“要介護”の基礎知識|段階別の認定基準や申請の流れなどわかりやすく解説

介護保険制度では、日常生活の状態に応じて要支援と要介護の区分が設けられており、認定結果によって利用できる介護サービスが決まります。制度の仕組みや認定基準、申請の流れは複雑に感じる方もいるでしょう。
本記事では、要介護の基本的な意味や認定基準、介護度の段階ごとの状態、介護保険で利用できるサービス、要介護認定の申請手続きの流れを解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
介護保険制度における要介護とは

要介護とは介護保険制度において、日常生活のなかでどの程度の介助が必要な状態かを示す区分の一つです。ここでは、介護保険制度における要介護の位置付けや定義、要介護が指し示す状態を解説します。
介護保険制度とは
介護保険制度は、高齢の方の介護を社会全体で支え合うことを目的とした制度です。1997年に介護保険法が成立し、2000年から施行されました。
介護保険の加入者は、65歳以上の第1号被保険者と、40歳から64歳までの第2号被保険者に分けられます。
介護サービスを利用するためには、市町村による要介護認定を受ける必要があります。日常生活の自立度や身体機能などをもとに、必要な支援や介護が判断されます。結果に応じて要支援または要介護の区分が決まり、状態に応じた介護サービスを利用できる仕組みです。
要介護状態と要支援状態の定義を解説します。
要介護状態の定義
要介護とは、寝たきりや認知症などにより、日常生活を送るうえで常時介護が必要な状態を指します。要介護認定された場合、訪問介護や通所介護、施設サービスなどの介護サービスを利用できます。
要介護認定は、市町村が保険者として実施し、市町村に設置されている介護認定審査会によって審査・判定されます。認定結果は利用できる介護サービスの内容や給付額に関わるため、全国共通の基準に基づき客観的に判断されます。
要介護認定では、「要介護認定等基準時間」と呼ばれる指標が用いられます。日常生活を送るために必要な介護の手間を時間として表しており、介護の必要度を測る目安となるものです。基準時間は次の5つの分野の介護行為をもとに算出されます。
- 直接生活介助:入浴、排せつ、食事などの身体介護
- 間接生活介助:洗濯や掃除などの家事援助
- 問題行動関連行為:徘徊への対応や不潔行為の後始末など
- 機能訓練関連行為:歩行訓練や日常生活訓練などの機能訓練
- 医療関連行為:輸液管理や褥瘡処置などの診療補助
介護行為に必要な時間を基準として、要介護度が区分されます。
- 要介護1:基準時間32分以上50分未満
- 要介護2:50分以上70分未満
- 要介護3:70分以上90分未満
- 要介護4:90分以上110分未満
- 要介護5:110分以上
区分は以上のとおりです。
要支援状態の定義
要支援状態とは、現時点では常時の介護までは必要ないものの、日常生活の一部に支援が必要であり、将来的に要介護状態へ進行する可能性がある状態を指します。例えば、家事や買い物、外出などの動作に不安がある場合や、身体機能の低下により生活に支援が必要な場合などが該当します。
要支援は、5分野の要介護認定等基準時間が25分以上32分未満、または当該基準に相当する状態と判断された場合に認定されます。
参照:
『介護保険制度の概要』(厚生労働省)
『介護保険制度における要介護認定の仕組み』(厚生労働省)
【要介護度の段階】状態と認定基準

介護保険制度では、介護が必要な程度に応じて自立、要支援、要介護に区分されます。区分は、日常生活での基本的な動作や生活能力の状況をもとに判断され、市町村が行う要介護認定によって決定されます。
歩行や起き上がりなどの基本動作を自分で行えるか、また家事や買い物などの日常生活動作にどの程度の支援が必要かによって状態が判断されます。
状態が軽い場合は介護予防を目的とした支援が中心で、介護の必要度が高い場合は日常生活を支えるための介護サービスが提供されます。
要介護認定の区分である自立、要支援、要介護の状態と、それぞれの認定基準を解説します。
自立
自立(非該当)とは、歩行や起き上がりなどの日常生活の基本的な動作を自分で行うことができ、介護が必要ない状態を指します。さらに、薬の服用管理や電話の利用、買い物などの手段的日常生活動作も自分で行う能力がある状態です。
介護保険サービスの対象にはならず、基本的には自分自身で日常生活を送ることができると判断されます。
要支援
要支援とは、基本的な日常生活動作はほぼ自分で行うことができるものの、一部の生活動作に支援が必要な状態を指します。例えば、買い物や家事、外出などの手段的日常生活動作で支援が必要になるケースが該当します。
要支援状態では、現在の身体機能を維持し、将来的に要介護状態への進行を防ぐことが重要です。そのため、介護予防を目的としたサービスを中心に利用できます。
要介護
要介護とは、日常生活の基本的な動作を自分で行うことが難しくなり、継続的に介護が必要な状態を指します。食事や入浴、排せつなどの日常生活動作に介助が必要になる場合が多く、介護の必要度に応じて要介護1から要介護5までの区分が設けられています。
要介護状態と認定された場合には、訪問介護や通所介護、施設サービスなど、さまざまな介護サービスを利用できます。介護度が高くなるほど、必要な介護量が多くなり、利用できるサービスの範囲も広がります。
参照:『介護保険制度における要介護認定の仕組み』(厚生労働省)
【要介護度別】介護保険で受けられるサービス

介護保険制度では、要介護認定の結果に応じて利用できるサービスの種類が決まります。要介護1〜5と認定された方が利用できる介護給付と、要支援1〜2と認定された方が利用できる予防給付があります。
介護保険で利用できるサービスは多岐にわたり、全国では26種類・54サービスが提供されています。介護予防サービスも含まれており、利用者の状態や生活環境にそってさまざまなサービスを組み合わせて利用できます。
主なサービスの種類は、介護サービスの相談やケアプラン作成、自宅で受ける訪問サービス、施設へ通う通所サービス、施設で生活しながら受けるサービス、訪問・通い・宿泊を組み合わせたサービス、福祉用具の利用などです。
要支援と要介護のそれぞれの認定区分で利用できる主な介護保険サービスを解説します。
要支援で受けられるサービス
要支援1・2と認定された場合は、要介護状態への進行を防ぐための介護予防サービス(予防給付)を利用できます。生活機能の維持や改善を目的としており、軽度の支援が必要な方向けに提供されます。
代表的なサービスには、訪問介護(ホームヘルプ)、訪問看護、訪問リハビリテーションなどの訪問サービスがあります。また、通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション(デイケア)など、施設に通って機能訓練や生活支援を受けるサービスも利用できます。
さらに、短期間施設に宿泊して介護を受ける短期入所生活介護(ショートステイ)や、訪問・通い・宿泊を組み合わせた小規模多機能型居宅介護なども利用できます。福祉用具の貸与や特定福祉用具の購入なども、生活を支えるためのサービスです。
要介護で受けられるサービス
要介護1〜5と認定された場合は、介護給付によるさまざまな介護サービスを利用できます。要介護状態では、日常生活でより多くの介護が必要になるため、利用できるサービスの種類や内容も幅広くなります。
自宅で生活を続ける場合には、訪問介護(ホームヘルプ)、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリテーションなどの訪問サービスを利用できます。また、通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーションなどの通所サービスで、日中の生活支援や機能訓練を受けることができます。
さらに、短期間施設に宿泊して介護を受けるショートステイや、小規模多機能型居宅介護などの複合型サービスもあります。自宅での生活が難しい場合には、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)や介護老人保健施設、介護医療院などの施設に入所して介護を受けることも可能です。
要介護認定を受けるまでの流れ

介護保険サービスを利用するためには、要介護認定(要支援認定)を受ける必要があります。要介護認定は、どの程度の介護や支援が必要かを客観的な基準によって判定する手続きです。認定結果によって、利用できる介護サービスの内容や量が決まります。
申請から認定、実際にサービスを利用するまでにはいくつかの手続きがあります。要介護認定を受けるまでの主な流れを解説します。
相談
介護保険サービスの利用を検討する場合は、市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談します。家族だけで判断が難しい場合でも、専門職が状況を確認しながら必要な手続きや制度を説明してくれます。
相談の段階では、現在の生活状況や困っていること、介護が必要と思われる理由などを整理しておくと、その後の手続きがスムーズになります。
要介護認定の申請
介護保険サービスを利用するためには、市区町村の窓口で要介護認定の申請を行います。申請の際には、介護保険被保険者証が必要です。また、40歳から64歳までの第2号被保険者の場合は、医療保険証の提出が必要です。
申請後、市区町村の職員や委託された調査員が自宅や施設などを訪問し、心身の状態を確認するための聞き取り調査(認定調査)を行います。また、市区町村から依頼を受けた主治医が、健康状態や身体機能に関することを記載した主治医意見書を作成します。
調査と審査
認定調査の結果と主治医意見書の内容は、コンピュータによる一次判定にかけられます。一次判定では、全国共通の基準に基づいて要介護度の判定が行われます。
その後、一次判定の結果と主治医意見書などの情報をもとに、介護認定審査会による二次判定が行われます。介護認定審査会は、保健・医療や福祉の専門家で構成されており、総合的な観点から要介護度を判断します。
結果の通知
介護認定審査会の判定結果をもとに、市区町村が最終的な要介護認定を行い、申請者に結果が通知されます。申請から結果の通知までは、原則として30日以内に行われます。
認定結果は、非該当(自立)、要支援1・2、要介護1~5の区分に分かれています。要支援または要介護と認定された場合は、ケアプランを作成したうえで介護サービスの利用が開始されます。
なお、認定には有効期間があり、新規申請や変更申請の場合は原則6ヶ月、更新申請の場合は原則12ヶ月とされています。期間が満了する前には更新申請が必要で、身体の状態に変化がみられた場合には有効期間中でも認定の変更申請を行うことができます。
要介護認定を検討した方がよいタイミング

介護保険サービスは、日常生活のなかで支援が必要になったときや、家族による介護の負担が大きくなってきたときなどが、要介護認定を検討する1つの目安です。
例えば、歩行が不安定になり外出や買い物が難しくなった場合や、家事や食事の準備を家族が手伝うようになった場合などは、介護保険の利用を考えるタイミングです。
本人がまだ自分で生活できているように見えても、家族の支援が増えている場合には、すでに生活のなかで支援が必要になっている可能性があります。
また、離れて暮らす家族が定期的に通って買い物や家事を手伝っている場合なども、介護保険サービスを検討する機会です。
家族だけで支援を続けていると、時間や体力の負担が大きくなり、結果として家族が疲れてしまうこともあります。そのため、家族の負担が大きくなる前に相談しましょう。
参照:『離れて暮らす親のケア vol.141』(健康保険組合連合会)
まとめ

要介護とは、日常生活の動作を自分で行うことが難しくなり、継続的に介護が必要な状態を指します。介護保険制度では、日常生活の自立度や身体機能などをもとに要介護認定が行われ、その結果に応じて「要支援1・2」または「要介護1〜5」の区分が決定されます。
介護保険サービスを利用するためには、市区町村への要介護認定の申請が必要です。申請後には認定調査や主治医意見書の作成、審査判定などの手続きが行われ、原則30日以内に結果が通知されます。その後、ケアプランを作成してサービス利用が始まります。
早い段階で制度を理解し、地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談しましょう。
参考文献




