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「低ナトリウム血症」とは?症状・原因・治療法についても解説!

 更新日:2023/03/27
「低ナトリウム血症」とは?症状・原因・治療法についても解説!

疲労感やだるさを引き起こす原因の1つに低ナトリウム血症があげられます。

低ナトリウム血症は血液中のナトリウム濃度の低下により起こり、誰でもなり得る病気です。

一方で、初期症状は単なる疲れと誤解しやすく、気付かないうちに重症化してしまう恐れがあります。

命にかかわる病気でもあるため、疑わしい症状がある場合は適切な対処が必要です。

低ナトリウム血症は具体的にどんな症状なのか、受診の目安・治療方法・予防方法など理解を深めていきましょう。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

低ナトリウム血症とは?

ジョギング

低ナトリウム血症にみられる症状を教えてください。

  • 主な症状は、吐き気疲労感頭痛倦怠感痙攣筋肉のひきつり意識障害昏睡などです。
  • 低ナトリウム血症は、血液中のナトリウム濃度が著しく低くなることで引き起こされます。初期では、無症状あるいは軽い疲労感や倦怠感ですが、悪化するにつれて頭痛・吐き気などの症状がみられるようになります。
  • 脳は、血液中のナトリウム濃度の変化を敏感に感じ取るため、脳機能障害の症状から現れ始めることが多いです。重症化すると、筋肉のひきつり・痙攣発作が生じ、昏睡状態に陥ります。死に至る病気でもあるため注意が必要です。

低ナトリウム血症は3タイプに分かれていると聞いたのですが…。

  • まず血漿浸透圧を測定し(<280mOsm/kg)、高血糖やグリセオール製剤使用などによる高張性の低ナトリウム血症を除外し、さらに、脂質異常症や異常蛋白血症などがある場合は偽性(偽りの)低ナトリウム血症の可能性を考えます。そのうえで細胞外液量を調べ3つのタイプに分類します。
  • 低ナトリウム血症は血管内の水分量(体液)に対して、ナトリウム量が少なくなる状態です。つまり水分量とナトリウム量のバランスの変化によって症状が引き起こされます。そのため、以下の3つのタイプに分けられます。
  • 水分量(体液)が少ないタイプ
  • 水分量(体液)が正常なタイプ
  • 水分量(体液)が過剰なタイプ
  • 3つのタイプによって、原因が異なる点も低ナトリウム血症の特徴です。

3タイプ別の原因を教えてください。

  • 水分量が少ないタイプは、体内の水分量が減少したことでナトリウム量も減少し、低ナトリウム血症が生じます。たとえば激しい下痢や嘔吐・利尿薬の使用・大量の発汗などがあげられます。
  • 水分量が正常なタイプは、体内の水分量を調節するホルモンの分泌異常が原因です。抗利尿ホルモン不適合分泌症候群と呼ばれる病気が、ホルモン分泌異常の代表的な病気です。このほかにも腫瘍・脳疾患・抗がん剤・胃薬などが原因でホルモンが乱れ、低ナトリウム血症につながることもあります。
  • 水分量が過剰なタイプは、体内の水分量が過剰に増えたことでナトリウム濃度が低下したことが原因です。ネフローゼ症候群・腎不全・肝硬変・心不全などによくみられます。これらの病気は多量の水分が体内に保持されるため、ナトリウム濃度の低下につながり症状を引き起こす原因となります。

低ナトリウム血症での受診の目安は?

診察する医師

どの症状が出たら受診した方が良いですか?

  • 低ナトリウム血症は、重症化すると死に至る病気です。だからこそ症状が軽いうちに適切に対処することが重要になります。初期の段階では自覚症状がない場合もありますが、疲労感頭痛ふらつき吐き気などがみられる場合は、早めに受診しましょう。
  • 一般的に血液中のナトリウム濃度が、136mEq/L未満になると低ナトリウム血症であると判断されます。血液中のナトリウム濃度が120~130mEq/Lぐらいになると、軽い疲労感・倦怠感を感じ始める場合が多いです。
  • 重症であればあるほど早めの対処が必要になります。筋肉のひきつれ・痙攣などの症状がみられる場合は、血液中のナトリウム濃度が110 mEq/L程度まで低下していることが考えられます。こうした症状がみられる場合は、迅速に医師の診察を受けましょう。

何科を受診するのが良いのでしょうか?

  • 気になる症状がみられる場合、診察は内科全般で可能です。内科のなかでも腎臓内科内分泌科がより受診に適しています。

低ナトリウム血症の検査内容を教えてください。

  • 低ナトリウム血症が疑われる場合、まずは血液検査で血中のナトリウム濃度を調べます。血液中のナトリウム濃度が135mEq/L未満であれば、低ナトリウム血症と診断されます。
  • 低ナトリウム血症かどうかは血液検査ですぐに診断することが可能です。しかし、血液検査で原因の特定までできるわけではありません。患者さんから症状・服用している薬などを聞き取ったうえで、より精密な血液検査尿検査を追加検査していきます。
  • 体液量・血液・尿中ナトリウム濃度・電解質・抗利尿ホルモンなどを詳しく検査したうえで、原因を特定していきます。

低ナトリウム血症の治療・予防方法とは

ハートを手で持つ女性

低ナトリウム血症はどんな治療をしますか?

  • 軽症の場合は、経過観察あるいはタイプ別に合わせた治療をします。水分量が過剰なタイプ・正常なタイプの場合は、水分摂取量を制限することで回復するケースが多いです。薬の影響による症状の場合は、薬の中止・減量で様子をみていきます。
  • 水分量が減少しているタイプの場合は、生理食塩水を点滴し、水分量とナトリウム濃度のバランスを正常に戻していきます。
  • 重度の症状がみられる場合は、脳に重篤な影響を及ぼす恐れもあるため、迅速なナトリウムの投与が必要です。しかし、急激なナトリウム濃度の上昇も脳神経系に重篤な影響を与える可能性があるため、症状を観察しながら適切な速度でナトリウムを投与していきます。

低ナトリウム血症は完治しますか?

  • 低ナトリウム血症は血液中のナトリウム濃度が低下して起こる症状であるため、水分量とナトリウム濃度のバランスを正常に保つことで治る病気です。しかし、原因となる疾患がある場合は、その原因疾患を治さない限り症状が続く可能性があります。完治するためには、原因疾患の特定治療が必要です。

低ナトリウム血症の治療後に気を付けることは?

  • 低ナトリウム血症を起こした方のなかには、「塩分をたくさん摂ればいい」と考える人もいます。しかし、やみくもに塩分を摂ればいいというわけではありません。心不全などの疾患が関わっている場合は、過剰な塩分摂取が逆効果になる場合もあります。また、塩分の摂りすぎは生活習慣病の原因にもなるため注意が必要です。
  • 治療後は、なぜ症状が生じたのか、原因に合わせて対処することが必要です。治療後は、医師の指示に沿った生活を心がけ、原因疾患の治療生活習慣の見直しを行いましょう。

低ナトリウム血症の予防方法があれば教えてください。

  • 低ナトリウム血症の発症は、腎機能障害や高齢者に多くみられる傾向があります。しかし、健康な人でも、過剰な水分摂取・ナトリウムの無補給によって発症する可能性があるため注意が必要です。
  • 大量に汗をかいた際、水分と一緒に体内のナトリウムも排出されます。このときに大量の水分だけを摂取しナトリウムが補給されないと、体内のナトリウム濃度は薄まってしまいます。大量に汗をかいた際は、水分と一緒に塩分も摂取しましょう。夏場やスポーツをする際は、特に注意が必要です。水ではなくナトリウムを含んだスポーツドリンクなどの水分補給が予防につながります。
  • 一方で、心臓・腎臓・生活習慣病などの疾患がある場合は、病気の内容や服用している薬によっては水分摂取を制限する必要があります。かかりつけ医の指示に従って、水分補給・塩分補給をしましょう。また、降圧薬・利尿薬・抗うつ薬を服用している人、脳疾患の既往がある人は、低ナトリウム血症を発症しやすい傾向があります。疲労感・倦怠感・頭痛などの初期症状がみられる場合は、早めに医師に相談しましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 「なんだか疲れやすい」「だるさがとれない」などはよくある体の不調ですが、低ナトリウム血症が原因の可能性も考えられます。低ナトリウム血症は初期は軽い症状ですが、進行すれば意識障害・昏睡状態、最悪の場合死に至る病気です。低ナトリウム血症かどうかは、血液検査ですぐに診断することができます。気になる症状がみられる場合は、早めに検査してみましょう。
  • また、暑い時期は熱中症と低ナトリウム血症を勘違いしてしまうケースも少なくありません。低ナトリウム血症の場合、熱中症と異なり大量の水分補給は逆効果になります。熱中症が疑われる場合も、低ナトリウム血症の可能性を考え、医師の診断に沿って適切に対処していきましょう。

編集部まとめ

女医とビジネスマン
低ナトリウム血症は、初期の段階では単なる疲れや体調不良と見過ごしてしまいやすい特徴があります。

しかし、重症化すると命にかかわる深刻な病気であるため、早めの対処が重要です。気になる症状がみられる場合は、早めに医師に相談しましょう。

また、大量の汗をかいた際は、血中のナトリウム濃度が低下しやすい状態です。水分補給と同時に塩分補給を忘れずに行い、予防に努めましょう。

この記事の監修医師