淋病とは?どんな治療をするの?治療の予後もあわせて解説!
淋病は、淋菌という細菌が原因の性感染症です。放置すると重篤な合併症を引き起こす恐れがあるため、早期の診断と治療が重要です。
本記事では、淋菌の治療について以下の点を中心にご紹介します!
・淋菌の症状
・淋菌の検査
・淋菌の治療
淋菌の検査について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
そもそも淋病とは?
淋病は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)という細菌によって引き起こされる性感染症です。
淋菌は弱い菌で、粘膜から離れると数時間で感染性を失い容易に死滅します。性交や性交類似行為以外での感染はまれです。
淋病の疫学としては、近年世界中で増加傾向にあることが挙げられます。特に、若い年齢層での感染が多く見られます。
淋菌感染はHIV感染のリスクを高める可能性もあり、重要な疾患です。
予防対策としては、性的接触時にコンドームの使用が重要です。また、患者さん本人だけでなく性パートナーの早期診断と治療が重要とされています。
淋病の感染経路・原因
淋病は、淋菌という細菌によって引き起こされる性感染症です。
前述の通り、淋病の主な感染経路は性行為や性行為に似た行為によるものです。
淋菌は粘膜から離れると生存できないため、性行為による粘膜と粘膜の接触が主な感染経路です。
男性では尿道や肛門に、女性では膣に感染しやすいです。
一度の性行為で淋菌に感染する確率は約40%とされており、感染リスクは高いです。性行為によって口の粘膜にも感染することがあり、咽頭淋菌として発症することもあります。ただし、キスや共有飲食物による感染リスクは低いです。
出産時に母体が淋菌に感染していると、赤ちゃんに感染する可能性があります。
淋病の症状
淋病は、男女で症状が異なります。以下に詳しく解説します。
淋菌性尿道炎
淋菌性尿道炎は、淋病の症状のひとつです。この症状は男性に多く見られ、以下の特徴があります。
・尿道からの膿性分泌物:典型的な症状は、尿道からの膿性分泌物です。これは感染後数日から数週間で現れる傾向にあります。
・排尿時の痛み:感染した尿道が炎症を起こすことで、排尿時に痛みを感じることがあります。
・尿道のかゆみや刺激感:尿道内の炎症により、かゆみや刺激感を伴うことがあります。
・症状の強さの変動:個人によって強さが異なり、一部の人では症状が軽微で、気づかないこともあります。
淋菌性精巣上体炎
淋菌性精巣上体炎は、淋病の合併症の一つです。この症状は、男性の生殖器に影響を及ぼします。
急性精巣上体炎は、精巣の上端から始まり、下端で精管に移行する細長い管腔器官である精巣上体の急性炎症です。
主な症状としては、睾丸の痛みや腫れ、発熱、不快感が挙げられます。
淋菌は尿道から精管を上行し、精巣上体に到達することで炎症を引き起こします。
尿道炎を併発している場合、クラミジアと淋菌の病原検査が行われます。
適切な治療を行わないと、慢性的な痛みや不妊症の原因になることがあるため、睾丸の痛みや腫れなどの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
子宮頸管炎
淋病による子宮頸管炎は、女性における淋病の症状です。
子宮頸管炎の症状は、軽度から中等度のものが多く、多くの場合、自覚症状がないか、あっても軽微です。
しかし、感染が進行すると、おりものの増加、異常な出血(不正出血)、下腹部痛などの症状が現れることがあります。
淋菌性子宮頸管炎を放置すると、感染が上行して卵管炎や骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こすリスクがあります。
これらの合併症は、不妊症の原因となることがあります。淋病の子宮頸管炎は、自覚症状がないために見過ごされがちですが、合併症を防ぐためにも早期の診断と治療が重要です。
肝周囲炎
淋病による肝周囲炎は、淋菌感染症の合併症の一つで、特に女性に起こりやすい状態です。
この症状は、フィッツ-ヒュー-カーティス症候群とも呼ばれます。
肝周囲炎の主な症状は、右上腹部に痛みを感じることです。
淋菌感染症が血流に乗って体のほかの部分に広がることにより、肝臓の周囲に感染が生じます。これにより、肝臓の周囲の組織に炎症が起こり、痛みを引き起こします。
淋菌性咽頭感染
淋菌性咽頭感染は、主にオーラルセックスによって淋菌が咽頭に感染することで発症します。
淋菌性咽頭感染は無症状であり、感染者自身が感染に気づかない傾向にあります。
症状が現れる場合は、喉の痛みや腫れ、発熱などの咽頭炎に似た症状が現れます。
播種性淋菌感染症(DGI)
播種性淋菌感染症は、淋病の合併症の一つで、淋菌が血流を介して体のほかの部分に広がることで発生します。
関節の痛みや腫れ、皮膚に小さな赤い斑点が現れることが特徴です。
これらの斑点は痛みを伴い、膿をもつこともあります。関節炎は、腫れて触れると痛み、動かすときにひどい痛みが生じ、動きが制限されることがあります。
淋菌性結膜炎
淋菌性結膜炎は、淋菌が目の結膜に感染することで発生します。成人の場合、淋菌性結膜炎は主に性器からの分泌物が目に触れることで感染します。新生児では、出産時に母親から感染することがあります。淋菌性結膜炎の症状には、目の赤み、腫れ、かゆみ、膿のような分泌物があります。
重症化すると、角膜に影響を及ぼし、視力障害や失明のリスクがあります。
淋病の検査方法
淋病は、症状によっては診断が難しい場合があります。
臨床症状に加えて以下の検査を活用して淋病の診断をします。
検鏡法
検鏡法は、淋菌の感染を診断するために使用されます。
感染部位から採取した分泌物や初尿沈渣標本をグラム染色し、顕微鏡で観察します。
この際、多数の好中球と共に、好中球細胞質内に貪食されたグラム陰性の双球菌が認められた場合、淋菌の感染を強く推定できます。
淋菌は死滅しやすく、検体採取から分離培養までの保存法によって、検出率は大きく左右されます。
検鏡法は、淋病の迅速な診断に役立ちますが、確定診断のためにはほかの検査方法との併用が必要です。
培養法
培養法は、淋菌の分離と同定を目的としています。
この方法は、感染部位から採取した検体を特定の培地に接種し、淋菌の増殖を促すことによって行われます。
培養後、淋菌の特徴的な集落を顕微鏡で観察し、グラム染色やオキシダーゼ試験を行います。
これにより、淋菌の存在を確認し、ほかの細菌と区別します。
淋菌は死滅しやすい菌であるため、検体採取から培養までの取り扱いには特に注意が必要です。
培養法は、淋病の確定診断に役立つ方法であり、特に薬剤耐性淋菌の検出や抗生物質感受性試験にも利用されます。
核酸増幅法
核酸増幅法(NAAT)は、淋菌のDNAまたはRNAを検出するために使用されます。
核酸増幅法は、淋菌の感染を高い感度と特異性で検出します。
これにより、少量の菌体でも検出が可能となり、信頼性の高い診断が行えます。
検査には、尿や感染部位から採取した分泌物や拭い液が使用されます。特に咽頭や直腸などの感染部位では、ほかの検査方法よりも核酸増幅法が役立ちます。
核酸増幅法は、淋病の迅速かつ正確な診断に役立つ方法です。
しかし、薬剤耐性淋菌の検出や抗生物質感受性試験を行うためには、培養法との併用が必要です。
淋病の検査キット
淋病の検査キットは、自宅で簡単に淋病の検査を行えるツールです。
検査キットには、尿検体用の専用カップ、うがい検体用の容器、膣検体用の綿棒などが含まれています。
男性は尿検体を、女性は膣検体を採取し、咽頭の検査ではうがい検体が必要です。
尿検体やうがい検体は専用カップに採取後、検査容器にスポイトで移します。膣検体は綿棒を使用しておりものを採取します。
採取した検体は、検査機関に返送します。
検査キットはTMA法を用いており、精度の高い検査方法です。
また、匿名性を担保しながら郵送でやり取りを行い、インターネット上で検査結果を確認できます。
淋病検査キットは、性感染症のリスクがある場合や、症状が出ていない場合でも、自宅で手軽に検査を行える便利なツールです。ただし、検査結果が陽性の場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
淋病の治療について
淋病の診断がついた後はどのような治療を受けるのでしょうか。
治療のポイントや費用の目安についても解説します。
淋病の治療
淋病の治療には、主に抗生物質が使用されます。
淋病の治療に用いられる抗生物質にはスペクチノマイシン(筋注)、セフィキシム(経口)、オフロキサシン(経口)、ビブラマイシン(経口)などが用いられています。セフトリアキソン(静注)も使用されることがありますが、日本では現在保険適用外です。
近年、ニューキノロン系薬に対する淋菌の耐性が増加しています。
そのため、治療薬の選択には注意が必要です。
淋病は適切な治療を行えば症状の改善や淋菌の撃退が期待できますが、治療を受けない場合、感染が慢性化したり、ほかの性器に炎症が広がったりするリスクがあります。
淋病の治療の予後
淋病の治療の予後については、適切な抗生物質治療を受けた場合、一般的には良好です。
治療後は、再発やほかの性感染症の有無を確認するために、追跡検査が推奨されます。
治療後のフォローアップと、性パートナーへの感染防止のための対策も重要です。
パートナーの治療も不可欠
淋病の治療において、感染者のパートナーの治療も重要です。
以下は、パートナー治療の重要性に関するポイントです。
再感染の防止:
淋病の治療を受けた患者さんが、治療を受けていない感染したパートナーと性的接触を持つと、再感染のリスクがあります。そのため、性的パートナーも同時に治療を受けることが推奨されます。
無症状感染者の存在:
淋病は無症状であることが多く、感染しているにもかかわらず自覚症状がないパートナーが存在する可能性があります。このため、パートナーも検査と治療を受けることが重要です。
感染の拡大防止:
パートナー治療を行うことで、感染のさらなる拡大を防ぎます。特に性感染症は、社会的な問題としての側面も持ちあわせているため、感染拡大の防止は公衆衛生上も重要です。
淋病の治療においては、患者さん本人だけでなく、その性的パートナーの治療も同時に行うことが不可欠です。
これにより、再感染のリスクを減らし、感染の拡大を防ぎます。
淋病の治療費用の目安
淋病の治療方法には、内服薬、点滴、注射があります。
それぞれの治療方法によって費用が異なります。
内服薬は、自費診療の場合は7,000〜9,000円程度、保険診療の場合は1,000〜2,000円程度です。
また、点滴や注射は自費診療の場合は9,000〜2万2,000円程度、保険診療の場合は2,000円前後です。
淋病の治療には自費診療と保険診療の選択肢があります。
自費診療は家族に知られずに治療が可能で、症状がなくても受けられますが、費用が高くなる傾向があります。
一方、保険診療は3割負担で済むため安価ですが、症状が出ていないと利用できない場合があります。淋病は無症状のケースも多いため、保険が適用されないことが多く、無症状の場合は自費診療が一般的です。
まとめ
ここまで淋菌の治療についてお伝えしてきました。
淋菌の要点をまとめると以下の通りです。
・淋菌の症状として、男性では淋菌性尿道炎、淋菌性精巣上体炎、女性では子宮頸管炎、ほかにも肝周囲炎、淋菌性咽頭感染、播種性淋菌感染症(DGI)などがある
・淋菌の検査には検鏡法、培養法、核酸増幅法(NAAT)が用いられ、自宅で手軽に検査を行える淋病の検査キットも活用できる
・淋菌の治療には抗生物質が用いられ、患者さん本人だけでなく、性的パートナーの治療も同時に行うことが不可欠
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。