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認知症の初期症状と介護が必要になるサイン|物忘れとの違いや早期発見のポイント、対処法も解説

 公開日:2026/01/27
認知症の初期症状と介護が必要になるサイン|物忘れとの違いや早期発見のポイント、対処法も解説

認知症は、いったん発達した認知機能が持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障が出ている状態です。年齢を重ねると誰でも物忘れは起こりますが、認知症では忘れ方や困りごとの出方が異なる場合があります。ご本人が困っているのに言葉にできない場合もあり、ご家族が違和感を抱いても、どこに相談すればよいかわからずに時間がたってしまうこともあります。この記事では、介護につながりやすい初期の変化を具体的に整理し、単なる物忘れとの違い、進行によって起こりやすい症状、身体の衰えとの関係、そしてご家族が今日からできる対処法をまとめます。

高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

介護につながる認知症の初期症状

介護が必要になる前に表れやすい変化を、家庭で気付くポイントとして整理します。

物忘れが増える

年齢に伴う物忘れでは、体験の一部が抜ける形になりやすく、きっかけがあると思い出せる場合があります。一方で認知症では、新しい出来事を覚えにくくなり、直前の出来事そのものが抜け落ちるようにみえる場合があります。

例えば以下のように、生活のなかで困りごととしてあらわれることがあります。

  • 食事をした事実を忘れてしまう
  • 同じ買い物を繰り返して家に同じ品が増える
  • 約束をしていないと思い込んで予定が崩れるなど

ポイントは回数よりも、忘れたことで生活が回らなくなっているかどうかです。受診や相談の場では、いつから、どのような場面で、何に困ったかを短く伝えられると評価が進みやすくなります。ご本人が責められたと感じると隠そうとする場合もあるため、忘れを指摘するより、困りごとを一緒に減らす姿勢を示すとよいでしょう。

同じ話を繰り返す

同じ内容を短い間隔で繰り返す場合、新しい情報が定着しにくくなっている可能性があります。ご本人は繰り返している自覚がないことが少なくありません。

繰り返しが増える背景には、不安や緊張が隠れている場合もあります。例えば予定がわからない不安や家のなかでの役割が失われた不安などがあると、同じ確認が増えることがあります。繰り返しそのものだけで判断せず、生活全体の変化と合わせて観察することが大切です。

判断力や集中力が低下する

判断力や集中力の低下は、家事や買い物のように手順が複数ある場面で気付きやすい傾向があります。例えば下記のような状況です。

  • 以前は問題なく行えていた料理で順序が入れ替わる
  • 支払いの流れで迷う
  • 同じ話を聞いても理解に時間がかかる

こういった変化は、日常生活での負担が増えているサインです。仕事を引退した後や子どもが独立したといった生活の刺激が減る時期に目立つ場合もあります。ご本人は失敗を恥ずかしいと感じ、無理に取り繕ったり、急に頑固になったように見えたりする場合がありますが、背景に認知機能の変化があることも考えられます。

時間や場所の感覚が曖昧になる

曜日や日付がわからなくなる、約束の時間を間違える、慣れた場所で道順に迷うなどの形で表れる場合があります。

最初は疲れた日のみ起こるなど波があることもありますが、繰り返す場合は注意が必要です。時間や場所の感覚が乱れると、遅刻や約束の失敗が増えるだけではなく、帰宅できない、見知らぬ場所で立ち尽くすなど安全面の心配が出ます。ご本人は不安が強くなり、焦りから判断が乱れることもあります。

気分の浮き沈みが激しくなる

認知症では、物忘れなどの中核症状に加えて、気分の落ち込み、不安、いら立ち、興奮、睡眠の乱れなどがみられる場合があります。こうした変化は、環境の変化や体調不良が引き金になることもあり、認知機能の変化と絡み合って表れます。例えば引っ越しや家族構成の変化、生活リズムの乱れ、痛みや便秘、脱水などが重なると、気分の不安定さが目立つ場合があります。

認知症の初期症状と単なる物忘れの違い

認知症の初期症状と物忘れの大きな違いは、忘れ方の特徴と、日常生活への影響の出方です。年齢による物忘れでは、体験の一部が思い出しにくい形になりやすく、思い出すきっかけがあると記憶が戻る場合があります。

一方、認知症の初期症状としての物忘れは、体験そのものが抜け落ちたようにみえ、きっかけがあっても思い出しにくい場合があります。例えば、朝食の内容が思い出せないのは年齢の変化でも起こりえますが、朝食を食べた事実そのものが抜け落ちる場面が繰り返されるようになります。加えて、忘れていることへの自覚が乏しくなることがあり、周囲からみると同じ質問や同じ確認が短い間隔で続く形で気付くこともあります。

認知症の進行によって現れる症状

進行に伴って起こりやすい症状を、生活の困りごとと結びつけて解説します。

記憶障害

初期は新しい出来事を覚えにくい形が目立ちますが、進行すると、約束や予定を守ることが難しくなり、日常生活の支援が必要になる場合があります。例えば下記のような状況です。

  • 服薬を忘れて症状が悪化する
  • 支払いを済ませたかどうかわからず不安が強まる
  • 同じ買い物を繰り返して家計に影響が出るなど

こういった困りごとは、家族が繰り返し注意しても改善しにくい場合があるため、本人の努力に頼らず、暮らしの仕組みを整える方向で考えると負担が減ります。服薬はわかりやすいケースやカレンダーで管理し、支払いは自動引き落としにするなど、失敗しにくい形に変えていくとよいでしょう。仕組みで支えることが、記憶障害への実践的な対応になります。

見当識障害

見当識障害は、今がいつか、ここがどこか、目の前の方が誰かといった理解が難しくなる状態です。時間の見当がつかないことから始まり、場所や人物へと広がる場合があります。外出先で自宅がわからなくなると、ご本人は強い不安に陥りやすく、疲労や脱水が重なって体調を崩すこともあります。

家族は、外出の安全を確保し、連絡方法を整えると同時に、ご本人が落ち着ける声かけや環境づくりを意識することが大切です。予定変更がある場合は直前の説明だけでは混乱しやすいことがあるため、早めに伝え、紙に書いて一緒に確認するなどの工夫が役立ちます。

理解力や判断力の障害

理解力や判断力が低下すると、状況に応じて考えて選ぶことが難しくなり、金銭管理や契約、手続きの場面でトラブルが起こりやすくなります。代表的なトラブルがこちらです。

  • 電話勧誘をうまく断れない
  • 必要のない契約に同意してしまう
  • 支払いを重複してしまう

ご本人の尊厳を守りながら、危険がある場面を減らす仕組みを整える必要があります。

実行機能障害

実行機能障害は、段取りを立てて行動し、複数の手順を順序立てて進めることが難しくなる症状です。料理や掃除、役所の手続きなど、工程が多い作業で失敗が増える場合があります。ご本人は頭の中で手順を組み立てにくくなっているため、急かされると混乱が強まることがあります。家庭では、作業を細かく分け、見える形にして一緒に確認する、難しい手続きは家族が代わるなど、負担を調整するとよいでしょう。

感情表現の変化

認知症では、妄想、幻覚、徘徊、興奮、暴言、睡眠の乱れなどの行動や心理の症状がみられる場合があります。背景には、不安や混乱、環境の刺激、体調不良などが重なることも多く、症状だけを切り取って評価すると対応が難しくなります。家庭でできる基本は、刺激を減らし、生活リズムを整え、安心できる関わりを増やすことです。危険がある場合は安全確保を最優先し、医療機関や介護の専門職に相談して支援体制を整える必要があります。家族だけで抱え込むと疲弊しやすいため、早い段階から助けを求めることが大切です。

介護につながる身体的な衰え

認知症だけでなく、筋力や移動機能の低下が介護につながる流れを解説します。

サルコペニア

サルコペニアは、高齢期に起こりやすい筋肉量と筋力の低下で、歩行速度の低下や立ち上がりのつらさなどとして表れる場合があります。筋力が落ちると転倒しやすくなり、外出が減って活動量がさらに落ちるという悪循環に入りやすくなります。認知症の有無に関わらず、サルコペニアが進むと生活の自立が難しくなり、介護が必要になる要因になります。予防の基本は、栄養と運動の両方を整えることです。たんぱく質を含むバランスのよい食事を意識し、無理のない筋力づくりを生活のなかに取り入れるとよいでしょう。持病がある方や痛みがある方は、主治医に相談しながら進めるようにしましょう。

ロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドロームは、骨、関節、筋肉など運動器の機能が低下し、移動する力が落ちた状態です。痛みや関節の変形、骨粗しょう症、筋力低下などが重なり、歩くことや立ち座りが難しくなる場合があります。移動が不安になると外出を避けやすくなり、社会参加が減って気持ちの落ち込みにつながる場合もあります。ロコモティブシンドロームは進行すると自立した生活が難しくなる心配があるため、早めに気付いて対応することが大切です。家庭では、歩く距離が短くなっていないか、階段を避けることが増えていないかなど、日常の行動の変化を手がかりにするとよいでしょう。

介護につながる初期症状を早めに発見するには

日常の会話や確認で変化を見逃さないための、具体的な工夫を解説します。

家族と積極的に会話する

早期発見の基本は、日常の会話と生活の様子を通じて変化を見つけることです。いきなりテストのような質問で確認するとご本人が警戒しやすいため、普段の雑談のなかで、予定の理解、最近の出来事の記憶、家事の段取りなどを自然に観察するとよいでしょう。違和感があった場合は、いつから、どの場面で、何が起こったかを短く記録しておくと、受診や相談の場で説明しやすくなります。

定期的にチェックリストで確認する

認知機能だけではなく生活機能の変化を整理する道具として役立ちます。忘れを感じても、生活が保たれているのか、外出や買い物、食事の準備などに影響が出ているのかは、本人の言葉だけではわかりにくい場合があります。定期的に同じ観点で確認することで、変化が続いているのか、一時的な体調不良なのかを整理しやすくなります。

介護につながる初期症状を発見したとき家族ができること

気付いた後に慌てないために、相談先の選び方と生活の整え方を具体的に解説します。

定期的に健康診断を受ける

健康診断は、生活習慣病など身体の状態を把握し、治療や生活改善につなげるための機会です。高血圧、糖尿病、脂質異常症などは脳や血管の健康にも関係し、認知機能に影響する可能性が指摘されています。

持病の管理が不十分な場合は体調の波が大きくなり、物忘れや気分の変化が目立つ場合もあります。定期的に受診し、必要な治療を受けることは、結果として生活機能の維持に役立つ可能性があります。

参照:『糖尿病や高血圧で認知症になりやすいでしょうか?』(国立長寿医療研究センター)

健康的な生活を維持・促進する

生活の工夫は、食事、運動、睡眠、社会とのつながりを、無理なく続けられる形で整えることが基本です。たんぱく質を含むバランスのよい食事を心がけ、食欲が落ちた場合は一度に多く食べようとせず、回数や内容を工夫するとよいでしょう。運動は、長い時間を確保できない場合でも、散歩や体操など短い時間から始め、日常生活のなかで体を動かす機会を増やすと続けやすくなります。睡眠は、昼夜逆転があると気分の不安定さや混乱が強まる場合があるため、日中の活動量を保ち、夜に眠りやすいリズムを整えるようにしましょう。

積極的に社会活動に参加する

人との交流や社会参加は、心身の刺激となり、閉じこもりや気持ちの落ち込みを防ぐ観点からも重要です。外出や会話の機会が減ると、活動量が下がり、筋力低下や孤立につながりやすくなります。社会参加といっても、大きな活動を始める必要はありません。近所の散歩や買い物、趣味の集まり、地域のサロンなど、ご本人が負担なく参加できる形で続けることが大切です。

地域包括支援センターに相談する

高齢の方の生活を支える総合相談窓口で、医療や介護、福祉の視点から支援につなげる役割があります。認知症が心配な場合は、どの医療機関に相談すればよいか、介護保険の手続きはどう進めるか、家族の負担が大きいときにどのサービスを使えるかなど、幅広く相談できます。本人の状況がはっきりしない段階でも相談できることが多く、困りごとを整理する場として活用するとよいでしょう。

医療機関を受診する

まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて物忘れ外来や認知症疾患医療センターなどにつなげてもらう方法があります。認知症に似た症状は、うつ状態、せん妄、内分泌の異常などでも起こる場合があり、治療によって改善が期待できる原因が隠れていることもあります。そのため、自己判断で認知症と決めつけず、評価を受けることが大切です。

まとめ

認知症の初期には、物忘れだけではなく、同じ話の繰り返し、判断力や集中力の低下、時間や場所の感覚の乱れ、気分の不安定さなどが組み合わさって表れる場合があります。単なる物忘れと見分けるときは、忘れ方の特徴に加えて、生活の困りごとが増えているかどうかを確認することが大切です。進行すると、記憶障害や見当識障害、理解力や判断力の障害、実行機能障害、行動や心理の症状などが起こりやすくなり、生活の支援が必要になる場面が増えます。また、サルコペニアやロコモティブシンドロームといった身体的な衰えも、介護が必要になる要因になりえるため、栄養と運動、生活リズム、社会参加を無理なく整えることが重要です。ご家族ができることは、変化を記録して共有し、地域包括支援センターや医療機関につなげ、支援の選択肢を早めに確保することです。一人ひとりに合う支え方は状況によって異なりますが、迷いを放置せず相談する姿勢が、ご本人の生活とご家族の安心感を守ります。

この記事の監修医師