介護での熱中症対策|自宅でできる対策や役立つアイテム、熱中症の兆候も解説

高齢の方を自宅で介護していると、暑さによる体調変化に気付きにくい場面が少なくありません。熱中症は屋外だけでなく室内でも起こり、夜間に発症することもあります。加齢により暑さやのどの渇きを感じにくくなることで水分が不足しやすく、体温調節もしにくくなるため、重症化のリスクが高まります。また、介護を行う方自身も作業中に汗をかきやすく、知らないうちに脱水が進むことがあります。室温や湿度が高い環境、換気や空調が十分でない状況が重なると、家庭内でも熱がこもりやすくなるため、日常的な対策が欠かせません。
この記事では、自宅介護で起こりやすい熱中症の特徴、室内で安全性を高く保つための工夫、水分補給や冷却の方法、高齢の方にみられやすいサイン、さらに役立つアイテムや対処法を解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
目次 -INDEX-
自宅介護での熱中症リスク|実は多い室内での熱中症

自宅で過ごす時間が長い高齢の方は、暑さを自覚しにくいことや水分摂取のタイミングを逃しやすいことから、室内でも熱中症を発症することがあります。屋外より安全に思える環境でも、気温や湿度が上がると身体に熱がこもりやすく、気付いたときには体調悪化が進んでいる場合があります。まずは、室内で起こる熱中症の背景を理解することが、日々の介護に役立ちます。
熱中症の症状・原因
室内で生じる熱中症は、頭痛、めまい、立ちくらみ、倦怠感といった初期症状から始まり、進行すると吐き気、強いだるさ、意識がぼんやりするなどの変化がみられる場合があります。
高齢の方は暑さやのどの渇きを感じる力が弱くなり、体内の水分が不足しやすいことが背景にあります。室温や湿度が高い状態が続くと、汗が蒸発しにくく、体温が下がらずに身体へ負担がかかりやすくなります。
さらに心臓や腎臓の機能が弱っている場合、体内の水分バランスを保つことが難しく、熱がこもりやすい状況が起こります。冷房を控えてしまう習慣や、節電を意識し過ぎてしまうことも室内の温度上昇につながるため、適切な室温管理をするようにしましょう。
室内での熱中症の発生件数
令和7年(5〜9月)の熱中症による救急搬送は、住居での発生が38,292件(38.1%)と最も多く、全体の約4割を占めています。 屋外よりも自宅内での発生が突出していることから、家の中こそ油断できない環境といえます。そのほかは、道路が19,773件(19.7%)、公衆(屋外)が12,175件(12.1%)、仕事場が10,559件(10.5%) の順で続きます。
このように、熱中症は屋外より室内で多く起きており、自宅でも温度や湿度の管理を意識することが大切です。
参照:『令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況』(総務省)
要介護者の熱中症
自力で水分をとりにくい方や、寝たきりで身体を動かせない方は、体温が上がった際に熱を逃がすことが難しくなります。体調の変化を自分で伝えられない場合もあり、周囲が気付きにくいことがあります。入浴後の脱水、食事量の低下、寝具や衣類の重ね着など、日常動作のなかで熱中症のきっかけが潜んでいます。また、認知機能の低下がある場合は暑さをうまく訴えられず、症状が進みやすくなることが特徴です。
介護従事者の熱中症
介護を行う方も、動作量が多く汗をかきやすい場面が多いため、知らないうちに体温が上昇しやすい状況にあります。入浴介助や移乗介助などは身体への負担が大きく、室内の温湿度が高いと、短時間でも脱水が進むことがあります。高齢の方を優先してしまい、自分の水分補給が後回しになることも熱中症の要因です。
自宅介護での熱中症対策

自宅で介護を行う際は、室温管理や水分補給だけでなく、日常の動作や環境の整え方を意識することで、熱中症のリスクを大きく下げられます。高齢の方は暑さに対する感覚が弱く、身体には熱がこもりやすいため、周囲の方が先回りして環境を整えることが欠かせません。また、介護を行う方自身も暑さの影響を受けやすく、無理をすると体力が低下してしまいます。ここでは、家庭内で取り入れやすい熱中症対策を解説します。
室温・湿度を一定にする
室内の気温と湿度が上がると、高齢の方は汗が蒸発しにくくなり、体温が下がりにくくなります。エアコンは日中だけでなく、暑い夜間にも活用し、室温はおおまかに28度以下を目安に保つようにします。湿度が高い場合は除湿機能や換気を組み合わせて、空気の流れを作る工夫が必要です。窓を少し開けて風を通す、すだれやカーテンで直射日光を避ける、扇風機を併用するなど、いくつかの方法を組み合わせて環境を整えます。また、エアコンのフィルターが詰まっていると冷却効率が低下するため、定期的な清掃も忘れずに行いましょう。
水分・塩分補給と摂取状況の確認を徹底する
高齢の方はのどの渇きを感じにくく、水分不足に気付けないことが多くあります。起床時、食事時、入浴前後、就寝前など、決まったタイミングを作ってコップ1杯程度の水分をとるようにします。
大量に汗をかいた場合は、塩分を含む飲料や経口補水液が適しています。普段の飲み物の量をメモしておくと変化に気付きやすく、飲み忘れを防ぐ助けになります。むくみや持病がある方は量の調整が必要なこともあるため、かかりつけの医師の助言を踏まえながら進めましょう。
活動時間を調整する
気温が上がる時間帯の移動や入浴、着替えなどの負担が重い作業は、できるだけ朝や夕方の涼しい時間に行いましょう。日中は無理をせず、短時間の休憩をこまめに取り入れることで、体温の上昇を抑えられます。入浴は短時間で済ませ、浴室や脱衣所も事前に冷やすと負担が軽くなります。外出が必要な場合は、日陰を選ぶ、帽子を使う、移動前後に水分をとるなどの工夫が欠かせません。
体温調節しやすい衣類を選ぶ
衣類は通気性がよく、汗を吸いやすい素材を選ぶと身体に熱がこもりにくいです。重ね着は避け、ゆったりした服装にすることで風がとおりやすくなります。寝具も吸湿性や放熱性のある素材にすると、夜間の体温上昇を防ぎやすいです。衣類の選び方は高齢の方自身が判断しにくい場合があるため、周囲が季節に合わせて調整することが大切です。
部分冷却を取り入れる
首すじ、わきの下、太ももの付け根など、太い血管のある部位を冷やすと体温を効率よく下げることができます。保冷剤や冷却タオルを使用すると、短時間で熱を逃がしやすくなります。長時間同じ部位を冷やし続けないように注意し、体調に合わせて調整します。入浴後や軽い運動後など、体温が上がりやすい場面で部分冷却を取り入れると、熱中症の予防につながります。
自宅介護で役立つ熱中症対策アイテム

自宅での熱中症対策は、環境を整えるための機器や、身体の熱を逃がしやすくするアイテムを上手に活用することで、介護される方の負担を軽くしやすくなります。身近な道具でも効果的に使えば、体温の上昇を抑え、過ごしやすい環境づくりにつながります。
空調機器
エアコンは室温と湿度を調整するうえで欠かせない機器です。室温はおおまかに28度を目安とし、湿度が高い日は除湿機能を活用します。扇風機やサーキュレーターを併用すると、室内の空気が循環し、体感温度が下がりやすくなります。冷え過ぎが心配な場合は、風を直接当てず天井や壁に向けることで、冷房の効果を保ちながら身体への負担を減らせます。
冷却グッズ
保冷剤、冷却タオル、氷のう、ミニファンなどは手軽に使える冷却グッズです。過度に冷やし続けると負担になるため、体調に合わせて短時間ずつ行います。入浴後や暑い日に外出した後など、体温が上がりやすいタイミングで使用すると効果が期待できます。
接触冷感素材の衣類
接触冷感素材はお肌に触れたときのひんやりした感覚が特徴で、高齢の方の不快感を軽減しやすい素材です。寝具や室内着に取り入れると、夜間の体温上昇を抑えやすいです。通気性のよい綿や麻素材と組み合わせると、汗がこもりにくく快適に過ごせます。
温度計、湿度計
熱中症のリスクは気温だけでなく湿度の影響も大きく、室内でも油断できません。温度計と湿度計を見える場所に設置すると、環境の変化に気付きやすくなります。暑さ指数(WBGT)を表示できるタイプを使用すると、危険度の目安がわかりやすく、空調調整の判断にも役立ちます。
高齢者の熱中症サイン

高齢の方は、暑さによる体調の変化を自覚しにくく、熱中症が進行しても気付きにくいことがあります。普段と違う様子や小さな変化を見逃さないことが、重症化を防ぐうえでとても大切です。周囲の方が気付きやすいサインを押さえておくことで、早めの対応につながります。
普段よりも体温が高い
高齢の方は体温調節の働きが弱く、室内の温度が高いだけでも体温が上がりやすくなります。いつもより身体が熱い、顔が赤いといった変化は初期サインとして把握しやすいポイントです。額や首すじに触れたときに熱を強く感じる場合は、早めの対応が求められます。体温計を使い、普段の体温との差が大きいときは注意が必要です。
排尿の頻度が落ちている
水分が不足すると尿量が減り、排尿の回数が少なくなります。高齢の方はのどの渇きを感じづらいため、ご本人が気付かないまま脱水が進む場合があります。おむつを使用している場合は、普段より湿り気が少ない、交換回数が減っているなどの変化も熱中症のサインとして参考になります。
尿の色が濃い
脱水が進むと尿の色が濃くなり、黄色味が強くなってきます。普段の色より明らかに濃い、においが強いなどの変化は、体内の水分が足りていない可能性があります。トイレに行く際の観察や、おむつ交換時の色の確認は、熱中症の早期発見に役立ちます。
唇・皮膚が乾燥している、ハリがない
水分が不足すると唇が乾きやすく、皮膚のハリが弱くなります。高齢の方は皮膚が薄く乾燥しやすいため、小さな変化が体調悪化のサインとなることがあります。触れたときにカサつきが強い、皮膚が冷たいのに顔だけ熱いなど、温度の違和感にも注意します。
嘔吐している
暑さで胃腸の働きが落ちると、気持ち悪さや嘔吐がみられることがあります。嘔吐は脱水を進めやすく、症状の悪化につながるため見逃さないことが必要です。水分摂取が難しいときは、早めに医療機関の判断を受けることが望ましいです。
ぐったりしている、呼びかけに応じない
熱中症が進行すると、意識がぼんやりする、反応が遅い、声かけに応じにくいといった状態が生じることがあります。座っていられず横になりたがる、返事が弱いなどの変化も重要なサインです。この段階では症状が進んでいる可能性があり、医療機関への連絡を検討します。
熱中症サインがみられたときの対処法

熱中症のサインに気付いたら、早めに対応することで症状の進行を抑えられます。まずは涼しい場所へ移動し、衣類をゆるめて風通しをよくします。
首すじやわきの下、足の付け根など、太い血管が通る部分に冷却タオルや保冷剤を当てて体温を下げます。意識がはっきりしていて、自力で飲める場合は水分を少しずつ摂取してもらいます。大量に汗をかいているときは、塩分を含む飲料が適しています。
吐き気が強い、ふらついて立てない、呼びかけに応じにくいといった状態がある場合は無理に水分を飲ませず、速やかに医療機関へ連絡します。症状が急に進むこともあるため、周囲の方が落ち着いて様子を観察し、必要に応じて救急要請を検討します。
まとめ

自宅で介護をしている環境では、屋外より安全に思えても熱中症が起こることがあります。高齢の方は暑さやのどの渇きを感じにくく、体温調節の働きも弱くなっているため、早い段階での気付きがとても大切です。
室温や湿度の管理、水分と塩分の適切な補給、負担の少ない時間帯の活動など、日常の小さな工夫が熱中症の予防につながります。また、首すじやわきの下の冷却、空調機器の活用、温湿度計での環境チェックなど、家庭にある道具を上手に使うことも効果的です。
ぐったりしている、反応が弱い、水分が取れないといった変化があれば、無理をさせず早めの対応が欠かせません。介護される方と介護を行う方の両方が安全性高く過ごせるよう、日常のなかで熱中症対策を意識しながら過ごしていきましょう。




