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自宅介護中の事故防止|起きやすい事故や注意したいシーンも解説します

 公開日:2026/02/12
自宅介護中の事故防止|起きやすい事故や注意したいシーンも解説します

在宅での介護は、家族にとって安心できる環境を保ちながらケアを続けられる反面、思わぬ事故が起こりやすい場面も多くあります。転倒や誤嚥、入浴中のヒートショックなど、日常のわずかな油断が重大なケガや体調変化につながることもあります。この記事は、自宅介護で起きやすい事故の種類や、注意が必要なシーン、そして事前にできる防止対策を専門的な視点からわかりやすく解説します。

伊藤 規絵

監修医師
伊藤 規絵(医師)

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旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

自宅介護で発生しやすい事故

自宅介護で発生しやすい事故

自宅介護ではどのような事故が起きやすいですか?

転倒・転落誤嚥・窒息入浴中の事故(溺水やヒートショック)火の不始末熱中症などの事故が起きやすいとされています。高齢になると筋力やバランス感覚、飲み込む力が低下するため、わずかな段差でのつまずきやベッド・椅子からの立ち上がり、トイレや浴室への移動など、日常の動作のなかで転倒・転落が起こりやすいです。また、食事中のむせをきっかけにした誤嚥や窒息、浴室での立ちくらみや血圧変動による意識消失、熱い湯や急激な温度差によるヒートショックも重大な事故につながります。 参照:
『たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?』(政府広報オンライン)
『認知症高齢者の家庭内での事故防止対策』(社団法人全国老人保健施設協会)

特に認知症の方を介護しているときに起きやすい事故を教えてください

転倒・転落徘徊に伴う行方不明交通事故火の不始末誤嚥・窒息などが挙げられます。認知症では記憶力や判断力が低下し、周囲の危険に気付きにくくなるため、階段や段差での転倒、自宅から一人で出て迷子になる、道路に突然出てしまうなどのリスクが高まります。また、ガスコンロやたばこの火を消し忘れる、同じものを何度も食べて詰まらせる、異物をお口に入れてしまうなどの行動も起こりやすく、火災や窒息につながるおそれがあります。 参照:『認知症高齢者の家庭内での事故防止対策』(社団法人全国老人保健施設協会)

寝たきりの方の介護で発生しやすい事故にはどのようなものがありますか?

褥瘡(床ずれ)、誤嚥性肺炎につながる誤嚥、関節拘縮や骨粗鬆症に伴う骨折、カテーテルや点滴の自己抜去、体位変換・移乗のときの転落外傷などの事故が起きやすいです。長時間同じ姿勢でいることで圧力が一点にかかり、血流が悪くなると皮膚が傷つき褥瘡が生じやすくなるほか、飲み込み機能が低下している場合には、少量の水分や唾液でも誤嚥し肺炎を起こすリスクがあります。

また、骨密度の低下により、体位変換やおむつ交換などのわずかな力でも介護骨折が起こることがあり、適切でない抱え上げや移乗で関節や皮膚を傷つけてしまうこともあります。

参照:『事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン』(厚生労働省)

自宅介護で事故が発生しやすいシーン

自宅介護で事故が発生しやすいシーン

転倒や転落事故が起きやすい状況を教えてください

主に立ち上がり・歩行などの動作時や、段差や階段・トイレや浴室の場面で転倒や転落事故が発生しやすい傾向です。高齢になると、筋力やバランス感覚、視力が低下し、ベッドや椅子から立ち上がるとき、向きを変えるとき、狭い通路を歩くときなど、ちょっとした動作でもふらつきやすくなります。

室内では、カーペットや電気コード、脱ぎ捨てた衣類や新聞紙などの小さな段差・物につまずくケースが多く、夜間の薄暗い廊下やトイレに向かう途中も危険です。また、浴室や玄関、階段は床が滑りやすく、高さの変化も大きいため、転落すると大きなけがにつながりやすい場所です。

参照:『たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?』(政府広報オンライン)

窒息や誤嚥、誤飲はどのような状況や状態で発生しますか?

主に食事中・服薬中・何かをお口に入れているときに起こりやすいです。高齢になると、噛む力や飲み込む力(嚥下機能)や唾液の量が低下し、餅やご飯、肉類、パンなどの粘り気やパサつきのある食品を十分に噛み砕けず、大きいまま飲み込んでしまうことで、のどや気道に詰まりやすくなります。

脳卒中後や認知症、パーキンソン病などで嚥下反射や咳き込みの力が弱くなっている方は、少量の水やお茶、唾液でも気管に入りやすい傾向です。むせゴホゴホした咳が続く状態から誤嚥性肺炎につながることがあります。また、早食いやテレビを見ながら、会話をしながらの食事、姿勢が悪いままの飲食、入れ歯の不具合なども、誤嚥や誤飲を招きやすい状況です。

参照:『高齢者がものをのどに詰まらせた!誤嚥時の対処法とは』(公益社団法人神奈川県歯科医師会)

服薬に関する事故が起きやすい状況を教えてください

服薬の事故は、飲み間違いや量や回数の間違い、飲み忘れや重複して飲む、飲み込みのトラブルなどが起こりやすいです。具体的には、似た形や色の薬を一緒に保管していて取り違える、朝・昼・夕・寝る前などの内服時間が多くて管理しきれず、服薬のタイミングを誤ったり同じ薬を二重に飲んでしまうなどのケースがあります。

また、認知症の方では「もう飲んだ/まだ飲んでいない」などの自己申告が不正確になりやすく、自己管理だけに任せると飲み忘れや重複内服につながります。嚥下機能が低下している方では、錠剤やカプセルがのどに引っかかり、むせや誤嚥を起こすこともあるため、水分量や姿勢にも注意が必要です。

自宅介護中の事故を防止する方法

自宅介護中の事故を防止する方法

転倒や転落事故を防止するためにどのようなことに気を付けるとよいですか?

転倒や転落を防ぐためには、環境・動作・からだの3つの視点で対策を行うことが大切です。自宅の環境では、床に物を置かないようにし、電気コードやゆるんだカーペット、段差などつまずきポイントをできるだけ減らします。

また、廊下やトイレまでの動線に手すりや足元灯・センサーライトを設置し、夜間も足元が見えるようにすると安心感が高まります。椅子やベッドの高さを調整して立ちやすい高さにしておくことも有効です。さらに、無理のない範囲で散歩や体操を取り入れ、下肢筋力とバランス感覚を保つことが、転倒予防につながります。

参照:『たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?』(政府広報オンライン)

窒息や誤嚥、誤飲事故の防止方法を教えてください

窒息や誤嚥・誤飲を防ぐために、食べ物・姿勢・環境・見守りの4点に気を付けましょう。食べ物は一口の量を少なめにし、やわらかく小さく切って提供します。餅やパン、こんにゃく、繊維の強い野菜など詰まりやすい食品は状態に合わせて工夫しましょう。食事の際は、背筋を立てて座り、顎を軽く引いた姿勢で、よく噛んでゆっくり飲み込むことを意識します。

また、食事前にお口の中をうるおし、食事の合間に少量の水分やとろみ付き飲料をはさむと、のどに残りにくいです。認知症や嚥下障害のある方は、飲み込みの様子をそばで見守り、むせ・ゴロゴロ声が続く場合は、医師や言語聴覚士に相談し、嚥下評価や食事形態の見直しを行うとよいでしょう。

参照:『高齢者の事故防止|講習の内容について』(日本赤十字社)

服薬に関する事故はどのように防げばよいですか?

薬の整理と確認の仕組みづくりがとても大切です。まず、お薬カレンダーや一包化(1回分ずつ袋にまとめる)を活用し、「いつ・どの薬を飲むか」が一目でわかるように整理します。

また、似た形や色の薬を同じ場所に置かない、処方が変わった古い薬はすぐに処分するなどの取り違えを防ぐ工夫も有効です。飲むタイミングは、服薬表やチェックリストに飲んだら印をつけるルールを決め、家族がダブルチェックをするようにしましょう。

認知症の方や自己管理が難しい方では、家族やヘルパーが声かけをして一緒に確認しながら飲みます。錠剤が飲みにくい場合は、自己判断で砕かず、医師・薬剤師に相談してゼリーや剤形変更を検討するとよいでしょう。

参照:『事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン』(厚生労働省)

徘徊を防ぐためにできることを教えてください

徘徊は完全に止めることは難しいため、敷居などのちょっとした段差をなくし、転倒などの危険を減らしつつ、安心感を高めて歩ける環境を作ることが大切です。また、日中に散歩や体操、簡単な家事などの活動を取り入れ、体力や気持ちの行き場をつくることで、夜間の徘徊を減らします。

また、生活リズムを整え、起床・就寝時間や食事の時間をできるだけ一定に保つことで、夜間に目がさめて不安になり外へ出てしまう状況を減らします。玄関や勝手口にはチャイム付きのドアセンサーや補助錠を設置し、靴を見えにくい場所に置くなどの外出のきっかけを減らす工夫も有効です。さらに、GPS端末や見守りサービスを活用して、もし外出してしまっても早く見つけられる体制を整えておくと安心感が高まります。

参照:『認知症の徘徊、どう受け止める?』(日本作業療法士協会)

編集部まとめ

編集部まとめ

自宅介護では、転倒や転落、窒息・誤嚥、服薬ミス、徘徊など、日常のなかで起こりやすい事故が多く潜んでいます。その背景には、加齢による筋力やバランス、嚥下機能の低下に加え、認知症による判断力の低下や病気・内服の影響など、さまざまな要因が重なっています。事故を防ぐためには、環境を整える・動作をゆっくり慎重に行う・からだの機能を保つ・見守りと工夫を組み合わせることが重要です。段差やつまずきやすい物を減らし、食事や服薬は整理・確認の仕組みを作り、徘徊や誤飲には見守り機器やサービスも活用します。小さな対策の積み重ねが、ご本人と家族の安心感につながります。

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