訪問介護とは?サービスの内容や利用料金、利用条件と流れを解説します

日本の高齢化社会において、自宅で介護サービスを受けられる訪問介護は、自宅での生活を継続したい高齢の方や要介護者にとって重要な支えとなるサービスです。近年は核家族化などで家族だけで介護を担うことが難しくなり、訪問介護の役割はますます大きくなっています。年を重ねても住み慣れた環境で最後まで暮らしたいという希望を叶えるため、多くの方が訪問介護の利用を検討しています。本記事では、訪問介護の基礎知識から具体的なサービス内容、メリットとデメリット、利用条件や費用の目安、そして利用開始までの流れについて解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
訪問介護の基礎知識

訪問介護は、公的な介護保険に基づく在宅介護サービスの一つで、介護の専門資格を持つホームヘルパー(訪問介護員)が利用者の自宅を訪問し、日常生活の支援や身体介護を提供するものです。要介護者が自宅でできる限り自立した生活を送れるようサポートすることを目的としており、入浴や排せつ、食事の介助から、掃除・洗濯などの家事援助まで幅広いケアを行います。
訪問介護とは
訪問介護とは、自分や家族だけで日常生活を営むことが難しくなった高齢の方、あるいは要介護者に対し、介護福祉士などの資格を有する介護職員が自宅を訪問して日常生活上のお世話を行うサービスです。具体的には、食事・排泄・入浴などの介護(身体介護)や、調理・掃除・洗濯などの家事援助(生活援助)、通院時の付き添いと移動の介助などを必要に応じて提供します。訪問介護は要介護と認定された方が対象で、介護保険の適用を受けて利用することができる在宅サービスです。
訪問介護サービスの提供者
訪問介護のサービスは、訪問介護員(ホームヘルパー)と呼ばれる介護のスペシャリストによって提供されます。多くの場合、国家資格である介護福祉士や所定の研修課程を修了した介護職員がこの役割を担っています。訪問介護員は居宅介護支援事業所で作成されたケアプランに基づき、利用者宅を定期的に訪問してサービスを提供します。利用者本人の状態に合わせた専門的なケアを行うため、ホームヘルパーには高い介護スキルと倫理観が求められます。
訪問介護サービスの内容

訪問介護で受けられるサービス内容は大きく分けて生活援助、身体介護、そして通院時の乗車・降車などの介助の3種類があります。利用者の必要に応じて、これらのサービスを組み合わせて提供することで、自宅での生活全般をサポートします。以下でそれぞれの内容を解説します。
生活援助
生活援助とは、要介護者の日常生活における家事全般を支援するサービスです。具体的には、調理、掃除、洗濯、衣類の整理、生活必需品の買い物、薬の受け取りなど、利用者の身の回りの家事を代わりに行います。例えば、居室やトイレの清掃、ゴミ出し、衣類の洗濯と片付け、食材の買い出しから調理・配膳・後片付けまで、多岐にわたる家事サポートが含まれます。
生活援助は単なる家事代行ではなく、利用者ができることは可能な限り自身で行い、不足する部分を補う形で支援するのが基本です。このように利用者の自立を促しながら必要な援助を行うことで、利用者の生活機能の維持向上を図ります。また、ヘルパーが定期的に訪問し家事を手伝うなかで、利用者の心身の状態の変化に気付くこともできるため、早期に適切な対応を取ることにもつながります。
身体介護
身体介護は、利用者の身体に直接触れて行う介助サービスで、日常生活動作そのものをサポートします。具体的には、食事介助、入浴介助、排泄介助、更衣の介助、移動・移乗の介助、体位変換、清拭などが挙げられます。これらは要介護者の生活の質を保つうえで欠かせない基本的なケアであり、特に要介護度の高い方ほど身体介護の比重が大きくなる傾向があります。
身体介護では利用者の安全と尊厳に配慮しつつ、食事や入浴といった生活の基本動作を支援します。例えば、食事介助では食べ物を口元まで運んだり嚥下を見守ったりし、入浴介助では衣類の着脱や洗身・洗髪の補助を行います。また、排泄介助ではトイレへの誘導やおむつの交換、体位変換では長時間同じ姿勢でいることで生じる褥瘡(床ずれ)予防のため定期的に身体の向きを変える支援をします。
通院時の乗車・降車の介助
通院時の乗車あるいは降車介助は、病院への通院や外出の際に、移動を支援するサービスです。いわゆる介護タクシーと呼ばれるもので、介護職員(ヘルパー)が運転する車両などへの乗車と降車を利用者に付き添って介助します。具体的には、自宅から車への移動時の支え、車への乗り込みや降りる際の補助、さらに病院や役所などでの受付手続きや移動の補助などを行います。
ただし、この通院時などの乗降介助を利用できるのは要介護1以上に認定された方のみで、要支援者は介護保険では利用できません。また、車両による移送にかかるタクシー料金など交通費は介護保険の適用外で全額自己負担です。介護保険でカバーされるのはあくまで乗降や移動の介助部分のみですので、利用の際には事前に費用負担やサービス範囲を確認しておくことが大切です。
訪問介護でお願いできないこと
訪問介護では利用者本人の生活を支援するためのさまざまなサービスが提供されますが、介護保険の範囲を超える内容については対応できません。家政婦や家事代行サービスとは異なるため、訪問介護員に依頼できることには制約があります。基本的に要介護者本人のための援助に限られるため、同居家族など本人以外の家事や世話、日常生活に必要がない行為、大掃除のように日常的な家事の範囲を超える行為、専門的な医療行為などは介護保険サービスの対象外です。具体的には、下記などの行為はお願いできません。
- 利用者本人以外のための家事や雑用
- 庭の草むしりやペットの世話、来客の対応など日常生活の範囲を超える依頼
- 金銭や契約に関する代行行為
- 注射や点滴の実施など医療行為にあたるケア
このように、訪問介護員が行えるのはあくまで介護保険で認められた範囲内のサービスに限られます。もし訪問介護でカバーできないニーズがある場合は、自費サービスや自治体のボランティアサービスなどを併用することも検討しましょう。
訪問介護サービスのメリットとデメリット

訪問介護を利用することには多くのメリットがありますが、一方で注意しておきたいデメリットも存在します。ここでは代表的なメリット・デメリットについて整理します。
訪問介護のメリット
訪問介護を利用する主なメリットは次のとおりです。
- 住み慣れた自宅で介護が受けられる
- 必要なサービスだけを受けられ経済的負担が軽い
- 自立度を維持しやすい
- 家族の介護負担が軽減する
最大のメリットはやはり住み慣れた自宅という安心できる環境で介護を受けられる点です。高齢の方にとって環境の変化は大きなストレスとなりえますが、自宅であれば心身の負担が少なく、リラックスして介護サービスを受けることができます。また、家族にとっても専門職に任せる時間ができることで精神的・身体的なゆとりが生まれ、結果的に介護の質が向上するでしょう。訪問介護は「できるだけ自宅で暮らし続けたい」と望む利用者とその家族にとって、大きな支えとなるサービスです。
訪問介護のデメリット
一方で、訪問介護には以下のようなデメリットもあります。
- 他人を自宅に招くことへの抵抗感
- 医療行為を受けられない
- 家族へのサービスは提供されない
- 相性の問題が生じる可能性がある
- 自宅の構造や衛生状態によっては、安全に介護サービスを提供することが難しいことがある
以上のようなデメリットも踏まえ、訪問介護を利用する際は事前の環境整備と家族も含めた心構えが大切です。プライバシーへの配慮として貴重品や見られたくないものの管理を徹底したり、サービス提供中は家族が外出するなど工夫することで他人が入る抵抗感を減らすことができます。また、住環境については手すりの設置や段差解消などの住宅改修を行い、安全に介助が受けられるよう整えることも検討しましょう。ケアマネジャーに相談すれば、福祉用具のレンタルや住宅改修費補助制度などの情報も得られます。デメリットを十分理解し対策することで、訪問介護サービスをより快適に活用することができます。
訪問介護を活用するポイント

訪問介護を効果的に活用するためには、サービスの選び方や利用時の工夫が重要です。以下に、訪問介護を上手に使いこなすためのポイントを挙げます。
- ケアマネジャーに相談して計画を立てる
- サービス内容や料金を事前に確認する
- 訪問介護ができるよう、手すりなど介護できる環境を整える
- ヘルパーとの良好な関係作りを図る
- サービスの限界を理解し、必要であればほかのサービスと併用する
このようなポイントを整理し、理解しておくことでより適切な訪問介護を受けられるようになるでしょう。もしも自分に合った介護サービスがわからなければ、ケアマネジャーに事前に相談しておくとよいでしょう。
訪問介護サービスの利用条件と対象者

介護保険の訪問介護サービスを利用できるのは、原則として要介護認定を受けた方のみです。利用にあたっては公的な認定と手続きが必要であり、また要支援認定の場合はサービス内容が一部異なります。ここでは訪問介護の利用対象となる条件について解説します。
要介護1以上の方
訪問介護を利用できる基本条件は、要介護1〜5の認定を受けていることです。要介護認定とは、市区町村の認定調査などによって「日常生活にどの程度介護が必要か」を判定する制度で、要介護1は軽度、要介護5が最重度です。訪問介護はこの要介護(介護度)に認定された方が、自宅で利用できる介護保険サービスです。
したがって、要介護認定をまだ受けていない場合には、まず市区町村の窓口で要介護認定の申請を行い、認定を受ける必要があります。認定を受けて要介護1以上と判定されれば、ケアマネジャーがケアプランを作成し、そのプランに沿って訪問介護を利用することができます。
要支援1、要支援2の方は対象外|訪問型サービスは利用可能
要介護認定の一歩手前である要支援1・要支援2と認定された方は、介護保険サービスとしての訪問介護は利用対象外です。これらの方は、介護保険の予防給付や各自治体の総合事業における訪問型サービスを利用します。
具体的には、要支援者向けには介護予防訪問介護が用意されており、内容としては生活援助を中心としたサービスが提供されます。ただし、利用できる回数や時間に制限があります。
このように、要支援認定の方は通常の訪問介護とは別メニューのサービスですが、市区町村が主体となって運営している地域支援事業の一環として提供されるケースが一般的です。詳しい利用方法や内容はお住まいの自治体によって異なるため、地域包括支援センターなどに問い合わせてみるとよいでしょう。
訪問介護の利用料金の目安

訪問介護の利用料金は、介護保険制度によりサービスごとに定められた単位数と地域係数に基づいて計算されます。介護保険適用時は利用者負担が原則1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割)で、それ以外の費用は介護保険から給付されます。
料金はサービスの種類と利用時間によって異なりますが、要介護度による単価の違いはなく時間区分で定められています。例えば、20~30分の身体介護を1回受けた場合、サービス費用は約2,440円で、そのうち自己負担1割なら約244円、2割なら約488円、3割でも約732円という計算です。
なお、介護保険サービスには月ごとの利用上限額(支給限度額)が設定されています。要介護度ごとに1ヶ月に保険適用で利用できるサービス量の上限があり、それを超えると超過分は全額自己負担です。この上限は要介護度が上がるほど高く設定され、必要なサービスを必要な範囲で利用できるよう配慮されています。
利用料金については、サービス提供事業所から発行される明細書に詳細が記載されます。不明な点があればケアマネジャーや事業所に遠慮なく問い合わせ、料金の内訳や加算の仕組みについて説明を受けるとよいでしょう。
参照:『令和6年度介護報酬改定における改定事項について』(厚生労働省)
訪問介護サービスを利用するまでの流れ

実際に訪問介護サービスを利用するには、いくつかのステップを踏む必要があります。介護保険の認定申請からサービス開始までの一般的な流れは次のとおりです。
- 要介護認定の申請
- 認定調査と結果通知
- ケアマネジャー(居宅介護支援事業所)へのケアプラン作成の依頼
- ケアプランの作成
- 訪問介護事業所との契約
- サービス利用開始
なお、サービス開始後も状況の変化に応じてケアプランの見直しやサービス内容の調整が行われます。サービス提供前の打ち合わせでは、具体的な依頼内容や留意事項についてヘルパーと共有しておきましょう。また、利用開始後もし何か気になることがあれば、早めにケアマネジャーや事業所に相談し、ヘルパーの交替やサービス内容の調整をしてもらうことも可能です。定期的に家族やケアマネジャーとサービス状況を振り返りながら、安心して利用できる体制を整えていくことが大切です。
まとめ

訪問介護は、介護が必要な高齢の方などが住み慣れた自宅で適切なケアを受けながら生活を続けられるよう支援するサービスです。訪問介護を上手に活用することで、介護が必要になってもできる限り自宅でその方らしい生活を続けることができます。家族と利用者が安心して在宅生活を送れるよう、周囲の支援やほかのサービスも組み合わせながら、ニーズに合った介護サービスを選択しましょう。




