「群発頭痛」とは?症状・原因・治療法についても解説!
更新日:2023/03/27


監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
群発頭痛とは
群発頭痛とはどのような疾患でしょうか?
群発頭痛は目の周りからこめかみにかけて、激しい痛みが短期的・周期的に群発して起こる病気です。痛みで動けなくなる一般的な頭痛とは異なり、群発頭痛では頭痛発作が起こると落ち着かず興奮したり、動き回ったりすることが多くなります。
群発頭痛の最大の特徴は、頭痛発作が頻繁に起こる「群発期」と、発作が起こらない「寛解(かんかい)期」を周期的に繰り返す点です 。半年から1年の周期で群発期が訪れると、その期間中は頭痛発作が1日に数回起こります。それが数週~数ヶ月ほど続きますが、そのほかの期間では基本的に頭痛発作は起こりません。
なお、群発頭痛の有病率は0.056%~0.4%、およそ1000人に1人といわれています。
群発頭痛の症状
群発頭痛の症状には、どのような特徴がありますか?
群発頭痛では、「目をえぐられる」「頭に何かが突き刺さる」と表現されるほど激しい痛みを伴うのが特徴です。このような頭痛発作が、目の奥やその周囲、頭の前方部および側方部に出現します。
症状の多くは片側に集中して起こりますが、痛みが左右交互にあらわれたり、まれにですが両側に痛みが生じたりするケースもあります。
頭痛以外の症状はありますか?
群発頭痛の発作時は、頭痛にくわえて次のような症状 を伴います。
- 目の充血や流涙
- 鼻水・鼻づまり
- 額、または顔面の発汗
- 眼瞼下垂(まぶたが下がる)
- 眼瞼浮腫(まぶたの腫れ)
痛みの持続時間
頭痛発作の痛みはどのくらい続きますか?
症状が出てから10〜15分で痛みがピークに達し、その後1〜2時間ほど続きます。症状が出現する予兆を感じる方もいらっしゃいますが、とくに決まった前兆症状などはありません。
頭痛発作の頻度や出現時間
群発期では1日に何回、どのタイミングで頭痛発作があらわれますか?
群発頭痛の症状の多くは夜間、とくに就寝後1〜2時間(最初のREM睡眠時)に出現します。日中では、仕事が終わってリラックスしている時などに症状が出やすくなります。
群発期にはこのようなタイミングで頭痛発作が1日に1〜3回ほど、決まった時間に起こるのが特徴です。また、群発期の過度な飲酒や喫煙、気圧の変化、不規則な睡眠は症状を誘発または悪化させる要因となります。
群発期の期間
群発期(頭痛発作が出現する時期)は、どれぐらい続きますか?
群発期は2~6週間、長い場合には数カ月ほど続き 、期間中は連日にわたり頭痛発作が出現します。一方で、群発頭痛のなかには1年以上発作を繰り返すものもあり、このようなケースは「慢性群発頭痛」と呼ばれています 。
群発期の周期
群発期(頭痛発作が出現する時期)は、どのくらいの周期で繰り返しますか?
群発期は1年に1~2回の周期で繰り返されますが、なかには2年あるいはそれ以上、発作のない期間が続くケースもあります。
群発頭痛の原因
群発頭痛の原因にはどのようなものがありますか?
群発頭痛は、いまだ明確な原因やメカニズムがわかっていません 。
現在までに「視床下部の関与」「三叉神経と血管の関与」「三叉神経と自律神経の関与」「内頸動脈の関与」の4つが、その原因として考えられています。
群発頭痛の受診科目
症状から群発頭痛が疑われる場合、何科を受診したらよいでしょうか?
数年前から同じような頭痛の症状を繰り返している方は、脳神経内科や脳神経外科、頭痛専門外来など、頭痛治療を専門に行う診療科の受診がおすすめです。
ただし、頭痛のなかには脳卒中やくも膜下出血など、命に関わる病気が原因で症状があらわれるものもあります。突然起こった頭痛で、これまで経験したことのない激しい痛みや、頭痛以外に発熱や手足のしびれなどを伴う場合は、ただちに脳神経外科や脳神経内科を受診してください。
群発頭痛の検査
群発頭痛ではどのような検査を行いますか?
群発頭痛の症状は特徴的なものが多いため、基本的に問診で診断が可能です。ただし、激しい頭痛は脳卒中やくも膜下出血などの重篤な脳疾患も疑われるために、CT検査やMRI検査などを行う場合もあります。
そのほかに推奨される検査に、血液検査や眼圧検査などがあります。
群発頭痛の治療
群発頭痛の治療には、どのようなものがありますか?
頭痛発作が出た際にその症状をやわらげる治療と、頭痛発作の出現を防ぐ治療の2つがあります。群発頭痛の治療では、このような発作時の「対症療法」と発作を防ぐ「予防療法」を組み合わせることが重要です。
頭痛発作が起こった時の対症療法
頭痛発作が起こった際、どのような治療で症状が改善できますか?
頭痛発作が生じた際にその症状を和らげる治療として、「酸素吸入」と「トリプタン(スマトリプタン)の投与」 が一般的に行なわれます。
酸素吸入治療では、発作が起こった際に1分当たり7~10リットルの純酸素(濃度100%の酸素)を、15〜20分ほどマスクで吸入します。 なお、群発頭痛の治療では在宅における酸素療法に保険の適用が可能です。
トリプタン(スマトリプタン)の投与には皮下投与、点鼻薬、経口薬(飲み薬)などがあります。点鼻薬はスプレータイプで、頭痛発作時に痛みがでていない側の鼻孔に噴射します。皮下投与は自己注射(自分で皮膚に注射するタイプ)で、効き目が速く、頭痛発作時の症状緩和としてはもっとも有効な手段です。
頭痛発作の痛みは、痛み止め(鎮痛剤)でも改善できますか?
群発頭痛の症状は、一般的な痛み止め(鎮痛剤)を服用しても改善できません。
頭痛発作を防ぐ予防療法
頭痛発作を予防する治療には、どのようなものがありますか?
頭痛発作の予防療法では、カルシウム拮抗薬、副腎皮質ステロイド、酒石酸エルゴタミンなどの薬剤を使用して発作の出現を抑えていきます。また、慢性群発頭痛の予防療法では炭酸リチウム、バルプロ酸などがよく用いられます。
群発期になると頭痛発作が連日繰り返し起こるため、このような予防療法を早期に行い、発作が2週間ほどあらわれなくなるまで続けることが重要です。
群発頭痛の性差・年齢差
群発頭痛の発症に性差や年齢差はありますか?
群発頭痛は、20~30歳代に多くみられる疾患で す。男女比は4~7:1で男性に多い とされていましたが、近年の調査では男女の差が縮小し、女性でも発症するケースが増えています。




