糖尿病患者さんを介護するときの注意点|生活習慣や服薬管理、合併症ケアのポイントを解説

糖尿病を抱えるご家族や大切な方の介護に関わる皆さんは、日々のケアでどのような点に注意すればよいか、悩むことも少なくないでしょう。糖尿病は、血糖値の管理が難しく、介護が必要な状況では、食事や運動、薬の管理に細かな配慮が必要です。
本記事では、介護と糖尿病に関する注意点を中心に、以下の内容をご紹介します。
- 糖尿病と介護の基本
- 生活習慣管理と服薬管理について
- 合併症予防について
介護と糖尿病に関する注意点について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
林 良典(医師)
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
糖尿病と介護の基本

糖尿病はどのような病気ですか?
血糖が過剰に上昇する状態が長期にわたると、心臓病や腎不全、視力障害、神経障害などの合併症を引き起こすことがあります。
また、糖尿病は主に1型と2型に分けられます。1型糖尿病は自己免疫反応により膵臓がインスリンを分泌できなくなる病気で、主に子どもや若年層に見られます。2型糖尿病は、生活習慣や遺伝的要因が関係し、成人に発症しやすいです。また、妊娠中に発症する妊娠糖尿病もあります。
糖尿病は初期に自覚症状が現れにくいため、定期的な健康診断で血糖値を確認し、早期対応が重要です。適切な食事や運動、薬物治療で血糖値を管理することで、合併症を防げます。
糖尿病患者さんに介護が必要になるのはどのようなときですか?
高齢の方は、認知機能の低下や身体機能の衰えが影響し、自己管理が困難になることがあります。また、低血糖や高血糖の症状が現れにくくなるため、周囲の注意深い観察とサポートが求められます。
さらに、糖尿病患者さんは足のトラブルや感染症にかかりやすく、これらが重症化すると入院や長期療養が必要になることもあります。そのため、日々のケアとして、足の観察や皮膚の手入れ、歯のケアなど、基本的な衛生管理が重要です。
【糖尿病介護の注意点】生活習慣管理

糖尿病の方の食事管理や介助で注意すべきことはありますか?
- 食事の順番を工夫する:野菜や海藻、きのこ類などの食物繊維が豊富な副菜を先に食べることで、血糖値の急上昇を抑える
- 食物繊維を積極的に摂取する:水溶性食物繊維(大麦、オーツ、きのこ類など)や不溶性食物繊維(穀類、豆類など)をバランスよく摂取
- 食事の内容の記録と血糖値のモニタリング:食事内容や摂取量を記録し、血糖値との関連を把握することで、食事管理がしやすくなる
これらの方法を取り入れることで、血糖値の管理がしやすくなり、患者さんの健康をサポートできます。
運動や活動量の管理方法を教えてください
そのためには、散歩や軽いストレッチなど、無理なく続けられる運動を取り入れるのがおすすめです。1回あたり30分程度を週に数回(合計約150分/週を目安)行うのがいいでしょう。
また、運動を行う際は、運動前後の血糖値の変化を確認し、低血糖や高血糖の兆候がないか注意をしたり、患者さんの体調や体力に応じて運動の強度や時間を調整したりすることも大切です。
血糖コントロールのために介護者が気をつけることを教えてください
以下で解説します。
- 食事と運動の管理:食事のタイミングや糖質量に気をつけ、バランスの取れた食事をサポートし、運動は無理のない範囲で定期的に行い、血糖値の安定を助ける
- 服薬やインスリン注射の管理:薬の服用やインスリン注射は指示どおりに行い、服薬時間や量を確認して、忘れずに服用できるようサポートする
- 血糖値の定期的な測定と記録:血糖値を定期的に測定し、結果を記録して、異常値が出た場合には早急に医師へ相談する
これらのポイントを守ることで、患者さんの血糖コントロールを支え、健康的な生活を維持する手助けとなるでしょう。
【糖尿病介護の注意点】服薬・インスリン管理

糖尿病治療薬の服薬管理は介護でどうサポートしますか?
例えば、薬の種類によっては腎機能に影響を及ぼす可能性があるため、正しいタイミングで服用することが重要です。介護者は、その管理をサポートする役割があります。
また、正しい服薬スケジュールを守るために、お薬手帳を活用し、薬剤の記録を整理して、服薬時間を管理することも必要です。介護者は服薬後の体調変化や副作用を監視し、異常を早期に見つけることが求められます。
服薬管理がきちんと行われることで、血糖値のコントロールが安定し、合併症の予防につながります。
インスリン注射は介護者が対応できますか?
例えば、注射のタイミングを声かけしたり、血糖測定器の準備や測定結果の確認を手伝ったりすることは認められています。
また、介護施設によっては看護師が常駐している場合、インスリン注射を実施できますが、看護師が24時間体制でない施設では、夜間の対応が難しいこともあります。施設選びの際には看護師の勤務体制の確認が重要です。
低血糖や高血糖のサインに気付くにはどうすればよいですか?
- 低血糖
血糖値が70mg/dL未満になると、震え、冷や汗、動悸などの症状が現れます。さらに進行すると意識障害や集中力の低下が起こる可能性があるため、注意が必要です。 - 高血糖
高血糖が持続する場合、口渇や多尿、倦怠感が現れることがあります。このまま放置すると合併症のリスクが高まり、体調に悪影響を与えるため、医師の指示に従い適切な対応が求められます。
日々の血糖値チェックと生活習慣の見直しを心がけ、糖尿病の予防や管理をしっかりと行うことが重要です。
【糖尿病介護の注意点】合併症ケア

糖尿病で起こりやすい合併症について教えてください
1. 神経障害
足のしびれや感覚の低下が起こり、傷の治療が遅れやすくなります。最悪の場合、壊疽(えそ)を引き起こし、足の切断につながることもあります。
2. 網膜症
視力低下や失明のリスクが増します。定期的な眼科検診が重要です。
3. 腎症
腎臓の働きが低下し、最終的には腎不全に進行する可能性があります。
4. 心血管疾患
心臓病や脳卒中のリスクが高まります。
これらの合併症を予防するためには、血糖値の管理や定期的な健康チェック、足のケア、感染症予防が重要です。介護者は、患者さんの状態をよく観察し、早期発見と適切な対応を心がけることが大切です。
感染症予防のためにできることはありますか?
以下の対策を日常生活に取り入れましょう。
- 手洗いと消毒
手洗いは石けんと流水で20秒以上洗い、手指消毒剤を使用する際は、手洗い後に行うことがおすすめです。細菌やウイルスが体内へ侵入することを防げます。 - 生活環境の清潔管理
患者さんがよく触れる場所(ドアノブやリモコン、トイレなど)は定期的に消毒しましょう。使用する消毒剤は、適切な濃度を守り、細菌やウイルスを取り除きます。 - 早期発見と対応
発熱や咳、倦怠感などの感染症の兆候が見られた場合、早めに医療機関を受診し、治療を受けることが重要です。また、インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種を受けることも有効な感染症予防です。
これらの対策を日常的に実践することで、糖尿病患者さんの感染症リスクを減らし、健康を維持できます。
編集部まとめ

ここまで、糖尿病に伴う介護についてお伝えしてきました。
要点をまとめると以下のとおりです。
- 糖尿病は、インスリンというホルモンの働きが不足したり、うまく作用しなくなったりすることで、血糖値が高くなる病気のこと。糖尿病患者さんに介護が必要になるのは、血糖値の管理が難しくなったときや、合併症が進行して日常生活に支障をきたすとき
- 生活習慣管理で必要なことは、食事の順番を工夫したり、食物繊維を積極的に摂取したりすることなどが挙げられる。また、服薬管理で大切なことは、服薬のタイミングを確認すること
- 合併症予防には、定期的な健康チェックや足のケア、感染症予防が重要で、早期発見と予防が糖尿病患者さんの健康を守るカギとなる
糖尿病患者さんの介護は、細かなケアが求められますが、これらの基本的な注意点を押さえておくことで、患者さんの健康維持をサポートできます。
この記事が、糖尿病の方を介護する際に役立つ情報となり、皆さんの不安を少しでも解消できたなら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



