胃ろうは口から食事はできる？食事方法や注意点などを詳しく解説！
公開日:2025/10/20
胃ろう（胃瘻）はお口から食事を摂ることが難しい方でも、十分な栄養を確保できる医療的な方法です。しかし、胃ろうを行っている場合でも、患者さん個々の状態によってはお口から食事を摂ることが可能なケースもあります。また、お口から食事を再開する際や併用する際には、誤嚥や栄養バランスなど多くの注意点が存在します。本記事では、胃ろうとお口からの食事の関係、食事方法、注意点を詳しく解説します。
監修医師：
伊藤 規絵（医師）
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旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科（脳神経内科）、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。
目次 -INDEX-
胃ろうの概要と食事方法
胃ろうの仕組みを教えてください
胃ろうは、主にお口から食事を摂ることが困難な方のために実施される医療的な栄養摂取法です。具体的には、腹部から直接胃に管（カテーテル）を挿入し、その管を通じて栄養剤や水分を投与します。この方法は、嚥下障害や口腔・食道疾患によって経口摂取が難しくなった場合でも、必要な栄養を安定して供給できる点が大きな特徴です。処置は通常局所麻酔下で行われ、短時間で完了します。食事方法は、専用の栄養剤を医師・看護師の管理のもと投与し、患者さんの状態や栄養必要量に応じて量や種類を調整します。胃ろうによる栄養管理は、QOLの維持や改善にも役立つ重要な医療手段です。
胃ろうになったらどのように食事を摂りますか？
通常のようにお口から食事を摂ることが難しい場合に、お腹に造設した小さな穴から胃に直接栄養剤や水分を注入する方法を用います。具体的には、腹部に挿入されたチューブ（カテーテル）を通して医師や看護師の管理下で専用の栄養剤を必要量だけ投与します。投与の際には、誤嚥や逆流を防ぐために上半身を30度〜90度に起こし、座った状態でゆっくりと注入します1)。経管栄養専用の流動食や半固形栄養剤が使われ、患者さんの健康状態や栄養必要量に応じて種類や量が調整されます。投与後も一定時間は体位を維持し、チューブの清潔管理など細やかなケアが重要です。
胃ろうでも口から食事できますか？
胃ろうを造設していても、状態によってはお口から食事を摂ることは可能です。胃ろうは、主に経口摂取が困難な場合の栄養補給手段ですが、嚥下機能や体力が回復してきた場合には、医師や言語聴覚士など専門職による評価と訓練を通じて、お口から食事を再開できることがあります。経口摂取と胃ろうでの栄養補給を併用し、無理のない範囲で食事のリハビリテーションを進めることも選択肢のひとつです。その際は誤嚥や栄養バランスに注意し、専門的な管理のもと安全性を高めることが重要です。
栄養剤の種類と注入方法
栄養剤にはどのような種類がありますか？
胃ろう用の栄養剤には、患者さんの消化吸収能力や病状に応じてさまざまな種類があります。主に成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤の3つに分けられます。成分栄養剤は、主成分がアミノ酸で消化の必要がなく、消化管機能が著しく低下した場合に使用されます。消化態栄養剤は、アミノ酸やペプチドを含み、消化吸収が容易で腸管機能が一部保たれていれば適応されます。半消化態栄養剤は、タンパク質やペプチドなどが含まれ、消化管機能が安定した方に選ばれます。また、近年は半固形化栄養剤も登場し、逆流や誤嚥予防、短時間での注入が可能となっています。個々の状態にあわせて、医師や栄養管理担当者が適切な栄養剤を選択します。
栄養剤の選び方を教えてください
胃ろう用の栄養剤を選ぶ際は、まず患者さんの消化吸収機能や病状の評価が重要です。消化管機能が低下している場合は、成分栄養剤や消化態栄養剤が適しています。機能が安定している場合は半消化態栄養剤や半固形栄養剤の選択が考えられます。また、糖尿病や腎不全などの持病がある場合は、病態別に調整された専用栄養剤を使います。さらに、エネルギー・タンパク量、食物繊維含有量、濃度、剤形（液体・半固形）、補いたい成分（アルギニンなど）も考慮し、患者さんの状態や目的に適切なものを医師・栄養管理担当者と相談しながら選択します。
栄養剤はどこで購入しますか？
胃ろう用の栄養剤は、主に医療機関や介護用品店、オンライン通販サイトで購入できます。医療・介護用品専門の通販サイトで多数の種類が取り扱われています。また、病院やクリニックで医師の指導のもと処方される場合もあるので、初めて購入する際は主治医や医療スタッフに相談し、指示にしたがって選択・購入してください。商品の種類や価格、使用方法などもご自身の状態や目的に合わせて選び、安全性を重視し入手します。
栄養剤を注入する手順を教えてください
まず患者さんの体調を確認し、上半身を30〜90度程度に起こして座位をとります1)。栄養剤は常温もしくは人肌程度に温め、主治医から指示された量や種類を確認します。注入前にカテーテルや瘻孔部の状態を確認し、専用のチューブで接続します。注入はクレンメ（クランプ）を開けてゆっくり開始し、速度は1時間に400ml程度（10秒間に20滴）程度が一般的ですが、本人の状態や指示箋の内容によって調整します1)。注入中は顔色や腹部膨満、嘔気、漏れなどの変化に注意し、異常があればすぐに中止します。終了後はぬるま湯でチューブを洗浄し、チューブ・接続部分を清潔に保ちます。
胃ろうの方や家族が、食事や生活で気を付けたいこと
胃ろうへの栄養剤の注入で気を付けることを教えてください
患者さんの体調やバイタルサイン、ろう孔（皮膚（腹壁）と胃壁を貫通させて作られる管の通る穴）周囲の皮膚状態を事前に観察します。注入前には手洗いを徹底し、栄養剤は常温または人肌程度に温め、指示された種類・量を確認します。誤嚥や逆流予防のために上半身を30〜90度に起こし、できれば座位で注入を行います1)。カテーテルの状態も確認し、注入速度は1時間に400ml程度（10秒間に20滴）程度を目安にしますが、体調により調整が必要です1)。途中、顔色や腹部膨満、嘔気・嘔吐などの変化に細かく注意し、不調があればすぐに中止します。投与後はチューブをぬるま湯で洗浄し清潔を保ち、栄養剤と薬剤は別々に注入します。
胃ろうの方が口から食べ物を摂るときに注意すべきことはありますか？
いくつかの注意点があります。まず、誤嚥を防ぐためにも、食事は座位や上体を30度以上起こした姿勢で行い、ゆっくりと少量ずつ食べることが大切です1)。また、嚥下機能が低下している場合は、食材の形状や硬さを工夫し、軟らかくしたり、とろみをつけたりして安全性を高めます。口腔内が汚れやすくなるので、食前・食後の口腔ケアは特に丁寧に行い、口腔衛生を保つことも重要です。食事中や後に咳き込み、むせやすい場合は医師や言語聴覚士に相談し、無理のない範囲で進めてください。状態変化に注意しながら、本人の希望にも配慮します。
食事以外に胃ろうに関して気を付けることを教えてください
胃ろうでは、食事だけでなく日常管理にも気を配ることが重要です。まず、カテーテル挿入部や周囲の皮膚は毎日清潔に保ち、弱酸性石けんや微温湯でやさしく洗浄し、十分に水分を拭き取って自然乾燥させます。皮膚トラブルや赤み・腫れがないか観察します。カテーテルや器具は使用後すぐ洗浄・乾燥し、衛生的に管理します。抜去や異常があれば速やかに医療機関へ連絡します。また、口腔ケアも感染予防のために大切です。
編集部まとめ
胃ろうは、お口からの食事が困難な方に栄養を補給する有効な方法ですが、嚥下機能や体力の回復状況によってはお口から食事を併用できる場合があります。経口摂取を再開する際は、誤嚥防止のため姿勢や食形態を工夫し、少量から徐々に進めることが大切です。栄養剤注入やお口からの食事のいずれも、医師や言語聴覚士、管理栄養士など専門職の指導のもと安全性を重視し行うことが求められます。日々の清潔管理や状態観察も欠かせません。
