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認知症の方に起こる「夕暮れ症候群」とは? 正しい付き合い方を介護福祉士が解説

 更新日:2023/03/27
夕方になると、落ち着きがなくなる…高齢者の夕暮れ症候群との正しい付き合い方を教えて!

夕暮れ症候群は、認知症の中核症状の1つで耳にしたことがある人も多いでしょう。ですが、夕暮れ症候群について具体的にどのような症状が起こるのか、知らない方が多いようです。今回は夕暮れ症候群の理由やメカニズム・正しい付き合い方について、介護福祉士の青木さんに伺いました。

青木 直士

監修介護福祉士
青木 直士(介護福祉士)

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神奈川社会福祉専門学校卒業。卒業時に介護福祉士取得。卒業後は介護老人保健施設や特別養護老人ホーム(従来型・ユニット型)・認知症共同生活介護(グループホーム)で合わせて9年間勤務。2022年からWebライターとして活動。以降、介護に関する記事などの執筆を行う。

そもそも夕暮れ症候群とは?

そもそも夕暮れ症候群とは?

編集部編集部

祖父・祖母が夕方になると、ソワソワしたり不安そうな表情をしたりするのですが、なぜでしょう?

青木 直士さん青木さん

おそらく夕暮れ症候群でしょう。認知症の方に起こり、夕暮れ時になるとソワソワする、落ち着きがなくなる、徘徊をはじめるなどといった症状が特徴的です。ほかにも興奮や攻撃、叫び、介護拒否などの不穏行動も事例 として挙げられています。

編集部編集部

日中は穏やかなのに、なぜ夕方になると症状が出るのでしょうか?

青木 直士さん青木さん

見当識障害が関係しています。見当識障害とは、今の時間や場所がわからなくなる状態のことで、認知症の中核症状の1つです。脳細胞が壊れる事で真夏などにセーターを着るなどといった、介護をしている側からすると想像できないことが起こる場合もあります。

編集部編集部

認知症の方によく見られる症状ということですか?

青木 直士さん青木さん

そうですね。認知症は脳内で記憶障害が起きているため、最近の出来事は忘れてしまい古い記憶を維持している傾向があります。夕暮れ症候群は、介護者が忙しそうにしていることで(自分がいたら迷惑になる)と不安に感じ、起こるケースもあります。介護者は忙しい夕方の時間帯でありますが、認知症の方の気持ちを考えて接することが大切です。

高齢者の夕暮れ症候群との正しい付き合い方

高齢者の夕暮れ症候群との正しい付き合い方

編集部編集部

夕暮れ症候群のことはわかりましたが、不穏行動が出るとどうしても気持ちが参ってしまいます……。

青木 直士さん青木さん

気持ちはわかりますが、介護者側がイライラをしてしまうと、認知症の方はさらに不安な気持ちになり、夕暮れ症候群を引き起こすきっかけとなります。夕暮れ症候群は理解して正しい付き合い方を知ることが大切です。

編集部編集部

正しい付き合いについて教えてください。

青木 直士さん青木さん

ポイントは4つあります。1つ目は、自分の好きなことに集中してもらうことです。高齢者の過去の趣味を参考にして、できることをしていただくと夕暮れ症候群の兆候が出ず、落ち着いて過ごせます。洗濯物を畳んでもらう、ぬり絵、夕飯の支度の手伝いなどが挙げられます。介護計画を参考に今の身体状況で高齢者ができることをしていただくことが大切ですよ。

編集部編集部

2つ目のポイントはなんでしょう?

青木 直士さん青木さん

2つ目は会話する時間を設けることです。夕暮れ症候群の方は周りが忙しそうにしている姿を見て、不安な気持ちになります。なので、夕方はできるだけ忙しい雰囲気を出さず、業務を行いながら利用者との会話する時間を多く設けることが大切です。

編集部編集部

3つ目のポイントを教えてください。

青木 直士さん青木さん

訴えを傾聴しても落ち着かない場合は、小腹が空いて気持ちがモヤモヤしている状態と考えていいでしょう。空腹による不快感がきっかけとなり夕暮れ症候群が起こるケースもあります。空腹による不快感が原因の場合、軽食やおやつを提供すると落ち着くことがあるので、おすすめです。

編集部編集部

なるほど。夕飯がもうすぐだからといっていつも待っていてもらいました。

青木 直士さん青木さん

1日に摂れるカロリー数の制限などを受けている高齢者もいるため、普段から提供しているおやつの量ではなく、たとえばビスケット1枚などにしておくといいですね。提供した後は、おやつを一人で食べてもらうのではなく一緒に食べたり、高齢者が食べている間は一緒に過ごしたりすると落ち着くことがあるので、おすすめです。

編集部編集部

最後のポイントはなんでしょう?

青木 直士さん青木さん

窓の外の景色が、夕日色に染まっていたり、暗くなっていったりするのを見ると不安になる認知症の方もいますので、カーテンを閉めることです。まだカーテンを閉める時間帯でない場合は、照明の明るさ調整をすることで不安を解消することもできます。例えば暖かみのある電球色の光はリラックスできる空間に使用されているため、おすすめです。

夕暮れ症候群とせん妄との違い

夕暮れ症候群とせん妄との違い

編集部編集部

ここまでお話しを伺ってせん妄の症状に近いと思ったのですが、違いはあるのですか?

青木 直士さん青木さん

夕暮れ症候群とせん妄に大きな違いはありません。1つ違いがあるとすれば発症するタイミングです。せん妄の場合は環境の変化など精神状態によって症状が起凝ります。しかし、夕暮れ症候群の場合は中長期的に経過をしていきます。せん妄は認知症発症前に起こるケースが多いですね。

編集部編集部

自宅では穏やかだったのに、病院に入院したら別人になったという話をよく耳にします。

青木 直士さん青木さん

入院後に急に精神症状が出現する場合、ほとんどが「せん妄」であると言われています。せん妄を発症したら薬による治療と時計やカレンダーの設置など見当識強化を行うことが大切です。

編集部編集部

ちなみに、夕暮れ症候群は介護施設や病院によって呼び方は違うのですか?

青木 直士さん青木さん

夕暮れ症候群はほかにも日没症候群やたそがれ現象といった名称で呼ばれています。伝われば問題ありませんが、記録は勤務している病院や施設によって用語の記入方法が定められています。記録は誰が読んでもわかる内容なので一般的に夕暮れ症候群が広く知れ渡っているため、記入する際は夕暮れ症候群と記載した方がいいでしょう。

編集部まとめ

夕暮れ症候群は認知症の中核症状の1つです。毎日、繰り返し訴えがあるため介護者側は業務として捉えてしまい対応が流れ作業になりがちになります。夕暮れ症候群が、起こりうる兆候が見られたら傾聴やレクリエーションを設けてあげるといいでしょう。
また、カーテンを閉めたり照明の明るさを調節したりと環境から落ち着いてもらうことも大切です。

この記事の監修介護福祉士