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生活介護事業所とは?サービス内容や費用の目安、利用手続きを解説

 公開日:2025/12/24
生活介護事業所とは?サービス内容や費用の目安、利用手続きを解説

生活介護事業所は、障害のある方で常時介護が必要な方に対し、日中にさまざまな支援を提供する施設です。食事や入浴、排せつなどの日常的な介助だけでなく、創作活動や機能訓練なども含めて総合的にサポートし、利用者の自立促進と社会参加を目的としています。本記事では、生活介護事業所の概要や提供されるサービス内容、費用の目安、利用開始までの手続きを解説します。

小田村 悠希

監修社会福祉士
小田村 悠希(社会福祉士)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

生活介護事業所とは

生活介護事業所とは
生活介護事業所とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一種で、常に介護や見守りが必要な障害のある方が日中安心して過ごせる場を提供する施設です。単に介護を行うだけでなく、利用者それぞれの状況に応じた活動プログラムを通じて生活能力の向上や社会参加を図る役割を担っています。

生活介護サービスの概要

生活介護は身体介助などの日常的な介護に加えて、創作活動や生産活動の場を提供し、機能訓練などによって利用者の潜在能力を引き出す支援を包括しています。サービス提供時間は主に昼間であり、多くの場合、朝から夕方までの時間帯に利用者が生活介護事業所に通所して支援を受けます。夜間については、自宅で過ごすか、必要に応じて施設入所支援などのほかのサービスを併用します。

こうした生活介護サービスの目的は、利用者が可能な限り自分らしく地域で生活できるように支援することです。日中活動の場を提供し、生活面・社会面での自立を促進するとともに、家族の介護負担軽減にもつながっています。

参照:『障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律』(厚生労働省)

生活介護事業所の目的と役割

生活介護事業所は、地域で暮らす重度の障害がある方にとって日中の居場所となる重要な役割を果たしています。事業所では利用者ごとの個別支援計画に基づき、一人ひとりのニーズや障害特性に応じたサービスを提供します。これにより、利用者は安全で充実した一日を過ごし、生活にメリハリを持つことができます。

利用者本人にとっては、生活介護事業所で過ごすことで社会とのつながりを維持し、さまざまな活動を通じて達成感や自己肯定感を得られるメリットがあります。創作活動や軽作業に取り組むことで、自身の能力を発揮し、生きがいにつながる体験が得られます。また、看護師や機能訓練指導員などの専門職による健康管理・機能訓練も受けられるため、心身の状態維持・向上にも寄与します。

家族にとっては、日中の一定時間、障害のある家族を生活介護事業所に預けることでケアから解放される時間が確保できます。その間に仕事を続けたり、自分自身の休息や用事を済ませたりすることができるため、家族全体の生活の質向上や、長期的な在宅介護の継続に役立ちます。

生活介護事業所の対象者

生活介護事業所を利用できるのは、常時介護などの支援が必要な障害がある方で、かつ法律で定められた一定の要件を満たす方です。具体的には、障害支援区分と呼ばれる障害の程度を示す区分で、原則として以下の条件に該当する必要があります。

  • 50歳未満の方で、障害支援区分が区分3以上であること(障害者支援施設などに入所する場合は区分4以上)
  • 50歳以上の方で、障害支援区分が区分2以上であること(障害者支援施設などに入所する場合は区分3以上)
  • 生活介護と施設入所支援との利用の組合わせを希望し、障害支援区分が区分4(50歳以上の者は区分3)より低い者で、指定特定相談支援事業者によるサービスなど利用計画案を作成する手続を経たうえで、市町村により利用の組合わせの必要性が認められること

また、生活介護を利用するには、身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳といった障害者手帳の取得も基本的な要件です。このように、生活介護事業所は重度の身体障害、知的障害、精神障害などにより日常生活に継続的な支援が必要な方を主な対象としています。

生活介護事業所で利用できるサービス

生活介護事業所で利用できるサービス
生活介護事業所では、利用者それぞれの状況やニーズに合わせて多彩なサービスが提供されます。これらのサービスは、単に日常生活上の介護を行うだけでなく、利用者の能力向上や社会参加を促進することを目的として構成されています。

日常生活支援・健康管理

日常生活支援として、食事・排泄・入浴といった基本的な身体介護から、着替えや移動・移乗の介助まで、生活介護事業所では幅広い介助が行われます。具体的には、以下のような身体介護があります。

  • 食事介助
  • 入浴介助
  • 排せつ介助
  • 移乗・移動介助
  • 衣介助
  • 体位変換

利用者さんのできる動作はなるべくご本人に行ってもらいながら、必要な部分のみサポートすることで、日常生活動作の自立を促す工夫がされています。

機能訓練

機能訓練とは、利用者の身体機能や生活能力の維持・向上を目指す訓練プログラムです。生活介護事業所では、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)といったリハビリの専門職が個別に訓練を実施する場合があります。

例えば、歩行練習や関節をほぐすストレッチ、起立・着座の練習、食事動作訓練など、日常生活動作(ADL)の向上につながる訓練を取り入れています。これらの訓練を通じて、筋力低下を防いだり関節の可動域を維持したりすることで、利用者ができるだけ自分の力で動ける時間を延ばす効果が期待されます。

創作活動・生産活動

生活介護事業所の大きな特徴の一つが、創作活動生産活動の機会提供です。利用者が意欲的に取り組める活動プログラムを用意することで、楽しみや役割、生きがいを感じてもらう狙いがあります。

創作活動の例としては、絵画や書道、手芸、陶芸、音楽演奏などが挙げられます。これら創作プログラムへの参加を通じて、利用者の創造力や自己表現力を引き出し、認知機能の維持向上やコミュニケーション能力の向上にもつなげています。

一方の生産活動とは、利用者ができる範囲で簡単な作業や仕事に取り組む活動です。例えば、事業所内での手工芸品や焼き菓子の製作、農作業、清掃作業、内職的な軽作業(部品の袋詰めや製品の組み立てなど)があります。
これらの活動は生活に潤いを与えるだけでなく、利用者同士の交流を深め、他者との関わりのなかで社会性を育む狙いもあります。

地域交流

生活介護事業所では、事業所内の活動だけでなく地域社会との交流も重視されています。施設によっては、地域のボランティアや近隣住民との触れ合いの場を積極的に設けています。例えば、地域の学校やボランティア団体と協力してイベントを開催したり、地元のお祭りや地域行事に利用者と職員が参加したりする取り組みです。実際に、地域の夏祭りに利用者が参加して模擬店を手伝う、商店街の清掃活動に協力するといった事例もみられます。

社会参加支援

社会参加支援とは、利用者が地域社会のなかで役割を持ち、積極的に社会の一員として活動できるよう手助けする支援です。生活介護事業所では、地域交流にとどまらず利用者の社会参加を広げる取り組みも行われます。具体的には、ボランティア活動への参加や、福祉作業所・就労支援事業所との連携による就労体験の機会提供などがあります。

社会参加支援の目的は、利用者が地域から孤立せず社会のなかで生きている一員としての意識を持てるようにすることです。地域のなかで人と関わり役割を果たすことで、周囲から必要とされたり感謝されたりする喜びを感じられます。それが生きがい生活意欲の向上につながり、ひいては心身の健康維持にもよい影響を及ぼします。事業所はこうした機会を提供し、利用者の社会参加を継続的に後押ししています。

生活介護事業所にかかる費用の目安

生活介護事業所にかかる費用の目安
生活介護事業所を利用する際の費用は、公的制度に基づいて利用者負担が定められています。基本的に、障害福祉サービスの利用料は自己負担1割となっています。ただし、利用者の世帯収入に応じて月ごとの負担上限額が設定されています。具体的な区分は以下のとおりです。

  • 生活保護世帯・低所得世帯(非課税世帯):月額負担上限0円
  • 一般世帯(一定の所得以下):月額負担上限 9,300円
  • 上記以外の世帯(高所得):月額負担上限 37,200円

この自己負担以外に、実費で負担する費用もあります。生活介護事業所で過ごすなかで発生する日常的な費用(食費など)や、活動にかかる材料費などは、多くの場合利用者の負担が必要です。利用を検討する際は毎月どの程度の費用がかかるかを事前に試算しておくとよいでしょう。事業所のパンフレットや契約時の重要事項説明書に費用の詳細が記載されていますので、わからない点は遠慮なく事業所に質問しましょう。

参照:『障害者福祉:障害児の利用者負担』(厚生労働省)

生活介護事業所の利用手続き

生活介護事業所の利用手続き
生活介護事業所を利用したいと思ったら、市区町村への申請と所定の手続きを経て、正式にサービスを受けることができます。初めての方にとって手続きはやや複雑に感じられるかもしれませんが、基本的な流れを押さえておけばスムーズです。

市区町村の福祉窓口や相談支援事業所に相談する

まず、お住まいの市区町村役所の障害福祉担当窓口に相談しましょう。生活介護を利用したい旨を伝えると、担当者がサービスの概要や申請方法について案内してくれます。利用を希望する理由や現在の生活状況を簡単に伝えるとよいでしょう。市区町村によっては、この時点で地域の相談支援事業所(計画相談支援を行う事業所)を紹介することもあります。

利用申請を行う

次に、正式に生活介護サービスの利用申請を行います。相談窓口で案内された申請書類に必要事項を記入し、市区町村の障害福祉担当窓口へ提出します。申請書には、利用を希望するサービス種別や利用を希望する事業所名などを記載します。まだ具体的な事業所が決まっていない場合でも申請は可能です。

サービス等利用計画案を作成し提出する

生活介護を申請した利用者について、市区町村はサービス等利用計画案の提出を求めます。サービス等利用計画案とは、どのようなサービスをどのくらい利用したいかをまとめた計画書です。これは原則として指定特定相談支援事業者の相談支援専門員が利用申請者(とその家族)から聞き取りを行い作成します。

認定調査(アセスメント)を受ける

申請後、市区町村は障害支援区分の認定調査を実施します。これは介護保険の要介護認定に類似したプロセスで、専門の調査員が申請者のもとを訪問し、心身の状態や日常生活の様子について詳細な聞き取り調査を行うものです。調査項目は80項目にもおよび、食事や身だしなみ、移動、問題行動の有無、認知面の状況など多岐にわたります。

障害支援区分の認定を受ける

審査会での判定後、市区町村から申請者に対して障害支援区分の認定結果が通知されます。結果は非該当(区分なし)~区分6のいずれかです。生活介護サービスを利用するには前述のように通常区分2または3以上が必要ですが、生活介護の利用者は区分5〜6の重度の方が全体の7割以上を占めています。

サービス等利用計画(本計画)を提出する

障害支援区分が確定すると、市区町村はそれを踏まえて生活介護サービスの支給決定の検討に入ります。並行して、相談支援専門員は先に作成したサービス等利用計画案を再確認・調整し、正式なサービス等利用計画(本計画)を作成します。

受給者証の交付を受ける

市区町村による支給決定がなされると、障害福祉サービス受給者証が発行されます。受給者証は、障害福祉サービスを利用する権利と内容を証明する大切な証書です。カード形式または紙形式で交付され、以下のような情報が記載されています。

  • 支給決定されたサービスの種類
  • 支給量
  • 利用者負担区分
  • 有効期間
  • 障害支援区分
  • 利用者氏名、住所、受給者証番号

受給者証が手元に届いたら、内容を確認しましょう。申請したサービスがきちんと記載され、希望していた事業所名が明記されているか、利用可能日数や時間数は希望と合っているかなどです。不明な点があれば、市区町村か相談支援専門員に問い合わせてください。

生活介護事業所と契約する

受給者証を入手したら、指定した生活介護事業所との契約を行います。利用を希望する事業所に連絡を取り、契約手続きを進めましょう。契約時には受給者証を提示し、事業所側でサービス内容を確認します。週何回利用かや送迎の有無、利用時間帯など、計画書の内容に沿ってサービス提供の具体的な取り決めを行います。

生活介護事業所の利用申請で困ったときの相談先

生活介護事業所の利用申請で困ったときの相談先
はじめて生活介護の利用を検討する場合、手続きや事業所選びなどわからないことも多いでしょう。そんなときに頼りになる相談先を二つ紹介します。自分だけで抱え込まず、専門の窓口に相談することでスムーズに解決できることもあります。

市区町村の福祉窓口

まず基本となるのは、お住まいの市区町村役所の障害福祉担当窓口です。自治体の職員は、その地域の障害福祉サービス制度や手続きに精通しています。「生活介護を利用したいが何から始めればよいか」「手帳を持っていないが申請できるか」といった基本的な質問から、具体的な申請書の書き方、必要書類の案内まで丁寧に対応してくれます。

相談支援事業所

もう一つの相談先が、地域の相談支援事業所です。ここには相談支援専門員(ソーシャルワーカー)が在籍し、障害のある方の支援計画を作成したり、関係機関との調整役を担ったりしています。生活介護を利用したいが自分ではどの事業所がよいかわからない、といった場合でも、専門員が希望を聞き取って適切な事業所を提案してくれます。利用申請の手続きや書類作成もサポートしてくれるため、負担が軽減されます。

まとめ

まとめ
生活介護事業所は、重度の障害を持つ方々にとって安心して日中を過ごせる場であり、介護から創作活動、リハビリテーションまで多岐にわたるサービスを提供しています。一方で、生活介護サービスを利用するためには一定の手続きや条件があります。障害支援区分の認定など行政手続きは煩雑に感じるかもしれませんが、市区町村窓口や相談支援専門員といった頼れる専門家がサポートしてくれます。これから生活介護事業所の利用を検討している方は、本記事で解説した流れを参考に、ぜひ早めに情報収集と準備を進めてみてください。

この記事の監修社会福祉士