介護の悩みはどこで相談できる?相談窓口の種類と手続きのポイントを解説
公開日:2025/11/24


監修医師:
小田村 悠希(医師)
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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
お悩みの種類別】介護の悩みを相談できる窓口一覧
介護に関する悩みは多岐にわたり、その内容に応じて適切な相談窓口があります。まずは、お悩みの種類ごとに、どのような窓口に相談できるかを確認しておきましょう。
在宅介護に関するトラブルやお悩み
自宅で高齢者を介護していると、24時間体制の介護や身体的負担で限界を感じることがあります。「介助が大変で誰かに相談したい」「どのようなサービスが使えるか知りたい」といった在宅介護の悩みは、ケアマネジャーや自治体の高齢者福祉課、そして民間の無料相談窓口で相談できます。 要介護認定を受けている場合は担当のケアマネジャーに相談し、適切な在宅サービスや介護方法の提案を受けましょう。また、お住まいの市区町村の地域包括支援センターも在宅介護全般の無料相談に応じています。民間企業やNPOが提供する電話やチャット相談窓口を利用するのも一つの手段です。医療に関するトラブルやお悩み
服薬管理、退院後のケア、褥瘡や認知症の症状への対応など介護中の医療的な不安は、医療機関内の相談窓口(医療福祉相談室や地域連携室)で相談できます。入院中や通院時に利用しやすく、社会福祉士や精神保健福祉士などの専門職が在籍しており、退院後の生活支援や医療費・入院費の心配などについてアドバイスしてくれます。かかりつけ医に相談するほか、地域包括支援センターも医療と介護の連携について日常的に情報共有しているため、医療面の悩みを相談すれば関係機関へのつなぎ役を担ってくれます。介護保険サービスに関するトラブルやお悩み
介護サービスの内容や事業者とのトラブル、制度面の疑問は、まず担当のケアマネジャーに相談しましょう。提供されているサービスに不満がある場合、ケアマネジャーは利用者と事業所の間に立って公正な立場で調整してくれます。 直接事業者に言いにくいときは第三者機関の相談窓口も活用できます。市区町村には介護サービスの相談窓口が設置されており、事業所との話し合いで解決できない場合に対応してくれます。それでも解決しない場合、都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)の受付に相談する段階へ進みます。また、地域包括支援センターや社会福祉協議会でもサービス利用上の困りごとの相談を受け付けています。施設入所の手続きや要件に関するトラブルやお悩み
「特養や老健に入所したいが条件や手続きがわからない」「介護度が足りず入所できないと言われた」といった施設入所に関する悩みは、市区町村の介護保険課(高齢者福祉課)や地域包括支援センターに相談しましょう。 自治体窓口では地域の老人ホーム情報や入所要件を教えてくれ、要介護認定がまだの場合は申請手続きから支援してもらえます。入院中であれば病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談すると、退院後に入所できる介護老人保健施設(老健)などの紹介や連携を行ってくれます。複数の施設を見学して比較検討しながら、ケアマネジャーとも相談して適切な入居先を選びましょう。介護にかかる費用や負担軽減に関するトラブルやお悩み
介護費用の捻出に困ったり経済的負担に不安を感じたりしたら、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しましょう。ケアマネジャーは介護保険サービスだけでなく自治体や国の負担軽減制度にも精通しており、利用できる制度がないか助言してくれます。例えば、高額な自己負担分がある場合の高額介護サービス費や、医療費と合算できる高額医療・高額介護合算療養費など申請により費用軽減できる制度があります。これらを活用することで介護費用負担を抑えられる可能性があります。介護者のメンタルケアや介護疲れに関するトラブルやお悩み
介護をする家族自身が精神的・身体的に疲弊してしまった場合も、支援を求めることが大切です。「このまま一人で介護を続けるのは限界」と感じたら、地域包括支援センターに相談しましょう。担当者に現状を話すことで、ショートステイやデイサービス利用によるレスパイトケアなど介護負担を軽減するサービスの提案を受けられます。認知症に関するトラブルやお悩み
認知症の介護では、徘徊や暴言などの行動・心理症状への対応や、適切な医療・介護サービス選びに悩むことが少なくありません。認知症についての相談先は充実しており、例えば認知症の方と家族の会が各都道府県で運営する認知症電話相談では、経験豊富な相談員が電話で悩みを聞いてくれます。65歳未満で発症した若年性認知症の場合は、厚生労働省が認知症介護研究・研修大府センターに設置した若年性認知症コールセンターを利用できます。介護の相談を申し込む方法
実際に介護の相談をしたいと思ったとき、どのように申し込めばよいのでしょうか。ここでは公的機関・地域の窓口と医療・専門機関の窓口に分けて、代表的な相談先の利用方法や特徴を説明します。相談内容に合った窓口を選び、事前準備をしてから問い合わせるとスムーズです。
公的機関・地域の相談窓口
地域には行政が設置・委託する公的な相談窓口が多数あります。基本的に無料で利用でき、必要に応じて関係機関への橋渡しもしてくれます。それぞれの窓口の特徴を理解し、困りごとに適した場所を選びましょう。これらの相談窓口は、電話や来訪での相談を受け付けています。まずは電話をして確認してみましょう。地域包括支援センター
地域包括支援センターは、市区町村が各地域に設置する高齢者の総合相談窓口です。介護や医療、福祉、保健など高齢の方の生活全般に関するあらゆる相談を無料で受け付けています。保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーといった専門職がチームで配置されており、介護予防の支援から権利擁護まで幅広く対応するのが特徴です。電話や訪問による相談も可能で、必要に応じて適切なサービスや制度、ほかの相談機関を紹介する役割を担っています。まず何をすればよいかわからないときは、地域包括支援センターに電話で連絡すれば適切な助言が得られるでしょう。地方自治体の相談窓口
市区町村の高齢者福祉課や介護保険課などの担当窓口でも、介護に関する相談を受け付けています。自治体窓口では、要介護認定の申請手続きや介護保険サービス利用の案内、費用負担に関する制度説明など幅広い相談が可能です。相談内容によって担当部署や適切な外部機関を紹介してもらえるため、まず市役所や区役所に問い合わせるのもよいでしょう。在宅介護支援事業所
在宅介護支援事業所とは、ケアマネジャー(介護支援専門員)が所属する事業所のことで、要介護者一人ひとりに合ったケアプランを作成し、サービス事業者や医療機関と連携を図る拠点です。要介護認定を受けてケアプランの作成を依頼していれば、担当のケアマネジャーがついているはずです。ケアマネジャーは利用者家族の相談窓口として身近な存在であり、具体的なサービスの提案や調整を行ってくれます。社会福祉協議会
社会福祉協議会(社協)は、各市町村にある福祉分野の相談・支援機関で、高齢の方に限らず障害や児童、生活困窮などさまざまな相談に対応しています。介護の場面では、サービス提供に関する苦情受付や調停を社協が担うケースがあります。また社協では、介護用品の貸出や住宅改修資金の助成、ボランティアの紹介、介護者サロンの運営など、地域の福祉増進のための事業も行っています。経済的に困窮している場合には福祉資金の貸付制度を案内してもらえる場合もあるので、必要に応じて相談してみましょう。福祉事務所
福祉事務所は、市区町村で生活保護など公的扶助を担当する窓口です。高齢者世帯の生活全般に関する相談も受け付けており、介護費用も含め生活が立ち行かない場合に頼りになる窓口です。収入や資産が一定以下で生活に困窮している場合は、福祉事務所で生活保護の申請や介護扶助の給付について相談できます。特別養護老人ホームなどへの入所が必要だが費用が賄えない場合も、生活保護受給者として施設介護サービス費が公費負担されるケースがあります。経済的な不安を抱えたら早めに相談しましょう。民生委員
民生委員は、各地域で高齢の方を含む住民の福祉増進に無報酬で寄与する方です。担当地区ごとに配置されており、地域住民からの生活上の困りごと相談に応じ、必要な支援につなぐ役割を担っています。介護に関する相談でも、民生委員に日常的な悩みを打ち明けることで、信頼関係のなかで適切な助言や支援を得られる場合があります。お住まいの地域の民生委員を知りたい場合は、市区町村の福祉課などに問い合わせると紹介してもらえます。医療・専門機関の相談窓口
介護の悩みに対して、医療機関や専門の支援機関でも相談窓口が用意されています。認知症など専門的な分野に関する悩みや、医療と介護の連携が必要なケースでは、これから紹介する窓口が頼りになります。それぞれの特徴と利用方法を把握しておきましょう。医療機関の医療相談室・地域連携室
病院の医療相談室や地域医療連携室は、入院患者さんや家族の相談に応じる専門部署です。ここには医療ソーシャルワーカーが配置されており、治療費・退院後の生活・介護サービス利用など、療養に伴うさまざまな相談ができます。入院中に限らず、外来受診時に相談窓口を利用できる病院もあります。認知症疾患医療センター
認知症疾患医療センターは、各都道府県知事が指定する認知症専門医療機関で、認知症の診察・相談の地域拠点です。専門の医師や看護師、相談員(精神保健福祉士など)が在籍し、認知症に関する専門的な医療相談に対応しています。 認知症の症状が疑われる場合は早めに相談し、認知症専門の医師による診断とアドバイスを受けることが重要です。受診には紹介状や予約が必要な場合があるため、まず電話で問い合わせてみましょう。認知症カフェ
認知症カフェは、認知症の方と家族、地域住民、介護・医療の専門職が自由に集まって交流できる場です。市区町村や地域包括支援センター、社会福祉法人、NPOなどが中心となって公民館やカフェスペースで定期的に開催しています。 「いきなり役所に相談するのは気が引ける」という方でも気軽に専門職にアドバイスをもらえるメリットがあります。また同じ悩みを持つ家族同士の情報交換や、認知症当事者から直接体験を聞くことで、介護者の孤独感やストレスが和らぐ効果も期待できます。民間企業の介護相談窓口
民間企業や団体が提供する介護相談窓口も数多く存在します。例えば、大手介護サービス事業者や保険会社はフリーダイヤルの介護相談電話を開設しており、看護師や介護福祉士などの専門スタッフが24時間体制で相談に応じてくれる場合があります。 インターネット上にも、介護の専門家に無料で質問できるQ&Aサイトや、介護者同士が情報交換できる掲示板などが充実しています。こうした民間の窓口は、公的機関よりも気軽に利用できる反面、提供元のサービス案内が含まれるケースもあるため、公平性に留意しつつ活用するとよいでしょう。介護の相談をする前に知っておきたい準備とポイント
いざ相談窓口を利用する前に、事前に準備しておくと役立つポイントがあります。せっかく相談するなら有意義な時間にするため、以下の点を押さえておきましょう。
相談内容を整理し、伝えたいことをリスト化する
相談の前に、何に困っているのかを整理して紙に書き出しておきましょう。介護の悩みは漠然としがちですが、具体的な事項に分けてリスト化することで、相談員にも状況が伝わりやすくなります。「食事介助に時間がかかりすぎる」「介護サービスの利用料が家計負担になっている」など、困りごとを箇条書きにしてみてください。併せて現在利用中のサービスや介護度、家族構成など基本情報も整理しておくとスムーズです。伝え忘れを防ぐため、メモを見ながら相談するとよいでしょう。相談窓口の特徴を理解して適切な相談先を選ぶ
一口に介護相談といっても、窓口ごとに得意分野や対応範囲があります。本記事で紹介したように、公的機関なら制度の案内やサービス調整、医療機関なら医療と介護の橋渡し、民間窓口なら柔軟な対応や専門特化など強みはさまざまです。相談したい内容に合った窓口を選ぶことで、より具体的で有益なアドバイスを受けることができます。相談窓口に迷った場合は身近な窓口に問い合わせると、適切な相談先を教えてもらえます。相談時はメモを取り、記録を残す
相談窓口で得られた情報は、後から振り返られるようメモを取ることを心がけましょう。相談中は話に夢中になって細部を忘れがちなので、要点を書き留めておくことが大切です。相談員から紹介されたサービス名や担当者の連絡先、今後の具体的なアクションを記録します。可能であれば相談記録ノートを作り、日付・相談先・相談内容・アドバイス・次の行動予定をまとめておくとよいでしょう。複数の機関に相談する場合も、記録があれば前回までの経緯をスムーズに伝えられます。記録は家族内で情報共有する際にも役立ちます。相談後は家族と情報を共有し、次の行動を確認する
相談で得た知見や提案は、介護に関わる家族や関係者と共有しましょう。一人で抱え込まず家族会議などで話し合うことで、方向性が定まりやすくなります。「デイサービスを増やす提案があったがどう思うか」など、家族の意見も聞きながら今後の介護方針を調整します。 また、相談後には提示された解決策を実行に移すことが重要です。相談して満足するのではなく、得た情報を活かして具体的な行動につなげることで、介護状況は着実に改善に向かいます。必要に応じて再度相談窓口を利用し、進捗や効果をフィードバックすることも大切です。まとめ
介護者が適切な支援を受けることは、結果的に要介護者本人のQOL向上にもつながります。相談先ごとの特徴を踏まえて悩みに合った窓口を選び、準備を整えて有効に活用しましょう。困ったときに相談できる先があるだけでも、介護の不安は和らぎます。公的資源や周囲の助けを積極的に借りながら、無理のない範囲で介護を続けていくことが大切です。
参考文献



