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寝たきりになると拘縮になる理由は?症状や進行の目安、リスクと予防・改善方法を解説

 公開日:2026/01/13
寝たきりになると拘縮になる理由は?症状や進行の目安、リスクと予防・改善方法を解説

寝たきり状態になると、身体を動かす機会が減ることで筋肉や関節の柔軟性が失われ、関節の可動域が狭くなる拘縮が起こりやすいです。

拘縮が進行すると、日常生活動作が困難になり、介護負担も増加するほか、褥瘡(床ずれ)慢性的な痛み骨折などのリスクも高まります。特に長期間同じ姿勢で過ごすことにより、血流が悪化し、筋肉や腱、靭帯が固くなるため、放置すると症状が悪化しやすいです。

予防や改善には、適切な体位変換やリハビリテーション、ポジショニングが重要であり、本人の残存機能を活かしながら無理のないケアを心がけることが求められます。

伊藤 規絵

監修医師
伊藤 規絵(医師)

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旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

拘縮の基礎知識

拘縮の基礎知識

拘縮とは、筋肉や関節を長期間動かさないことで、関節周囲の組織が硬くなり、関節の動きが制限される状態を指します。日常生活にも影響しやすいため、注意が必要です。

拘縮とは

拘縮とは、関節を長い間動かさないことで周囲の筋肉や腱、皮膚、関節包などが硬く短縮し、関節の可動域が制限される状態を指します。寝たきりや骨折の固定、脳梗塞後の麻痺、痛みや炎症などが原因となり、関節を使わない期間が長いほど組織の柔軟性は低下し、動かしたときに痛みを伴うこともあります。初期は筋肉や腱が硬くなり、進行すると関節が伸びず曲がったまま固まることが少なくありません。

参照:『《総説》関節拘縮‑その予防・治療について‑赤居正美*』(リハビリテーション医学)

拘縮の症状

拘縮の症状は、関節の可動域が徐々に狭くなることで、動かそうとすると痛みが出たり、強い抵抗を感じたりする点が特徴です。主に肩、肘、手指、股関節、膝、足関節などの大きな関節で発生しやすく、進行すると関節が曲がったまま固定されてもとに戻らなくなるケースもみられます。

また、筋肉の萎縮や腱、靱帯の硬化も伴い、衣服の着脱や座位保持、歩行、整容、排泄、入浴などの日常生活動作は大きく制限されます。症状が進むと、寝返りや仰向け保持など体位調整も困難になり、褥瘡のリスクも高まります。麻痺や痛み、変形、皮膚のひきつれ(皮膚性拘縮)、手足の痙縮などが重なることで、介護者の身体的・精神的な負担も増加します。拘縮は一度進行するともとの柔軟性や機能を取り戻すのが難しくなり、ご本人のQOLや自立度が低下します。本人だけでなく介護者や家族にも影響が大きいです。

拘縮の種類

拘縮にはいくつかの種類があり、発生する組織や原因によって分類されます。代表的なものには、筋肉が萎縮して起こる筋性拘縮、手術ややけどなどで皮膚がひきつる皮膚性拘縮、神経障害による神経性拘縮、関節の構成組織の炎症や損傷が原因の関節性拘縮、そして腱や靭帯、結合組織が収縮する結合組織性拘縮があります。このように、原因や部位によって症状や予防、改善方法が異なるため、それぞれに適した対策が求められます。

寝たきりの方が拘縮になりやすい理由と生じやすい部位

寝たきりの方が拘縮になりやすい理由と生じやすい部位

寝たきりの方は、関節や筋肉を動かさない時間が長くなるため、筋や腱の柔軟性が低下し拘縮が起こりやすいです。特に股関節や膝関節、足関節など下肢の関節で生じやすい傾向です。

寝たきりの方が拘縮になりやすい理由

寝たきりの方が拘縮になりやすい理由は、関節や筋肉を長期間動かさないことで筋力や柔軟性が低下し、筋肉や腱、関節包などの軟部組織が硬く短縮するためです。

寝たきりによる運動不足や血行不良で、組織に十分な酸素や栄養が行き渡らず、コラーゲン線維が増えて組織が線維化し、弾力性が失われます。

また、脳や神経の障害による麻痺、痛み、むくみ、加齢に伴う活動性低下も絡み、関節可動域が制限されてしまうケースが多くみられます。身体がうまく動かないことで自力での寝返りや座位保持が困難となり、一部の筋肉や関節だけに荷重がかかりやすく、誤ったポジショニングや介助方法がさらなる拘縮進行の原因です。

結果として日常動作や生活の質が著しく低下し、介護負担も増加します。

拘縮が起こりやすい部位

拘縮が起こりやすい部位は、主に肩関節、肘関節、手指、股関節、膝関節、足関節などです。寝たきりの方の場合は特に下肢(股・膝・足)の関節で拘縮が進行しやすく、これにより歩行や座位保持、立ち上がりなどの日常動作が大きく制限されます。

また上肢では、肩や肘、手指の拘縮が生じると、食事や着替え、整容行為などにも支障が出ます。これら部位の拘縮が進むことで生活の質が低下し、介護負担も増加するため、早期からの予防とケアが大切です。

拘縮のメカニズムと進み方

拘縮のメカニズムと進み方

拘縮は、長期間関節を動かさないことで筋や腱、関節包などの組織が硬くなり、コラーゲン線維が増加して可動域が徐々に狭まって進行します。

拘縮のメカニズム

拘縮のメカニズムは、関節や筋肉を長期間動かさないことで、関節包や筋、腱、皮膚など関節周囲の軟部組織にコラーゲン線維の増加や線維化が生じ、組織が硬くさらに短縮するのが主な原因です。また、血流や栄養の供給が不足して組織の代謝や修復能力が低下し、さらに滑膜や結合組織の代謝異常や低酸素状態が進行すると、線維芽細胞が活性化してコラーゲンの産生が促進されます。この結果、関節の可動域が徐々に狭くなり、もとの柔軟性を失っていくのが特徴です。

参照:『拘縮の病態とメカニズム』(日本ペインリハビリテーション学会)

拘縮の進行の目安

拘縮の進行の目安は、関節の可動域が徐々に狭くなり、筋肉や腱、関節周囲組織が硬くなることで動きづらさが増す点です。初期は筋肉の柔軟性低下から始まり、放置すると次第に関節自体が動かせなくなりソフトな抵抗からハードな抵抗へと感触が変化します。進行した状態では日常動作に大きな支障が生じ、回復が難しくなるため、可動域制限や痛み、変形の有無で早期発見が重要です。

参照:『Q&A Vol.194 【関節拘縮の困った!】治るかどうかの見極め』(日本臨床学会)

拘縮が生じることによる生活や介護への影響

拘縮が生じることによる生活や介護への影響

拘縮が生じると、生活面や介護にさまざまな支障が現れます。まず、主要な関節が徐々に動かなくなり、衣服の着脱や移乗、排泄、入浴、食事など日常生活動作の多くが困難です。例えば股関節の拘縮は座位や歩行、排せつ、浴槽への出入りを難しくし、肩や肘の拘縮は上半身を使った自力動作を著しく制限します。

また、関節や筋肉が硬くなることで体位変換や清拭も難航し、介護者の身体的・精神的負担が増加しやすいです。さらに放置すると、拘縮した部位の痛みや変形、皮膚障害(褥瘡)の発生や、骨折や感染症のリスクが高まります。首や腰の拘縮によって誤嚥の危険や姿勢保持困難が生じることで、全身の健康まで影響を及ぼすケースもあります。

本人は活動範囲が狭まり、長期臥床による筋力や心肺機能低下、廃用症候群など全身状態も悪化しやすくなり、社会的孤立感や意欲低下も招きやすいです。このように拘縮は生活機能・QOLの低下と介護負担増の大きな要因です。

参照:『介護者による体位交換』 (健康長寿ネット)

拘縮を予防する方法

拘縮を予防する方法

拘縮を予防するためには、日常生活のなかで意識的に関節を動かすことがとても重要です。自力で動くことが難しい場合でも、介護者による他動運動やストレッチを定期的に行うことで、関節や筋肉の柔軟性維持と血行促進を図ることができます。また、長時間同じ姿勢を続けず、一定時間ごとに体位変換や寝返りを行うことも効果的です。

良肢位(関節が自然な位置になる姿勢)を意識し、クッションや枕を使い身体の圧力が均等に分散されるよう工夫も大切です。さらに、筋肉や関節を温める温熱療法や入浴、マッサージを取り入れることも予防に役立ちます。

介助時は、急な動きや無理な力を避けて、痛みや不快感が生じていないかを細かく確認しながら、リラックスした体勢になるよう心がけることが大切です。これらの日常的な予防策の継続で、拘縮の発症や進行を効果的に防ぐことができます。

参照:『温熱療法による関節拘縮進行抑制効果の検証 CiNii Research』(理学療法学)

拘縮を改善するケア

拘縮を改善するケア

拘縮を改善するケアは、無理のない範囲で関節や筋肉をゆっくりと動かし、痛みを与えずにストレッチや良肢位の保持、適切なポジショニングを心がけることが大切です。

ポジショニングを工夫する

ポジショニングの工夫は、寝たきりや介助が必要な方の拘縮や褥瘡予防、安楽な生活の維持にとってとても重要です。

まず、身体をねじらない、歪めない姿勢を基本とし、関節や筋肉が無理なく自然な位置で安定するようにサポートします。クッションや枕、専用の体圧分散用具を活用して、肩甲骨・仙骨・踵など骨突出部にかかる圧を軽減し、身体のどこか一部だけに荷重が集中しないようにします。

仰向け(仰臥位)の場合は、膝や首の下にクッションを入れることで自然な湾曲を保ち、下肢や腕も軽く持ち上げてリラックスできる状態を作ります。横向き(側臥位)の際は、両膝の間にクッションを挟み、骨盤や体幹の軸が一直線になるように調整します。

ベッドの角度や高さも調節し、介助者自身の腰や手首も負担をかけずに安全性の高いケアができる体勢を心がけることがポイントです。どのポジショニングでも、患者さんの呼吸・表情・皮膚状態をよく観察し、快適と安全性を両立した姿勢作りを続けることが大切です。

訪問リハビリテーション・マッサージを受ける

訪問リハビリテーションやマッサージを受けることで、拘縮の改善や予防に大きな効果が期待できます。理学療法士や専門スタッフによる関節可動域訓練やストレッチ、日常生活動作の練習を自宅で継続的に受けられるため、筋力や柔軟性の向上につながります。

マッサージでは硬くなった筋肉をやさしくほぐして血流を促進し、痛みやこわばりの軽減も目指せます。その結果、寝返りや立ち上がりなど日常動作がしやすくなり、本人の自立度向上やご家族の介護負担軽減にもつながります。定期的な訪問ケアが、拘縮の進行予防と生活の質の向上に欠かせません。

医師・療法士の指示に従い装具(スプリント)を利用する

拘縮の改善には、医師や療法士の指示に従い装具(スプリント)の適切な利用が重要です。スプリントは関節を正しい位置に保ち、過度な屈曲や伸展を防ぎながら筋肉や腱、関節包の短縮を抑える役割があります。

また、一定時間持続的な矯正力を加えることで関節や軟部組織が徐々に伸びやすくなり、可動域の拡大や痛み軽減にも効果が期待できます。患者さんの状態や生活動作に合わせ、装着時間や形状を調整しながら、リハビリと併用して使うことが大切です。専門職に相談し、安全性の高いかつ効果的な方法で取り入れます。

参照:『スプリントの発展の経緯と今後の課題 特 集 2』(日本義肢装具学会誌)

介護者がストレッチやマッサージを行う

介護者がストレッチやマッサージを行う際は、無理をさせず安全性の高さに配慮しながら、痛みや違和感がない範囲でゆっくりとした実施が大切です。ストレッチは肩や肘、膝、足首など主要な関節をゆっくり伸ばし、キープして筋肉や腱、関節包をやわらかく保つことを意識しましょう。

マッサージは手のひらや指で円を描くように行い、筋肉の緊張やこわばりを和らげるようにします。本人の呼吸や表情を確認しながら、リラックスできる雰囲気をつくることも効果的です。継続的なケアにより、拘縮の進行予防や関節の動きを維持できます。

まとめ

まとめ

寝たきりになると拘縮が起きやすくなる主な理由は、長期間関節や筋肉を動かさないことで筋力低下や血流不良、筋や腱、関節包などの軟部組織の柔軟性が失われ、コラーゲン線維の増加や組織の硬化が進行するためです。

このような状態が続くと、関節の可動域が狭くなり、衣服の着脱、移乗、排泄などの日常動作が難しいです。また、麻痺や認知症、加齢、疼痛、ストレスなども交感神経の緊張や運動制限を引き起こし、拘縮のリスクを高めます。

症状は、動かせる範囲が徐々に狭まり、痛みや変形、皮膚障害(褥瘡)、骨折などの合併もあります。進行の目安は、関節の硬直感、日常生活動作困難、筋肉萎縮などの現れ方です。予防・改善には体位変換やストレッチ、温熱療法、適切なポジショニングの工夫が不可欠で、医療・介護の専門職と連携し、早期から継続しての対応が生活の質を守るポイントです。

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