胃ろう造設後の自宅介護のポイント|ケア方法やよくあるトラブル、対処法も解説

お口から十分な栄養を摂ることが難しくなった場合、胃ろうによる栄養管理が選択されることがあります。胃ろう造設後は、自宅での介護において適切なケアと管理が必要とされます。しかし、胃ろうの管理に不安を感じる方も少なくありません。本記事では、胃ろうの基礎知識から自宅でのケアの方法、起こりやすいトラブルとその対処法などを解説します。

監修医師:
江口 瑠衣子(医師)
目次 -INDEX-
胃ろうの基礎知識

胃ろうは、外部から胃の中へ栄養剤や水分などを注入するためのものです。ここでは、胃ろうに関する基礎知識を解説します。
胃ろうとは
胃ろうは、おなかの外側から胃の内部へ直接カテーテルを留置し、水分や栄養剤、薬剤などを投与できるようにしたものです。口から食事や水分を摂取することが困難な患者さんのための、栄養管理として活用されています。手術によっておなかの外側から胃の中につながる小さなあな(ろう孔)を作り、それを通して胃の中に直接カテーテルを挿入し固定します。多くの場合、上部消化管内視鏡(いわゆる胃カメラ)を用いて行われます。この胃ろうを留置する手技は、PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)と呼ばれます。
胃ろうが必要になる状況
胃ろうは、主にお口から食べ物や水分を安全に摂取することが難しくなった場合に検討されます。経口摂取ができなくなる原因はさまざまです。その一つに、嚥下機能の低下があります。嚥下機能とは、飲食物をお口から食道、そして胃へと安全に運ぶための一連の動作や能力のことをいいます。胃ろうが必要になる具体的な病態は以下のとおりです。
| 胃ろうが必要な病態 | 原因となる主な疾患・状態 |
|---|---|
| 嚥下障害 | ・脳血管障害 ・神経・筋疾患(筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病など) ・重度の認知症 ・加齢に伴う嚥下機能の低下 など |
| 摂食機能不全 | ・頭部や顔面の外傷 ・咽頭や食道のがん など |
なお、嚥下障害が原因で誤嚥性肺炎などを繰り返すケースでも、胃ろうが選択されることがあります。これらの病態により経口摂取が困難となった場合に、栄養管理の手段として胃ろうが検討されます。
胃ろう造設手術の概要
まず、胃ろう造設の前に、全身状態の評価、CT検査などの画像検査を行い、医師が胃ろう造設が可能かを判断します。胃ろうの造設が可能と判断された場合、多くのケースで上部消化管内視鏡(胃カメラ)を用いて処置が行われます。
内視鏡をお口または鼻から挿入し、空気を送り込んで胃を拡張させ、胃ろうを留置する場所を決定します。ここで重要となるのが胃とおなかの壁の間に、腸や肝臓などほかの臓器が存在しないかを確認することです。もし胃とおなかの壁の間に別の臓器があると、ろう孔の作成時に、その臓器を損傷してしまう危険性があります。安全性を十分に確認したうえで、胃ろうを造る場所を決定し、局所麻酔を実施します。
次に、胃ろうを留置する場所のおなかの壁と胃を固定します。具体的には、おなかの皮膚(2か所)から胃に向かって糸がつけられた針を刺し、その糸で胃とおなかの壁を固定します。そして、その2本の糸を使って胃を持ち上げ、おなかの壁に固定します。その後、少し太めの針をおなか側から胃の中まで刺して、ガイドとなるワイヤーを通します。このワイヤーを通じて、胃ろうを留置するためのあなを広げる器具(ダイレーター)を挿入します。最後に、その広がったあなに胃ろうのカテーテルを挿入し固定します。
胃ろうカテーテルの種類
胃ろうカテーテルは、体外に見える部分の形状と、胃内でカテーテルを固定する部分の構造によって、それぞれ分類されます。まず身体の外に見えている部分にはボタン型とチューブ型の2つの種類があります。ボタン型は、おなかの皮膚から短いボタン状の器具が出るカテーテルです。チューブ型は、おなかからチューブが体外に出るタイプで、皮膚の外側に出る部分がボタン型よりも長めです。胃内でカテーテルを固定する部分は、次の2種類に分けられます。風船のようなバルーンがついているバルーンタイプ、円盤状の突起で固定するバンパータイプです。
なお、胃ろうカテーテルには定期的な交換が必要で、その期間は種類によって異なります。一般的にバルーンタイプはおおよそ1~2ヶ月に1回であるのに対し、バンパータイプは数ヶ月から半年に1回程度の交換が多いとされています。ただしそれぞれの方の状況や、医師の判断によって異なりますので、医師の指示に従って処置を受けるようにしてください。
胃ろう造設後の自宅介護で必要なケア

胃ろう造設後は、自宅介護においてさまざまなケアが必要です。栄養剤を注入する手順やカテーテルの管理方法など、それぞれのポイントを押さえながら解説します。
胃ろうへ栄養剤を注入する手順
胃ろうへ注入する栄養剤を準備する前に、栄養剤を投与していいかどうかを患者さんに確認します。発熱がある、吐いている、意識の状態がいつもと違う、など異常がある場合は、栄養剤の準備はせず、ほかのご家族や医療従事者に相談し、指示を仰ぎます。いつもと変わりがなく問題がないと判断したら、患者さんにこれから注入を始めることを伝え、栄養剤の準備をします。
開始前に流水と石けんでの手洗いを行います。そして、注入に使用するバッグやカテーテルチップ型シリンジ(注射器)、栄養剤、白湯を準備します。栄養剤は投与する種類、量を確認します。冷蔵庫から取り出したばかりの冷たいものは避けるようにします。次に体位を調整します。ベッドの頭側を30~60度上げる、など上半身を上げる場合が多いですが、個別の指示があるかを確認します。
体位を調整して問題がなければ次の手順に進みます。注入用バッグのクレンメ(流量を調整できる部分)を閉じた状態で栄養剤を入れ、バッグを高い位置につり下げます。チューブ内に空気が残ったまま注入すると胃の中に空気が入って腹部膨満感の原因となるため、クレンメを徐々に開いて栄養剤を流し、チューブ内の空気を抜きます。栄養剤がチューブの先端まで充填されたらクレンメを再び閉じます。そして、胃ろうカテーテルの破損や抜けがないかを確認し、チューブをつなぎます。
接続したものが胃ろうチューブであるかを再度確認し、患者さんへ注入の声かけを行います(意識レベルが低下している方でも声かけを実施します)。クレンメを少しずつ緩めて注入を開始しましょう。患者さんの状態を確認しながら、ゆっくりと注入します。特に、液状の栄養剤は、注入するスピードが速すぎると逆流や下痢を引き起こすことがあるため、気を付けます。注入完了後はクレンメを閉じ、注入用バッグのチューブを胃ろうから取り外します。その後、カテーテルの閉塞などを予防するために、カテーテルチップ型シリンジを使用して白湯を注入し、チューブ内を洗浄(フラッシュ)します。なお、栄養剤と別で白湯を投与する指示が出されることもあります。投与量やタイミングは主治医の指示に従います。
カテーテルの管理方法
胃ろうカテーテルを適切に管理することで、安全に栄養管理を続けることができます。ここでは日常的なケアのポイントを解説します。
入浴時の取り扱い
胃ろう造設後でも入浴は基本的に可能です。特別なカバーは不要で、そのまま入浴やシャワーを浴びることができます。入浴は皮膚を清潔に保つのに有効です。感染の徴候がある場合、フィルムなどでの保護や軟膏やガーゼ保護などの処置が必要なこともあります。なお、チューブ型の場合はチューブが浴槽の縁などに引っかからないよう注意します。
胃ろう周辺の皮膚ケア・洗浄手順
胃ろう周囲の皮膚は、毎日観察しましょう。赤み、腫れ、滲出、痛み、においがないかを確認します。石けんを泡立てて胃ろう部の周囲の皮膚を優しく洗います。ぬるま湯でしっかりと石けんを洗い流し、清潔なタオルやガーゼで軽く押さえて水分をふきとります。洗浄の際は、カテーテルを無理に動かさないよう注意が必要です。強くこすったり、カテーテルを引っ張ったりしないようにしましょう。また、皮膚が湿った状態が続くと、感染の原因にもなるため、洗浄後はしっかり乾燥させます。
胃ろうでよくあるトラブル

胃ろうを使用していると、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。ここでは代表的なトラブルとその特徴を解説します。
カテーテルに関するトラブル
カテーテル本体に起こるトラブルで代表的なのはカテーテルが抜けてしまうことです。認知症のある方や無意識に触ってしまう方でみられたり、バルーンが破損したり水が抜けたりすることで起こります。また、カテーテル自体が破損することもあります。シリコン製のチューブは長期間の使用や繰り返しの注入操作により、裂け目が生じたり、接続部が緩んで栄養剤が漏れたりすることがあります。
バンパータイプの場合、バンパー埋没症候群と呼ばれるトラブルが起こることがあります。これは胃内のバンパー部分が胃の壁に食い込んでしまう状態で、痛みや皮膚の発赤を伴います。放置すると感染のリスクが高まります。
栄養剤を注入する際のトラブル
栄養剤の滴下が止まる、注入の際に抵抗を感じるなどの場合は閉塞を疑います。そのほかのトラブルとして、注入の際や直後の嘔吐が挙げられます。
胃ろう周辺の皮膚に関するトラブル
胃ろう周囲部の皮膚の感染があると、発赤、腫れ、熱感、膿のような分泌物、悪臭などがみられます。また、胃ろうの挿入部に肉芽(にくげ)と呼ばれる、盛り上がった組織ができることがあります。このほかに、栄養剤が胃ろうの穴から漏れてしまうと、皮膚のびらんやただれが起こります。胃の内圧の上昇(消化管の運動の低下や便秘)や、ろう孔の広がりが原因の可能性があります。
胃ろうのトラブル別の対処法と受診目安

胃ろうのトラブル別の対処法と受診目安を、具体的に解説します。カテーテルの抜去や破損、バンパー埋没症候群が疑われる場合、できるだけ早く医療機関を受診します。カテーテルを無理に再挿入しようとすると、ほかの臓器を傷つける危険があるため絶対に行わないでください。
カテーテルの閉塞が疑われる場合、吐き気や嘔吐がなければ、白湯を10mlほどカテーテルチップ型シリンジで胃ろうカテーテルに注入します。この際、強い力はかけないように気を付けてください。チューブの詰まりが解消されない場合や胃の内圧が上がっている場合は改善しないため、医療従事者へ相談しましょう。
嘔吐は、注入量が多すぎる場合や、注入後すぐに体位を変えた場合に起こることがあります。嘔吐がみられたら、嘔吐した物を誤飲しないように顔を横に向けます。胃ろう側のチューブを開放して栄養剤を逆流させ、胃の内圧を下げるよう努めます。逆流した内容物が気道に入ると誤嚥性肺炎のリスクがあるため、嘔吐後は発熱や呼吸の状態に気を付けます。嘔吐が続く場合や、肺炎の兆候がある場合は医療機関を受診しましょう。
胃ろう周囲の皮膚の感染がある場合、肉芽に変化がある場合は医療機関を受診します。具体的な肉芽の変化は、出血しやすい、大きくなる、感染のサイン(赤み、熱感、膿など)がみられることです。
皮膚のびらんやただれがみられる場合は、皮膚ケアの手順をしっかりと行います。なお、びらんやただれの原因が栄養剤の漏れによるものであれば、注入速度をゆるめるなどして対応します。改善がなければ注入は中止し、医療従事者へ相談しましょう。
在宅で胃ろう管理を行うなかで、すべてのトラブルを予防することは難しく、これらの何らかのトラブルが発生する場合があります。大切なのは、日々の観察と小さな変化への気付き、そしてトラブルが起こったり困ったりした際は、医療従事者に相談する姿勢です。介護する方だけで抱え込まず、医療従事者と連携しながらケアを続けていきましょう。
まとめ

胃ろうは患者さんの生命を支える大切な栄養管理法です。胃ろう造設後の自宅介護では、胃ろうに関する正しい知識と適切なケアの実践が欠かせません。基本的な栄養剤の注入手順を守り、皮膚の清潔を保つことで多くのトラブルを予防できます。トラブルが発生しても、落ち着いて対応し、必要に応じて早めに医療機関へ相談します。介護する方だけで悩まず、主治医や看護師などのサポートを受けましょう。適切なケアと早期の対応が、在宅での生活を安全で快適なものにすることへつながります。
参考文献




