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介護保険の住宅改修とは?対象になる工事や支給額、申請方法を解説

 公開日:2026/02/24
介護保険の住宅改修とは?対象になる工事や支給額、申請方法を解説

介護保険の住宅改修制度は、要支援・要介護状態の高齢の方が自宅で安全性の高い暮らしを続けられるよう支援する仕組みです。手すりの取り付けや段差の解消、滑りにくい床材への変更など、自立支援や転倒予防につながる工事の対象です。実際に改修を行う際には、介護支援専門員(ケアマネジャー)や市区町村への申請・事前相談が必要です。

申請の流れや支給限度額、自己負担の確認など、正しい手続きを理解しておくことでスムーズに利用できます。本記事は、介護保険を利用した住宅改修の対象工事、支給額、申請方法をわかりやすく解説します。

小田村 悠希

監修社会福祉士
小田村 悠希(社会福祉士)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

介護保険の住宅改修とは

介護保険の住宅改修とは

要支援・要介護の方が快適に自宅で生活できるよう、手すりの設置や段差の解消など必要な工事費を支援する制度です。

住宅改修が介護保険の対象になる理由

住み慣れた自宅での生活をできるだけ長く、安全性が高く続けられるようにするためです。高齢になると筋力低下やバランス能力の低下により、玄関や廊下、浴室、トイレなど日常生活の場面で転倒や事故のリスクが高まります。そのため、手すりの設置や段差の解消、床材の変更などの住宅改修を行うことで、本人の自立した生活行為を支え、同時に介護者の身体的負担や見守りの負担を軽減できることが重視されています。

さらに、こうした住環境の整備は、要介護状態の悪化予防や在宅生活の継続にも効果があることが報告されており、介護保険制度のなかで「居宅介護住宅改修費」として位置づけられています。

参照:『介護保険における住宅改修』(厚生労働省)

住宅改修とリフォームの違い

介護保険の住宅改修は、制度上の要件を満たしたときに給付の対象となる公的な支援であり、目的や範囲が明確に定められている点が一般的なリフォームと違います。具体的には、手すりの設置や段差解消など、要支援・要介護の方の自立支援や転倒予防につながる工事に限定され、工事費用の一部は上限額の範囲で保険給付が行われます。

一方でリフォームは、デザイン性の向上や設備のグレードアップなど、介護とは直接関係しない工事も含めて自由に行う改装・改修の総称であり、原則として自己負担で実施する点が大きな違いです。

介護保険で対象になる住宅改修工事

介護保険で対象になる住宅改修工事
介護保険で対象になる住宅改修工事は、手すりの設置や段差の解消、滑りにくい床材への変更、引き戸などへの扉の取り替え、和式から洋式への便器交換など、安全性の高い移動と自立した生活を支えるための改修に限定されます。

対象になる工事の具体例

具体例は、まず、玄関・廊下・階段・トイレ・浴室などへの手すりの取り付けがあります。また、玄関の上がりかまちや室内の敷居、浴室出入口などの段差を解消する工事、滑りにくい床材への張り替え、開き戸を引き戸や折れ戸へ取り替える工事、和式便器を洋式便器へ交換する工事なども対象です。

さらに、これらの工事に付随して必要となる壁の下地補強給排水設備工事なども、一体的な住宅改修として認められる場合があります。

参照:
『居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは』(健康長寿ネット)
『介護保険特定福祉用具・住宅改修の手引き』(大子町役場福祉課)

対象にならない工事の例

工事の例は、まず、住宅の老朽化による修繕や、外壁・屋根・内装の張り替えなど美観向上資産価値アップを目的とした工事があります。また、キッチンの全面改装や増築、間取り変更など、介護とは直接関係しない利便性向上のためのリフォームも対象外です。

さらに、階段昇降機や電動リフト、段差解消機などの動力を用いる機器の設置、ウォシュレット機能の追加や床暖房の設置、工事を伴わずに置くだけ・取り付けるだけで使える福祉用具(置き型手すり、持ち運び可能なスロープ、滑り止めマットなど)も、住宅改修ではなく別制度自費対応とされるため介護保険の住宅改修費の対象外です。

参照:『住宅改修の対象となる場合住宅改修の対象とならない場合』(兵庫県尼崎市)
『介護保険特定福祉用具・住宅改修の手引き』(大子町役場福祉課)

住宅改修の限度額と自己負担金額

住宅改修の限度額と自己負担金額
介護保険の住宅改修費は、原則1人あたり20万円までが支給限度額となり、そのうち自己負担は所得に応じて1〜3割(2万〜6万円)、残りの7〜9割が介護保険から給付されます。

支給限度基準額は原則20万円

要支援・要介護の区分に関わらず、原則として1人あたり20万円と定められています。20万円の範囲内であれば、手すり設置や段差解消など複数の工事を数回に分けて行うことができ、工事費用のうち自己負担割合(1〜3割)を超える部分が介護保険から給付されます。

参照:
『居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは』(健康長寿ネット)
『介護保険における住宅改修』(厚生労働省)

住宅改修の自己負担額

住宅改修の自己負担額は、原則として工事費用の1〜3割となり、具体的な割合は利用者の所得に応じて決まります。

例えば、支給限度基準額いっぱいの20万円の住宅改修を行った場合、1割負担の方は2万円、2割負担の方は4万円、3割負担の方は6万円が自己負担となり、残りの18万円・16万円・14万円が介護保険から給付されます。また、20万円の支給限度を超えた工事費用は、超過分が全額自己負担になる点にも注意が必要です。

上限額がリセットされるケース

介護保険の住宅改修費は、本来、一人あたり原則20万円までの枠が一生に1回だけ与えられますが、一定の条件を満たした場合には上限額がリセットされ、再び20万円まで利用できる仕組みがあります。

代表的なのが要介護度が3段階以上に上がった場合(3段階リセット)で、初回の住宅改修時の要支援・要介護区分から3段階以上重くなったときに、限度額が再設定されます。もう一つは転居した場合(転居リセット)で、前の住所地で住宅改修費を使い切っていても、転居先の住宅は新たに20万円を上限とした支給を受けることができます。なお、3段階リセットは原則1人1回までですが、転居リセットは制度上複数回利用可能とされています。

参照:『介護保険における住宅改修』(厚生労働省)

介護保険で住宅改修を行う手続きの流れ

介護保険で住宅改修を行う手続きの流れ
要介護・要支援認定を受けたうえで、ケアマネジャーや市区町村窓口に相談し、理由書や見積もり書などの書類を準備して事前申請し、承認後に工事を実施し、完了後に領収書等を提出して住宅改修費の支給を受ける流れです。

ケアマネジャーや市区町村に相談する

介護保険で住宅改修を利用するときは、まず担当のケアマネジャーやお住まいの市区町村の介護保険窓口への相談が大切です。ケアマネジャーは、本人の心身の状態や生活動線を踏まえて、本当に必要な改修内容を一緒に検討してくれます。

また、市区町村窓口では、介護保険の支給対象になる工事の範囲や、自己負担割合、必要書類、申請期限などの詳細を確認できます。自己判断で工事を始めてしまうと、介護保険の給付対象外となるおそれがあるため、見積もりや工事内容の検討段階から早めに相談しておくことが重要です。

参照:『介護保険における住宅改修』(厚生労働省)

ケアマネジャーなどが理由書を作成する

介護保険で住宅改修を利用する際には、住宅改修が必要な理由書をケアマネジャーなどの専門職に作成してもらうことが一般的です。理由書には、利用者の要介護度や心身の状態、現在の住環境で困っている具体的な場面(玄関の段差でつまずく、浴室で立ち座りが不安定など)、そして提案する改修内容がどのように転倒予防や自立支援につながるのかを記載します。

この理由書は、市区町村がその工事が介護保険の住宅改修として妥当かどうかを判断するための重要な資料となるため、ケアマネジャーは必要に応じて福祉用具専門相談員やリハビリ専門職とも連携しながら、利用者の生活実態に即した内容を丁寧にまとめることが求められます。

書類を準備して事前申請を行う

介護保険で住宅改修を利用する際には、工事前に市区町村へ事前申請を行う必要があります。申請時には、申請書に加えて、ケアマネジャーが作成した理由書、工事見積もり書、改修前の住宅の平面図や写真、施工業者の情報などをそろえて提出します。

工事を実施して完了後に書類を提出する

介護保険を利用した住宅改修では、事前申請が承認された後に工事を実施し、完了後に必要書類を市区町村へ提出します。

提出する主な書類は、工事費用の領収書、工事内容がわかる内訳書(明細書)、改修後の住宅の平面図写真、承認内容との相違がないことを確認できる書類などです。これらをもとに審査が行われ、適正と認められれば住宅改修費が支給されます。

費用が支給される

介護保険での住宅改修費は、工事完了後に必要書類の審査が行われ、給付が認められると費用の一部が支給されます。支給方法には、いったん全額を支払い後から自己負担分を除いた額の払い戻しを受ける償還払いと、自己負担分のみを支払う方式(受領委任方式)を採用している自治体があります。いずれの場合も、支給されるのは支給限度基準額20万円のうちの7〜9割で、残りの1〜3割が自己負担です。

介護保険で住宅改修を行う際の注意点

介護保険で住宅改修を行う際の注意点
介護保険で住宅改修を行う際は、工事前にケアマネジャーや市区町村へ相談し、事前申請と承認を受けてからの着工が必要です。

先に工事を進めない

介護保険で住宅改修を利用するときは、自己判断で先に工事を進めないことがとても重要です。介護保険の住宅改修費は、原則として工事前に申請し、承認を受けた内容に対してのみ支給されるため、事前申請をしないまま着工すると、後から申請しても給付の対象外となる可能性があります。

また、ケアマネジャーが作成する理由書や、市区町村が確認する見積もり書・図面などを踏まえて、「本当に必要な改修か」「介護保険の対象工事か」が判断されます。そのため、見積もりや工事内容の検討段階から、ケアマネジャーや市区町村窓口に相談し、承認が下りてから工事を依頼します。

参照:『(2)1.介護保険制度の住宅改修』(公益社団法人東京都福祉保健財団)

要件を満たす工事かどうかを確認する

介護保険で住宅改修を行う際には、その工事が介護保険の要件を満たしているかどうかの事前確認が重要です。対象となるのは、手すりの取り付け、段差の解消、滑り防止や移動を円滑にするための床材変更、扉の引き戸などへの取り替え、洋式便器などへの交換およびこれらに付随して必要な工事など、介護保険法と告示で定められた範囲に限られます。

一方、老朽化した設備の修繕や、デザイン性向上・利便性向上・資産価値アップのみを目的としたリフォーム、キッチンや居室の全面改装などは対象外となるため、ケアマネジャーや市区町村窓口と相談しながら、申請前に、対象工事かどうか、付帯工事として認められるかを慎重に確認しておきます。

支給限度額を把握しておく

住宅改修を計画する際は、介護保険で利用できる支給限度基準額が原則1人20万円であることをあらかじめ把握しておくことが大切です。

この20万円のうち自己負担は所得に応じて1〜3割となり、残りの7〜9割が介護保険から給付されます。また、20万円の枠内であれば複数回に分けて工事を行うこともできますが、限度額を超えた分は全額自己負担となるため、ケアマネジャーや事業者と相談しながら、見積もり段階でトータル費用と保険適用額の確認を必要とします。

賃貸や集合住宅の場合は事前に管理者の承諾を得る

工事を始める前に所有者や管理会社、管理組合の承諾を得ておく必要があります。手すりの取り付けや段差解消などの工事は、壁や床、共用部分への影響が大きく、無断で行うと原状回復の義務やトラブルにつながるおそれがあります。

そのため、図面や見積もり書、工事内容の説明書などを用意し、「どの範囲を、どのような方法で改修するか」「退去時に原状回復が可能か」などを事前に確認し、書面で承諾を得てから介護保険の申請手続きと工事を進めることが大切です。

参照:『住宅改修Q&A(厚生労働省ホームページ及び介護保険最新情報より抜粋)』(東京都福祉局)

介護保険で住宅改修を行う業者の探し方

介護保険で住宅改修を行う業者の探し方
まずケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、介護保険の住宅改修に精通した事業者の情報を教えてもらう方法があります。次に、工務店やリフォーム会社、福祉用具専門店など複数の業者に現地調査と見積もりを依頼し、工事内容・費用・説明のわかりやすさ・アフターサービスなどを比較して選ぶことが大切です。その際、介護保険の住宅改修の施工経験が豊富か、福祉住環境コーディネーターや建築士など、介護と住環境の両方に知識のある専門職が関わっているかも確認すると安心感があります。

また、利用者の生活動線や介護者の負担軽減を踏まえて、必要以上に高額な工事をすすめないかどうかも重要なチェックポイントです。

参照:『介護給付費適正化における住宅改修等の点検および福祉用具購入・貸与調査の取組促進に向けた手引き』(厚生労働省)

まとめ

まとめ
介護保険の住宅改修は、手すり設置や段差解消、洋式トイレへの交換など、自宅での安全性の高い生活を支える小規模な改修費用を支援する制度です。原則1人20万円までが支給限度基準額で、その7〜9割が保険給付となり、自己負担は1〜3割です。利用する際は、ケアマネジャーや市区町村に相談し、理由書・見積もり書などを準備して事前申請し、承認後に工事を行う必要があります。

この記事の監修社会福祉士