介護療養型医療施設とは?廃止された経緯や代替施設を解説します

介護療養型医療施設(療養型病院)は、安定期にあるものの医療的ケアが必要な要介護状態にある高齢の方に対して、長期の療養環境のなかで医療と介護サービスを提供する施設です。介護保険適用の公的施設であり、手厚い介護ケアと医療管理が一体となったサービスを受けられる点が特徴でした。しかし、この介護療養型医療施設は2024年3月末をもって廃止され、現在は新たな施設種別である介護医療院に転換されています。本記事では、介護療養型医療施設の概要と廃止に至った経緯、新たに創設された介護医療院の目的や役割、そして介護医療院の特徴やサービス内容、利用料金、利用対象者と手続きを解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
介護療養型医療施設とは

介護療養型医療施設とは、長期の療養が必要な要介護状態にある高齢の方を対象に、医学的管理のもとで介護や日常生活の世話、必要な医療処置などを行う施設です。別名を介護療養病床あるいは療養型病院とも呼び、病院や診療所の一部に併設される形で運営されていました。
入所対象は65歳以上で要介護1以上の認定を受けた方(要支援は対象外)であり、要介護4~5などの重度の介護度の高齢の方が多く利用していました。
介護療養型医療施設では、医師による医学的管理のもとで、看護師による医療的ケアや介護職員による日常生活支援が提供されていました。例えば、点滴や酸素吸入、褥瘡(床ずれ)処置といった処置や、食事・排泄・入浴などの介助、リハビリテーションなど、長期療養を支える幅広いサービスが特徴です。また介護保険施設であるため、利用者の自己負担は1割(一定以上所得者は2~3割)となり、医療保険と比べ利用者の経済的負担が軽減される点もメリットでした。24時間体制の医療および看護ケアに加えて、介護職員の配置基準も定められており、重度の要介護者でも長期間安心して療養できる環境が整えられていました。
介護療養型医療施設の廃止と介護医療院の創設

介護療養型医療施設はかつて介護保険施設の一つとして重要な役割を担ってきましたが、制度施行から約20年を経て廃止が決定されました。この背景には、介護療養型医療施設を取り巻く課題や政策的判断があります。本章では、介護療養型医療施設が廃止に至った経緯と、新たに創設された介護医療院の目的と役割を解説します。
介護療養型医療施設が廃止された経緯
介護療養型医療施設廃止の大きな理由の一つに、医療保険適用の療養病床(医療療養病床)との役割の重複があります。本来、介護療養型医療施設は医療の必要性が低い長期療養者向け、医療療養病床は医療ニーズの高い患者さん向けでしたが、実際には両者の利用者層が似通ってしまい、制度上の住み分けが機能していない状況がありました。
こうした問題を受け、政府は療養病床再編成の方針を打ち出しました。2006年の医療制度改革時に介護療養型医療施設を廃止し、役割をほかの施設へ転換することが決定されました。しかし、介護療養型医療施設から他施設への円滑な転換や入所者の受け入れが思うように進まず、廃止期限は延期されます。2018年には介護療養型医療施設の新たな転換先として介護医療院が制度化されましたが、その時点でも多くの施設が存続していたため、政府は廃止期限を最終的に2024年3月31日まで延長することを決定しました。以後は介護医療院やほかの介護保険施設が代替機能を担うことになったのです。
参照:『介護療養病床・介護医療院のこれまでの経緯』(厚生労働省)
介護医療院の創設の目的と役割
介護療養型医療施設の廃止に伴い、その受け皿として2018年4月に新設されたのが介護医療院です。介護医療院創設の目的は、介護療養型医療施設では対応しきれなかった課題を解消し、超高齢社会における高齢の方の長期療養に対応することにあります。
介護療養型医療施設が病院色の強い療養環境だったのに対して、介護医療院は生活する場としての側面を持たせることで、利用者の尊厳を守り、その人らしい暮らしを継続できる場を目指しています。そんな介護医療院の具体的な役割としては、以下のような点が挙げられます。
- 医療の必要な要介護状態にある高齢の方でも長期間過ごせる場所の提供
- 看取りやターミナルケアの提供
- 治療だけでなく、生活する場を提供する
- 多職種による自立支援とケア
介護医療院では、介護療養型医療施設で十分に実現できなかった医療と介護の提供と生活の場という役割を果たすことが期待されています。
代替施設である「介護医療院」の特徴と介護療養型医療施設の違い

介護医療院は介護療養型医療施設の事実上の代替施設ですが、その仕組みやサービス内容にはいくつか新しい特徴があります。また、介護療養型医療施設と比べてどのような点が異なるのか把握することも大切です。本章では、介護医療院の主な特徴と、旧来の介護療養型医療施設との違いについて整理します。
介護医療院の特徴
介護医療院には、利用者の状態に応じてⅠ型とⅡ型の2種類があります。
Ⅰ型介護医療院は、医学的管理を常時必要とする重篤な疾患のある方や、合併症を伴う認知症のある高齢の方を対象とした医療機能強化型で、旧介護療養病床に相当します。一方、Ⅱ型介護医療院は、Ⅰ型より容体が安定している方を対象とした生活重視型で、介護老人保健施設に近い形態です。医療依存度や症状に応じて使い分けることで、より適切なケア環境が提供されます。
ハード面では、生活の場としての基準が定められており、1床あたり8.0平方メートル以上の療養室、40平方メートル以上の機能訓練室、食堂や浴室、談話室などの設置が義務付けられています。多床室でもプライバシー配慮が求められ、従来の療養病床より居住性が高められています。
人員配置も特徴的で、Ⅰ型とⅡ型ともに医師および看護師が関与し、介護職員やリハビリ職、薬剤師、管理栄養士などがチームでケアを行います。Ⅰ型は特に医師と看護職員の配置が手厚く、Ⅱ型でも老健より厚い基準が設定されています。
また、介護医療院では看取りケアが明確に位置付けられており、重篤化しても転院せず、同じ施設で終末期まで支援を受けられる体制が整っています。利用者が慣れ親しんだ環境で最期まで過ごせる点は、ご本人と家族双方にとって大きな安心材料といえるでしょう。
介護療養型医療施設と介護医療院の違い
介護医療院と旧介護療養型医療施設の最大の違いは、日常生活の支援と住まいの機能を備えているかどうかにあります。介護療養型医療施設は、長期療養を必要とする要介護者に対し医学的管理下で介護や看護を行うことを目的として創設された経緯から、どちらかといえば病院の延長のような施設でした。病室中心の環境で、生活リハビリやレクリエーションといった日常生活面のケアは施設によって取り組みに差がありました。
一方、介護医療院では医療と生活支援の両立が重視され、介護療養型医療施設には無かった生活機能の強化が図られています。具体的には、前述のように居住環境設備の充実やレクリエーション提供など、施設内でできるだけ家庭的な暮らしが送れる工夫が取り入れられています。スタッフも、医師や看護師に加えて介護職員の比重が高くなり、リハビリ職や管理栄養士、介護支援専門員など多職種協働で生活の場としてのケアを提供する点が従来と異なるところです。
介護医療院のサービス内容

介護医療院では、医療と介護を統合した多面的なサービスが提供されます。入所者の状態に合わせて、医学的なケアから日常生活の介助、リハビリテーション、さらにはレクリエーション活動まで、幅広い支援が受けられる点が特徴です。本章では、介護医療院で提供される主なサービス内容について項目別に解説します。
医療的なケア
介護医療院は、名称のとおり医療的ケアが充実した施設です。医師の常勤配置と看護職員の24時間体制が義務付けられており、慢性疾患の管理や胃ろう、経管栄養、喀痰吸引、インスリン注射、酸素療法といった医療処置を受けながら生活できます。
また、急変時にも医師と看護師による迅速な初期対応が可能で、必要に応じて協力病院への搬送も行われます。感染症対策や衛生管理も徹底され、安心して療養できる環境が整えられています。
さらに、介護医療院は看取り期の医療的ケアにも対応しており、終末期には痛みの緩和や点滴管理などを行いながら、住み慣れた環境で最期まで過ごせる体制が整っています。このように、日常の健康管理から緊急対応、終末期医療までを一貫して担う点が大きな特徴です。
日常生活のサポートや介助
介護医療院では、医療的ケアとあわせて日常生活の介護サービスが24時間体制で提供されます。食事や排泄、入浴などといった基本動作については介護職員が支援し、嚥下機能に応じた食事形態の工夫や食事介助、排泄介助、機械浴や清拭による清潔保持などが行われます。
夜間も見守りや体位変換、ナースコール対応、おむつ交換などを行い、褥瘡予防や口腔ケア、リネン交換、居室清掃といった生活面の細かな支援にも配慮されています。介護職員と看護職員が連携し、ケアプランに基づいて支援を行う体制が整っています。
さらに、爪切りや散髪、買い物代行、金銭管理の援助、生活相談、家族との連絡調整などの生活支援サービスも提供されており、利用者が安心して長期生活を送れるような取り組みが行われています。
リハビリ
長期療養が必要な方でも、可能な範囲で心身機能の維持と改善を図るリハビリテーションは重要です。介護医療院には理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)といったリハビリ専門職が配置されることになっており、入所者の状態に応じたリハビリを提供します。
リハビリの内容は、利用者ごとに立てられたリハビリ計画に沿って行われます。具体的には、筋力低下や関節拘縮を防ぐ運動訓練、歩行や起立練習などの基本動作訓練、ベッド上で行えるストレッチやマッサージ、誤嚥防止の嚥下訓練、発声や会話の維持を目的とした言語療法など、多岐にわたります。
レクリエーション
介護医療院は長期に生活する施設であるため、入所者が楽しみや張り合いを持って過ごせるようなレクリエーション活動も大切にされています。介護医療院では、専任または担当スタッフが季節ごとの行事や日々の余暇活動を企画・実施しています。
レクリエーションの内容は施設によってさまざまですが、季節行事や趣味活動などが行われます。例えば、夏にはかき氷やスイカ割りを楽しむイベント、秋には運動会や紅葉見学、年末年始には餅つきや初詣ドライブなど、季節感を味わえる行事を取り入れている施設もあります。また、映画上映会や歌レクといったプログラムを組み、毎日の暮らしに変化と楽しみを提供しています。
介護医療院の利用料金

介護医療院の利用料金は、公的介護保険施設のため入居一時金などの初期費用は不要で、月額利用料のみがかかります。月額費用は、介護サービス費の自己負担分(1~3割)に加え、居住費・食費・日常生活費などの実費負担で構成されます。自己負担割合は原則1割ですが、所得に応じて2割・3割となる場合があります。
介護サービス費の自己負担額は要介護度やⅠ型・Ⅱ型の区分、居室形態によって異なります。これに加え、居住費、食費、日常生活費が必要です。これらを合算すると、月額費用の目安は8~20万円程度です。
なお、低所得の方向けには負担軽減制度(補足給付)があり、条件を満たせば居住費や食費が軽減され、自己負担を大きく抑えられます。費用は所得区分や施設によって異なるため、事前に見積もりを取り、制度の利用可否を確認することが重要です。
介護医療院の利用対象者と利用手続き

介護医療院を利用できるのは、介護保険制度において一定の要介護状態と医療ニーズを有する方です。また、実際に入所するまでには所定の手続きと審査が必要です。本章では、介護医療院の利用対象となる条件と、入所までの手続きの流れを解説します。
介護医療院の利用対象者
介護医療院の入所対象者は、原則65歳以上で要介護1~5の認定を受けた方です。要支援1・2の軽度者は対象外で、介護サービスが必要と客観的に認定された高齢の方のみが利用できます。また、40~64歳の方でも認知症や関節リウマチなど特定疾病による要介護認定を受けている場合には入所可能です。
しかし、どのような方でも受け入れられるわけではなく、各介護医療院の設備や人員体制に応じて対応可能な範囲があります。人工呼吸器が必要な場合や高度な医療処置(透析治療など)が継続的に必要な場合は、対応できる施設が限られることもあります。また感染症を有している方や、ほかの入所者に著しい影響を与えるような行動がある場合など、施設ごとに受け入れ困難なケースも定められているので注意が必要です。入所を希望する際は、自身の医療状況がその施設で対応可能かどうか、事前に確認するとよいでしょう。
介護医療院の利用手続き
介護医療院へ入所するための手続きは、まず要介護認定を受けていることが前提です。要介護認定が下りたら、次のような手順で進めるのが一般的です。
- ケアマネジャーなどから介護医療院の候補を紹介してもらう
- 施設見学と入所の相談をする
- 入所申し込みをする
- 入所判定(審査)を受ける
- 入所内定となれば契約する
- 入所する
なお、人気の高い地域では順番待ちが発生している場合もあります。利用を希望する際は、早め早めに情報収集を行い、ケアマネジャーとも連携してスムーズな手続きを進めるようにするとよいでしょう。
まとめ

超高齢社会が進むなか、介護医療院のような医療と福祉の融合施設はますます重要性を増しています。医療依存度が高く自宅での生活が難しい場合でも、介護医療院という選択肢があることで、安心して過ごせることでしょう。ご家族で介護が難しいケースや、退院後の行き先に悩んだときは、地域のケアマネジャーや専門機関に相談し、介護医療院の利用も視野に入れてみてください。
