要介護3とは?生活の目安や受けられる介護サービス、費用をわかりやすく解説

ご家族が要介護3と判定され、これからどのような生活になるのか不安を感じている方もいるでしょう。要介護3は、日常生活の多くの場面で全面的な介助が必要となる状態です。しかし、適切なサポートを組み合わせることで、ご本人の安心を守りながら、ご家族の負担を軽減できます。
この記事では、要介護3の認定基準や生活状態の目安、利用できるサービスや施設の種類、費用を解説します。
※この記事は2026年3月時点の制度に基づいています。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
“要介護3”とは

要介護3とは、日常生活のほぼすべての場面で介助やサポートが必要な区分です。在宅での生活を続けるためには、ご家族の力だけでなく、介護保険のサービスをうまく活用した体制づくりが重要です。
ここでは、要介護認定の仕組みや要介護3の具体的な基準、ほかの区分との違いを解説します。
要介護認定の仕組み
介護保険サービスを利用するには、市区町村の窓口で申請を行う必要があります。調査員による訪問調査や主治医の意見書をもとに、介護の手間を数値化した要介護認定など基準時間を算出し、専門家による審査を経て認定されます。
要介護3の認定基準
要介護3の目安となる基準時間は、70分以上90分未満、またはこれに相当すると認められる状態です。
具体的な状態の目安は以下のとおりです。
- 排泄や入浴、着替えなど日常生活の全般で全面的な介助が必要
- 自力で立ち上がったり歩いたりすることが難しく、常に支えが必要
- 認知機能の低下により、薬の管理や安全な生活にサポートが必要な場合がある
要介護2に比べて介助の必要性が大幅に高まるため、ご本人にとってもできないことへの苛立ちや不安が生じやすい時期です。本人の自尊心を傷つけず、安心感を与え在宅生活を続けるには、複数のサービスをパズルのように組み合わせていく工夫が求められます。
要支援や要介護1〜5との違い
要介護度は計7段階に分かれています。各区分の目安は以下のとおりです。
| 区分 | 基準時間の目安 | 状態の目安 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 25分以上32分未満 | 日常生活はほぼ自立。一部に支援が必要 |
| 要支援2 | 32分以上50分未満 | 起き上がり・立ち上がりが不安定で支援の必要性が高い |
| 要介護1 | 32分以上50分未満※ | 部分的な介助や見守りが必要。状態が不安定 |
| 要介護2 | 50分以上70分未満 | 日常生活の多くで部分的な介助が必要 |
| 要介護3 | 70分以上90分未満 | 日常生活のほぼ全般で全面的な介助が必要 |
| 要介護4 | 90分以上110分未満 | 日常生活全般で全面的な介助が必要。重度の状態 |
| 要介護5 | 110分以上 | 日常生活全般で全面的な介助が必要。最重度の状態 |
要支援2と要介護1は同じ基準時間帯。状態の維持・改善可能性の審査で振り分けられます。
要介護2との大きな違いは、身体介護の範囲が一気に広がることです。また、要介護3から特別養護老人ホーム(特養)への入居申し込みが原則として可能になるため、生活環境の選択肢が大きく広がるタイミングでもあります。
要介護3の方の生活状態の目安

要介護3の方の生活は、多くの場面で介助が欠かせません。具体的にどのようなサポートが必要になるのかを解説します。
日常生活で必要となる介助
要介護3の方が日常生活で必要とする介助の目安は以下のとおりです。
| 項目 | 介助内容の目安 |
|---|---|
| 排泄 | トイレまでの移動に加え、衣服の着脱や後の始末まで介助が必要 |
| 入浴 | 浴槽への出入りや体を洗う動作に、安全のための全面的な介助が欠かせない |
| 食事 | 食べこぼしの片付けや、飲み込みの見守りが必要な場合がある |
| 移動 | 立ち上がりや歩行が不安定なため、車いすの使用や介助者の支えが常時必要 |
このように、要介護3は身の回りのほとんどの動作において誰かの手助けが必要となる全面的な介助が不可欠な状態です。24時間、常に誰かが見守りや介助を行わなければならないため、ご家族だけで担おうとすると、どうしても限界がきてしまいます。
プロの介助を上手に取り入れることは、ご本人の生活の質を維持し、安全を守るために欠かせない選択です。
身体機能や認知機能の状態
筋力の低下などにより、一人で動くことが難しくなり、転倒などの事故のリスクが高くなります。
状態の目安は以下のとおりです。
| 項目 | 身体機能の状態 |
|---|---|
| 立ち上がり | 自力での動作は難しく、椅子やベッドからの立ち上がりも支えが必要 |
| 歩行 | 室内でも介助なしでの移動は危険を伴うことが多くある |
| 褥瘡(じょくそう) | 自分で身体を動かす機会が減るため、皮膚のトラブルを防ぐ細やかな対策が必要 |
また、認知機能の低下を伴うケースも少なくありません。要介護3に相当する認知症では、ご本人の不安が行動として表れることが多く、ご家族は心身ともに疲弊しがちです。以下のような状況に頭を悩ませることが多くあります。
- 繰り返しの質問・同じ行動
- 夜間の不穏・徘徊
- 介助への抵抗(拒絶)
- 物盗られ妄想
繰り返しの質問・同じ行動に関しては、「ご飯はまだ?」と5分ごとに聞く、財布を何度も確認するなど、同じことを繰り返します。ご本人にとっては、記憶が抜け落ちることへの無意識の防衛本能であることが多く、責めるのは逆効果です。
夜間の不穏・徘徊に関しては、夜中に起き出して「家に帰る」と荷物をまとめ、外へ出ようとすることがあります。ご家族が追いかける、あるいは一晩中見守る必要があり、慢性的な睡眠不足の大きな原因になります。
介助への抵抗(拒絶)では、入浴や着替えを「触らないで」「自分でできる」と拒みます。清潔を保ちたいご家族と、プライドを傷つけられたと感じるご本人の間で、毎日の介助がトラブルになることも珍しくありません。
物盗られ妄想に関しては、「誰かが財布を盗んだ」「大事な書類を隠された」と家族を疑ってしまう症状です。身近で献身的に支えているご家族ほどターゲットになりやすく、精神的なショックが大きいものです。
こうした場面で大切なのは、事実をそのまま訂正しようとしたり、論理的に説得しようとしたりしないことです。例えば「ご飯はさっき食べたでしょ」と怒鳴ってしまうと、ご本人は食べた記憶はなくても「怒られた」などの悲しい感情だけが強く残ってしまいます。
そのようなときは、「大丈夫ですよ、ここはお家ですよ」「お腹が空きましたね、お茶でも飲みましょうか」と穏やかに気持ちを受け止める声かけを意識しましょう。たとえ問題が解決しなくても、ご本人の「今は安心できるんだ」という感覚をもつことが、混乱を和らげることにつながります。
ご本人の自尊心に配慮した対応を心がけることで、少しずつお互いが過ごしやすい時間をもてるはずです。
一人暮らしは可能?
要介護3での一人暮らしは、手厚いサポート体制を整えることで可能です。
継続のための取り組み例は以下のとおりです。
- 1日に複数回の訪問介護を利用し、食事や排泄をサポートしてもらう
- デイサービスを頻繁に利用し、日中は安全な環境で過ごす
- 緊急通報システムや見守りセンサーを導入して、安否を確認できるようにする
「住み慣れた家で最期まで暮らしたい」というご本人の強い意志がある場合、ケアマネジャーと連携して、その思いをどう形にするかを真剣に検討する必要があります。本人の愛着がある家という環境は、心の安定に大きな役割を果たすからです。
ただし、火の不始末や徘徊による迷子、転倒による骨折のリスクなど、安全が著しく損なわれる可能性が大きい場合は、別の選択肢も視野に入れる必要があります。ご本人と一緒にどうすれば安全に毎日を過ごせるかという視点で環境の変化を考えていく姿勢が大切です。
認知症の症状が急激に進んでいる場合や、夜間の急な対応が物理的に不可能な環境では、在宅生活の継続がご本人にとってもリスクになることがあります。ケアマネジャーと相談し、常に安全が確保できているか、介護する側の健康が守られているかを確認しながら判断してください。
要介護3で利用できる主な介護サービス

要介護3の区分支給限度基準額は27,048単位(1単位10円換算の目安:約270,480円)です。この範囲内であれば、自己負担1〜3割でさまざまなサービスを利用できます。
参照:『令和6年度介護報酬改定の主な事項について』(厚生労働省)
訪問介護(ホームヘルプ)
ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排泄、食事などの身体介護や、掃除、洗濯などの生活援助を行います。要介護3では身体介護の頻度を増やすなど、生活の基盤を支える役割を果たします。
通所介護(デイサービス)
施設に通い、食事、入浴、リハビリなどを受けるサービスです。ご本人がほかの方と交流し、外に出る機会を持つことは、心身の活性化や、ご家族の介護負担の軽減(レスパイトケア)にもつながります。
ショートステイ(短期入所生活介護)
短期間、施設に宿泊して介護を受けるサービスです。ご家族が病気や用事で家を空けるときだけでなく、日々の介護疲れを防ぐための休息として活用されます。定期的に利用することで、無理のない在宅介護を続けることができます。
訪問看護や訪問リハビリ
医療的なケアや、筋力の維持を目指すためのサービスです。特に専門職によるリハビリは、ご本人が今の体の状態を少しでも保ち、日常生活を安全に過ごす助けになります。
要介護3で入居を検討できる介護施設

在宅での生活が限界を迎える前に、ご本人にとってより安全で快適な居場所として施設の入居を検討し始める時期です。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(以下特養)は、原則として要介護3以上の方を対象とした公的施設です。24時間体制で専門的なケアが受けられ、費用も抑えられます。入居までに時間がかかるケースも多いため、希望する場合は早めに情報を集め、複数の施設に申し込みを検討しましょう。
介護付き有料老人ホーム
24時間スタッフが常駐し、生活のサポートを受けられる民間施設です。特養に比べて待機期間が短い傾向にあり、個室などの居住環境も充実しています。ご本人の希望や予算に合わせて選ぶことができます。
介護老人保健施設
介護老人保健施設(以下老健)は、リハビリを主目的とした一時的な(原則として3〜6ヶ月程度)入所施設です。医師や看護師が常駐する環境で、在宅復帰に向けた集中したリハビリが受けられます。「もう一度、少しでも自分で動けるようになりたい」という前向きな目標を持つ方に適した環境です。
家族が要介護3になったときに考えたいこと

要介護3になったとき、ご本人のこれからの人生と、それを支える家族の生活を両立させるための大切な視点を解説します。
介護費用の考え方
介護保険サービスの自己負担は所得に応じて1〜3割です。また、1ヶ月の支払い額に上限がある高額介護サービス費などの制度も用意されています。利用できる公的な制度をケアマネジャーに確認し、家計の負担を把握しておくことが安心感につながります。
参照:『高額介護サービス費の負担限度額が見直されます』(厚生労働省)
在宅介護を続ける場合のポイント
在宅介護を長く続ける秘訣は、家族が決して一人で抱え込まないことです。
- ケアマネジャーと本音で話し合い、ケアプランをこまめに見直す
- ショートステイを定期的に利用し、ご家族自身の休息を確保する
- 夜間対応のサービスなども検討し、24時間の安心環境を作る
ご家族自身が心にゆとりを持つことが、結果としてご本人への優しい介護につながります。
施設入所を検討するタイミング
施設入所の検討は、決してお別れや責任逃れではありません。むしろ、安全な環境でプロのケアを受けることは、ご本人の尊厳を守り、穏やかな毎日を取り戻すための大切な一歩になります。施設では、リハビリ専門職による適切な活動や、栄養管理された温かい食事など、ご本人の生活を豊かにするための工夫があります。
施設入所を検討すべき状況の目安は以下のとおりです。
| 検討の目安 | 具体的な状況と理由 |
|---|---|
| 夜間対応の深刻化 | 対応が頻繁でご家族が慢性的な睡眠不足になり、心身に支障が出ているとき |
| 専門的ケアの必要性 | 高度な医療的ケアが求められ、家庭での対応が難しくなった場合 |
| 周辺症状(BPSD)の悪化 | 認知症による徘徊や不穏などが強く、在宅での安全確保が困難な状態 |
| 介護者の心理的限界 | 将来への強い不安から、ご本人に対して余裕を持って接することが難しくなったとき |
こうした状況が見られたら、ご本人とご家族の生活を守るための一つの前向きな選択肢として、施設入所を相談してみましょう。プロの手を借りることで、再び家族としての温かい時間を過ごせるようになることもあります。
介護で困ったときの相談先
不安や悩みがあるときは、早めに以下の窓口に相談しましょう。
- 地域包括支援センター:介護全般の相談ができる地域の窓口
- 担当ケアマネジャー:ケアプランの作成やサービスの調整を行ってくれるパートナー
- 市区町村の介護保険窓口:制度や申請に関する公的な窓口
早めの相談で、プロのアドバイスから解決の糸口が見つかることもあります。
まとめ

要介護3は、日常生活の多くの場面で全面的な介助が必要な状態です。しかし、訪問介護やデイサービス、施設などのサービスを適切に活用することで、ご本人の安心感を守り、できる限り無理のない形で生活を続けることは十分に可能です。
介護は一人で背負うものではありません。専門家の力を借りながら、ご本人もご家族も健やかに過ごせる新しい形を見つけていきましょう。
参考文献
- 『介護報酬ハンドブック』(シルバー産業新聞社)
- 『令和6年度介護報酬改定の主な事項について』(厚生労働省)
- 『サービス利用までの流れ|介護サービス情報公表システム』(厚生労働省)
- 『どんなサービスがあるの? - 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)|介護サービス情報公表システム』(厚生労働省)
- 『どんなサービスがあるの? - 特定施設入居者生活介護|介護サービス情報公表システム』(厚生労働省)
- 『どんなサービスがあるの? - 介護老人保健施設(老健)|介護サービス情報公表システム』(厚生労働省)
- 『要介護認定』(厚生労働省)
- 『高額介護サービス費の負担限度額が見直されます』(厚生労働省)
- 『令和6年度介護報酬改定について』(厚生労働省)




