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認知症による徘徊はなぜ起こる?原因や心理的な背景、対応方法などを解説

 公開日:2025/12/15
認知症による徘徊はなぜ起こる?原因や心理的な背景、対応方法などを解説

認知症の方に見られる徘徊は、単なる迷子や行動異常ではなく、本人なりの目的や不安、記憶の混乱などが影響して起こる行動です。
探し物をしているつもりで外出したり、過去の記憶を頼りに昔の家へ向かったりすることもあります。

本記事では認知症による徘徊はなぜ起こるのかについて以下の点を中心にご紹介します。

  • 認知症による徘徊とは
  • 認知症による徘徊が起こる原因や心理的な背景
  • 認知症による徘徊への対応と予防

認知症による徘徊はなぜ起こるのかについて理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

認知症による徘徊とは

認知症による徘徊とは

認知症による徘徊とはどのような行動ですか?

認知症による徘徊とは、昼夜を問わず屋内外を歩き回る行動で、本人にとっては目的のある行動であっても、周囲からはあてもなく歩いているように見える状態を指します。
徘徊は単なる迷子ではなく、認知症の症状の一つとして理解し、早期に見守りや支援の体制を整えることが重要です。

認知症による徘徊にはどのような危険性がありますか?

認知症による徘徊は、屋内にとどまらず屋外で起こることも多いとされており、さまざまな危険を伴います。

なかでも夜間や早朝は人目につきにくく、交通事故や転倒、転落といった重大な事故につながる恐れがあります。季節によっては、夏の熱中症や脱水症、冬の低体温症など命に関わる事態に発展することもあります。

また、徘徊者は自宅から近い範囲で発見されるものの、見つかるまでに時間がかかると衰弱してしまう危険があります。

徘徊は本人の不安や混乱が原因となっている場合もあり、無理に止めようとすると不安が増し、かえって行動が悪化することもあります。

徘徊の症状がみられる場合、どのように接するべきですか?

認知症による徘徊が見られる場合は、まず無理に止めようとせず、本人の気持ちを受け止めることが大切です。徘徊には「買い物に行こうとしている」「家に帰るつもり」など、本人なりの理由があります。

行動を否定したり叱ったりすると、不安や不信感が強まり、かえって徘徊が悪化することもあります。落ち着いた口調で理由を尋ね、安心できる環境を整えましょう。
また、できるだけ一緒に歩いてあげると、安心感が生まれ、自然と帰宅につながることもあります。付き添いが難しい場合は、少し距離を保ちながら見守ることがポイントです

認知症による徘徊が起こる原因や心理的な背景

認知症による徘徊が起こる原因や心理的な背景

認知症による徘徊はなぜ起こりますか?

認知症による徘徊は、脳の働きの低下によって記憶や判断力が失われ、状況を正しく理解できなくなることが主な原因です。

例えば「ここは我が家ではない」と感じて帰ろうとしたり、「会社に行く時間だ」と過去の習慣を再現しようと外出したりします。
これは本人にとって目的のある行動であり、決して無意味に歩き回っているわけではありません。

また、置き忘れた物を探そうとして家のなかを歩き回るケースや、慣れた道でも方向感覚を失って迷ってしまうケースもあります。
さらに、前頭側頭型認知症では同じ行動を繰り返す傾向があり、これが徘徊として現れることもあります。

不安や孤独感が徘徊の原因になることはありますか?

不安や孤独感は、認知症による徘徊の大きな要因の一つといわれています。認知症の方は、記憶や判断力が低下することで、自身がどこにいるのか、周囲にいる方がが誰なのかがわからなくなることがあります。

その結果、「ここにいたくない」「家に帰りたい」といった不安や焦りの気持ちが高まり、外に出てしまう行動につながることがあります。

また、家族の様子や雰囲気から「迷惑をかけている」「自身の居場所がない」と感じ、孤独感を抱いて外へ出るケースも少なくありません。こうした徘徊は、本人にとって安心できる場所や人を探そうとする自然な行動でもあります。

昼夜逆転や生活リズムの乱れは徘徊に影響しますか?

昼夜逆転や生活リズムの乱れは、認知症の徘徊に大きく影響します。日中に十分な活動ができず昼寝が増えると、夜に眠れなくなり、夜間に起き出して歩き回ることがあります。

また、夜間せん妄(夜になると混乱や不安が強くなる状態)が起こることで、さらに徘徊が助長されることもあります。生活リズムを整えるためには、昼間に適度な活動や日光浴を取り入れ、夜は静かで安心できる環境を整えることが大切です。

認知症による徘徊への対応と予防

認知症による徘徊への対応と予防

徘徊が起こった際の対処法を教えてください

認知症の方が徘徊していなくなった場合は、まず冷静に行動することが大切です。最初に家のなかや敷地内を確認し、押し入れや浴室、庭など思わぬ場所にいないか探してみましょう。

外出が確認できたら、直前の服装や持ち物、出かけた時間、よく行く場所を整理して家族や周囲と共有します。そのうえで、すぐに警察へ連絡し、特徴や写真を伝えて捜索を依頼してください。通報が早いほど発見の可能性は高まります。

また、地域包括支援センターにも相談すると、自治体ごとの徘徊SOSネットワークなどを通じて協力態勢を整えてもらえる場合があります。

もし、見つかった場合は、驚かせず穏やかに声をかけ、本人の気持ちを尊重しながら自宅へ誘導しましょう。
地域や行政と連携し、周囲の理解を得ながら早期発見を目指すことが何より重要です。

徘徊を防ぐためにできることはありますか?

認知症による徘徊を止めることは難しいものの、工夫次第でリスクを減らせます。まず大切なのは外出を制限するよりも、安心して過ごせる環境をつくることです。

日中は軽い運動や散歩、趣味の時間を取り入れて心身のリズムを整えましょう。やることがあることで「ここが自身の居場所だ」と感じられ、外出衝動を和らげる効果が期待できます。また、本人の行動パターンを理解し、よく行く場所や時間帯を把握しておくことも重要です。

徘徊対策に役立つ製品があれば教えてください

徘徊を防ぐことは難しいため、安全性を確保するための製品を上手に活用することが大切です。

例えば、玄関や勝手口に取り付ける徘徊感知センサーは、ドアを開けた際に家族へ通知が届く仕組みで、外出の兆候をいち早く察知できます。ベッドや居室周辺に設置するタイプもあり、起き上がった瞬間や移動時に反応して知らせてくれるものもあります。

さらに、GPS機能を活用した見守り機器もおすすめです。衣服や靴、バッグなどに取り付けられる小型タイプが多いとされており、位置情報をスマートフォンで確認できるため、行方不明時の早期発見につながります。

徘徊に悩んだとき、相談できる場所はありますか?

徘徊への不安や対応に悩んだときは、一人で抱え込まず、専門機関に相談することが大切です。まず、身近な相談先として地域包括支援センターがあります。保健師や社会福祉士、ケアマネジャーなどがチームで対応し、徘徊見守りサービスやGPS機器の貸与制度など、地域の支援策を紹介してくれます。

また、自治体の高齢福祉課や介護保険課でも、見守りネットワークや警察との連携、徘徊対策グッズの助成制度などを案内してもらえることがあります。

さらに、医療面での不安がある場合は認知症疾患医療センターやかかりつけ医へ相談し、症状の進行や体調の変化を確認しましょう。電話相談窓口(例:認知症の方と家族の会)も利用できるため、状況に応じて複数の窓口を活用するのがおすすめです。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまで認知症による徘徊はなぜ起こるのかについてお伝えしてきました。
認知症による徘徊はなぜ起こるのかについて、要点をまとめると以下のとおりです。

  • 認知症による徘徊とは、昼夜を問わず屋内外を歩き回る行動で、本人にとっては目的のある行動であっても、周囲からはあてもなく歩いているように見える状態のこと
  • 認知症による徘徊は、脳の働きの低下によって記憶や判断力が失われ、状況を正しく理解できなくなることが主な原因である
  • 徘徊が起こった時には、家のなかや敷地内を確認し、押し入れや浴室、庭など思わぬ場所にいないか探することが大切

認知症による徘徊は、記憶の混乱や不安、孤独感などが影響して起こる行動であり、本人にとっては目的のある動きです。しかし、屋外での徘徊は事故や行方不明などの危険を伴うため、早期対応と見守りの整備が欠かせません。

また、徘徊感知センサーやGPS機器などの見守り製品を活用し、地域包括支援センターや自治体窓口に相談することも大切です。

本記事が少しでも認知症による徘徊はなぜ起こるのかについて知りたい方のお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修医師