちで担おうとしがちですが、ご家族が疲れ切ってしまうと在宅生活の継続が難しくなることもあります。

訪問介護員による身体介護を取り入れることは、介護を手放すことではなく、本人とご家族の生活を守るための前向きな選択です。専門的な技術による介助は、状態の悪化を防ぎ、残っている力を活かすことにもつながります。困りごとが大きくなる前に、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談し、ご家庭に合った支援体制を整えていきましょう。

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