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その「眠れない」は不眠症?不眠症の原因を知って正しい対処を

 更新日:2023/03/27

健康的な生活において充分な睡眠が不可欠であることは言うまでもないことですが、現在日本では約5人に1人が不眠の症状で悩んでいると言われています。
もはや他人事ではないこの「不眠症」ですが、発症してしまう原因やその治療・予防の方法についてはまだまだご存じない方も多いかと思います。
そこで今回は、「不眠症」の主な原因や症状、さらにその治療や予防方法についてMedical DOC編集部がお届けいたします。

この記事の監修ドクター:
降矢 英成 医師 赤坂溜池クリニック 院長

不眠症とは?

精神的なストレスや身体的な不調などによって必要な睡眠が充分に得られない、いわゆる「不眠」の状態は誰もが経験した事があるかと思います。

このような一時的な不眠は、通常では数日から数週間程度のうちに解消されて元通りの睡眠がとれるようになりますが、不眠が改善しないまま長期化してしまい倦怠感や意欲の低下・集中力の低下・食欲の低下などの身体的な不調を引き起こしてしまう場合があります。

このように、

※長期間にわたって夜間の不眠が続いている

※不眠がおよぼす精神や身体への悪影響によって生活の質が低下している

という、ふたつの条件が認められた場合に「不眠症」と診断されています。

4つのタイプに分類される不眠の症状

このようなふたつの条件をもとに定義されている「不眠症」と呼ばれる睡眠障害ですが、その症状は主に4つのタイプに分類する事ができます。

①寝つくまでに時間を要してしまう「入眠障害」

②眠りが浅く睡眠中に何度も目が覚め、その後なかなか寝つけなくなってしまう「中途覚醒」

③必要以上に早い時間に目覚めてしまい、その後なかなか寝つけなくなってしまう「早朝覚醒」

④充分な睡眠時間をとっているにもかかわらず、しっかり眠れたという熟眠感が得られない「熟眠障害」

上記で挙げた4つの不眠症の症状は、ひとつだけではなく複数のタイプを併発してしまうケースも少なくありません。

それぞれのタイプによって対処法や治療方法も変わってきますので、ご自身の不眠がどのタイプによるものかを把握する事が重要となります。

不眠症の原因となる「5つのP」

ここまでは、「不眠症」と呼ばれる睡眠障害の定義とその症例別にみる分類についてご説明いたしました。

ここからは、より不眠症について知るために不可欠である、不眠症の原因について掘り下げていきたいと思います。

専門的には、不眠症には主に5つの原因があり、それぞれの英語での頭文字をとった「5つのP」に分類されると言われています。

①Physical(身体的原因)

腰痛などの身体の痛みや皮膚の痒み、夜間の咳や尿意などの身体的な症状によって眠りが浅くなってしまうことで不眠の原因となってしまうケースがあります。

②Philological(生理的原因)

仕事のシフトなどによって生活リズムや睡眠時刻が不規則になってしまう事によって寝付けなくなるなどの、体内時計の狂いによる生理学的な原因によって不眠が引き起こされてしまうケースがあります。

③Psychological(心理学的原因)

悩み事や緊張・不安といったストレスなどの心理学的な要因が不眠を招いてしまうケースがあります。

④P=Psychiatrica(精神医学的)

うつ病や双極性障害などに代表される精神疾患が引き起こす症状や精神状態の変調が原因となって不眠を招いてしまうケースがあります。

⑤P=Pharmacological(薬理学的)

アルコールやタバコ・カフェインなどの睡眠に悪影響をおよぼす嗜好品や、服用中の薬剤の副作用などが原因となって不眠が引き起こされてしまうケースがあります。

不眠症になってしまった!その治療とは?

ここまでは、不眠症の原因となる「5つのP」についてご説明いたしました。

一言で「不眠症」と言い表されている睡眠障害は、身体的あるいは精神的な要因などの様々な原因によって引き起こされる事がおわかりいただけたかと思います。

しかし、不眠症のタイプやその原因を知るだけでは、すでに発症してしまった不眠症を改善する事は出来ません。

ここからは、不眠症が発症してしまった場合の治療法について触れていきたいと思います。

現在の不眠症治療は、主に「非薬物療法」と「薬物療法」という、薬物の使用の有無によって2つの治療方法に種別することが出来ます。

非薬物療法

アルコールやタバコ・カフェインなどの嗜好品が原因となる薬理学的な不眠や、不規則な生活リズムなどが招く生理的原因による不眠は、いわば生活習慣による睡眠環境への悪影響によって生じる不眠であると言えるでしょう。

さらに近年増加しているのが、寝る前にベッドでスマートフォンや携帯ゲーム機などのモバイルツールを使う事によって生理的原因による不眠を招いてしまっているケースです。

このように、患者さん自身の生活習慣が原因となって不眠を招いてしまっている場合には、まずは正しい睡眠習慣を身につける事や適切な睡眠環境を整えることが不眠解消へとつながります。

必要な場合は医師や専門家による「睡眠衛生教育」と呼ばれる指導を仰ぐなど、睡眠についての知識を正しく学ぶことが適切な睡眠習慣を身に着け実践することにつながります。

この「睡眠衛生教育」以外にも、高照度の光を一定時間浴びることで生体リズムを矯正し睡眠時間帯の調整を促す「高照度光療法」や、慢性的な不眠によってベッドルームにいくだけでも「今日も眠れないのでは?」と不安や緊張を感じてしまう方などへの「認知行動療法」といった、薬物を使用しない不眠症治療が各種存在しています。

薬物療法

不眠症治療における薬物療法では一般に睡眠薬と呼ばれる薬剤が使用されています。

この睡眠薬を目的別に大きく分類すると、

・脳の活動を鎮めて睡眠を促す薬

・入眠や覚醒のリズムを調整する薬

・脳の過剰な覚醒状態を抑制する薬

上記の3つのタイプがあると言えるでしょう。

これらの睡眠薬は、患者さんひとりひとりに異なる不眠の症状やタイプなどによって、適切に選択され使用されることが重要となります。医師と相談のうえで指示に従い、正しく使用する事によって不眠の解消へとつながることでしょう。

不眠症を未然に防ぐ予防方法とは?

ここまでは、不眠症治療における「非薬物療法」と「薬物療法」についてご説明いたしました。

生活習慣の見直しや、必要な場合は目的にあった睡眠薬を医師に指示に従って正しく使用する事が不眠の解消へとつながることがおわかりいただけたかと思います。

ここからは、そもそも不眠症にならないための予防や対策方法について触れていきたいと思います。

不眠症の予防には、正しい睡眠習慣へとつながる生活習慣の心がけや、快眠に役立つ栄養素の摂取などが有効であると考えられています。

正しい睡眠習慣へとつながる生活習慣

先に述べた通り、アルコールやタバコ・カフェインなどの嗜好品の過剰摂取は睡眠トラブルの原因となります。

さらに、ベーコン・ハム・チーズ・ワインなどに含まれる「チラミン」という物質には脳内刺激物質を増加させる作用があるので、「寝酒にワインとチーズ、生ハムを嗜む」などという一見オシャレな習慣は快眠の大敵であると言えるでしょう。

さらにこの「チラミン」は、チョコレートや砂糖にも含まれていますので、同様に快眠を妨げてしまう恐れがあります。

加えて、入浴時にはシャワーだけで済ますのではなくゆったりと湯船につかる事が、副交感神経の優位化を促しリラックスと安眠を誘引します。

また、夜更かしでのテレビ鑑賞やスマートフォンなどのモバイル機器などの使用は交感神経を活性化させてしまい快眠を妨げてしまう恐れがあります。 睡眠時刻にはしっかりと照明を落とし、リラックスして布団に横たわる事が快眠へとつながります。

「最近寝つきが悪い」などとお悩みの方は、これらの習慣を心がけるだけでも改善する可能性がありますので、是非実践することをオススメします。

快眠に役立つ栄養素

鎮痛や催眠・精神の安定などに働きかける「セロトニン」という脳内物質。このセロトニンにはその他にも、睡眠ホルモンである「メラトニン」の分泌を促すという作用があります。

このセロトニンの原料となる「トリプトファン」が豊富に含まれる食品を夕食時などに身体に取り入れることが快眠へとつながる事が研究などで明らかにされています。

このトリプトファンは、アーモンドやバナナ・豆乳をはじめとした様々な食品に含まれていますので、意識的に食事に取り入れる事をオススメします。

しかし、このトリプトファンは単独ではセロトニンにはならないということを忘れてはいけません。 レバーやまぐろ・バナナなどに含まれる「ビタミンB6」とトリプトファンが合成されることによってセロトニンが作られます。

そこで、セロトニンの合成を促す食べ物としてオススメしたいのが「バナナ」です!

バナナにはトリプトファン・ビタミンB6共に豊富に含まれているので、是非夕食に取り入れてみてくださいね。

尚、就寝時には胃の中を空っぽにしておくことも重要です。 就寝2時間前には夕食を済ませる習慣を心がけましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか? 今回は「不眠症」の主な症状や原因、さらにその治療や予防方法について解説させていただきました。

不眠症にはその症状によって様々なタイプがあり、いろいろな原因によって引き起こされている事がおわかりいただけたかと思います。

さらに、快眠を促す生活習慣や適切な睡眠薬の使用に加えて、睡眠へとつながる食事習慣などが不眠症の治療や予防に有効である事もおわかりいただけたかと思います。

健康的な睡眠にとって欠かせない快眠を心がけて、明るく健やかな毎日を送りましょう!

監修ドクターのコメント

 不眠についてのこの記事は、とてもバランスよく記述されています。つまり、不眠の「定義」から、「症状」の分類と「原因」の分類、そして、「治療」についてが偏りなく説明されています。
不眠の症状として、入眠障害の方は神経質・神経症傾向であり、早期覚醒の方はうつ傾向であることも重要な知見ですし、不眠を来す原因には、生理学(身体)からのものもあり、心理的なものもあることや、生活面の問題からも起こることを知っておくことは、いたずらに薬が増えることを止めてくれます。
そして、治療にも「非薬物療法」として、生活環境の改善や嗜好品、食べ物の工夫まで説明されているので、実際の生活に役立つ内容となっています。

 

監修ドクター:降矢 英成 医師 赤坂溜池クリニック 院長

この記事の監修ドクター

出典:http://www.holisticmedicine.jp
降矢 英成 医師
赤坂溜池クリニック 院長

PROFILE

略歴
1959年東京都出身
東京医科大学卒業
LCCストレス医学研究所心療内科帯津三敬病院勤務を経て、
ホリスティック医学の実践の場として、丸野医師と赤坂溜池クリニック開院

所属
日本心身医学会専門医
日本ホリスティック医学協会会長
日本メディカルハーブ協会副理事長
日本森林療法協会理事
日本フィトセラピー協会副理事長

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URL http://www.holisticmedicine.jp/