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床ずれとは?初期症状と進行による変化、原因・予防法を解説

 公開日:2025/12/22
床ずれとは?初期症状と進行による変化、原因・予防法を解説

介護を行うなかで生じやすいトラブルの一つに、床ずれがあります。床ずれは重症化するとさまざまな合併症につながるリスクもあり、できれば初期症状のうちにしっかりとケアを行い、症状が進行しないようにすることが大切です。
この記事においては、床ずれの初期段階の状態や、予防方法などについて解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

床ずれの基礎知識

床ずれの基礎知識

床ずれとはどのような状態ですか?

床ずれは、医学用語では褥瘡(じょくそう)と呼ばれるものです。寝たきりの生活が続いている方に生じるトラブルの一つで、身体の一部が体重によって圧迫され続けることにより、その部分の血流が悪化して皮膚の細胞が損傷して引き起こされます。
初期の症状としては皮膚が赤くなる程度ですが、進行すると皮膚がむけて強い痛みを生じさせたり、皮膚の細胞を壊死させて、場合によっては敗血症などの原因になったりすることもあります。

床ずれの原因について教えてください

床ずれの原因は、同じ姿勢が続くことによって、身体の一部に体重がかかり続けることです。
健康な方の場合は日常生活のなかで適度に起き上がったりしているため、一か所に体重がかかり続けるということはありませんが、身体能力の低下などによって寝たきり状態の方の場合、常に同じ個所に負荷がかかりやすくなるため、床ずれが生じます。
特に、自力での寝返りができないような方の場合、同じ個所に負荷が集中してかかり続けやすくなり、床ずれのリスクが高まります。

床ずれができやすい部位はどこですか?

床ずれは、身体のなかでも骨が突出している部分に生じやすい症状です。骨とベッドや椅子などに皮膚が挟まれることで、強く圧迫されて床ずれが引き起こされます。
仰向けで寝ている時間が長い場合は、後頭部や肩甲骨部分、腰の下部にある仙骨部、そしてかかとが該当します。
横向きの場合、耳や肩、肘、膝、くるぶし、そして腰の横(腸骨)あたりに床ずれが生じやすいといえるでしょう。
寝ている姿勢だけではなく、座り姿勢が長時間続いている場合も床ずれが生じる可能性があり、座っている場合は座骨や尾骨、背中に床ずれができる可能性があります。

床ずれの予防方法について教えてください

床ずれを予防するためには、まずは定期的な姿勢の変更により、同じ個所が圧迫され続ける状態を防ぐことが大切です。寝返りを自力で行えない方であれば、こまめに身体の向きを変えるようにサポートする体位変換を行いましょう。自動で体位変換を行うサポート機能がついたマットや、体圧が分散されるようなマットなどの介護用品もあるので、上手に活用しましょう。
皮膚を健康な状態に保つため、清潔にしておくことも大切です。身体を定期的に拭くケアや、寝具の交換などで清潔な状態を保つことで、皮膚の健康を維持しやすくなります。皮膚は一定の潤いが保たれることで健康な状態に維持されるので、しっかりと保湿することも大切です。
また、床ずれは皮膚の細胞に栄養がいきわたらなくなることで生じるため、しっかりと栄養をとることや、血流を促すことも大切です。寝たきりの状態は筋力低下で血流も悪化しやすいため、寝ながら行えるリハビリやマッサージを取り入れて、血流を促進させましょう。

床ずれの初期症状

床ずれの初期症状

床ずれの初期症状と見分け方を教えてください

床ずれの初期症状は、皮膚の一部が赤くなる状態で出現します。初期症状の段階では痛みなどの自覚症状がない場合が多く、背中などの目視しにくい部位にできるため、介護者が目視で見つけるケースが多いでしょう。
ただし、皮膚の一部が赤くなる症状は、身体への刺激などに応じて一時的に血が集まって生じる反応性充血でも引き起こされます。そこで、床ずれかどうかを見分けるための方法として、赤くなっている部分を人差し指などで軽く圧迫して色の変化を見る方法があります。
指で軽く3秒ほど圧迫した際、床ずれであれば赤みがそのままの状態で維持され、床ずれでなければ白く変化し、指を離すと再度赤く戻ります。
これは、床ずれの場合は赤血球が血管外に漏れ出すことで生じているため、指で押しても色が変化しないことを利用して行う判断方法です。

ただし、指押し法だけでは判断しきれない場合もあります。指押し法で赤みが持続し、床ずれが疑われる場合には、赤くなっている場合に負荷がかからないような対応を行って一定時間をおき、再度観察することで床ずれの判断が行われます。

なお、床ずれが背中や腰などにできている場合は目視で判断しやすいですが、髪が生えている頭部にできている場合は目視での発見がしにくいため、よく注意する必要があります。

初期症状はセルフケアで改善できますか?

初期症状の床ずれであれば、適切なケアで皮膚に血流が行き渡る状態を維持させれば改善できる可能性があります。
床ずれを改善するためのケア方法は、床ずれを予防するための方法と同じで、寝返りをうつなどのこまめな体位変換をして同じ個所が圧迫されないようにすることが大切です。
また、皮膚のこまめなケアにより清潔で潤いの保たれた状態を維持することや、血流を促すための運動やマッサージ、バランスのよい食事なども重要です。
圧力を分散させるためのマットやクッションなども有効活用して、しっかりとケアを行うことで初期状態から回復を目指すことが可能です。

初期症状から進行させないための注意点を教えてください

床ずれを初期症状から進行させないためのポイントも、基本的には床ずれの予防や、初期症状からの回復を目指すケアと同じです。身体の一部に負荷がかかり続けることが床ずれが進行する最大の要因なので、圧力の分散をしっかりと行うようにしましょう。

また、床ずれかもしれないと感じたら、早めに医師や看護師に相談して、医療による適切なケアを受けることも大切です。
栄養不足による血流の低下などの場合、食事内容の見直しや経口・経腸栄養による栄養補給を行うことで、皮膚の修復や血流の改善を促すことが大切です。まずは早めに相談して、適切な診断と治療を受けられるようにしましょう。

床ずれの進行と治療

床ずれの進行と治療

床ずれが初期症状から進行するとどのように変化しますか?

床ずれの初期症状は皮膚の赤み程度ですが、進行すると水ぶくれ(水泡)や皮膚のただれ(びらん)が生じます。
赤みが出ている程度の初期段階はステージ1とされ、水ぶくれなどが生じ、表皮に損傷が生じている段階はステージ2とされます。
皮膚には痛みを感じる神経があるため、この段階になると強い痛みを感じる場合があります。

さらに進行すると、皮膚組織が失われ、皮下脂肪が露出したステージ3の状態になります。深い部分まで症状が進行しているため、治療に時間がかかりやすい状態です。

ステージ4は皮下脂肪まで失われた状態で、骨や筋肉などが露出した状態です。骨髄炎などにつながる可能性があり、場合によっては生命に危険が生じます。

床ずれで受診する目安を教えてください

床ずれは初期段階でしっかりとケアを行うことが大切です。初期段階であれば適切なケアで早めに回復を目指せる可能性があるので、床ずれかもと感じたタイミングで、早めに受診するようにしましょう。
訪問看護や訪問診療を利用している方であれば、早めに連絡をして診断や治療を受けることをおすすめします。
そうでない場合は、皮膚科などを早めに受診し、皮膚を保護するための外用薬などを処方してもらうとよいでしょう。

進行した床ずれはどのように治療しますか?

床ずれの治療は、圧力の分散や栄養状態の回復、皮膚の保護を行い、自然治癒力での回復を目指す方法が基本です。ステージ3などに進行している場合も、基本は患部の保護を重視した治療を行います。
ただし、重症化により組織が壊死してしまっている場合には、悪くなっている組織を除去する治療などが必要になる可能性もあります。また、状況や症例によっては手術や特殊な機器を装着する治療が行われます。

編集部まとめ

編集部まとめ

床ずれの初期症状は皮膚の赤みとして表れ、指で押しても色の変化が起こらないという特徴で見分けることができます。
床ずれは初期段階であれば適切なケアで早期の回復を目指しやすい症状なので、疑われる症状がある場合は早めに医療を受診し、早期の診断や治療を行うようにしましょう。

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