目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 介護TOP
  3. コラム(介護)
  4. 床ずれの治し方は?進行度別の治療法や家庭でできるケアを解説

床ずれの治し方は?進行度別の治療法や家庭でできるケアを解説

 公開日:2025/10/20
床ずれの治し方は?進行度別の治療法や家庭でできるケアを解説

床ずれは、身体を動かすことが難しい方や長時間同じ姿勢でいる方に起こりやすい皮膚のトラブルです。初期には赤みだけでも、放っておくと皮膚の深い部分まで損傷が及ぶことがあり、早期発見と適切なケアが重要です。本記事では、床ずれの症状や原因、ステージごとの治療法に加え、自宅でできるケアなどをわかりやすく解説します。

江口 瑠衣子

監修医師
江口 瑠衣子(医師)

プロフィールをもっと見る
2009年長崎大学医学部卒業。大学病院での初期臨床研修終了後、10年以上にわたり地域の基幹病院で腎臓内科の診療に従事。患者さん一人ひとりに寄り添った医療を心がけており、現在は内科・精神科の診療を行っている。腎臓専門医。総合内科専門医。

床ずれの基礎知識

床ずれの基礎知識

床ずれとはどのような状態ですか?

床ずれは医学的には褥瘡(じょくそう)と呼ばれる状態を指します。身体に外から圧力がかかると、骨と皮膚の間にある筋肉や脂肪などの組織の血流が悪くなったり、止まったりしてしまいます。この状態がしばらく続くと、その部分の組織に十分な酸素や栄養が届かなくなり、組織が傷ついたり壊死(えし)してしまったりして床ずれができます。

床ずれの症状と原因を教えてください

床ずれの症状はどの程度進行しているかで違います。床ずれの進行度合いは大きく4つのステージに分かれており、ステージ1~4で表されます。

最も軽症の段階であるステージ1は、皮膚の表面に持続する赤みがみられ、指で押しても赤みが消えないことが特徴です。ステージ2では皮膚の表面が破れ、びらん(ただれ)や水疱(水ぶくれ)が生じたり、浅い潰瘍(かいよう)になったりします。

さらに進行してステージ3になると、皮膚が深く欠損し、底に皮下脂肪が見えることがあります。皮膚の下にポケットトンネルと呼ばれる空洞が広がっている場合もあります。ステージ4は、傷が最も深いところまで達し、筋肉や腱、骨、関節まで及んでいる状態です。

また、4つのステージのほかに、分類不能もあり、床ずれの底が黄色の付着物や痂皮で覆われ、深さを判断できない状態です。また、深部組織損傷(Deep Tissue Pressure Injury:DTPI)というタイプもあります。暗い赤色や紫色に変色したり、暗色の血の混じった水疱ができたりします。見た目ではわかりにくいですが、皮膚の奥深くでダメージが進んでいる状態です。骨と筋の境界で強い圧やずれがかかることで生じ、短時間でステージ3や4に進むことがあります。

床ずれができる原因は、主に圧迫、ずれ、摩擦、湿潤の4つが挙げられます。圧迫が最も重要な原因で、同じ部位に長時間圧力がかかることで血流が悪くなります。圧迫された組織が酸素不足や栄養不足となることで床ずれを引き起こします。ずれも重要な原因の一つです。

皮膚表面とその下の組織の間にずれる力が働くことで、血管がねじれたり、引き伸ばされたりして組織への血流を妨げます。また、摩擦は、皮膚が寝具や衣服とこすれることで、皮膚の最も外側の層である表皮がダメージを受ける状態です。そして、湿潤も床ずれの原因の一つです。尿や便失禁、汗などによって皮膚が常に湿った状態が続くと、皮膚はふやけて弱くなり、ダメージを受けやすくなります。

床ずれの治し方

初期の床ずれは自然に治りますか?

初期の床ずれは、何もしないで自然に治るわけではありませんが、圧迫を取り除くことで改善が期待できます。床ずれの初期段階である発赤は、皮膚表面に傷がないため進行した状態に比べて短期間で治癒する可能性があります。重要な治療法は、除圧を行うことです。また、皮膚を清潔に保ち、スキンケアも行います。

ステージ2の床ずれの治療法を教えてください

ステージ2では皮膚に浅い傷や水疱ができている状態で、感染を防ぎながら傷の治りを促すことが必要です。まずは、床ずれの部分を洗浄して清潔に保ちます。そして、傷の状態に応じて、医師が選択した軟膏、もしくは専用のドレッシング材で創部を保護します。ドレッシング材は傷を覆い、治癒を促進する医療用の資材です。感染しないように注意しながら処置を行います。

ステージ3の床ずれの治療法を教えてください

ステージ3の床ずれは、皮膚の深いところまで損傷が及んでいるため、専門的な治療が必要です。壊死した組織を取り除くデブリードマンを行います。処置を行うかどうかは、患者さんの状態や、創部への血流の状態などを考慮し、医師が決定します。また、傷の深さや状態に応じたドレッシング材や軟膏を使用します。感染が疑われる場合は、抗菌薬の投与も検討されます。また、栄養状態の維持、改善も必要です。

ステージ4の床ずれはどのように治療しますか?

ステージ4の床ずれは大変深いところまで損傷が及ぶ最も重篤な状態で、多くの場合外科的治療が必要になります。外科的治療にはデブリードマンや再建術があります。再建術は、患者さんの皮膚などを用いて、創部を閉じるための手術です。患者さんへの負担が大きいため、再建術を行うかどうかは十分に検討する必要があります。ステージ4まで進行すると、感染が骨にまで及ぶこともあり、命に関わる合併症のリスクが上がります。栄養状態の改善など、医師、看護師、栄養士、理学療法士などと連携し、長期で治療を行う必要があります。

家庭でできる床ずれのケアと注意点

家庭でできる床ずれのケアと注意点

自宅で床ずれを治療する方法はありますか?

初期の床ずれ、赤みのみの段階であれば自宅で治療できる可能性があります。初期の床ずれで最も重要なのは、圧迫の除去(除圧)です。皮膚に赤みが見られたら、その部分が下にならないように体位変換を行い、局所への圧がかからないようにします。 次に、皮膚を清潔に保ち、保湿クリームや、皮膚を保護する撥水性の高い軟膏(白色ワセリンなど)を塗ってスキンケアを徹底します。ただし、床ずれは見た目以上に皮膚の下で病状が進行してしまっていることがあります。異常を発見した場合は、なるべく早めに医療従事者へ相談し指示を仰ぐことが重要です。

床ずれのスキンケア法を教えてください

床ずれのスキンケア法で大切なのは、皮膚を清潔に保ち、適切に保湿することです。皮膚を清潔に保つために、排泄物などで汚れたら、こまめにパッドや衣服を交換します。皮膚を洗う際は、ぬるま湯を使用し優しく洗浄します。石けんを使用する場合はよく泡立て、泡で包むようにやさしく洗います。洗浄後は、清潔なタオルでこすらず、そっと押さえるようにして水分を拭き取った後、保湿剤を塗布します。なお、失禁がある場合は、撥水性のあるクリームを塗ることで、皮膚を保護する効果が期待できます。

床ずれの創部自体に塗る軟膏は、創部の状態に応じて使い分けられます。例えば、滲出液が多い場合は、滲出液を吸収しやすい作用のある薬が使用されます。一方、乾燥している場合は、保湿効果もある軟膏が用いられます。感染がある創部では、感染を制御する作用を持つ薬が使用されます。

床ずれのケアでやってはいけないことや注意点はありますか?

床ずれのケアにおいては、よかれと思って行っていることが、かえって症状を悪化させてしまう場合があります。床ずれの初期段階である発赤部分をマッサージしたり、強くこすったりすることはしないでください。すでにダメージを受けている皮膚組織はとてももろくなっており、マッサージや摩擦が新たな損傷を引き起こす原因となります。

注意点としては、体位変換やベッドの背もたれを動かす際に、摩擦やずれを避けることが重要です。特に、ベッドの背もたれを上げるときは、いったん足元側に移動させてから背もたれを上げることで、ずり落ちを防げます。また、寝具や衣類のしわを防ぐことは、皮膚にかかる摩擦やずれの軽減につながります。シーツやパジャマのしわはこまめに整えましょう。また、体圧分散マットレスを使用している場合は、マットの沈み込みを妨げないよう、シーツを強く張りすぎないことが大切です。

床ずれの治療には栄養バランスは重要ですか?

床ずれの発生や治りやすさには、栄養状態が深く関係していることがわかっており、床ずれの治療では栄養バランスは大変重要です。特に大切な栄養素はタンパク質、ビタミンC、亜鉛です。タンパク質は皮膚や筋肉の材料となり、ビタミンCはコラーゲンの合成に必要です。また、亜鉛は細胞の働きを助け、傷の治りを促進する効果があります。それぞれ以下の食品に多く含まれています。

  • タンパク質:肉・魚・卵・豆類
  • ビタミンC:柑橘類・野菜
  • 亜鉛:魚介類・肉類

また、脱水になると皮膚が乾燥し、血液の循環も悪化するため水分管理も大切です。ただし、個人の体重や持病によって、必要な量、摂取可能な量は異なるため、必ず医師や管理栄養士と相談して摂取する目安量を決めましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

 床ずれは、病状が進行すると手術が必要になることがありますが、早期発見と適切なケアによって悪化を防ぐことができます。毎日のスキンケアでは皮膚の清潔と保湿を心がけ、定期的な体位変換を行い、バランスの取れた栄養摂取を続けることが重要です。初期の段階であれば改善の可能性は十分にありますが、床ずれのケアには専門的な知識が必要です。少しでも気になる症状があれば、自己判断せずに早めに医療機関に相談しましょう。

この記事の監修医師