大腸がんの発症リスクを歯周病が引き上げる? 消化器内科専門医が解説
大腸がんの原因は遺伝的要因から生活習慣に及ぶまで多岐にわたりますが、近年、「歯周病によっても大腸がんのリスクが上がる」という報告がありました。歯周病がなぜ大腸がんのリスクになるのか、また、歯周病を予防するために行うべきケアについて、消化器内科専門医の石岡先生に解説してもらいました。
監修医師:
石岡 充彬(日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック)
歯周病と大腸がんの関係性について
編集部
まずは歯周病について教えてください。
石岡先生
※1:日本歯科医学会「歯周病の診断と治療に関する基本的な考え方」
https://www.jads.jp/basic/pdf/document_01.pdf
編集部
歯周病を発症する頻度はどれくらいでしょうか?
石岡先生
※2.厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周疾患の有病状況」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-004.html
編集部
「歯周病が大腸がんに関係する」というのは、どういうことですか?
石岡先生
※3. Komiya Y, et al. Patients with colorectal cancer have identical strains of Fusobacterium nucleatum in their colorectal cancer and oral cavity. Gut. 2019;68:1335-1337.
編集部
具体的な原因は分かっているのでしょうか?
石岡先生
※4. Idrissi Janati A, et al. Periodontal disease as a risk factor for sporadic colorectal cancer: results from COLDENT study. Cancer Causes Control. 2022;33:463-472.
歯周病とほかの全身疾患について
編集部
歯周病は大腸がん以外の病気との関連もありますか?
石岡先生
※5. 厚生労働省 「歯周病検診マニュアル 2015」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/manual2015.pdf
編集部
歯周病になると糖尿病が悪化するのはなぜですか?
石岡先生
「歯周病によって誘導された炎症物質がインスリン抵抗性を増加させるため」と言われています。インスリンというのは血糖値を下げるホルモンのことですが、分泌されたインスリンに対する身体の反応が悪くなる、ということですね。歯周病と糖尿病は相互に悪影響を及ぼす、負のループを形成していると言えます。
編集部
糖尿病のほかにも、関連のある疾患はありますか?
石岡先生
糖尿病のほかには、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの心血管系トラブルや、誤嚥性肺炎、関節リウマチ、認知症などの疾患リスクも増加させると言われていますので、早期から歯周病ケアが重要であると言えます。
歯周病の予防に必要なこと
編集部
歯周病を予防するにはどうしたらいいですか?
石岡先生
※5. 厚生労働省 「歯周病検診マニュアル 2015」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/manual2015.pdf
編集部
歯科クリーニングを行う適切な間隔について教えてください。
石岡先生
1〜3ヶ月毎のケアが一般的ですが、むし歯や歯周病の有無など各々の口腔内環境によって適切なケアのタイミングは異なりますから、かかりつけの歯科医とよく相談することをお勧めします。
編集部
その他、生活習慣で気をつけるべきことはありますか?
石岡先生
※6. Akter S, et al. Smoking and colorectal cancer: A pooled analysis of 10 population-based cohort studies in Japan. Int J Cancer. 2021;148:654-664.
編集部まとめ
歯周病は大腸がんをはじめ、糖尿病や心筋梗塞・脳梗塞、認知症まで幅広い疾患に関与していることが分かりました。1日最低1回の丁寧なセルフケアと、3ヶ月毎のプロによる定期的なクリーニングを受けることが重要です。