介護施設にはどのような種類がある?特徴や対象者、違いを解説

高齢化の進行に伴い、介護を必要とする高齢の方の生活の場は多様化しています。介護施設と一口にいっても、その役割や提供されるサービス、対象となる方の状態は施設ごとに大きく異なります。
介護度、医療ニーズ、生活スタイル、費用負担、家族の関わり方などによって、適した施設は変わるため、どこがよいかではなく、今後の生活に合っている選択肢はどれかを軸に整理することが重要です。
本記事では、介護施設の基本的な分類から、公的施設と民間施設の違い、高齢者向け住宅との比較、認知症の方向け施設までを整理し、それぞれの特徴や対象者、検討時のポイントを解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
介護施設の分類

介護施設は、制度の位置づけや運営主体、必要とされる医療・介護の程度によって大きく分類されます。
同じ入所施設でも、入居条件や費用、医療対応の範囲は異なるため、まずは全体像を把握し、ご本人の状態やご家族の希望に合う方向性を整理することが大切です。
介護保険施設
介護保険法に基づいて運営される施設で、原則として要介護認定を受けた方が対象です。公的性格が強く、制度上の基準に沿ってサービスが提供されるため、費用は抑えられる傾向があります。
一方で、地域差や施設数の制限により、入所待ちが発生しやすい点が特徴です。介護度や緊急性によって優先順位が変わることもあるため、早めに情報収集と相談を行い、申し込みの流れを確認しておくことが大切です。
民間施設
民間企業や法人が運営する施設で、入居条件やサービス内容、費用設定は施設ごとに異なります。介護度が低い段階から入居できる施設も多く、選択肢が幅広い点が特徴です。
一方で、契約形態や追加費用の発生条件、重度化した場合の対応範囲などは施設により差が出ます。比較検討の際は、見学時の印象だけで決めず、重要事項説明書などの公的な書面で確認する姿勢が重要です。
医療依存度が高い方向けの施設
たん吸引、経管栄養、人工呼吸器など、医療的ケアが日常的に必要な方を主な対象とする施設です。医師や看護師の配置体制、協力医療機関との連携、夜間対応の実態などが重要な検討ポイントです。
施設種別だけで医療対応が一律に決まるわけではないため、必要な医療行為が対応範囲に含まれるかを、候補施設ごとに具体的に確認することが必要です。
公的な介護保険施設の種類

公的な介護保険施設は、介護保険制度に基づいて運営され、一定の基準に沿ったサービスが提供されるのが特徴です。施設ごとに対象となる方、提供されるケアの内容、費用の目安、入所までの待機状況が異なるため、まずは種類ごとの役割と違いを整理しておくと、候補を絞り込みやすくなります。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホーム(特養)は、常時介護が必要で、在宅での生活が難しい高齢の方の生活の場として位置づけられる介護保険施設です。入浴や排せつ、食事などの介護に加え、日常生活上の支援や機能訓練、健康管理などが提供されます。2015年4月より特別養護老人ホームの入所基準が変わり、原則として要介護3以上の認定を受けた高齢の方が対象となっています。
- 費用:介護保険施設の中では負担が抑えられる傾向にあります
- 医療対応:医療機関のような体制ではないため、対応範囲は施設ごとに異なります
- 入所のしやすさ:地域や時期により待機が生じる場合があります
このように、特養は生活の継続を重視した施設である一方、入所まで時間を要する可能性があるため、候補が固まった段階で早めに相談・申込みの流れを確認しておくことが大切です。
参照:『特別養護老人ホームとは』(公益財団法人 長寿科学振興財団)
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(老健)は、医師による医学的管理の下で、介護や機能訓練、必要な医療などを提供し、在宅復帰を支援する役割を担う介護保険施設です。病院での急性期治療を終えた後、生活機能の回復や状態の安定を図りながら、在宅生活へつなげる中間的な位置づけとして利用されることがあります。
介護老人保健施設は、病状が安定していて入院や治療の必要がない、要介護1以上の方が入所可能な施設であることが基本的な特徴です。
また、在宅復帰を目的とした施設であるため、入所期間はおおむね3ヶ月から6ヶ月の短期間を原則としています(状態やリハビリの進み具合によっては長期化する場合もあります)。
- 費用:サービス内容や居室形態などにより変動します
- 医療対応:医学的管理やリハビリテーションに重点が置かれます
- 入所目的:状態の安定や生活機能の回復を図り、在宅生活につなげることが主な目的です
このように、老健は自宅に戻ることを視野に入れた支援を受けたい場合に検討しやすい施設であり、退所後の生活環境(住まい・介護サービス)も含めて計画することが重要です。
参照:『介護老人保健施設(老健)とは』(公益財団法人 長寿科学振興財団)
介護医療院
介護医療院は、長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢の方を対象とし、日常的な医学管理や看取り・ターミナルケアなどの医療機能と、生活施設としての機能を兼ね備えた施設です。医療依存度が高い状態でも、療養だけでなく生活の場としての安定を確保することが想定されています。
- 費用:医療・介護の提供内容や居室形態などにより変動します
- 医療対応:医療依存度が高い方も想定した体制が整備されています
- 対象:主として長期にわたり療養が必要な要介護者が中心です
このように、介護医療院は医療が必要な状態でも生活の場を確保したい場合の選択肢になりやすく、必要な医療的ケアの可否や看取りの対応方針を事前に確認しておくと安心です。
民間の介護施設の種類

民間の介護施設は、施設ごとに入居条件・費用・サービス内容の幅が大きいのが特徴です。特に施設内で介護を受けるか、外部の介護サービスを契約して使うかで、費用や重度化した場合の対応が変わります。見学に加えて、契約内容や追加費用、医療連携・看取り方針を書面で確認しながら比較することが大切です。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、高齢の方が生活する住まいとして、食事の提供や生活支援、介護、健康管理などのサービスを組み合わせて提供する施設です。制度上は提供サービスの内容により類型が整理されますが、実際には施設ごとにサービス設計が異なります。
特に大きな違いになりやすいのは、入居後に必要な介護を施設内で受ける形か、外部の介護保険サービスを個別に契約して受ける形かが大きな違いです。検討時は、月額費用の内訳だけでなく、介護度が上がった場合にサービスがどう切り替わるのか、医療機関との連携や看取りの方針がどうなっているのかを、重要事項説明書などで確認することが重要です。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、住まいとしての機能を中心に、食事提供などの生活支援が付く一方、介護サービスは外部の訪問介護や通所介護などを個別に契約して利用する形が一般的です。
介護度が軽い段階から検討されやすい一方で、介護や医療のニーズが高まったときに、外部サービスの組み合わせでどこまで対応できるかがポイントです。入居後の状態変化を見越して、住み続けられる条件と、難しくなった場合の住み替え基準を事前に整理しておくと判断が安定しやすくなります。
高齢者向け住宅と介護施設の違い

高齢の方向けの住まいには、介護施設とは異なる位置づけの住宅もあります。提供されるサービスや介護の関わり方は制度によって大きく異なるため、住まいと介護をどう組み合わせるかを意識して整理することが、選択の判断材料になります。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)と介護施設の違い
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は介護施設ではなく、高齢の方が安心して暮らすための一定の基準を満たして登録される住宅です。制度上、状況把握(安否確認)や生活相談の提供が求められ、介護が必要になった場合は外部の介護保険サービスを利用して生活を支えるのが基本です。
介護施設と比べると生活の自由度が高い一方で、住宅側が提供する介護サービスの範囲は物件や運営方針によって差が出ます。比較するときは、住宅として提供されるサービスと、介護が必要になったときに追加で利用するサービスを分けて理解することが大切です。
軽費老人ホームと介護施設の違い
軽費老人ホーム(ケアハウスを含む)は、老人福祉法に基づく福祉施設として位置づけられ、低額な料金で利用できるよう配慮された住まいの選択肢です。介護施設のように施設介護サービスが包括的に提供される前提ではなく、介護が必要になった場合は外部の介護サービスを利用しながら生活を継続する形が想定されます。
このため、生活の場の確保に強みがある一方で、介護や医療の必要性が高まったときに支援体制をどう組むかが重要です。入居前に、受け入れ条件や支援範囲、重度化時の対応方針を確認しておくと安心です。
認知症の方向けの介護施設

認知症の方の代表的な選択肢として、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)があります。少人数の共同生活を基本とし、家庭的な環境で日常生活上の支援や機能訓練などを受けられる仕組みです。
認知症のケアでは、医療対応の有無だけでなく、生活環境やスタッフの関わり方が生活の安定に影響しやすい点が特徴です。検討時には、ユニットの雰囲気、夜間を含む支援体制、急変時の連携先などを具体的に確認すると、入居後のギャップを減らしやすくなります。
参照:『認知症対応型共同生活介護(グループホーム)』(厚生労働省)
介護施設ごとの違いを比較するポイント

介護施設は種類だけで体制が決まるわけではなく、同じ区分でも運営方針や体制で中身が大きく変わります。候補を選ぶ際は、医療対応や対象者、費用、入りやすさや生活の自由度といった軸で整理して比較すると、入居後のミスマッチを減らしやすくなります。
医療対応の有無
医療対応は何ができるかだけでなく、いつ、誰が、どこまで対応するかで実態が変わります。施設タイプだけで一律に決まるわけではありません。協力医療機関との連携、看護師配置、夜間の対応、医療的ケアの可否などを、候補施設ごとに具体的に確認することが重要です。医療ニーズが高い場合は、想定している医療行為が対応範囲に入るかを先に確認すると、候補を絞りやすくなります。
対象者
入所・入居条件は要介護度だけではありません。例えば認知症の程度、医療依存度、行動面への対応方針、感染症対応なども影響します。また今入居できるかだけでなく状態が変化しても住み続けられるかを併せて確認することで、住み替えリスクの見通しが立てやすくなります。
費用
費用は月額の数字だけをみると、見落としが生じやすい項目です。家賃や管理費、食費などの固定的な費用に加え、介護保険の自己負担、医療費、日用品費、加算やオプションなど、状態や利用量で変わる費用が積み上がる場合があります。比較するときは固定費と変動費に分けて把握すると、将来的な負担を過小評価しにくくなります。
入所・入居のしやすさ
公的施設では待機が生じることがあり、民間施設でも空室状況や条件で変わります。第一希望だけで進めると入居までの見通しが不透明になりやすいため、現実的な候補を複数持ち、申し込み手順や必要書類、入居までの流れを並行して確認しておくことが重要です。
生活の自由度(持込・外出・面会など)
生活の自由度は、本人の満足度に直結しやすい一方で、安全管理や感染対策の方針によって運用が変わります。外出・外泊、面会、家具の持ち込み、食事の個別対応などは、できる・できないだけでなくどの条件なら可能かまで確認しておくと、入居後のギャップを減らしやすくなります。
介護施設を選ぶポイント

介護施設選びは今すぐ困っていることを解決するだけでなく、これから起こりうる変化に備える視点が欠かせません。要介護度の進行や医療ニーズ、看取りの考え方、そして在宅復帰の可能性によって適した選択肢は変わります。ここでは、将来を見据えた判断軸と、迷ったときに頼れる相談先を整理します。
要介護度の変化や看取りなど、将来のことも考えて選ぶ
介護施設は、現在の状態に合うかだけでなく、将来の重度化や看取りまで見据えた選択が重要です。介護度が上がった場合にサービスを継続できるか、医療依存度が高まった場合に対応できるか、看取りの方針はどうかを、入居前に確認しておくことで、意思決定の負担を減らしやすくなります。
自宅に戻るか戻らないかで選ぶ
在宅復帰を目指すのか、長期的な生活の場として選ぶのかで、適した選択肢は変わります。在宅復帰を視野に入れる場合は、退所後の住環境や介護サービスの組み立てまで含めて計画することが必要です。一方、長期利用を想定する場合は、医療・看取り方針に加えて、生活の満足度や家族の関わり方まで含めた検討が重要です。
迷ったときの相談先
制度や選択肢が多い場合は、公的な相談先や専門職の支援を活用しながら整理していくことが現実的です。要介護認定の申請や制度全般の確認は市区町村の介護保険担当窓口が相談先になり、地域の福祉資源や生活上の困りごとは社会福祉協議会に相談できる場合があります。入院中や退院後の生活調整が必要なときは、医療機関の地域連携室や相談室を通じて、介護施設や在宅サービスの情報提供を受けられます。
また、地域に根ざした立場からの助言として民生委員が相談先になることもあります。介護サービスの調整や施設検討を進める際は、地域包括支援センターを総合相談窓口として活用し、要介護認定後はケアマネジャーと連携しながら具体的な選択肢を検討していくと、状況に合った整理が進めやすくなります。
まとめ

民間の介護施設や高齢者向け住宅は、サービスの提供方法や契約形態が多様で、見た目が似ていても中身が大きく異なる場合があります。比較の際は、医療対応、対象条件、費用の変動要因、入居の見通し、生活の自由度を具体的に確認し、将来の状態変化まで見据えて選ぶことが重要です。迷った場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーなどの公的・専門職の支援を活用しながら、本人と家族が納得できる選択肢を整理しましょう。



