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まとめて作れる介護食のレシピ|介護食の種類や調理のポイントも紹介

 公開日:2025/10/28
まとめて作れる介護食のレシピ|介護食の種類や調理のポイントも紹介

介護が必要な高齢の家族を支える介護者さんにとって、毎日の食事作りは大きな負担です。噛む力や飲み込む力が弱くなった方でも安全に食べられる介護食を用意するには、普通の食事とは異なる工夫が必要です。そこで本記事では、介護食の基本を解説し、まとめて作れて保存できる1週間分の介護食レシピを種類別に紹介します。
小田村 悠希

監修医師
小田村 悠希(医師)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

介護食とは

介護食とは 介護食のレシピを解説する前に、まずは介護職とはどのような食事か、そして介護食が必要な理由について解説します。

介護食の概要

介護食とは、食べる方の噛む力や飲み込む力に合わせて特別な処理を施した食事のことです。例えば、食材を細かく刻んだきざみ食や、ミキサーでペースト状にしたミキサー食、ゼラチンで固めて舌で潰せるやわらかさにしたソフト食などがあります。要介護者さんでも無理なく、安全に食べられるよう適切に調整された食事形態が介護食です。

介護食が必要な理由

介護食は単なる流動食だけではなく、見た目や味をできるだけ普通の食事に近づけながらも食べやすく工夫された食事です。食べる機能が低下した方に通常の硬い食事を提供すると、食事そのものを楽しめず食欲が落ちてしまったり、うまく飲み込めずに誤嚥したりする危険があります。

また、噛めない、飲み込めないことで栄養が偏ってしまうと、低栄養により筋肉量の減少などを招くおそれがあります。そのため、被介護者の状態に合わせた介護食を適切に用意する理由は、安全に食事を食べてもらうことと同時に、栄養不足を防ぎ健康を維持することにあります。

介護食の種類

介護食の種類 介護食には、食べる方の口腔機能や嚥下機能に応じてさまざまな種類があります。ここでは代表的な5種類の介護食について、その特徴と適した対象者を解説します。それぞれの介護食の特徴を理解し、要介護者の状態に合わせて適切に食事形態を選ぶようにしましょう。

軟菜食

軟菜食は見た目は普通の食事と変わらないものの、硬い食材を長時間煮込むなどして舌や歯茎で潰せる硬さに調理した食事です。歯が欠けていたり噛む力が弱くなったりした方、固いものを消化しにくい方などに向いています。

刻み食

刻み食は通常のメニューを細かく刻んで食べやすくした食事です。刻み食は、噛む力が低下して大きなものが食べにくい方に適しています。刻むことで噛みやすくなりますが、お口の中でまとまりにくくバラバラになりやすいため、飲み込む力が弱い方には注意が必要です。飲みこむ力が弱い方に刻み食を提供すると、細かく刻んだだけだと食べ物が散らばって誤嚥につながるおそれもあります。飲み込む力が弱っている方には、刻み食を水溶き片栗粉などでとろみをつけ、細かい粒同士をまとめやすくする工夫をするとよいでしょう。

ソフト食

ソフト食は、食材をペースト状にして型に入れ、ゼラチンやゲル化剤で元の形を再現した食事です。見た目は通常の料理に近い形状を保ちながら、舌や歯茎で簡単につぶせるやわらかさに仕上げてあります。ペースト状に調理してあるのでほとんど噛む必要がなく、表面が滑らかで舌の力だけで喉まで送り込めます。

ミキサー食

ミキサー食は、料理や食材をミキサーにかけてポタージュ状にした食事です。噛まずにそのまま飲み込めるので、きざみ食やソフト食が難しくなった方に向いています。

お粥やスープ、主菜・副菜などをすべて攪拌してペースト状にしますが、水分が多くサラサラしすぎると誤嚥しやすくなります。市販のとろみ剤や片栗粉で適度にとろみをつけて飲み込みやすく調整しましょう。

ミキサー食は見た目や食感が大きく変わるため、何を食べているかわからず食欲が低下してしまうこともあります。そのため、提供時に「これはかぼちゃのスープです」などとメニューを伝えたり、彩りよく盛り付けたりする工夫をしましょう。

流動食

流動食は、固形物を裏ごし、濾過して液体状にした食事です。嚥下機能だけでなく消化機能も衰えている方向けで、食事というより栄養補給のための液状食です。ミキサー食よりさらに固形物が少なくサラサラしていますが、そのままだと誤嚥の危険があるため、必要に応じてとろみをつけて飲み込みやすくします。長期にわたって使用する場合は、医師や管理栄養士の指導の下で、タンパク質やビタミン類など必要な栄養素を補う工夫が欠かせません。

【種類別】まとめて作れる1週間分の介護食レシピ

【種類別】まとめて作れる1週間分の介護食レシピ 介護食を毎食一から作るのは大変ですが、作り置きや冷凍保存を活用すれば調理の負担を減らせます。ここからは種類別に、1週間分をまとめて作り置きできるレシピ例を以下に記します。

軟菜食の1週間レシピ

軟菜食は、煮込み料理や蒸し料理を活用すると大量調理と保存がしやすくなります。

曜日 メニュー ワンポイント
月曜日 やわらかビーフシチュー 牛肉と野菜を圧力鍋でとろとろに煮込み、舌で潰せるやわらかさにします。余った分は冷凍保存可能です。
火曜日 白身魚のやわらか煮付け タラなどの白身魚を生姜醤油で煮付けます。身が崩れるほどやわらかく、煮汁ごと保存して味を染み込ませます。
水曜日 豆腐ハンバーグのあんかけ 鶏ひき肉と豆腐のやわらかいハンバーグに和風あんをかけます。
木曜日 やわらか肉じゃが 圧力調理でじゃがいもや人参が箸で崩れるほどにやわらかくします。
金曜日 鶏の照り焼き 鶏もも肉を一口大に切り、甘辛ダレで煮絡めます。
土曜日 さば味噌煮 圧力鍋で骨ごとやわらかく煮たサバの味噌煮は、温め直してもホロホロ食感を維持できます。
日曜日 茶碗蒸しと軟飯セット 卵と出汁の茶碗蒸しを軟飯の組み合わせです。いずれも歯茎でつぶせるほどの硬さにします。

上記のような軟菜食メニューは、一部を冷凍保存する際には汁気と一緒に保存してパサつきを防ぐことがポイントです。また、解凍後は必ず十分に再加熱し、衛生面に注意してください。

刻み食の1週間レシピ

刻み食では、素材を細かく刻んだ料理をバリエーション豊かに用意しましょう。調理後に刻む手間を省くため、初めから細かく切れているひき肉や針切り野菜を使った料理がおすすめです。

曜日 メニュー ワンポイント
月曜日 鶏そぼろ丼 鶏ひき肉を甘辛く炒り煮したそぼろをご飯にのせます。
火曜日 白身魚のあんかけ タラなどを一口大に切って揚げ焼きし、細かく刻んだ野菜入りの甘酢あんをかけます。
水曜日 麻婆豆腐 豆腐を小さめのさいの目に切り、ひき肉たっぷりの麻婆あんと絡めます。
木曜日 ツナと卵のとろとろ炒め ツナ缶と溶き卵、刻み長ねぎを炒め合わせます。具材を細かく、半熟状に仕上げることで舌でまとめやすくなります。
金曜日 挽肉と野菜のとろみ煮 合挽肉と刻んだ野菜を炒め煮にし、片栗粉でとろみをつけます。
土曜日 五目豆の刻み煮 大豆の水煮、にんじん、椎茸、こんにゃくなどを細かく切って甘辛く煮ます。
日曜日 オムレツのきざみあんかけ プレーンオムレツを細かく刻み、とろみ醤油あんをかけます。

刻み食用のおかずを作り置きする際は、とろみやあんでまとめておくと喉越しがよくなります。

ソフト食の1週間レシピ

ソフト食は見た目を重視したやわらか食なので、自宅で一週間分をまとめて作るには多少手間がかかります。

曜日 メニュー ワンポイント
月曜日 野菜のムース寄せ 人参、ほうれん草、カボチャを別々に茹でてミキサーにかけ、ゼラチンで固めます。
火曜日 鶏ささみのやわらかテリーヌ 茹でた鶏ささみをペーストにし、生クリームや卵白と混ぜて型で蒸し固めます。
水曜日 白身魚のムース焼き タラの身をペーストにして成形し、オーブンで蒸し焼きにします。
木曜日 なめらか茶碗蒸し 出汁と卵にペースト状にしたエビや鶏肉を加えて蒸します。
金曜日 豆腐と南瓜の二色ようかん風 塩味を付けた豆腐のムースと甘みを付けた南瓜のムースを二層に固めます。
土曜日 ビーフシチューのムース仕立て 圧力鍋で煮込んだビーフシチューをミキサーにかけ、ゲル化剤で固めてテリーヌ状にします。
日曜日 フルーツゼリー寄せ フルーツジュースを寒天や増粘剤でゼリー状に固めます。

ソフト食は見た目の再現度が重要なので、型抜きや色彩の工夫で食欲を刺激しましょう。

ミキサー食の1週間レシピ

ミキサー食は調理した料理をすべてペースト状にします。

曜日 メニュー ワンポイント
月曜日 かぼちゃのポタージュ かぼちゃと玉ねぎをやわらかく煮てミキサーにかけ、牛乳で濃度を調整します。
火曜日 白身魚と野菜のシチューペースト タラやじゃがいも、人参を使ったシチューをミキサーにかけます。
水曜日 鶏肉のクリーム煮ペースト 鶏肉と白菜のクリーム煮をミキサーにかけ、ホワイトソースを加えてなめらかにします。
木曜日 お粥のペースト 全粥をミキサーにかけてトロトロの状態にします。
金曜日 豆腐と卵の和風ペースト 揚げ出し豆腐と炒り卵の煮物を出汁ごとミキサーにかけます。
土曜日 ビーフカレーのミキサー食 ビーフカレーをミキサーにかけてポタージュ状にします。
日曜日 緑黄色野菜のスムージー ほうれん草、にんじん、トマトをピューレにしてヨーグルトや豆乳とブレンドします。

ミキサー食は容器のまま湯煎または電子レンジで温めるだけで食事の準備ができるため、介護者さんの負担軽減につながります。

流動食の1週間レシピ

流動食は液体中心の食事になるため、市販の栄養飲料経口補水液などを組み合わせつつ、家庭でも用意できるメニューを組み立てましょう。以下は1週間のレシピ例です。

曜日 メニュー ワンポイント
月曜日 重湯(おもゆ) お粥の上澄み液にすりおろし野菜の汁を少量加えて栄養を補います。
火曜日 野菜スープのブレンダー仕立て かぼちゃやじゃがいも、玉ねぎを煮込んだスープを裏ごしして液体状にします。
水曜日 プロテインミルク飲料 牛乳に市販の粉末プロテインやきな粉、蜂蜜を混ぜます。
木曜日 コンソメゼリースープ コンソメスープにゼラチンを加えてゆるく固め、ゼリー状にします。
金曜日 フルーツ栄養ジュース バナナや桃の缶詰をミキサーにかけ、牛乳で薄めます。
土曜日 お味噌汁の濾し汁 具なし味噌汁を用意し、必要なら濾してさらさらにします。
日曜日 市販栄養補助食品の利用 高カロリー流動食などの市販栄養補助飲料を取り入れます。

流動食の場合、少量ずつ頻回に食べてもらうことが多いので、衛生管理には気を配りましょう。

介護食を調理する際のポイントと注意点

介護食を調理する際のポイントと注意点 家庭で介護食を調理と提供する際に押さえておきたいポイントや注意点を解説します。

舌でつぶせる硬さにする

介護食を作る基本は、噛まなくても舌や歯茎で潰せる硬さに調整することです。高齢になると歯が抜けたり入れ歯になったりして、十分に噛み砕けないことがあります。軟菜食であれば十分に煮込む、蒸すなどして食材をやわらかくし、ソフト食やミキサー食であれば最初からペースト状にして飲み込みやすくします。

飲み込みやすいよう工夫する

飲み込みのしやすさにも工夫が必要です。たとえ舌で潰せるやわらかさでも、水分が少なくパサパサしたものやお口の中でバラけるものは飲み込みにくいです。適度なとろみをつけることで食べ物がひとまとまりになり、喉をスムーズに通過します。汁気の少ない料理にはあんかけをかける、スープにはとろみ剤を加えるなどしましょう。逆にサラサラしすぎる飲み物(お茶や水など)は高齢の方には飲み込みづらい場合があるため、とろみ調整食品を使って適切な粘度に調節するとよいでしょう。

見た目を色鮮やかにする

視覚は食欲にも影響します。特に介護食は刻んだり、混ぜたりするため、原形がわからなくなる場合が多く、見た目次第で食欲が左右されます。可能な範囲で彩りや盛り付けを工夫し、食欲をそそる見た目に仕上げましょう。

例えば、刻み食でも人参やほうれん草を使って色味を添える、ソフト食では型抜きで花形のムースを作る、ミキサー食でも3色のピューレを分けて盛り付けるなどです。器にも明るい色のものを用いるとよいでしょう。

塩分量を考慮する

高齢の方は味覚が低下しがちで、濃い味付けを好む傾向があります。しかし、塩分の摂り過ぎは高血圧をはじめ健康に悪影響を及ぼすため、介護食でも塩分管理が重要です。減塩を意識して出汁や素材の旨味を活かし、醤油や塩は必要以上に使用しないようにしましょう。

例えば、市販の減塩調味料や、酸味や香味野菜(柚子、生姜など)などを活用して薄味でも満足感が出る工夫をします。

栄養バランスを整える

筋力維持に不可欠なたんぱく質は毎食しっかり摂れるよう、主菜には肉や魚、卵、大豆製品などをできるかぎり取り入れます。副菜でビタミンやミネラル、食物繊維を補給できるよう、緑黄色野菜やキノコ、海藻類も献立に加えましょう。必要に応じて栄養補助食品やサプリメントも活用し、低栄養状態に陥らないよう注意します。

調理器具や調理台などの殺菌消毒を行う

介護食は一度に多めに作って保存し、後日温めて提供するケースが多いため、食中毒のリスクを抑えるため徹底した衛生管理が不可欠です。調理前の手洗いはもちろん、包丁やまな板、ミキサーなど調理器具はよく洗浄し、可能なら熱湯消毒やアルコール消毒で清潔に保ちましょう。

まとめ

まとめ 介護食には、噛む力や飲み込む力の程度に応じてさまざまな種類の介護食があります。それぞれ特徴が異なりますが、食べる方の状態に合わせて適切な形態を選択し、工夫することが大切です。食事は高齢の方の楽しみでもあります。見た目や味、バリエーションにも気を配り、毎日飽きずに楽しく食事ができる環境を整えていきましょう。

この記事の監修医師