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介護医療院と病院の違いとは?諸条件や費用の違い、選び方を解説

 公開日:2025/10/28
介護医療院と病院の違いとは?諸条件や費用の違い、選び方を解説

日本は超高齢社会を迎え、介護や医療を必要とする高齢の方が年々増加しています。介護保険サービスの利用者数は、制度開始当初の2000年4月約52万人から2018年4月には約93万人と1.8倍に増えました。また、65歳以上の高齢の方の人口は2042年に約3,935万人とピークに達すると予測されています。こうした状況のなか、介護医療院という新しい施設が2018年に創設されました。しかし、一般の方には、介護医療院と従来の病院との違いがわかりにくい場合もあるでしょう。本記事では、介護医療院とは何か、その成り立ちや、病院との具体的な違いを解説します。

参照:『介護医療院とは』(健康長寿ネット)
小田村 悠希

監修医師
小田村 悠希(医師)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

介護医療院とは

介護医療院とは 介護医療院は、医療と介護の両方を必要とする高齢の方に対応するために設けられた新しい介護保険施設です。本章ではその概要と創設された経緯を解説します。

介護医療院の概要

介護医療院は、2018年4月に新しく制度化された介護保険施設で、長期的な医療ケアと介護の両方が必要な高齢の方のための施設です。

具体的には、要介護状態にあり、長期にわたり療養が必要な高齢の方に対し、日常的な医学管理看取り、ターミナルケアなどの医療的ケアと、生活の場としての機能を一体的に提供することを目的としています。介護医療院には医師や看護師、介護職員が配置されており、介護や機能訓練、必要な医療処置、日常生活上の世話までが包括的に行われます。

介護医療院が創設された経緯

介護医療院が創設された背景には、高齢の方の慢性期医療や介護ニーズの高まりと、従来の制度では対応が不十分だった現状があります。

かつては要介護状態の高齢の方向けの長期療養施設として介護療養型医療施設(いわゆる介護療養病床)が存在しました。厚生労働省の検討会でも、要介護状態の高齢の方のなかには容体が急変するリスクを抱える方がいる一方で、当時の介護保険施設にはそうした医療ニーズに完全に対応できるサービスが存在しないという課題が報告されました。

そこで、経管栄養や痰の吸引など日常的な医療処置や充実した看取りを提供でき、かつ長期療養にふさわしい生活環境を備えた新たな施設が必要と結論づけられたのです。以上を踏まえ、2017年6月に介護保険法が改正され、住まいと生活を医療が支える新たなモデルとして介護医療院が位置づけられました。介護療養型医療施設は、2017年度末で廃止されることが決定し、その受け皿として新設されたのが介護医療院です。

介護医療院は単なる旧施設の受け皿ではなく、利用者の尊厳の保持と自立支援を理念に掲げ、地域に開かれた交流の場となることが期待されています。制度創設の目的は、増加が見込まれる慢性期の医療および介護ニーズに対応し、医療と介護を一体的に提供することで高齢の方の長期療養生活を支えることにあります。

介護療養型医療施設から介護医療院への経過措置として6年間の移行期間が設けられ、2024年3月末までに順次転換が進められました。

参照:『介護医療院とは』(健康長寿ネット)

介護医療院と病院の違い

介護医療院と病院の違い 介護医療院は上記のとおり介護保険制度下の介護保険施設であり、一方の病院は医療保険制度下で運営される医療機関です。この制度上の違いが、利用できる方の条件やサービス内容、費用負担、利用期間などさまざまな面で表れています。以下では、入所、入院の条件や滞在できる期間、費用負担、受けられる治療やサービスの観点から、介護医療院と病院の違いを整理します。

入所、入院の条件

介護医療院に入所できるのは、介護保険の要介護認定で要介護1〜5と認定された高齢の方に限られます。要支援1および2の方は利用対象外です。原則65歳以上が対象ですが、特定疾患により要介護認定を受けている40歳以上の方も含まれます。

介護医療院は主に重度の要介護者を対象としており、特に経管栄養(胃ろうや経鼻栄養)や気管吸引など日常的な医療ケアが必要な方、重篤な身体疾患を抱える方や、身体合併症を伴う認知症患者さんなどが想定されています。なお、要介護1以上であっても、医療ニーズや要介護度が高い方ほど施設側も受け入れやすい傾向があります。また、要介護1~5と判定されても必ず入居できるわけではないことも知っておくとよいでしょう。

一方、病院への入院は年齢や要介護認定の有無に関わらず、疾病やけがの治療の必要性に応じて医師の判断で行われます。急性期の治療や専門的な医療処置が必要な患者さんが対象で、要介護認定を受けていない方や若年者でも、病気やけがで治療が必要であれば入院できます。 まとめると、介護医療院は要介護者に限定されるのに対し、病院は診療が必要な患者さん全般が対象となり、入院の可否は医師の判断によります。

滞在できる期間

介護医療院は長期の療養、生活の場として位置付けられており、利用期間に明確な制限はありません。入所者は介護が必要な限り、介護医療院を生活の場として継続的に利用できます。施設側も看取り(ターミナルケア)まで対応する体制を整えており、終身にわたって療養生活を送ることも可能です。

これに対して病院での入院は、基本的に一時的な治療の場と位置付けられます。病院は病気やけがを治療および回復させることが目的のため、病状が安定し治療の必要がなくなれば退院します。急性期病院の場合、平均在院日数は数日〜数週間程度で、症状が改善すれば自宅やほかの施設へ退院あるいは転院する流れが一般的です。慢性期向けの療養型病院でも、状態が落ち着いて在宅生活や施設入所が可能と判断されれば退院を求められることがあります。

つまり、病院での入院は治療が完了するまでの期間限定であり、介護医療院は介護が必要な限り長期にわたって生活できるという違いがあります。

費用負担

介護医療院と病院では、適用される保険制度が異なるため費用負担の仕組みも変わります。

項目 介護医療院 病院
適用される制度 介護保険 医療保険
自己負担割合 原則1割(所得に応じて2割・3割) ・70歳未満:3割 ・70歳以上:1~3割(所得区分による)
自己負担に含まれる内容 介護サービス提供にかかる費用(ケア、医療処置、機能訓練など) 診療費・検査費・治療費など医療行為にかかる費用
保険対象外の費用 居住費(部屋代)、食費、日常生活費など 入院中の食事代、差額ベッド代(個室・特別室)など
負担軽減制度 居住費・食費に対する 負担限度額認定制度(申請が必要) 高額療養費制度により自己負担額に上限あり
費用の特徴 月額制に近く、安定した負担 治療内容により変動が大きいが、制度で上限あり

このように、介護医療院は介護保険による手厚い補助がある分、月々の利用者負担は抑えられており、病院は医療行為に対する費用負担が中心で治療内容によって変動し、高額な場合でも制度で一定の上限に抑えられる、といった違いがあります。

受けられる治療やサービス

医療やケアの内容にも介護医療院と病院では違いがあります。

項目 介護医療院 病院
施設の役割 医療と介護(生活支援)の両立 医療(治療)が中心
医療体制 常勤医師や看護師が配置され、定期診察や投薬管理、点滴、痰吸引など基本的な医療処置に対応可能です。 医師や看護師が24時間体制検査、手術、集中治療、画像診断など高度医療を実施可能です。
介護・生活支援 介護職員による食事や排せつ、入浴介助リハビリ(機能訓練)、レクリエーション、洗濯や清掃など生活支援を包括的に提供します。 入院中の生活支援は看護師や看護補助者によるケアが中心で、リハビリや生活支援は限定的です。
環境・設備 居室、談話室、機能訓練室、浴室など生活の場としての設備を整備し、長期療養を快適に過ごせる工夫があります。 医療機器や検査設備、手術室など治療に特化した設備が中心で、生活施設としての機能は限定的です。

介護医療院は医療および介護(生活支援)の両面を担う施設であり、病院は医療(治療)に特化した施設という違いがサービス内容に現れています。

介護医療院と病院の選び方

介護医療院と病院の選び方 以上の違いを踏まえ、実際に高齢のご家族などのケアを検討する際に、病院への入院と介護医療院への入所のどちらを選ぶべきか迷うケースもあるでしょう。基本的には病状や必要なケアの内容によって適切な施設を選択します。ここでは、病院がすすめられるケースと、介護医療院を選択した方がよいケースの例を挙げます。

病院への入院を勧められるケース

急性発症の病気や外科的治療が必要なけがなど、医学的に緊急かつ高度な治療が必要な場合は病院への入院が選択されます。例えば、脳卒中や心筋梗塞の発症直後、肺炎などの急性期感染症の重症例、大腿骨頸部骨折など手術が必要な骨折などです。これらの場合、病院で点滴や酸素投与、画像検査、手術・処置など専門治療を受けなければ生命や予後に関わるため、まず病院での治療が優先されます。

また、慢性疾患でも容体が不安定になり、病状が重篤化した場合も、病院への緊急入院が必要です。したがって、急性期治療が必要な状態や、専門的な医療機器、処置が欠かせない状態では、迷わず病院を選ぶべきです。一度病院で治療を受けて病状が安定した後、引き続き長期の療養や介護が必要になった場合にあらためて介護医療院などへの転院を検討します。

介護医療院を選択した方がよいケース

患者さんの病状が安定期に入り、引き続き介護や日常的な医療管理が必要なものの、自宅での生活は困難なケースでは介護医療院への入所が適しています。例えば、急性期の治療を終えた後も在宅生活が難しい高齢の方です。脳卒中の後遺症などで重い麻痺が残り、自宅介護が難しい場合や、人工呼吸器こそ必要ないものの経管栄養(経鼻チューブや胃ろう)や気管切開後の吸引ケアが日常的に必要な方は、介護医療院であれば医療的ケアと介護の両面で対応できま。

また、認知症があり医療依存度も高い方も、介護医療院なら医師や看護師が日常的に健康管理を行いながら生活面の介護も受けられます。さらに、終末期に至り、自宅での看取りが難しい場合も、介護医療院であれば看取りケアに対応しているため、穏やかな環境で最期までケアを受けることができます。

このように、急性期治療は終わったものの、医療的ケアと介護の両方が長期で必要な場合や、在宅やほかの介護施設では医療面で不安が残る場合には、介護医療院の利用を選択肢に入れるとよいでしょう。

介護医療院への入所に必要な手続き

介護医療院への入所に必要な手続き 介護医療院に入所するためには、いくつかの手続きや準備が必要です。まず大前提として、利用者は介護保険の要介護認定を受けている必要があります。要介護認定をまだ受けていない場合は、お住まいの市区町村の介護保険窓口に申請し、認定を受けることから始めましょう。要介護度が判定されたら、その度合いに応じて介護医療院など施設サービスを利用できる資格が得られます。

次に、実際に入所する介護医療院を探して申し込みます。介護医療院は各地域に複数存在しますので、希望する地域の施設を調べましょう。厚生労働省の公開情報や都道府県や市区町村の高齢者福祉担当部署、あるいは地域包括支援センターなどで施設の一覧や空き状況の情報提供を受けることができます。

介護支援専門員(ケアマネジャー)や現在入院中の場合は病院の医療ソーシャルワーカーに相談し、適切な施設を紹介してもらう方法もあります。 入所を希望する施設が見つかったら、各施設に直接申し込みを行います。申し込み方法は施設によって多少異なりますが、おおむね以下の流れに沿って進行します。

  • 問い合わせ・見学
  • 面談・申込書提出
  • 入所判定(審査)
  • 結果通知・入所日の調整
  • 入所当日・契約

以上が一般的な流れです。なお、介護医療院へ入所する際は医療保険から介護保険への切り替えになるため、現在入院中の病院から転院する場合は病院の医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーが連携して調整してくれます。市区町村の地域包括支援センター介護保険課なども相談窓口です。入所にあたって不安な点は事前によく確認し、納得したうえで手続きを進めましょう。

まとめ

まとめ 介護医療院は、高齢の方の長期療養生活を医療と介護で支えることを目的に創設された新しい介護保険施設であり、急性期の治療や専門医療を担う病院とは制度上も役割も大きく異なります。対象者利用期間費用面などさまざまな違いがあります。大切なことは、患者さんあるいは利用者さんの状態やニーズに合った施設を選択することです。

急性期の医療が必要であれば病院で治療を受け、治療後は介護医療院など適切な施設に移ることで、医療資源と介護資源を有効に活用できます。厚生労働省も地域包括ケアシステムのなかで、状態に応じた切れ目のない医療と介護の提供体制を推進しており、介護医療院のような医療と介護の両機能を持つ施設は今後さらに需要が高まると期待されています。介護医療院と病院の違いを正しく理解し、適切に使い分けることで、高齢の方やご家族が安心して療養、生活できる環境を選ぶ一助となれば幸いです。

この記事の監修医師