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脳梗塞の後遺症がある方の介護方法や大切にしたいことを詳しく解説!

 公開日:2025/10/28
脳梗塞の後遺症がある方の介護方法や大切にしたいことを詳しく解説!

脳梗塞は突然起こる病気で、命に関わるだけでなく、発症後には後遺症が残ることもあります。運動麻痺や言葉の障害、記憶力の低下など、その内容や程度はさまざまで、日常生活に影響を及ぼします。家族が自宅で介護を担う際には、身体のケアに加えて心の支えも必要となり、どのように寄り添えばよいか悩む場面もあるでしょう。一方で、医療や介護の制度をうまく活用することで、生活を続けやすい環境を整えることが可能です。

本記事では、脳梗塞の基本的な知識に加えて、後遺症がある方を自宅で介護する際の判断の仕方、必要な手続き、介護の工夫や支援制度の利用方法までを解説します。
林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

脳梗塞の基礎知識

脳梗塞の基礎知識 脳梗塞は脳の血管が詰まり、血液が届かなくなることで脳の組織が障害を受ける病気です。一度ダメージを受けると回復が難しいため、治療やリハビリ、介護の有無が生活の質に影響します。ここでは、脳梗塞の種類と代表的な後遺症を解説します。

脳梗塞とは

脳梗塞は大きく3つに分けられます。1つ目はアテローム血栓性脳梗塞で、動脈硬化により血管が狭くなり、血栓で血流が妨げられるタイプです。

2つ目はラクナ梗塞で、脳の深部にある細い血管が詰まって起こります。高血圧や糖尿病などの生活習慣病と関連が深く、小さな病変でも症状が現れることがあります。

3つ目は心原性脳塞栓症で、心房細動などの心臓の病気でできた血栓が脳に流れて大きな血管を急に塞ぐものです。

発症のリスク要因には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、過度の飲酒、運動不足などがあり、生活習慣の改善が予防につながります。

脳梗塞による後遺症の種類と症状

脳梗塞は詰まる血管の場所や広がり方によって症状が変わります。代表的な後遺症には以下のようなものがあります。これらの症状は単独で現れる場合もあれば、複数が組み合わさることもあります。さらに、抑うつや意欲の低下など心理的な変化を伴うことも少なくありません。

後遺症の名称 主な症状
運動麻痺 手足が動かしにくくなる、歩行困難、片麻痺など
言語障害 言葉が出にくい、会話の理解が難しい、発音の不明瞭化
高次脳機能障害 記憶力や注意力の低下、物事の段取りが難しくなる
感覚障害 手足のしびれや感覚の鈍さ、温度や痛みを感じにくい
嚥下障害 食べ物や飲み物を飲み込みにくい、誤嚥による咳き込み
視覚障害 片方の視野が欠ける、ものが二重に見えるなど
排泄障害 尿や便のコントロールが難しくなる

参照: 『脳卒中のリハビリテーション』(日本リハビリテーション医学会) 『脳卒中治療ガイドライン 2021〔改訂2025〕』(日本脳卒中学会)

【脳梗塞の後遺症】自宅で介護できるかどうか判断する方法

【脳梗塞の後遺症】自宅で介護できるかどうか判断する方法 脳梗塞の後遺症がある方を自宅で介護するかどうかは、家族にとって大きな決断です。自宅で過ごすことで安心感を得られる反面、介護負担が大きくなり、支える側の生活に影響を及ぼすこともあります。そのため、家庭の状況や後遺症の程度を正しく把握し、必要な支援を利用できるかどうかを検討することが大切です。ここでは、自宅介護を検討する際に考えるべき具体的な視点を解説します。

市区町村の窓口やケアマネジャーに相談する

まず取り組みたいのは、公的な支援制度を把握することです。市区町村の介護保険課や福祉課では、介護保険や障害者福祉のサービスについて相談できます。また、すでに介護保険を利用している方は、担当のケアマネジャーに相談しましょう。ケアマネジャーは介護度の判定結果や家庭の状況を踏まえ、どのようなサービスが利用できるか提案してくれます。訪問リハビリや訪問介護、デイサービスの活用など、在宅生活を続けるための選択肢を一緒に考えることができます。

日常生活のなかでサポートが必要な状況を把握する

自宅で介護を行う場合、日常生活のどの場面で支援が必要かを整理しておくことが重要です。例えば、食事を自分でとれるのか、入浴に介助が必要か、トイレへの移動ができるかなどを具体的に観察します。また、会話や意思疎通が難しい場合には、家族がどれだけ理解できるかも確認しておきましょう。こうした日常生活動作の評価は、介護サービスを選ぶ際の手がかりとして役立ちます。

自宅での介護が可能かどうかを専門家と一緒に検討する

自宅介護を続けられるかどうかは、家族の気持ちだけでなく医療的な視点も含めて判断する必要があります。主治医やリハビリスタッフ、訪問看護師に相談し、後遺症の程度や今後の見通しを確認しましょう。嚥下障害が強い場合には訪問看護が欠かせず、褥瘡や感染のリスクがある場合には医療との連携が重要です。

また、家族がどれだけ介護に関わる時間を確保できるかも大切なポイントです。仕事や家事と両立が難しい場合には、デイサービスやショートステイを利用して負担を分担することも考えられます。自宅介護を行うかどうかは一度で決める必要はありません。状況に応じて見直していき、専門職と協力しながら無理のない体制を整えていくことが大切です。

【脳梗塞の後遺症】自宅で介護する場合の手続き

【脳梗塞の後遺症】自宅で介護する場合の手続き 脳梗塞の後遺症がある方を自宅で介護するには、各制度を利用するための申請を行うことが必要です。ここでは代表的な手続きの流れを解説します。

身体障害者手帳や障害年金などの申請

まずは主治医に相談し、後遺症の内容や程度を記載した診断書を作成してもらいます。診断書が準備できたら、市区町村の障害福祉課で申請書とあわせて提出します。提出後は審査が行われ、認定されれば身体障害者手帳が交付されます。交付まで数ヶ月かかることもあるため、できるだけ早めに申請しておくことが大切です。

障害年金を希望する場合は、年金事務所に相談して必要な手続きの案内を受けます。所定の診断書に加え、申立書や戸籍謄本、年金加入記録などの書類を揃えて提出します。初診日の年金加入状況や障害の程度に基づいて審査が行われ、支給の可否や年金額が決定されます。審査には時間がかかるため、申請準備は余裕を持って進めることが望ましいです。

さらに医療費の負担を減らす制度として、自立支援医療高額療養費制度があります。これらを利用する際には、健康保険証や医師の意見書、申請書類を準備し、市区町村や保険者の窓口で申請します。これにより長期的な医療費の負担を軽くすることができます。

介護保険の申請

介護保険を利用するには、本人または家族が市区町村の介護保険課に申請書を提出します。申請後は専門員による訪問調査が行われ、同時に主治医が意見書を作成します。その結果をもとに審査され、要支援1・2または要介護1〜5の区分が決まります。判定結果は通知書で届きます。

認定後はケアマネジャーと面談し、訪問介護や訪問看護、デイサービスなどを含むケアプランを作成します。プランが市区町村に届け出られ、承認されることで介護サービスの利用が始まります。

参照:『在宅療養について』(東京都保健医療局)

【脳梗塞の後遺症】自宅での過ごし方と必要なサポート

【脳梗塞の後遺症】自宅での過ごし方と必要なサポート 脳梗塞の後遺症がある方が自宅で生活を送るには、身体の状況に合わせた工夫や支援を取り入れることが欠かせません。環境を整えることで転倒や誤嚥を防ぎ、生活の質を維持できます。介護者にとっても無理のない方法をみつけることが重要です。ここでは、自宅で快適に過ごす工夫と必要なサポートを解説します。

自宅での過ごし方

生活を安全にするには環境整備が第一歩です。歩行に不安があれば廊下や浴室に手すりを設置し、段差にはスロープを用いるなど転倒防止の工夫が必要です。嚥下障害がある場合は食事の形態を調整します。刻み食やゼリー状の食品を取り入れると誤嚥予防につながり、食事中は姿勢を正して座り、飲み込みやすい環境を整えることが大切です。

言語障害がある方には、筆談やジェスチャー、絵カードを活用すると意思疎通がしやすくなります。本人の気持ちを伝える手段を増やすことで安心感が得られます。また、一日の過ごし方としてはリハビリや散歩など軽い運動を取り入れると体力維持や気分転換に役立ちます。無理のない範囲で外出や趣味を続けることは心の健康にもよい影響を与えます。

必要なサポート

自宅生活を続けるためには、外部の介護サービスを適切に活用することが欠かせません。訪問介護では入浴や食事の介助、掃除や洗濯といった生活援助を受けられます。訪問看護を利用すれば服薬管理や褥瘡の予防、必要な医療処置を在宅で受けられます。さらに、デイサービスデイケアは身体機能の維持や社会的な交流の場として役立ち、介護者にとっても一時的に介護を離れて休息できる時間を確保できます。嚥下障害や発語障害がある場合には、言語聴覚士によるリハビリが有効であり、発声練習や飲み込みの訓練を通じて少しずつ改善や維持を目指します。

加えて、栄養士による食事指導理学療法士の運動指導など、専門職の関わりは栄養状態の維持や体力の向上に役立ちます。これらは介護保険を通じて利用できるため、ケアマネジャーと相談しながら必要な支援を選ぶとよいでしょう。大切なのは、家族だけで介護を背負わず、地域包括支援センターや医療・介護の専門職と連携しながらサービスを組み合わせることです。本人の状態や家族の状況は時間とともに変化するため、そのときどきに合った支援を取り入れることが、在宅生活を安定して続けるうえで重要です。

参照:『在宅療養について』(東京都保健医療局)

【脳梗塞の後遺症】自宅で介護する際に大切なこと

【脳梗塞の後遺症】自宅で介護する際に大切なこと 脳梗塞の後遺症がある方を自宅で介護するには、家族だけで抱え込まず、医療や介護の専門職や制度を積極的に活用することが大切です。支援を取り入れることで介護者の負担を軽くし、介護を受ける方にとっても過ごしやすい環境を整えることができます。ここでは、自宅介護を続けるうえで知っておきたいポイントを解説します。

訪問介護や訪問看護などの支援を受ける

自宅での生活を支えるためには、訪問サービスを上手に取り入れることが大切です。訪問介護では、食事や入浴、排泄の介助に加えて、掃除や洗濯といった日常生活の援助も受けられます。訪問看護では、服薬管理や褥瘡の予防、点滴や吸引などの医療的処置に対応してもらえます。

これらのサービスを組み合わせることで、介護者の負担を和らげつつ、介護を受ける方の生活の質を保つことができます。家族が一人で抱え込まず、サービスを活用して役割を分担することが、長く自宅で暮らすうえでのポイントです。

訪問医療機関と連携する

脳梗塞の後遺症がある方は、再発や合併症のリスクを抱えています。訪問診療を行う医師とつながっておくことで、定期的な健康管理や緊急時の対応を受けられます。例えば、嚥下障害による誤嚥性肺炎や、運動量の低下による褥瘡などは、早期に気付き適切に対応することで重症化を防ぐことが可能です。

また、訪問医療機関と看護師・ケアマネジャーが連携することで、生活面と医療面の両方から支援を受けられます。定期的に情報を共有することで、介護方針を柔軟に見直すことができ、自宅での生活を継続しやすくなります。

十分なケアが難しい場合は介護医療院などへの入所を検討する

在宅介護は理想的に思えても、実際には家族の負担が大きくなりすぎることがあります。夜間の見守りや医療的ケアが多く必要な場合、家庭だけで支えるのは難しいケースも少なくありません。そのようなときには、介護医療院や長期療養型施設への入所を検討することが選択肢の一つです。

介護医療院では、日常的な介護と医療管理の両方を受けられるため、後遺症が重い方や合併症を抱える方でも落ち着いて暮らせます。入所を検討する際は、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーに相談し、本人や家族の希望を踏まえながら選んでいくことが大切です。

参照:『介護医療院とは?』(厚生労働省)

まとめ

まとめ 脳梗塞は後遺症が残りやすく、介護を必要とすることが少なくありません。運動麻痺や言語障害、嚥下障害などは日常生活に大きな影響を与え、家族だけで支えるのは負担がかかります。そのため、自宅で介護を行う際には、制度や専門職の支援を活用することが重要です。

市区町村やケアマネジャーに相談して、身体障害者手帳や介護保険などの制度を把握し、訪問介護や訪問看護を組み合わせれば生活を支えやすくなります。もし自宅での介護が難しい場合には、介護医療院や施設入所を選ぶ方法もあります。大切なのは、本人と家族が安心して暮らせる環境を整えることです。

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