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パーキンソン病が進行すると寝たきりになる?進行速度や予後、リハビリ方法を解説

 公開日:2026/01/11
パーキンソン病が進行すると寝たきりになる?進行速度や予後、リハビリ方法を解説

パーキンソン病は、脳内の特定の神経細胞が徐々に機能を失うことによって、運動や生活動作にさまざまな支障が生じていく進行性の神経疾患です。早期には手足のふるえや筋肉の硬直、動作の緩慢さが主な症状ですが、進行すると歩行障害や転倒、認知機能の低下、飲み込みにくさなどが現れて、最終的に寝たきり状態になる場合もあります。しかし、すべての患者さんが寝たきりになるわけではなく、適切な治療やリハビリテーション、生活環境の工夫、転倒予防対策を行うことで、進行を遅らせ生活の質を保つことが可能です。将来に備え、医療者やリハビリなどの専門家と協力しながら、自分らしい暮らしを続けていくことが大切です。

伊藤 規絵

監修医師
伊藤 規絵(医師)

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旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

パーキンソン病の基礎知識

パーキンソン病の基礎知識

パーキンソン病は、中脳黒質にあるドパミン産生細胞が徐々に減少し運動障害を引き起こす神経変性疾患です。加齢とともに発症リスクが高まり、手のふるえや動作の遅れなどが主な症状として現れます。

パーキンソン病の症状

パーキンソン病の代表的な症状は、手足のふるえ(振戦)、筋肉のこわばり(固縮)、動作が遅くなる(動作緩慢)、前かがみの姿勢(前屈姿勢)、小刻み歩行などの運動症状です。歩行時の足のすくみや、腕の振りが減り、文字が小さくなる、声が小さくなることもあります。また、便秘や頻尿、嗅覚低下、疲れやすさ、気分の落ち込み、無気力、睡眠障害など日常生活の質に影響する非運動症状も多くみられます。これらの症状は個人で現れ方が異なり、進行とともにさまざまな日常動作が困難になっていきますが、適切な治療により症状の軽減ができます。

パーキンソン病の原因

主な原因は、中脳黒質の部位にあるドパミンをつくる神経細胞が徐々に減少し、ドパミンの不足です。このドパミンの減少により、運動をスムーズに調整する神経回路が障害を受け、ふるえや筋肉のこわばり、動作緩慢などの症状が現れます。なぜ神経細胞が破壊されるのかは完全には解明されていませんが、α-シヌクレインタンパク質が神経細胞内で異常にたまり、細胞死を引き起こすことが発症と深く関わっていると考えられています。さらに加齢や遺伝的要因、一部の環境要因がリスクを高めることもわかってきました。発症の背景や進行速度には個人差があり、複数の要因が重なって起こるとされています。

参照:『パーキンソン病(指定難病6』(厚生労働省)

パーキンソン病の検査と診断

パーキンソン病の検査と診断は、主に脳神経内科で行います。まず、医師が問診をとおして発症時期や症状の経過、家族歴などを詳しく確認し、神経学的診察で運動機能や筋肉のこわばり、ふるえ、姿勢などを評価します。診断を確定するためには公的な診断基準を用い、パーキンソン病に特有の症状があるかを総合的に判断します。

ほかの疾患との鑑別のために脳MRIやCTなどの画像検査が行われますが、これらは異常がないことが多く、主にほかの脳疾患を除外する目的で行われます。さらにDATスキャンやMIBG心筋シンチグラフィなどの核医学的検査が補助的に活用されることもあります。血液検査や尿検査で診断が確定するのではなく、総合的な診察と検査所見から診断されます。

参照:『パーキンソン病』(筑波大学 脳神経内科)

パーキンソン病の進行速度の目安

パーキンソン病の進行速度の目安

パーキンソン病は一般的にゆっくり進行する神経疾患ですが、進行速度には個人差があります。多くの場合、発症から10年以上かけて症状が徐々に進行しますが、症状の現れ方や重症化のスピードは患者さんによって異なります。

パーキンソン病の重症度区分

パーキンソン病の重症度は、主にホーン・ヤールの重症度分類生活機能障害度分類で評価されます。ホーン・ヤールの分類は0〜5度の6段階で、1度は症状が片側に限られ、2度は両側に症状が出るもののバランスは保たれています。3度になるとバランス障害が現れますが、介助なく生活可能です。4度は部分的に介助が必要となり、5度は車椅子や寝たきり状態です。一方、生活機能障害度分類は1度(ほとんど介助不要)、2度(部分介助)、3度(全面介助)に分けられ、日常生活への影響を評価します。これらの評価基準を用いて、適切な治療方針が検討されます。

参照:『パーキンソン病(指定難病6』(厚生労働省)

パーキンソン病で寝たきりになるまでの期間の目安

パーキンソン病で寝たきりになるまでの期間は個人差が大きいですが、発症から10〜20年程度で身体機能が著しく低下し、寝たきり状態になることがあるとされています。多くの場合、発症後10〜15年は自立した日常生活を維持できる一方、進行とともに歩行困難や介助が必要な場面が増え、最終的に全介助や寝たきりとなる場合があります。ただし最近では治療の進歩やリハビリ、生活環境の工夫などにより、長期間にわたり中等度で安定した生活を送る方も増えています。寝たきりを回避するためには、早期診断と適切な薬物治療、リハビリの継続が大切です。

参照:『006 パーキンソン病』(厚生労働省)

パーキンソン病の重症期の予後

パーキンソン病の重症期の予後

パーキンソン病の重症期では合併症リスクが高まります。誤嚥性肺炎や栄養障害などが予後に大きく影響し、個人差があるものの生活の質維持が大切です。

パーキンソン病で寝たきりになった後の経過

パーキンソン病で寝たきりになった後の経過は、合併症や全身状態によって大きく左右されます。寝たきり後は嚥下障害や誤嚥性肺炎、栄養障害、脱水、腸閉塞、腎機能障害などの合併症リスクが高まるため、生活や医療・介護の質が予後に直結します。

また認知機能障害や精神症状、自律神経障害が現れることもあり、日常生活の自立が困難です。全員が急速に寝たきりになるわけではなく、個々の進行速度や対応によって経過は違います。適切な支援と合併症予防が大切です。

重症期に注意すべき合併症

パーキンソン病の重症期に注意が必要な合併症は、誤嚥性肺炎、栄養障害、転倒、骨折、認知症、うつ状態、便秘、起立性低血圧、褥瘡、感染症などが挙げられます。特に誤嚥性肺炎は食べ物や唾液が気管に入ることで起こり、死亡原因の上位を占めます。転倒による大腿骨骨折は寝たきりの直接的なきっかけとなることが少なくありません。また、認知症やせん妄、うつ症状も進行とともに多くみられ、日常生活や予後に大きな影響をおよぼします。起立性低血圧や便秘、褥瘡、感染症も注意すべき合併症として知られています。

パーキンソン病の治療とリハビリ

パーキンソン病の治療とリハビリ

パーキンソン病の治療は、主にドパミン神経細胞を補う薬物療法(L-ドパなど)や、症状や生活機能改善のためのリハビリテーションが基本です。

パーキンソン病の治療法

パーキンソン病の治療法は多岐にわたりますが、主に薬物療法、デバイス補助療法、手術療法、リハビリテーションが組み合わされます。薬物療法の中心はレボドパ(L-ドパ)製剤で、脳内のドパミン不足を補うことで運動症状を改善します。ドパミンアゴニスト、MAO-B阻害剤、COMT阻害剤、抗コリン薬、アマンタジンなど症状や副作用を考慮して複数の薬剤を使い分けます。

長期間服用でウェアリングオフやジスキネジアなどの副作用が現れる場合は、薬剤の調整や補助薬の追加が必要です。薬物で症状管理が困難な場合や運動合併症が強い場合、デバイス補助療法や外科療法が検討されます。脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation:DBS)は脳内に電極を入れて電気刺激を行い症状を改善するもので、国内でも保険適用となっています。また、レボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法(Levodopa-Carbidopa Intestinal Gel:LCIG)や持続皮下注による治療も可能です。近年はiPS細胞による再生医療も研究が進み、今後の選択肢として期待されています。

参照:『世界トップクラスのパーキンソン病iPS細胞バンクを背景に根本的治療薬の開発を目指す! - Juntendo Research』(順天堂大学)

パーキンソン病のリハビリ

パーキンソン病のリハビリは、運動機能の維持・日常生活の自立支援を目的として理学療法、作業療法、言語療法など多岐にわたります。ストレッチや筋力トレーニングで筋肉の固縮予防や姿勢保持、歩行練習を行い、体力低下を防げるよう有酸素運動も重要です。起き上がり、立ち上がり、座るなどの基本動作練習、階段の昇降、トイレや入浴の動作訓練を通して生活動作の維持・安全性の高い移動を目指します。さらに呼吸訓練や嚥下練習、発声・構音訓練も取り入れ、併発症の予防やコミュニケーション力の向上に役立ちます。薬効が現れている時間帯(ON時)に合わせてリハビリを行うことで運動症状が改善しやすく、長期間続けることで歩行速度や筋力、バランス能力が維持できると報告されています。各種リハビリは専門家の指導のもと、個々の症状や生活環境に合わせて適切なプログラムを選ぶことが大切です。

参照:『パーキンソン病のリハビリテーション』(宇多野病院)

パーキンソン病で寝たきりになった際に受けられる公的支援

パーキンソン病で寝たきりになった際に受けられる公的支援

パーキンソン病で寝たきりになった際は、難病医療費助成制度や介護保険制度、障害者総合支援法などの公的支援を受けることができます。医療費や介護サービスの自己負担軽減、生活支援が可能です。

難病医療費助成制度

難病医療費助成制度は、原因が未解明かつ治療困難で長期療養が必要な指定難病と診断された患者さんが、医療費負担を軽減できる国の制度です。重症度分類で一定基準以上、または月ごとの医療費が33,330円を超える月が年間3回以上ある場合は対象となり、自己負担額の上限が家庭の収入によって設定されます。

申請には指定医の診断書(臨床調査個人票)が必要で、認定された場合は特定医療費(指定難病)受給者証が交付されます。受給者証により、診察・薬代などの窓口負担が2割になったり、月額負担の上限額が適用されたりするため、高額な医療費への経済的支援を受けることができます。更新や申請には有効期間や指定医療機関の利用など注意点もありますが、公的制度として多くの患者さんが活用しています。

参照:『指定難病患者への医療費助成制度のご案内』(厚生労働省)

障害者総合支援・障害年金

障害者総合支援法は、身体障害や難病を含む障害のある方が自立した生活を送れるよう、福祉サービスや就労支援、地域生活支援など多様なサポートを提供する法律です。要介護・要支援の認定を受けた場合、居宅介護、訪問介護、短期入所、重度訪問介護、日中活動や日常生活支援、福祉用具の貸与・住宅改修など幅広いサービスを受けることができます。また障害年金は、一定の障害等級に該当すれば、初診日や納付要件など基準を満たすことで20歳から支給対象となり、生活費支援を受けることが可能です。障害基礎年金や障害厚生年金など種類によって支給額や条件も違います。受給には医師の診断書や申請手続きが必要で、市区町村や年金事務所で相談が可能です。

参照:『障害者総合支援法等の改正について』(厚生労働省)

介護保険制度

介護保険制度は、介護や支援が必要な方の生活を支えるための社会保険制度です。65歳以上は原因を問わず、また40歳以上64歳未満でも特定疾病の場合に要介護認定が受けられます。認定後は、訪問介護や通所介護、福祉用具の貸与、施設入所、介護予防サービスなど多様なサービスを自己負担1〜3割で利用できます。ケアマネジャーによるケアプラン作成と本人・家族の希望を反映したサービス調整が行われ、多職種による生活支援体制が整備されています。自立支援を理念とし、地域包括ケアシステムにより在宅、施設、医療の連携も推進されています。制度改正や報酬改定にも対応し、介護負担の軽減や質の高いサービス提供が図られています。

参照:『介護保険制度の概要』(厚生労働省)

まとめ

まとめ

パーキンソン病は進行性の神経疾患であり、発症から10年以上かけて徐々に運動障害や生活動作の困難さが増していきます。進行につれて歩行障害や転倒、筋肉の固縮、認知機能低下、嚥下障害などが現れるため、最終的に寝たきり状態になる方もいますが、すべての患者さんが寝たきりになるわけではありません。重症期に入ると誤嚥性肺炎や栄養障害、転倒による骨折などの合併症リスクが高まるため、適切な予防と管理が重要です。治療には薬物療法や手術療法とともに、運動・日常生活の維持を目指したリハビリテーションが効果的です。専門家によるリハビリの継続、生活環境の工夫、早期の介護支援導入が進行を遅延させ、生活の質維持に役立ちます。

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