目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 介護TOP
  3. コラム(介護)
  4. 特別養護老人ホーム(特養)で行える医療行為とは?対応困難な医療行為も解説

特別養護老人ホーム(特養)で行える医療行為とは?対応困難な医療行為も解説

 公開日:2026/02/03
特別養護老人ホーム(特養)で行える医療行為とは?対応困難な医療行為も解説

特別養護老人ホーム(特養)は、介護が必要な高齢の方が生活するための介護保険施設です。本記事では、特別養護老人ホームの基礎知識、対応できる医療行為の例、対応が難しい医療行為などを解説します。

高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

プロフィールをもっと見る
昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

特別養護老人ホーム(特養)の基礎知識

特別養護老人ホーム(特養)の基礎知識
特養の位置づけと入所の考え方、医療提供体制の基本を整理します。

特別養護老人ホームとは

特養は介護保険制度に基づく介護老人福祉施設で、常に介護が必要な高齢の方が入所して生活する施設です。

入浴、排せつ、食事などの介護に加え、生活に必要な支援や機能訓練、健康管理、療養上の世話が提供されます。特養は治療を中心に行う場ではなく、生活を支える場です。そのため、病院で行う検査や治療を同じ形で施設内に求めると、期待と現実がずれてしまう場合があります。一方で、持病のある方が多く、服薬管理や状態観察など医療に近い支援が日常の中に組み込まれている点も特養の特徴です。

特別養護老人ホームの役割

特別養護老人ホーム(特養)は、在宅での生活が大変難しくなった要介護の高齢の方が、安心して暮らしを続けられるように、介護と生活支援を中心に提供する生活施設です。中心となる支援は、食事、排せつ、入浴、更衣、移動などの介助です。認知機能が低下している方には、生活リズムを整える関わりや、安心して過ごせる環境調整も行われます。さらに、食事形態の調整や口腔ケア、褥瘡予防の体位変換など、医療につながるケアも日常の介護の中で行われることがあります。

医療機関のように治療を中心に行うのではなく、日々の観察と療養上の世話を通じて体調変化を早くとらえ、必要な医療につなげる役割を担います。例えば、食欲低下、むくみ、咳込み、皮膚トラブルなどの変化に気付いた場合は、看護職員が状態を整理し、かかりつけの医師や協力医療機関へ相談して受診や入院につなげます。

医療提供体制の原則

特養には医師と看護職員が配置されますが、医師は常勤で毎日診療する形とは限りません。多くの施設では配置医師が定期的に診察を行い、必要な検査や治療の方針を示します。看護職員は、日中に入所者の状態観察、服薬管理、処置、受診調整などを担うことが一般的です。

夜間や休日の体制は施設により異なるため、入所前に、夜間の連絡体制、緊急時の判断の流れ、看護職員が呼び出される条件などを確認するとよいでしょう。

特別養護老人ホームで対応可能な医療行為の具体例

特別養護老人ホームで対応可能な医療行為の具体例
特別養護老人ホームで対応しやすい医療行為を日常ケアから順に具体例で確認します。

日常的な健康管理

特養では、入所者の体調変化を早めにとらえるために、日常の観察が行われます。例えば、下記の項目を介護職員が日々のケアのなかで確認します。

  • 顔色や呼吸の様子
  • 食事や水分の摂取量
  • 排せつの回数
  • 睡眠の状態
  • 活動量

変化がみられた場合は、介護職員が看護職員へ報告します。看護職員は必要に応じて体温、血圧、脈拍などを測定し、症状の経過を整理して配置医師へ相談します。特養での健康管理は、検査よりも観察によって異変に気付き、早めに医師へつなぐことが中心です。体調が安定している方に毎日同じ項目を測定するとは限らないため、持病や既往歴に応じて、観察すべきポイントを施設と共有しておくとよいでしょう。

日常的な処置

まず日常のケアの中で体調の変化に気付き、悪化を防ぐことから始まります。例えば、寝たきりに近い生活の方では褥瘡のリスクが高く、特養でも予防とケアが大切になります。日常の介護の中で体位変換を行い、皮膚の赤みや湿り気、痛みの訴えなどを確認して早めに対応します。必要に応じて看護職員が処置を行い、医師の指示に基づいて外用薬を使用します。
ほかにも、食事の場面では、むせ込みが増えた方に対して食事形態を調整し、姿勢を整え、食事のペースを合わせて見守りながら、食後もしばらく上体を起こして過ごせるよう支援します。口腔内の清潔を保ち、痰が絡みやすい場合は水分摂取や室内環境の調整を行い、咳込みや発熱、息苦しさなどの変化がないかを観察して記録します。

専門的な看護

特養で行われる専門的な看護の代表例としては、経管栄養、たんの吸引、在宅酸素療法の管理、血糖測定やインスリン注射の支援などが挙げられます。例えば、食事形態の調整や見守りを行っても十分な栄養が取れず、体重減少や脱水が続く場合には、胃ろうや経鼻経管栄養による栄養管理を検討することがあります。胃ろうや経鼻経管栄養による栄養管理は医療的な知識が必要ですが、特養でも対応している施設があります。

痰が自力で出しにくくなり、咳込みや呼吸苦が増える場合には、体位調整や口腔ケアなどの基本ケアに加えて、必要に応じて吸引を行う看護が必要になることがあります。慢性の呼吸器疾患で息切れが強くなる場合には、酸素濃縮器などを用いた酸素投与を継続しつつ、息苦しさの程度や酸素飽和度の変化を観察して医師に報告します。

ただし、これらの医療的ケアは、施設の体制により対応できる範囲が変わりますので直接施設に確認が必要です。

緊急時の応急処置と医療機関との連携

高齢の方の生活では、発熱、食欲低下、脱水、転倒、打撲、意識レベルの低下、誤嚥が疑われる咳込みなど、急な変化が起こる場合があります。施設では、介護職員が変化に気付いた時点で看護職員へ報告し、状態を整理して配置医師へ連絡します。緊急性が高いと判断される場合は救急要請を行い、医療機関へ搬送します。

特別養護老人ホームで対応が難しい医療行為

特別養護老人ホームで対応が難しい医療行為
特養での医療は、生活を支える範囲の健康管理と療養上の世話が中心になるため、医療機器や専門的な管理を24時間継続する医療行為は対応が難しい場合があります。代表例は下記のとおりです。

  • 人工呼吸器の管理
  • 中心静脈栄養や24時間の持続点滴などの静脈管理
  • 頻回のたんの吸引
  • 気管切開部位の専門的な管理
  • 重い心不全や呼吸不全で急変のリスクが高い状態の厳密な観察

また、透析治療、抗がん剤治療、放射線治療など、医療機関での治療や検査が前提となる医療は、特養で完結しにくい内容です。重要なのは、医療行為の名称だけで判断せず、必要な頻度と時間帯、急変時の対応が施設の体制で支えられるかを確認することです。

特別養護老人ホームへの入所を検討する際の確認事項

特別養護老人ホームへの入所を検討する際の確認事項
特別養護老人ホームへの入所前に確認したい要点を医療行為、体制、連携、看取りの観点でまとめます。

必要な医療行為と施設で対応可能な医療行為

入所相談をスムーズに進めるために、現在必要な介護と医療をできるだけ具体的に整理しておきましょう。

まず、診断名や病名の一覧だけでなく、日常のケアのなかで実際に必要なことを言葉にします。例えば、胃ろうがある場合は注入の回数と時間帯、注入後にむせ込みや嘔吐が起きやすいか、体位の保持が必要かを整理します。酸素療法がある場合は酸素流量、外出時のボンベの扱い、息苦しさが強くなる場面を整理します。たんの吸引がある場合は一日の回数と夜間の必要性、痰の性状、これまでの救急搬送の有無を整理します。こうした情報がそろっていると、施設側も受け入れ体制や可否を検討しやすくなります。

休日の看護師の配置人数や対応状況

夜間や休日は、看護職員が施設内にいる場合もあれば、連絡を受けて対応する体制の場合もあります。この違いは、発熱や転倒などが起きた場合の初動に影響します。

見学や面談では、夜間の勤務体制、看護職員への連絡方法、どの程度の症状で看護職員が呼び出されるか、配置医師へ連絡する基準はあるかを確認するとよいでしょう。また、休日に受診が必要になった場合に、誰が受診の手配を行い、付き添いは誰が担うのかも重要です。

ご家族の就労状況や距離によっては、付き添いが現実的でない場合もあるため、家族の事情も率直に伝えて相談してください。

医療機関との連携体制

特養は医療機関と連携して入所者の健康を支えるため、協力する医療機関の体制は大切なポイントです。確認したい点は下記のとおりです。

  • 配置医師の診療体制と連絡体制
  • 協力医療機関がどこか
  • 緊急搬送が必要になった場合の搬送先の考え方
  • 受診の手配の流れ

また、かかりつけ医を継続できるか、施設の配置医師へ切り替える必要があるかも、入所後の安心感に関わります。慢性疾患の受診が定期的に必要な方では、どの診療科にいつ受診するかが決まっていることも多いため、受診計画を施設と共有し、実行可能か確認してください。

看取り体制の有無

看取りは、本人の尊厳と生活の質を守るために大切なテーマであり、できるだけ早い段階から話し合うことがすすめられます。特に確認したいのは、施設が看取りに取り組む方針があるか、配置医師や協力医療機関とどのように連携しているか、夜間や休日の対応体制はどうなっているかです。

急変した場合に救急搬送を行う方針なのか、施設内でのケアを優先する方針なのかは、本人と家族の希望により変わります。面談では、救急搬送や心肺蘇生に関する希望をどのように確認し記録するか、家族へ連絡する基準は何か、苦痛を和らげるケアをどの程度まで施設内で行えるかを確認してください。

看取り期には、食事量の低下、眠気の増加、呼吸の変化、痛みや不安、せん妄など、さまざまな症状が起こる場合があります。特養では、体位調整や口腔ケア、皮膚ケアなどの基本的なケアに加え、医師の指示に基づく薬の調整や酸素療法などで苦痛を和らげる支援を行う場合があります。

ただし、症状が急に悪化し、医療機関での処置が必要になる場合もあるため、施設内でできることと、医療機関に委ねることの境界を確認しておくことが大切です。家族としては、本人がどのような状態であれば受診や入院を希望するのか、逆にどのような場合は施設でのケアを優先したいのかを、施設と共有しておくと判断がしやすくなります。

医療依存度が高い場合の選択肢:介護医療院

医療依存度が高い場合の選択肢:介護医療院
介護医療院は、長期にわたり療養が必要な方に対して、医学的管理の下で介護と看護を提供し、生活の場としての機能もあわせ持つ介護保険施設です。医療機関での入院治療が必要な状態ではないものの、特養では支えにくい医療的ケアが継続的に必要な方にとって、選択肢の一つになります。医師や看護職員の配置が制度上手厚く、診察室や処置室など医療に必要な設備が求められる点が特徴です。

特養は生活を支える介護が中心で、医療は必要に応じて医療機関と連携して補う位置づけです。一方で介護医療院は、医療的ケアを前提に、日常の生活のなかで医学的管理と介護を一体的に行うことが期待されています。そのため、医療依存度が高い方ほど、体調変化への対応や処置の継続が行いやすい場合があります。

特養か介護医療院かの選択は、今ある医療行為だけでなく、今後増える可能性がある医療ニーズまで見通して考えることが大切です。

医療的ケアの継続が必要で、観察や処置の頻度が高い方は、介護医療院が合う場合があります。例えば、経管栄養を行っているが栄養状態の変動が大きい方、たんの吸引が必要で夜間対応も想定される方、酸素療法が必要で呼吸状態の変化が起こりやすい方などでは、医療職の体制が手厚いことが安心材料になります。

また、入退院を繰り返して体力が落ちている方では、療養環境が安定することで生活の見通しが立ちやすくなる場合があります。ただし、すべての医療行為に対応できるわけではなく、病状により医療機関での治療が必要になることもあるため、入所相談の段階で主治医の意見を確認しながら検討してください。

まとめ

まとめ
特養は生活を支える施設であり、医療は日常の健康管理と療養上の支援を中心に提供されます。服薬管理や褥瘡ケア、尿道カテーテル管理などの処置に加え、施設の体制が整っていれば経管栄養やたんの吸引、酸素療法などにも対応できる場合があります。ただし、対応範囲は施設の人員配置と夜間や休日の体制、協力医療機関との連携によって変わります。

一方で、人工呼吸器管理や中心静脈栄養など、医療機関の体制が必要になる医療行為は、特養では対応が難しい場合があります。入所を成功させる鍵は、必要な医療行為を具体的に整理し、施設の医療対応の実態を時間帯まで含めて確認することです看取りまで見据える場合は、本人の価値観と家族の希望を共有し、状態に合わせて話し合いを重ねられる関係を施設と築くことが大切です。

この記事の監修医師