肝斑とシミの見分け方は?原因・治療法もご紹介します
顔に現れるシミにはさまざまな種類があります。シミの中でも色素が薄く広範囲に現れる肝斑は、顔の印象を左右させるほど目立つシミです。
ただ「広範囲に現れているから肝斑」なわけではなく、ほかの種類のシミである場合もあります。
また、「肝斑があるけど、どのような治療法がよいか分からない」「肝斑を防ぎたい」など、悩む方も多いのではないでしょうか。
きちんと原因を把握し予防したり、できてしまった肝斑でも適切な治療を受けたりすることで症状の改善が目指せるでしょう。
本記事では肝斑とシミの見分け方・原因・治療法についてご紹介します。
監修医師:
金 仁星(医師)
化粧品検定2級、英語発音指導士® 所有
目次 -INDEX-
肝斑とはどのような症状?
肝斑は、顔に現れるシミの一種で後天性色素沈着です。シミと一口にいってもさまざまな種類がありますが、肝斑は高い頻度でみられるシミの代表的な現れ方の一つです。
現在、肝斑のようなシミが現れていて下記のような項目に当てはまる場合、肝斑である可能性が高いでしょう。
- 30〜40代に現れたシミ
- 突然頬骨辺りにシミが現れる
- ほかのシミとは違い形状ははっきりとせずぼやけている
- 季節によって濃さが変わって見える
- スキンケアや顔のマッサージなど、顔を擦ることが多い
- 妊娠している・したことがある
- ピル(経口避妊薬)を使用している
早い方で20代後半から症状がみられ、多くは40代の女性に多いです。個人差はありますが症状がみられるのは50代後半までです。
その後閉経とともに薄くなったり消えたりし、症状がみられなくなる傾向にあります。
肝斑の特徴として目の下から頬骨付近に左右対称に現れます。肝斑と同じく高い頻度でみられる老人性色素斑と違い、形状ははっきりとせずもやもやしたように見え、色は薄茶色であることが多いです。
女性に多くみられる要因として、女性ホルモンバランスや妊娠・出産など、女性特有の環境が関係しているからだといわれています。
肝斑はそばかすといわれている雀卵斑(じゃくらんはん)や肝斑同様、左右対称に現れシミの元となるメラニン色素が真皮内に増加するADM(後天性真皮メラノサイトーシス)と混在し現れる場合も多く、鑑別が容易ではありません。
「薄く広範囲のシミがあるから肝斑」と決めつけず、医師の診察を受け肝斑かどうか判別しましょう。
肝斑とシミの見分け方は?
肝斑とほかのシミはどのように見分けるのでしょうか。肝斑はほかのシミと見え方が異なり、いくつか見分け方があります。
どのような見分け方があるのかみていきましょう。
肝斑は左右対称に出ることが多い
肝斑は左右対称に出ることが多いです。現れる箇所は頬骨付近に多く、その場合は左右対称にみられますが、眉上や上口唇部などにみられる場合は単一であることが多いです。
発症時はなんとなく肌がくすんでいるように見えます。
先述したように、そばかすやADMと混在していることもあり鑑別が難しく、またくすんだようにみえるため肌トラブルの場合も考えられます。
区別がつきにくいですが左右対称にみられるシミであったら、肝斑と見分ける一つの判断材料になるでしょう。
肝斑は頬骨に沿って出ることが多い
肝斑が多くみられる箇所として、頬骨に沿って出ることが多いです。そのほか、両頬・眉上・上口唇部などにみられることがあり、症状の出方は個人差があります。
頬骨に沿って出ることから、顔全体の印象や表情が暗くみえてしまう影響も出ます。
肝斑は境界がはっきりせずぼんやり広がる
肝斑はほかのシミとは違い、色素が薄くて境界がはっきりせずぼんやり広がってみえることが特徴です。面積も広く、シミの輪郭が曖昧でぼやけています。
発症し始めは小さな範囲であっても放置することで次第に範囲が広がってくるため、早めの治療が必要です。
シミは境界がはっきりしていて楕円形のことが多い
肝斑についてみてきましたが、ほかのシミについてもみていきましょう。
シミの中でも多くの方にみられる老人性色素斑は、形状が一つ一つはっきりとしていて円形や楕円形であることが多いです。
ニキビやアトピー性皮膚炎など、何らかの炎症が起きたためできる炎症後色素沈着も老人性色素斑同様の形状であることが多いです。
そばかすは細かい粒状に現れ、ADMは肝斑同様に左右対称で点状に現れますがその後広がる可能性があります。
いずれのシミも広がって現れる肝斑と違い一つ一つはっきりしていることが多いため、見分ける一つの目安としましょう。
肝斑の原因
肝斑が発症する原因にはどのようなことが関係しているのでしょうか。肝斑の原因は明確には分かっていませんが、以下の要因が考えられます。
- ホルモンバランスの変化
- 摩擦
- 妊娠
- ピルの服用
またそのほか、紫外線やストレスも関係していると考えられます。
女性ホルモンなど皮膚の内外から刺激を受けることで、メラノサイト活性因子の一つであるプラスミンがシミを作る元であるメラノサイトに作用します。
すると肌が黒くなろうとするメラニン色素の産生を促すため、肝斑が発症するとも考えられているのです。
ホルモンバランスの変化
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンが存在しています。どちらも女性のライフサイクルに欠かせないホルモンです。
妊娠やピルの服用が影響し、プロゲステロンが活性や優位となります。するとシミの原因となるメラニン色素が増産され、肝斑の発症へとつながるのです。
またプロゲステロンが増えることでホルモンバランスが乱れます。そのほかストレスや月経不順などの影響でホルモンバランスが乱れることで、肝斑の色素が濃くなるといわれています。
ホルモンバランスの変化と肝斑は密接な関係があるといえるでしょう。
摩擦
肝斑は刺激に弱く、誤った洗顔・顔のお手入れ・顔のマッサージなどによる摩擦が原因となっている場合もあります。
花粉症などマスクを着用する機会が多い方は、頬の高い位置にマスクが当たることで擦れて刺激となり悪化する方もいます。
洗顔の最中や拭き取る際に擦らないなど、日頃から顔への摩擦に気をつけてください。
妊娠
妊娠時に胎盤からプロゲステロンの増加や、皮膚のメラノサイトを刺激し色素沈着を起こすMSH(メラニン細胞刺激ホルモン)の増加など、内分泌変調が関係しているといわれています。
また妊娠時はプロゲステロン同様にエストロゲンも増加しますが、分娩により胎盤が排出されると胎盤から分泌されていたエストロゲンとプロゲステロンも排出され、急激に血中濃度が低下します。
エストロゲンとプロゲステロンが急激に低下することでホルモンバランスの崩れが起き、肝斑の発症へとつながると考えられていることも原因の一つです。
ピルの服用
月経痛を和らげる・ホルモン周期に関連した体や心のケアにピルを服用している方もいるでしょう。
ピルを服用していることで肝斑の症状が現れるきっかけになることが考えられます。
プロゲステロンは通常排卵後にだけ働きますが、先述したようにピルを服用していることで優位な状態へと導いてしまうのです。
肝斑の発症が気になるが服用を続けたい方は、医師と相談し適切な方法をとりましょう。
肝斑の治療法は?
ここからは肝斑の治療法についてみていきましょう。肝斑の治療には飲み薬・塗り薬・レーザーがとられ、第一選択肢として飲み薬を使用していきます。
しかし原因がさまざまなため、一種類のみで行うのではなくそれぞれの症状に合わせた治療法を組み合わせます。医師と相談し、ご自身の症状やライフスタイルに合った最適な治療法を選択してください。
飲み薬
肝斑は外からの刺激に弱いため、飲み薬の効果が期待できます。
肝斑治療薬で代表的な薬はトラネキサム酸です。シミを産生する働きのあるプラスミンを抑制する作用を持っています。
肝斑への効果がみられるまで2〜6週間かかります。効果がみられなくても服用を中断せず、続けることが重要です。
そのほか ビタミンC(アスコルビン酸)と肌の新陳代謝であるターンオーバーを助ける作用を持っているパントテン酸が配合しているシナールがあります。メラニン色素の産生に働くチロシナーゼの活性を阻害する作用があります。
またビタミンE配合・メラニン色素の排出を促すユベラや、シナール同様にチロシナーゼの活性を阻害したりチロシナーゼ自体の生成を阻害したりする効果が期待できるL-システイン配合のハイチオールなどもよいでしょう。
飲み薬はトラネキサム酸を中心に、組み合わせて処方されることが多いです。
塗り薬
飲み薬のほかに、塗り薬も効果が期待できます。塗り薬で代表的なものはトレチノインが挙げられます。
肌のターンオーバーを促しメラニン色素を外へ押し出す作用を持ち、皮膚内部にあるメラニン色素が減少するため、肝斑の色素が薄くなることが期待できるでしょう。
ただしトレチノインは妊娠中や妊娠予定のある場合、使用できません。
そのほかチロシナーゼの活性を阻害する効果を持つハイドロキノンがあります。新たに肝斑が発症することを防ぐ効果が期待できます。
今あるメラニン色素を除去することも重要ですが、作らせないことも重要です。
ただしハイドロキノンは「漂白軟膏」といわれるくらい作用が強い薬剤です。高濃度タイプをつけすぎてしまうと色素が抜けすぎる白斑や、逆に色素沈着する可能性もあります。
低濃度タイプを使用し、医師による適切な診断を受けて処方された薬剤を使用してください。
レーザー治療は肝斑に適したものを
先述したように肝斑は刺激に弱いです。レーザーの刺激により肝斑が悪化することもあるため、レーザー治療は禁忌とされてきました。
しかし治療可能な機器が増えてきたことにより、肝斑に対しレーザー治療が可能となりました。
飲み薬や塗り薬で十分な効果がみられない場合、レーザー治療を併用して治療を進めていくことも一つの考えです。
レーザー治療には以下の機器があります。
- IPL(光治療)
- レーザートーニング
- ポテンツァ
IPLは特殊な光エネルギーを照射することでメラニン色素を破壊します。
レーザートーニングは低出力で照射することで、沈着したメラニン色素の排出を促す効果が期待できるのです。
その他ポテンツァは、シミを作る元であるメラノサイトをターゲットとしているため、肝斑治療に効果が期待できるのです。
マイクロニードルと呼ばれる極細針の針先からラジオ波(RF)を照射し、真皮内に直接熱エネルギーを与えます。
従来のマイクロニードルでは肝斑治療に対応していませんでしたが、専用チップを使用することから可能となりました。
また熱エネルギーによってダメージを受けた真皮層は修復しようとして肌の創傷治癒力が働き、コラーゲンやエラスチンが産生されるため肝斑以外の悩みにも対応しています。
レーザー治療は組み合わせて行うことが多いため、肝斑のほかに気になるシミがある場合、同時に治療が可能です。
肝斑のセルフケア方法は?
肝斑は直接的な治療方法を取り入れることは重要ですが、セルフケアも取り入れましょう。
日々の食事面などからセルフケアを行い、肝斑と向き合いましょう。
ビタミンCを意識的に摂る
ビタミンCはメラニン生成を抑制する働きがあるため、肝斑において重要な成分です。またチロシナーゼを除去したり色素沈着を防いだりする働きもあります。
水溶性ビタミンの一つであるビタミンCは体内で作られないため、意識的に摂りましょう。
野菜や果物に多く含まれている成分のため、摂取しやすいでしょう。ビタミンCは加熱処理を行うと分解されてしまうため、調理法には注意してください。
ただしイモ類は、デンプンで保護されているため加熱しても分解せずに残ります。
市販の肝斑用の薬を試す
肝斑の症状がみられても医療機関に向かう時間が取れない方もいるでしょう。トラネキサム酸を主成分としL-システインやビタミンCを配合した市販薬を試してみることも一つの方法です。
毎日服用し、2ヶ月で効果がみられる目安であるといわれています。効果の現れ方は個人差があるため、必ずしも効果がみられるわけではないことを念頭におきましょう。
また取り入れる際は薬剤師に相談し、正しく服用してください。
肝斑を予防するには?
肝斑の症状がみられてから治療を行うより、そもそも発症させないことも重要です。残念ながら肝斑の確信的といえる予防方法はありませんが、発症や悪化に関与していることとして紫外線対策・摩擦を避ける・ストレスの対策が挙げられます。
紫外線を浴びることでメラノサイトが刺激されメラニン色素が増加します。紫外線は春から秋口にかけて強いですが天候関係なく降り注ぎ、屋外では地面による跳ね返りによって浴びることもあるため注意が必要です。
外出する際は、帽子や日傘など肌を守るアイテムを使用しましょう。
また紫外線は窓ガラスなどを通り抜けるため、屋内にも入ってきます。
そのため紫外線対策に日焼け止めは重要です。毎日欠かさず日焼け止めを活用してください。
使用する日焼け止めは、日常生活において日焼け止めの効果を表すSPFとPAは高くないタイプで十分です。
ただし一度塗布したら一日効果が継続されるのではなく、日焼け止めは衣類の擦れや汗などで取れてしまうため、2〜3時間おきに塗り直してください。
日焼け止めには化学物自体が紫外線を吸収しシミを防ぐ紫外線吸収剤と、粉末が紫外線を吸収・散乱することでシミを防ぐ紫外線散乱剤があります。
使用感のタイプもさまざまあるため、ご自身が使用し続けやすいタイプを選びましょう。
毎日スキンケアやメイクをする方は多いでしょう。その際に顔を擦るなど誤った方法を続けていることで皮膚のバリア機能が破壊され紫外線の影響を受けやすくなります。
その結果、肝斑の発症につながることが考えられるのです。
また、ストレスも肝斑を発症させる要因になり得ます。ストレスを受けるとチロシナーゼを増やしメラニン色素が増加したり、ホルモンバランスの乱れが悪化したりすることにも関係しています。
日頃から紫外線対策を行い、顔の摩擦を避けストレスを受けても上手く発散し、肝斑の発症や悪化を防ぎましょう。
まとめ
肝斑はさまざまな原因が考えられるため、シミの中でも治療法が難しいと考えられています。しかし肝斑が発症してそのまま放置していると、範囲は広くなり治療に多くの時間を要します。
「肝斑かもしれない」と感じたら医師の元で診察を受け、適切な治療方法を取り入れましょう。
また肝斑を発症させない・悪化させないためにも、紫外線対策やストレス対策を行なってください。
効果がみられないからと治療を中断するのではなく、ご自身に合った最適な治療法を医師と相談しながら見つけ改善を目指しましょう。
参考文献