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認知症の自宅介護はいつまで続く?負担を軽減する方法、限界時の対処法も解説

 公開日:2026/01/08
認知症の自宅介護はいつまで続く?負担を軽減する方法、限界時の対処法も解説

認知症の方を自宅で支える生活は、日々の関わりが中心となるため、ご家族にとって負担を感じる場面が少なくありません。記憶や判断の変化により生活のリズムが乱れやすくなり、介助の量や時間も状況によって大きく変わります。また、認知症は進行に伴って必要な支援が変化していくため、同じ介護が続くわけではなく、ご家族がその都度対応を調整していく必要が生じます。自宅での介護が長く続くこともあるため、日常生活との両立や心身の疲れを抱えながら過ごしている方も多い傾向があるのが実情です。

本記事では、自宅介護の現状、自宅介護が続く理由や負担が大きくなる要因、介護者への影響、負担を軽減するための方法、限界を感じたときの選択肢について、解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科

認知症の自宅介護の割合と期間

認知症の自宅介護の割合と期間

認知症の方の介護は、何年にもわたって続くことが多い傾向があります。発症から亡くなるまでのおおよその期間や、診断後どれくらいの時間を過ごすのかを知っておくと、自宅介護をどのくらいの長さで考えればよいかの目安になります。ここでは、自宅で生活している認知症の方の割合と、自宅介護期間の目安を解説します。

認知症の自宅介護の割合

認知症のある高齢の方の生活場所をみると、約6割が自宅で暮らしています。残りは医療機関や特別養護老人ホームなどの施設が続きますが、まず自宅での生活が中心になっている状況です。

自宅で暮らし続ける背景には、住み慣れた家のほうが落ち着きやすいこと、家族と顔を合わせる時間を保ちたいという思いなどがあります。認知症の方にとっては、環境の変化が混乱や不安につながることがあり、家具の配置や生活リズムが大きく変わらないことが安心材料になる場合があります。このため、認知症の方のケアは、自宅を軸にした期間が長くなることが多く、そのあいだ家族が介護の中心を担う場面が続いていきます。

参照:『東京の高齢者の現状』(東京都福祉保健局)

認知症での自宅介護期間の目安

認知症は、発症してから亡くなるまでの経過が約10年ほどといわれています。そのうち、医療機関で診断されてから亡くなるまでの平均は約4年半です。つまり、診断がつく前の「物忘れが増えてきた」「様子が変わってきた」と感じる時期も含めると、ご家族が認知症に向き合う時間はさらに長くなる可能性があります。

進行して重症の段階になると、寝たきりに近い状態となり、食事やお口のケア、排泄、体位交換など、生活のほとんどに介助が必要です。この段階に入ってからの平均余命は約1年半です。重症期は、自宅でも施設でも医療や介護の支えが欠かせない状態になり、支援の量も内容も大きく変化します。自宅介護を考える際には、認知症がこのような経過をたどる病気であることを踏まえ、長い時間軸で見通しを持っておきましょう。

参照:『認知症の人のエンドオブライフケア』(公益財団法人 長寿科学振興財団)

認知症の方の自宅介護が大変な要因

認知症の方の自宅介護が大変な要因

認知症の自宅介護が難しく感じられるのは、単に介助が増えるためだけではありません。日常生活の細かな変化や、時間帯によって必要な支援が違うこと、コミュニケーションの取りにくさなど、さまざまな要因が重なって負担を感じやすくなります。ここでは、介護の現場でよくみられる大変さを4つの視点から解説します。

徘徊への対応や排泄・入浴介助などの身体的負担が大きい

認知症が進行すると、見守りの時間が長くなり、日常生活の多くに介助が必要になります。外に出てしまう可能性があるため夜間も気が抜けず、睡眠が十分に取れないことが増えていきます。排泄のタイミングがつかみにくくなると、衣類の交換や清掃が頻回になり、入浴でも全身を支えながら洗う必要が生じるため、身体への負担が強くなります。こうした介助は毎日続くため、ご本人と介護を担う方の双方に疲れがたまりやすいです。

認知症の方とのコミュニケーションが難しい

言葉の理解がゆっくりになる、状況の把握が難しくなるといった変化により、会話そのものがスムーズに進まなくなることがあります。ご本人は不安や混乱を感じやすく、同じ質問や行動が繰り返されることもあります。

介護をする側は、その都度気持ちを落ち着けて対応する必要があり、精神的な疲労につながる場面が増えていきます。意思疎通に時間がかかることで、食事や排泄、身支度などの日常的な場面でも予定どおりに進まないことがあり、生活全体のリズムが乱れやすくなります。

経済的負担が大きい

認知症の進行とともに、通院や訪問診療、訪問看護、デイサービスなどの医療機関や介護サービスの利用が増えることがあります。必要な介護用品や福祉用具、住宅内の環境整備に費用がかかる場合もあり、家計への影響は無視できません。また、自宅介護を続けるために仕事を減らしたり休んだりすると、収入の低下が生活に響くことがあります。

医療費や介護費、生活費のバランスを考えながら対応する必要があり、経済面での不安を感じやすいです。

仕事や家事、育児との両立が難しい

働きながら介護を続けている方は、急な対応やデイサービスへの送り迎え、受診の付き添いなどで日々の予定を調整しなければならなくなります。家事や育児が同時にある場合、1日の時間のほとんどがケアに取られてしまい、自分の時間が確保しにくくなります。休息が十分に取れない状態が続くと、心身の疲れが強まり、体調を崩すきっかけにもなります。時間的にも精神的にも余裕がなくなることで、介護そのものが負担に感じやすくなることがあります。

認知症の方の自宅介護が続くことで生じる介護者への影響

認知症の方の自宅介護が続くことで生じる介護者への影響

認知症の介護は日々の積み重ねが大きく、短期間では負担を自覚しにくくても、長く続くことで心身や生活にさまざまな影響が現れます。ここでは、介護を担う方に起こりやすい変化を3つの観点から解説します。

心身の健康への影響

自宅介護が続くと、日常的な見守りや介助、夜間の呼びかけへの対応などで休息の時間が少なくなり、疲労が蓄積しやすくなります。特に排泄介助や徘徊への対応は時間帯を問わず必要になり、睡眠が十分に取れない日が増えると、体調不良や気持ちの落ち込みにつながることがあります。精神的にも、ご本人の言動が変化するたびに気持ちを切り替えて対応する必要があるため、緊張感が続く状態になりやすいと感じる方が少なくありません。疲れが続くと、肩こり・腰痛・頭痛などの身体の不調が出てくることもあり、介護者自身が健康を損なってしまうケースもみられます。

経済的な影響

介護期間が長くなるほど、デイサービスや訪問系サービスの利用が増えることがあり、家計への負担が重なっていきます。介護用品の購入や福祉用具のレンタル費用、通院にかかる交通費など、日々の生活費とは別に支出が必要になることもあります。また、介護の必要性が高まると、仕事の時間を減らしたり、離職したりする方もおり、収入の減少が生活に影響する場合があります。長期的な支出と収入の変化が同時に起こることで、経済面での不安が強まりやすくなります。

対外的な人間関係への影響

介護に時間や気持ちの余裕が必要になると、友人や地域とのつながりが徐々に薄れていくことがあります。外出がしにくくなる、予定が立てにくいといった理由から、人と会う機会が減り、社会とのつながりを感じにくくなる方もいます。家族との関係でも、介護を担う方に負荷が集中すると、気持ちのすれ違いや疲れによる衝突が起こりやすくなります。また、周囲に介護の状況を伝えにくいと感じる方もおり、悩みを抱え込みやすい状態になることがあります。こうした孤立感が高まると、精神的な負担がさらに強くなり、介護そのものを続ける力に影響することもあります。

認知症の方を自宅で介護する際の負担を軽減する方法

認知症の方を自宅で介護する際の負担を軽減する方法

認知症の方の介護は、ご家族が一人で抱え続けると心身の負担が強くなり、疲れをため込みやすくなります。介護を長く続けるためには、周囲の力を積極的に借りながら、家庭全体で無理なく取り組める体制を整えることが大切です。ここでは、日常生活の負担を軽くするために役立つ方法を解説します。

訪問看護・訪問介護・通所系サービスの頻度を増やす

認知症が進むと、日常的な見守りや介助の量が増え、家族だけで支えることが難しくなることがあります。そのようなときは、訪問看護や訪問介護、デイサービスなどのサービスを増やすと、介護者の負担を大きく減らすことができます。

訪問看護では、体調管理や薬の管理、お口のケアなど専門的なサポートを自宅で受けられるため、医療的な不安を軽くできます。訪問介護では、入浴や排泄の介助、掃除や洗濯などの日常生活の支援が得られます。

デイサービスは、ご本人が日中を安心感を持って過ごせる場となるだけでなく、ご家族が心身の負担を軽くし、休息の時間を確保することができます。週数回の利用でも生活のリズムが整い、ご本人の活動性が保たれやすくなるメリットがあります。サービスを増やすことに抵抗を感じる方もいますが、介護を続けるための選択肢の一つと考え、早めの段階から活用しておくと負担の偏りを防ぎやすいです。

家族内の役割分担を見直し、介護者を増やす

介護を一人で抱え込むと、身体の疲れや精神的な負担が強まりやすく、長く続けることが難しくなります。家族で介護を分担することで、一人にかかる負担を減らし、気持ちの余裕を保ちやすくなります。

分担の方法は必ずしも介助そのものとは限りません。受診の付き添い、買い物、洗濯、掃除、書類の手続き、サービス利用の調整など、役割は幅広くあります。家族それぞれの得意なことや生活リズムに合わせて役割を決めると、無理なく協力しやすくなります。

また、家族以外でも、近所の方や親族、友人など、手伝ってくれる方がいれば小さなことでも助けてもらうと負担の軽減につながります。

介護を担う方が安心して休息できる時間を確保することは、ご本人の生活の質にもプラスになります。誰か一人が倒れてしまう前に、複数の支えをつくっておくことが、長く介護を続けるための大切な工夫です。

限界を感じたときは介護医療院などの施設利用を検討しよう

限界を感じたときは介護医療院などの施設利用を検討しよう

自宅での介護は、進行に伴って必要な支援が増えるため、どれだけ頑張っていても続けることが難しくなる時期が訪れることがあります。夜間の徘徊や転倒が続く、排泄や食事を含めて生活全体に介助が必要になる、医療的な管理が増えるといった状況では、ご家族が日常生活と両立させることが難しくなることがあります。介護者自身の体調が優れない、睡眠不足が続く、仕事や育児との両立ができなくなるなど、ご家族側の理由で限界を感じる場合もあります。

そのようなときは、介護医療院特別養護老人ホームなど、専門的なケアを受けながら生活できる施設の利用を検討することが選択肢です。介護医療院は、医療と介護の両方が必要な方が長期的に生活できる場所で、重度の認知症や医療的管理が必要な方にも対応しています。特別養護老人ホームは、日中だけでなく夜間も生活全体を支える体制が整っています。

また、いきなり長期入所を選ばずに、ショートステイを利用して一時的に負担を軽くしたり、ご家族の休息時間を確保したりする方法もあります。施設利用は介護をあきらめるという意味ではなく、ご本人とご家族が無理なく暮らし続けるための手段の一つです。限界を感じたときに早めに相談するようにしましょう。

まとめ

まとめ

認知症の介護は、長い時間をかけて向き合うことが多く、ご家族の負担が段階的に変化していきます。自宅で生活する認知症の方は多く、発症から亡くなるまでの期間も長いため、初期から中期までは見守り中心の介護が続き、進行に伴って必要な支援が増えていきます。生活全般に介助が必要になると、ご家族の体力面や精神面の負担が大きくなり、仕事や家事との両立が難しくなる場面もあります。

一方で、訪問介護や訪問看護、デイサービスなどの介護サービスを活用することで、無理なく介護を続けるための体制を作ることができます。家族内で役割を分担することも、負担の偏りを防ぐうえで大切です。それでも限界を感じたときには、介護医療院や特別養護老人ホームといった施設を選択肢に加えることで、ご本人とご家族が生活を整えやすくなります。介護を続けるうえで大切なのは、一人で抱え込まず、状況に合わせて支援を組み合わせていくことです。

この記事の監修医師