高齢化や介護を必要とする場合になっても、住み慣れた我が家で過ごしたいと考える方は少なくありません。
在宅介護サービスとは訪問介護や訪問看護、通所介護(デイサービス)など介護の必要度に応じて利用できる支援制度です。
これから自宅で介護を受ける方や家族を支える方が制度を正しく理解し、準備を進められるよう、基本事項をやさしく整理しました。
本記事では、在宅介護サービスの主な種類と特徴など利用のための条件や申請の流れ、そして費用の目安などの詳細を丁寧に解説します。
これから自宅で介護を受ける方や家族を支える方が制度を正しく理解し、準備を進められるよう、基本事項をやさしく整理しました。
本記事では、在宅介護サービスの主な種類と特徴、利用条件や申請の流れ、そして費用の目安までを順に紹介します。
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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
在宅介護サービスの種類と特徴
在宅介護サービスの種類を教えてください。
介護保険制度では住み慣れた自宅での暮らしを続けたい方や、ご家族の生活を支える方のためにさまざまな在宅サービスが用意されています。なかでも代表的なのが、訪問介護員(介護福祉士や実務者研修修了者など)が利用者の自宅を訪ね、日常の介助を行う訪問介護です。訪問介護には、食事や入浴などの身体介護のほか、掃除洗濯や買い物など日常生活を支える生活援助といった支援があります。また、施設に通って介護や機能訓練を受ける通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション、一時的に施設へ宿泊して介護や生活支援を受ける短期入所生活介護(ショートステイ)なども利用可能です。訪問介護と訪問看護が連携して昼夜を通して支援を行う定期巡回、随時対応型訪問介護看護もあります。通いを中心に、自宅訪問や短期宿泊を組み合わせて利用できる小規模多機能型居宅介護など、利用者の生活のリズムに合わせた柔軟なサービスです。
在宅介護サービスのメリットとデメリットを教えてください。
在宅介護サービスの大きなメリットは、介護が必要な方が住み慣れた地域や自宅で生活を続けられることです。自宅という落ち着ける環境で、これまでの暮らしを維持しながら支援サービスを受けられる点は大きな魅力です。こうしたサービスは、利用者ができる限り自立した生活を送れるよう支えることを目的としています。その一方で、支援の形によっては課題もあります。例えば、小規模多機能型居宅介護では各サービス(通所・訪問・宿泊)を組み合わせて支援を行いますが、訪問の回数が少なく通いに偏ってしまっているケースも見られるのが現状です。重度の要介護者や一人暮らしの高齢の方が増えている現状を踏まえると、在宅での生活を続けやすくするためには、訪問支援の充実が欠かせません。
夜間にも在宅介護サービスは利用できますか?
夜間も対応可能です。在宅介護サービスは夜間を含む24時間体制で利用できる仕組みとなっています。その代表的なものが定期巡回と随時対応型訪問介護看護です。訪問介護と訪問看護が連携することで、昼夜を問わずサービスを受けられます。定期的な訪問に加えて、利用者からの要請があれば電話や専用機器での対応や、訪問による随時対応を行っているので心強いサービスといえるでしょう。しかし実態は、夜間の訪問は定期スケジュールに組み込まれていることが多く、利用者からの随時コールは少ないという調査結果もあります。
自宅以外でも在宅介護サービスは利用できますか?
施設に通いながら受けることができる在宅サービスは4つあります。
- 通所介護(デイサービス):孤立感の解消・心身機能の維持・家族の介護の負担軽減などが目的
- 通所リハビリテーション(デイケア):日常生活支援・機能訓練・口腔機能向上のサービスなどを提供
- 地域密着型通所介護:地域密着型通所介護の施設に通い、通所介護を受ける
- 療養通所介護:重度要介護者又はがん末期患者が対象
通所介護は、可能な限り
自宅で自立した日常生活を送ることができるよう支援することが目的です。
短期間宿泊して受けることができる在宅サービスは2つあります。
- 短期入所生活介護(ショートステイ):介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などに宿泊(連続利用日数30日まで)
- 短期入所療養介護:医療機関や介護老人保健施設、介護医療院が提供(連続利用日数30日まで)
介護が必要な方の短期間の入所を受け入れ、日常生活上の支援や、機能訓練などを提供します。
在宅介護サービスを受けるための条件
在宅介護サービスを利用できる条件を教えてください。
介護保険制度による在宅サービスを利用するためには、原則として要介護認定を受ける必要があります。要介護認定とは、どの程度の介護サービスが必要かを判断するための制度です。要介護認定では、病気の重さと要介護度が必ずしも一致しない場合があります。この点を理解しておくことが大切です。例えば、認知症が進行して徘徊などの行動が見られる場合、身体の状態が良好でも介護負担が大きくなります。認知症による症状や行動面での負担も考慮されるため、介護度が高く認定される場合もあります。
介護認定の申請方法を教えてください。
要介護認定は、以下の手順で行われます。
- 申請:被保険者証を添えて市区町村に申請
- 認定調査: 認定調査員による訪問調査(認定調査)
- 主治医意見書:主治医から意見書を取り寄せる
- 審査判定: 介護認定審査会が審査判定を行う
- 認定結果の通知: 要支援または要介護認定結果の通知
申請から結果通知まではおよそ1ヶ月かかります。手順を理解し、
必要な書類をそろえてスムーズに進めましょう。
介護認定を受けていなくても在宅介護サービスは利用できますか?
介護保険制度の給付対象は、要介護認定によって介護サービスが必要と判断された要支援1〜要介護5の方です。そのため、公的な在宅介護サービス(訪問介護や通所介護など)を利用するには、あらかじめ要介護認定の申請の手続きを済ませておくことが欠かせません。
まだ認定を受けていない方でも介護保険の対象外となる自費サービスや、地域が行う見守りや外出サポート、家事支援などを活用することでより安心して日常生活を続けられます。
在宅介護サービス利用の流れと費用の目安
在宅介護サービスを利用するまでの流れを教えてください。
在宅介護サービスを利用するには、まず要介護認定を受けることが必要です。認定結果の通知を受け取った後は、ケアマネジャー(介護支援専門員)に相談し、生活の状況や希望に沿ったケアプラン(介護サービス計画)を作成します。このケアプランには訪問介護や通所介護、福祉用具の貸与などの必要な支援内容や利用回数が具体的にまとめられるため、必要な福祉用具を事前に検討しておくとよいでしょう。その後ケアプランに基づいて各サービス事業所と契約を結び、利用日や担当者を調整して準備が整い次第在宅介護サービスの利用が正式に始まります。準備が整った段階で、在宅介護サービスの提供が始まる流れです。
在宅介護サービスを利用できるまでにどのくらい時間がかかりますか?
利用を始めるまでの明確な日数は公表されていません。申請後は、訪問調査や主治医の意見書作成、介護認定審査会での判定などいくつかの手続きを経て介護度が決まります。これらの一連の手続きを終えるまでに、おおむね1ヶ月前後かかる場合があります。認定結果通知が届く前に、書類確認や日程調整が必要になる場合もあるため、事前に予定を確認しておくとよいでしょう。
在宅介護サービスを利用するにはどのくらい費用がかかりますか?
介護保険を利用する場合、費用のうち1〜3割を自己負担し、残りは介護保険から支払われる仕組みです。
サービスの種類や利用時間によって料金は異なりますが、
介護報酬は、1単位=10円で換算されます。
以下は、厚生労働省が公表している令和6年度介護報酬改定(告示)をもとに、全額(10割)負担ベースで算出したおおよその費用例です。
実際の自己負担額は、所得区分に応じてこの1〜3割程度となります。
- 訪問介護(身体介護)20分未満(1回あたり):約1,710円(171単位)
- 訪問介護(生活援助)20分以上45分未満(1回あたり):約1,910円(191単位)
- 通所介護(要介護1・5〜7時間・1回あたり):約7,050円(705単位)
- 定期巡回・随時対応(一体型事業所・要介護1・月額):約93,230円(9,323単位)
- 定期巡回・随時対応(一体型事業所・要介護5・月額):約306,230円(30,623単位)
これらの基本料金に加えて、入浴介助や栄養管理など特別な支援を行う場合には、加算により追加料金が発生することもあります。また、施設などでは季節に応じた行事などを催すところも少なくありません。上記以外に雑費が発生する場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
※本ページで紹介している金額は、厚生労働省の令和6年度介護報酬改定に基づく代表例を円換算したものです。実際の自己負担額は所得や地域によって異なります。
編集部まとめ
在宅介護サービスは、介護が必要になっても住み慣れた自宅で暮らしを続けられるよう支える制度です。
訪問介護やデイサービスなど、希望や状態に合わせて選べるのがメリットといえます。
利用には要介護認定が必要であり、認定まで時間がかかるため、余裕を持って手続きを行うと安心です。
手続きの流れがわからない場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談するとよいでしょう。