介護老人保健施設(老健)はいつまで利用できる?平均入所期間やサービス内容、退所後の選択肢も解説

介護老人保健施設(老健)は、自宅での生活復帰を支援することを目的とした公的な介護保険施設です。リハビリテーションや医療ケアを提供しながら在宅復帰を目指すための施設であり、特別養護老人ホーム(特養)のように終身利用を前提とした施設ではありません。そのため、老健では入所から数ヶ月ごとに在宅復帰の可能性を評価する仕組みがあり、原則として長期の入所は想定されていません。本記事では、老健の基本的な特徴やサービス内容、入所できる期間の目安や退所後の選択肢、さらに退所時の手続きや費用について解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
介護老人保健施設(老健)の基礎知識

介護老人保健施設(老健)はどのような施設なのでしょうか。まず老健の目的や役割について確認し、病院や特別養護老人ホームとの違い、そして老健に入所できる対象者や条件を解説します。
介護老人保健施設とは
介護老人保健施設(老健)とは、要介護認定を受けた高齢の方(要介護1以上)が在宅復帰を目指して入所する介護保険施設です。医師の管理下で看護や介護、リハビリテーションなどのサービスを受けられることが特徴で、入院治療の必要はないものの自宅で生活するには不安がある高齢の方が対象です。老健では医師をはじめとした多職種のスタッフがチームを組み、利用者の心身機能の維持回復と在宅生活への復帰を支援します。施設内には診察室やリハビリ室、食堂や浴室などが備えられ、生活の場として必要な介護サービスを包括的に提供します。
なお老健は公的施設であり、入所一時金(初期費用)は不要で、月額利用料も民間の有料老人ホームなどに比べて抑えられている点も特徴です。ただし在宅復帰が明確な目的であるため、入所期間は原則3〜6ヶ月程度に限定されており、長期の生活の場というよりはリハビリとケアを受ける中継施設として位置付けられます。
病院、特別養護老人ホーム(特養)との違い
老健は、病院と介護施設の中間に位置し、在宅復帰を目指すリハビリ・介護ケア中心の施設です。病院が病気の治療を目的とするのに対し、老健は治療後のリハビリが中心で、高度な医療行為はできません。
また、特養(特別養護老人ホーム)との違いは、目的と利用期間です。特養が要介護度の高い高齢の方が長期生活する施設であるのに対し、老健は原則3~6ヶ月の短期集中リハビリ施設であり、在宅復帰が目的です。老健は要介護1から入所可能で、医療的ケアやリハビリが充実しています。
介護老人保健施設の入所条件
老健に入所できるのは、原則として65歳以上で要介護1〜5と認定された方です。また、40〜64歳でも初老期認知症など特定疾患によって要介護認定を受けた場合は利用可能です。ただし、要介護度が条件を満たしていても医療ニーズがとても高い場合などは入所を断られるケースがあります。
要介護認定を受けた方であっても、急性期の治療が必要な状態の方はまず病院で治療を行い、病状が安定してから老健へ入所します。病院での治療は一段落したものの自宅での生活に不安がある方や、退院後すぐに特養などの長期施設に入れない方が老健の主な対象です。なお、入所にあたっては各老健施設ごとに入所判定が行われます。介護度や医療処置の有無、本人の生活状況などを確認し、施設の受け入れ条件に合致するか判断されます。
介護老人保健施設で受けられるサービスの内容

介護老人保健施設では、在宅復帰に向けて幅広い介護サービスが提供されます。介護老人保健施設の主なサービスには以下のようなものがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 医学的管理と看護 |
|
| リハビリテーション |
|
| 介護(身体介護)サービス |
|
このほかにも、レクリエーション活動を実施する老健もあります。ただし、老健の本来の目的がリハビリと在宅復帰支援にあるため、娯楽的なプログラムは必要最低限に留まる傾向があります。とはいえ、利用者同士の交流の機会やクラブ活動などを取り入れている施設もありますので、雰囲気は施設ごとに異なります。
介護老人保健施設の入所期間と退所の目安

老健にはいつまで入所できるのでしょうか。ここでは老健の平均入所期間や、どのような状態になると退所が検討されるか、そして例外的に長期入所が認められるケースについて解説します。
介護老人保健施設の平均入所期間
厚生労働省の調査(2016年)によれば、老健の平均在所日数は299.9日で、おおむね10ヶ月という結果が出ています。老健は3〜6ヶ月程度で退所といった原則が示されていますが、実際には半年を超えて入所しているケースも多いことがわかります。もちろん、この平均値には施設ごとのばらつきもありますが、現実的には入所が長期化しているのが現状です。
介護老人保健施設で退所が検討される状態とは
老健では入所後3〜6ヶ月ごとに利用者の心身状態や在宅復帰の可能性についての評価が行われます。そして、具体的に退所が検討されるケースとしては、以下のような状態が挙げられます。
- 在宅復帰が可能になった場合
- 病状が安定し生活期に入った場合
- 医療ニーズが高まった場合
- 施設の定める利用期間を超える場合
以上のような理由で退所が検討され、施設側から通知されます。「まだ自宅に戻れないのに退所しなければならないのか」と不安になるご家族もいらっしゃいますが、老健退所者の約半数はほかの施設や病院に移っているのが現状です。老健に入所したら、なるべく早いうちから次の生活先の準備を考えておくことが大切だといえるでしょう。
介護老人保健施設への長期入所が認められるケース
原則は短期利用の老健ですが、例外的に長期入所が続くケースも存在します。いくつか考えられる状況を挙げます。
- 特別養護老人ホームなどの空き待ち
- 家族の事情で在宅介護が難しい場合
このように長期入所がなされる場合もありますが、いずれにせよ老健はいずれ退所する前提で利用する施設である点は変わりません。老健側も長期入所を続けていると介護報酬上の減算対象となるルールがあるため、いつまでも同じ方を受け入れ続けるのは経営上も難しい側面があります。そのため、例外的に1年以上入所できるケースはあっても、老健にずっと住み続けることは基本的にはできないと考えておきましょう。
介護老人保健施設を退所した後の選択肢

老健を退所した後、利用者はどこで暮らすことになるのでしょうか。大きく分けて在宅へ復帰するか、あるいはほかの介護施設へ移るかの二つの選択肢があります。それぞれの場合にどのような対応や準備が必要か確認しましょう。
在宅復帰する
在宅復帰には、市町村のケアマネジャーによるケアプラン作成と、デイサービス、訪問介護、福祉用具レンタルなどの在宅サービス利用を組み合わせます。老健スタッフから家族への介護指導や、外泊や外出訓練などの練習も行われます。また、手すり設置などの住宅改修や福祉用具の導入など、住環境整備も退所前に進められます。これは老健の支援相談員やケアマネジャーが中心となり調整します。
退所後も、老健から主治医やケアマネジャーへの情報提供が行われ、施設によっては電話相談などのフォロー体制があります。体調悪化時は老健のショートステイ機能を利用して再入所も可能です。在宅復帰は喜ばしいことですが、家族負担増加も伴います。サービス利用による負担軽減策を含め、老健スタッフや地域包括支援センターに十分に相談し、地域の支援を最大限に活用することが重要です。
ほかの介護施設へ移る
自宅に戻るのが難しい場合や、家族が在宅介護を希望しない場合は、老健退所後に別の介護施設へ入居する選択肢があります。実際、老健を退所した人の約半数はほかの施設や病院に移っており、自宅復帰できないケースも多いのが現状です。移行先として考えられる施設には次のようなものがあります。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護医療院
- 有料老人ホーム(介護付き有料老人ホームなど)
- グループホーム
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- 介護療養型医療施設(療養病床)
老健から他施設への移行をスムーズに行うためには、退所前から情報収集と申し込みを進めておくことが肝心です。老健の支援相談員やケアマネジャーが、希望に沿った施設を紹介してくれることもあります。また、退所時には老健から新しい施設への情報提供が行われますので、医療や介護情報の引き継ぎも心配ありません。老健を利用している間に、次に移るべき施設の種類や候補を家族で話し合い、必要なら見学や入居予約を進めておきましょう。
介護老人保健施設を退所する際の手続き・費用

老健から退所することが決まった場合、どのような手続きが必要になるでしょうか。また退所時に追加で費用は発生するのでしょうか。ここでは退所時の手続きの流れと、退所時にかかる費用の目安を解説します。
退所時の手続きの流れ
介護老人保健施設を退所する際には、事前準備も含めて以下のような流れで手続きが進みます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① 退所日の決定と事前連絡 |
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| ② 退所前カンファレンス |
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| ③ 荷物の整理・搬出 |
|
| ④ 各種書類の受け取り |
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| ⑤ 清算と退所手続き |
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以上が一般的な流れです。なお自主的に退所する場合は上記のとおり早めの意思表明が必要ですが、施設からの退所勧告の場合もすぐに退所を強制されることはありません。多くは1〜2ヶ月程度の猶予期間が与えられ、その間に次の行き先を探す時間があります。いずれの場合も、施設とよく連絡を取り合い計画的に準備することが大切です。
退所時にかかる費用の目安
老健を退所する際、特別に高額な費用が発生することは基本的にありません。退所月の利用料を日割り計算で支払い、すでに前払いしている分との過不足を清算する程度です。老健は入所一時金が不要なため、退所時に敷金のような返還金もありません以下、退所時に留意すべき費用についてまとめます。
- 利用料の日割精算
- オプション利用に関する費用の清算
- 引越し費用
以上のように、老健退所そのものに特別な費用負担はありません。在宅生活なら在宅サービス利用に伴う自己負担や生活費、ほかの施設に移るならその施設の入居一時金や月額費用などが発生します。老健を退所すると介護保険施設での包括的な支援から離れることになるため、経済面でも新たな出費に備えておきましょう。
まとめ

介護老人保健施設(老健)は在宅復帰を目的としたリハビリ重視の介護施設です。老健では医師の管理下で看護や介護、リハビリテーションなど手厚いサービスが受けられ、利用者の自立度向上や家族の在宅介護準備をサポートしてくれます。一方で、終身利用する前提の施設ではないため、3〜6ヶ月ごとに在宅復帰の可否を検討して退所が促される仕組みになっています。老健を利用する際には、「いずれ退所して次の生活場所へ移行する」ことを視野に入れ、早めから準備を進めることが重要です。在宅復帰という目標に向けて専門職がチームで支援してくれる老健を上手に活用し、退所後も安心して暮らせるよう準備を整えていきましょう。



